INTERVIEW
2022.02.18
強大な九尾の狐を封印された落ちこぼれ忍者のうずまきナルトが、里一番の忍である火影を目指して奮闘する姿を描く「NARUTO-ナルト-」。1999年に連載が始まり、2002年にアニメ化。ナルト、そしてサスケにサクラをはじめ、忍たちの活躍は国内のみならず世界へと波及していった。
そんなナルトの子供たち世代の物語「BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS -」は2016年に連載が開始され、翌2017年TVアニメ化。そのアニメ『BORUTO』で1月からオープニング、エンディングを務めるのは『NARUTO」の主題歌「GO!!!」から長年同作とタッグを組んできたFLOW、そしてアニメ『NARUTO』の最終シーズンでオープニングを務めたAnlyだ。この2組に『NARUTO』、そして『BORUTO』への想いを聞く。
――このたび、『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』のOPテーマ&EDテーマをFLOW、そしてAnlyさんがご担当されているということで、今回対談を実施させていただくことになりました。FLOWが「GO!!!」でNARUTOのOPテーマを飾ったのが2004年で、Anlyさんが「カラノココロ」でNARUTOの主題歌を担当したのが2014年。ここに10年の時の差があるんですよね。
Anly へー!そうなんですね!すごいですね、10年。
――さすが、ナルトも大人になりますよね。
KEIGO(FLOW) たしかに。大作ですね(笑)。もはや大河ドラマですよ。
TAKE(FLOW) 人生だし、バイブルでもあるよね。
Anly 海外の方でそうおっしゃっている方も多いですよね。
TAKE 友情や家族愛、ライバルの存在。生きていくうえで必要な様々なことを学べる作品です。バイブル、間違いない。
――今回は『BORUTO』の話ではあるのですが、まずはそんなボルトのお父さん・ナルトの思い出などを伺いたいです。FLOWにとっての『NARUTO』はどんな存在でしょうか。
TAKE よく言っているのは“戦友”ですよね。一緒に、同じように月日を共にして成長してきた戦友だと思っています。
KEIGO 同じく。メンバーみんなで話すのは、本当にナルトは僕らにとって戦友だよねって。「GO!!!」は僕らにとっても初めてのアニメタイアップでしたし、『NARUTO』によってもたらされる影響について、当初はなにも意識したことがなかったんです。でも『NARUTO』でオープニングを務めてから、色んなアニメの企画をいただくことになったと思うし、アニメと出会わせてもらったおかげで日本国内のライブはもちろん、海外でのライブのオファーをもらうことにもなって。海外に行ったときに、日本のアニメと『NARUTO』という作品がこんなにも愛されているんだ、と知ったんです。本当に全世界。最初はアメリカに呼ばれて行きましたが、それは南米でもヨーロッパでもアジアでも変わらない。その影響力は、「GO!!!」をやって、月日が経つにつれて自分たちでも実感したし、確実に自分たちのバンドの可能性や世界観を広げてくれた。それは『NARUTO』との出会いがあったからだと思うので。しかも1曲では終わらなかったというのが、自分たちにとっても大きなことですね。「Re:member」があり、「Sign」があり。自分たちのバンドの節目で、不思議と『NARUTO』とコラボをさせてもらっているんですよね。だからこそ“戦友”という言葉がしっくりきます。
――Anlyさんにとっても、アニメのタイアップは初めてだったんですよね。
Anly そうです。初めてのアニメタイアップ作品が『NARUTO』でした。私も海外の方に自分の曲を聴いてもらうきっかけになったのが「カラノココロ」(『NARUTO-ナルト- 疾風伝』OPテーマ)だったので、音楽的にも良いきっかけをいただいたのが『NARUTO』だったなと思っています。
――そもそも作品に対してはどのような印象がありましたか?
