2022年2月23日にやなぎなぎのメジャーデビュー10周年を記念したセレクションアルバム『Roundabout』がリリースされる。これはファンからの投票をもとに選曲されたアルバムで、現在では入手が困難なデビュー前の楽曲も多数収録されているファンとアーティストのこだわりが詰まった1枚。このアルバムに書き下ろされた新曲とレアトラックの解説、そして彼女の音楽への向き合い方を根本の部分を伺った。
――『Roundabout』はファンによる投票をもとにセレクションしたアルバムですが、この企画が実施されることについてどんな感想をお持ちになりましたか?
やなぎなぎ 昔の作品は自分でも拙い部分があるとわかっていたので、それを今のリスナーに聴いていただくことには正直、恥ずかしいなと思う部分もあって(笑)。でもデビューしてから10年という時間が経過し、そのなかでライブでもたくさん歌わせていただいていたので、その変化が「こういうこともやってきたんだよ」と今聴いてくださる方に改めて伝わればいいなと思いました。
――今回、メジャーデビュー10周年の企画でありながらも、選ばれた楽曲はそれよりさらに遡ったアマチュア時代の楽曲も数多く含まれています。
やなぎなぎ ソロデビューからは10年なんですけど、やなぎなぎとして活動してきたのは2005年からなので、その時代を含めてどういう活動をしてきたのかを知ってもらえたらいいなという気持ちもあって、せっかくだからメジャーデビュー以降をまとめた表以外にも自由に書いていただけるフォームを作っていただきました。そうしたところ、自分でも予想してなかった曲をたくさんの方に挙げていただきました。きっとそれほど広くは知られていないけれども、昔から好きで推してくださる方がいるんだと知ることができたのは嬉しかったです。少し前にベストアルバムをリリースさせていただいたのですが、それとほとんど曲が被っていないんです。なので、本当に色んなところから、やなぎなぎという存在を知って入ってきてくださったのだと改めてわかりました。それらの結果を参考に、今では聴く手段が難しい曲もできる限りピックアップして収録をさせていただきました。
――「飛べない魔法使い」なんてまさにそんな曲ですね。
やなぎなぎ そうですね。この曲はコアなファンの方からの投票が多かったです。ゲームの主題歌だったので、メーカーさんの主題歌コレクションにしか入ってなくて、それも「入手が困難なので聴きたいです」と投票の際にコメントをいただいたので、プロデューサーがかけあって収録することができました。
――さらにそれ以前の同人活動で頒布していた時代の楽曲もいくつか収録されています。やなぎさんはプロとしての活動をする以前から、楽曲を音楽コミュニティサービスに投稿し、ネットを通じて離れたところにいる様々な方に音楽を聴いてもらっていました。そうした状態を経験してからのデビューでしたが、音楽を日々の糧とするプロとしての意識はどのように芽生えていったのでしょうか?
やなぎなぎ 音楽を始めた当初は本当に趣味だったので、同人でゲストボーカルとして入るときも、金銭のやり取りは一切しなかったんです。でも、あるとき知り合いに、「それはちゃんと対価をもらうべきだよ」と言われまして。それを聞いて最初は「自分が好きでやっていることでお金を取るのはいかがなものだろうか」と思ったのですが、「いつか音楽で食べていこうとしたときに、それは自分の価値を下げることに繋がるから」と。そう言われたことが今思えば意識の分かれ目だった気がします。逆に言えば、そのときまでは音楽で食べていこうとは考えていなかったんです。
――メジャーデビュー以降も、10年間絶え間なく活動を続けてこられています。安定して継続されていること自体も素晴らしいことだと思いますが、それができた理由をご自身ではどのように思いますか?
やなぎなぎ 音楽を作っていないと自分というものが保てないので、逆に作らないと不安というか(笑)。多分それをやめちゃったらもうほんと空っぽなんです。今はお仕事になっていますが、自分の意識としてはこれまでやってきたことの延長線上にあって、生活の一部みたいな感じなので飽きることなく続けられているんだと思います。
――タイトルトラックの「Roundabout」について伺わせてください。直訳すると“遠回り”“回り道”という意味ですが、この言葉にはどんな想いを込めていますか?
やなぎなぎ 環状の道というものは、色んなところから入って、色んなところに抜けていける、とても自由度が高いものだと思います。自分の曲を聴いてくださる方たちが、今すごく良いなと思ってくれることも嬉しいですし、未来でそんな人に出会えるかもしれないし、過去にこの“Roundabout”にいた人もいるかもしれない。そんな自由度が高くて集まれる場所というイメージですね。
――10年を祝いつつ、その先を目指す前向きさが溢れる歌声が印象的でした。
やなぎなぎ やっぱりアルバムの出発の曲という意識があったのと、皆さんに明るい気持ちになってほしいし、自分自身も明るい気持ちでいることが伝わってほしいなという気持ちがありました。なので今までの10年がありつつも、ここで終わりではなくその先にも行けるような力のある曲にしたいなという思いで歌いましたね。作曲の北川勝利さんにも、色んな時代とジャンルの曲の出発点として、盛大で明るく走っていけるような曲にしたいとお話しして作っていただきました。自分としても10年間はあっという間で、それだけの月日が経っているという印象はあまりなかったのですが、振り返ってみると本当に多くの作品を作らせてもらっていて。最初は北川さんもテンポを上げたほうがいいのかなとおっしゃっていたのですが、それよりもストリングスの動きなどで気持ちの高まりみたいなものを出したいというお話をされて、心象風景の高まりを曲として表現していただきました。
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