INTERVIEW
2022.04.25
数々のアニメ作品の劇伴制作やアーティストへの楽曲提供で活躍する音楽家・高橋 諒によるアーティストプロジェクト、Void_Chords。その2022年の第2弾シングル「Transcending Time」は、この4月よりNetflixで全世界に配信されているアニメ『ULTRAMAN』シーズン2のED主題歌。TVアニメ版『ULTRAMAN』シーズン1のED主題歌「my ID」に続き、Unlimited toneのRyoheiとONE Ⅲ NOTESのFoggy-Dを再びフィーチャリングボーカリストに迎え、まさに“時空を超越する”光に溢れたファンキーかつスタイリッシュなナンバーに仕上がっている。一体どのような狙いの元、この楽曲は生まれたのか。メールインタビューで迫る。
――まずはTVアニメ版『ULTRAMAN』シーズン1のED主題歌「my ID」を担当されたときの反応・反響や手応えについてお聞かせください。ファンや関係者からの声で印象に残っていることはありますか?
高橋 諒 「『ULTRAMAN』としては新しい感じだけどこういうのも大人でアリですね」と言っていただけてとても嬉しかったです。RyoheiさんとFoggy-Dさんのお二人を迎えて初の男声のみのタッグということで、楽曲も今までとはまた違った、熱いけど汗臭くないみたいな、モダンでいてヘヴィな方向に挑戦できました。かつ作品のクールでヌケ感のある映像も相まって、ちょっと大人の『ULTRAMAN』の新たな側面を描けたのではないかと思います。作品としての相性と、音楽性の領域も冒険できた非常に手応えがある作品になったと感じています。
――「my ID」は、『ULTRAMAN』の主人公・早田進次郎がヒーローとして成長していく、シーズン1のストーリーに寄り添う楽曲でした。今回のシーズン2のED主題歌「Transcending Time」では、本作の物語のどんな部分を意識して制作しましたか?
高橋 運命を受け入れたのちの、立ち向かっていくヒーローたちの能動的に躍動する姿を中心に捉えています。そこに音楽性として軽快なサウンド感……フュージョンファンクスタイルを軸に16ビートを感じる楽曲を組み合わせて、熱く滾る魂というよりは、宇宙を駆け抜ける閃光のようなスピードや火花のような鋭さをもったヒーローの姿を抽象化しています。
――それら作品に寄り添う部分とは別に、Void_Chordsもしくは高橋さん個人としてチャレンジしたかったことはありますか?個人的に設けていたテーマなどがあれば教えてください。
高橋 カップリングも含めて、今までで一番軽い味わいかつ、手数はしっかり多いような(笑)、乾いた手触りの作品を作ろうと思いました。よりジャンル感としても遊べるアプローチになったので、しっかり温故知新はしつつ、よく聴くと新しいと思ってもらえるようなギミックを入れようと。
――曲名になっている「Transcending Time(=時空を超越する)」という言葉は、歌詞の中にもフックとして繰り返し登場します。この言葉にはどんなメッセージを込められているのでしょうか?
高橋 時間を超えた運命と、さらに広大なスケールで展開する物語に対して、飲み込まれながらもそのすべてを受け入れ、打ち克っていく、主人公たちの宣言としてフックにしています。
――作詞はVoid_Chordsの楽曲ではお馴染みのKonnie Aokiさんが担当されています。歌詞の全体としての印象はいかがでしたか?作品との寄り添い方として秀逸に感じたラインなどがあれば教えてください。
高橋 よりポジティブというか、1つ抜けた感じがあって、今回のコンセプトをしっかり描き出していただきました。守るべき/変えるべき未来やその可能性、それを受け入れるヒーローを“Light”として表現されています。なぜ“光”なのかは本編を観ていただければと思いますが、“allow in this light” と宣言するフレーズは非常に示唆的で、自分自身の行動によって未来を変えようとする、また守ろうとする、それは自分の力によって、という能動的な決意を感じます。
――サウンド面に目を向けると、腰の入ったグルーヴやアタック感のあるシンセブラスなど、ファンク色が強いサウンドに感じました。アレンジ面でこだわった部分、ご自身のルーツやリファレンスとして意識したものがあれば教えてください。
高橋 自分自身のルーツとしてファンクが強いので色々とこだわりましたが、本作で最も大事にしたのはフレーズそのものよりグルーヴや重心の全体的な据わりの調整によって、「日本人だからできるフュージョンファンク」を明確に感じられるような作品にするということでした。オーレ・ブールードなどの非米国な重心をもったアーティストのサウンド感や、レトロウェイヴ(Retrowave)などの10年代以降の日本のサブカルチャーとネットに一定の文脈を持つ流れもミックスさせています。
――今作は「my ID」に続きRyoheiさんとFoggy-Dさんがフィーチャリングボーカリストとして参加しています。お二人に歌っていただく際にはどんなディレクションをされましたか?
高橋 Ryoheiさんは、前回かなり丁寧にリズムをリニアに乗せていただいた印象ですが、今回はよりノリ重視でお願いしました。横の流れとして気持ち良く上がっていけるようなボーカリゼーションが、素晴らしかったです。
――Foggy-Dさんはいかがだったでしょうか。
高橋 Foggyさんのパートは少しアプローチを変えて、ラッパーというよりは今作はバッキングボーカルの比重が高くなっています。彼のコーラスサウンドもとても作品に合っていて、スパイスのように繰り出されるラップパートの鮮烈さが増して面白くなったと思います。
――ほかに「Transcending Time」のレコーディングや楽曲制作の過程で、印象深かったことはありましたか?
高橋 フリーなかっこよさも活きるファンク楽曲ですが、コンセプト上今回はかなりの部分、手数も決めた状態でレコーディングしました。特にドラムの波多江 健さんにはご苦労おかけしましたが(笑)、素晴らしいテイクをいただきました。
――「Transcending Time」のMVは男女による殺陣のシーンをフィーチャーしていて、これまでのVoid_ChordsのMVにはなかったタイプの映像に仕上がっています。なぜこのような映像になったのでしょうか。
高橋 上記のコンセプトを踏まえて日本をより感じる、そしてステレオタイプなものでも肯定的にミックスできるのではないかと思い、乾いた感じと軽快さに、シックな殺陣を合わせたら面白いのではないかと。戦士の闘い、そこに宿る魂、命のやり取りが美しい舞に昇華していく様は作品にも親和性があると思います。
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