Anly タイトル自体は知っていたのですが、楽曲を書くまで読んだことはなくて。私は沖縄の伊江島という離島で生まれ育ったのですが、伊江島にあるラーメン屋に「NARUTO」が並んでいたんです。小学生の頃にそれを読んだんですけど、狐の九尾の説明から始まっていたところで、小学校低学年の私には漢字が多すぎて……難しかったです。
TAKE 忍者でね。昔の話だから説明も漢字が多めになりますね(笑)。
Anly しかも難しい言葉が並んでいて、読めなくなってしまったんです。曲を書くことになって、1週間くらいで72巻まで読破したのですが、非常に濃い体験でした。マンガを読んで、すごく泣いたし、“THE・少年マンガの主人公”といいますか。絶対諦めないというナルトの信念が私の中でも響いて。色んなキャラクターのストーリーも織り交ぜて曲作りをしたことは、今でも良い思い出です。今も活きている部分がありますね。
TAKE 「カラノココロ」は、全世界のファンの人に愛された1曲になりましたね。Spotifyも1千8百万回再生を超えていますしね。
Anly 最後のOPテーマに、新人アーティストを起用してくれたことが嬉しくて……。頑張って書いているけれど、新人だしな、と思っていたのですが、最後にフレッシュなアーティストとタッグを組む。そこでも新世代を意識している感じがして作品からの愛情を感じましたし、そのなかで私を選んでくださったのは、とても嬉しい出来事でした。
TAKE 確か2つ前くらいにASIAN KUNG-FU GENERATIONが主題歌を務めたんですよね。そこで終盤に歴代の人たちが出てきて、ファンの人たちも喜んで。でも最後は新人のAnlyちゃんにバトンを託すようなところがあった。それは72巻読まなきゃ無理だ(笑)。
Anly 72巻読んだし、「木ノ葉秘伝」っていう小説も読みました。
TAKE 身も心も木ノ葉の里に入った状態で書いたんですね。
Anly はい。しかもここまで曲作りに時間が掛かったことは、これまでなかったんです。初めて曲作りで、闇に入るきっかけにもなりました。今まではポジティブな曲が多かったんですけど、サスケとナルトの関係性を書こうと思うと、どうしてもサスケの気持ちにも寄り添っていくんですよね。やはり闇に染まっていく部分があって。それでも絶対に諦めずに追い駆けてくるナルトという部分を書こうとしながら、私自身も自分の暗い部分に手を伸ばしていたなぁ、と思います。
TAKE たしかにその陰影の濃淡があるからこそ、物語に深みが出てくるというところもあるね。「いつまでやってるんだよ!サスケ!最後の最後まで!」みたいなところもあるけど(笑)。
Anly イライラしてきますよね(笑)。
KEIGO むしろ「いじけてるなぁ、こいつ」っていう気持ちになってくる(笑)。
TAKE 「そっちの選択肢!?」みたいなね。イタチの遺志を継いだらそっちにいく?って(笑)。
Anly その解釈!?ってなりますよね(笑)。
TAKE でもナルトが、もしかしたら自分も逆の立場だったかもしれないといったような、それぞれの境遇があって。その関係性が、最後には綺麗に落とし込まれたラストシーンになったなと思いますし、そこに「カラノココロ」とのリンクも強くあったんじゃないかなと。
Anly ありがとうございます。
――FLOWはどのように『NARUTO』の世界にタッチしながら、リンクして楽曲を制作されていたんですか?
TAKE 当時から言っていたのが、バンドが夢を持って突き進んでのし上がっていく感じと、ナルトが持っている諦めない忍道みたいなものがリンクする部分があったんですよね。もちろん自分もジャンプ世代で、友情・努力・勝利をやり続けてきて、それをバンドで体現しているからこそ自ずとリンクしてきたところはあるのかなと思います。
KEIGO 自分たちもデビューしてまもなく「GO!!!」で『NARUTO』に出会わせてもらって、そこからの自分たちのバンドの歩みと、ナルトが成長していく物語が不思議とリンクしていったと思うんですね。もちろん『NARUTO』を観たり読んだりもして、Anlyちゃんみたいに「結構、闇の部分も描くんだな」と思ったこともあったんです。自分たちが小さい頃は、絶対正義みたいな物語が多かったから、「正義って何?」となったときに、色んな角度の見方があるんだなってことを考えさせられた作品でもあったんですけど、そこから出てきたものは自分たちのバンドの経験から出てきているものでもあって……。例えば活動が止まっていたときにできた「Re:member」だったし、バンドの経験から生まれた「Sign」や「虹の空」でもあった。「GO!!!」から考えればKOHSHIの書く歌詞も変わってきていると思うんです。そこはバンドの経験から出た言葉が多いと思うのですが、その言葉が一緒に成長しているナルトとどこかでリンクするからこそ、作品とも親和性が出てきたり。きっと、だからこそ“戦友”って言いたくなっちゃうんですね。
――先ほどTAKEさんから「カラノココロ」の感想が出ましたが、KEIGOさんからも感想を伺いたいです。
KEIGO Anlyちゃんも言っていましたが、常に「NARUTO」って挑戦しているなと思うんです。「NARUTO」という作品は終焉に向かっているんだけど、そこにはもう「BORUTO」があって、ストーリーは終わってしまうけれど、作品は成長し続けていく。そんなふうに未来を見ている作品なのかなと思って。そこで「カラノココロ」はどんぴしゃにハマったんだなと思います。
――「虹の空」をリリースされた際には、FLOWはまだ最終クールの主題歌を諦めていらっしゃらなかったですよね。
TAKE そうなんですよ。最後のオファー、こないなって思っていましたから。我々か、初代のHOUND DOG先輩かなと思って。もうASIAN KUNG-FU GENERATIONは出ていましたから、待っていたんですけどね?でも「カラノココロ」を聴いて、「これが良いです」ってなりました(笑)。ある種、「虹の空」でやりきった感がありましたしね。
KEIGO たしかにね。
TAKE エンディングの演出も、木ノ葉隠れの里にある「一楽」っていうラーメン屋の、店主・テウチの視点での、ナルトが成長してきた過程が感じられるようなものだったし、そこで自分の中では腑に落ちたところはありましたから。もうこれ以上は無理だと思って。やっぱり「NARUTO」は特別なんですよね。「GO!!!」から始まって「Re:member」、「Sign」、途中で少年篇が挟まったり、舞台のテーマソングもやらせてもらったりしていくなかで、そのすべての思い出が重なっていったから。毎回、泣きながら作っていましたね。ナルトとサスケの関係性だったり、里のみんなの成長もそうだし、“死”もそうだし。そういったものを乗り越えていくナルトに対して、自分も当事者のように思いながら作っていたから。今思うと、制作はかなりしんどかったなぁ(笑)。
――Anlyさんから、FLOW先輩の『NARUTO』の楽曲の感想をお願いします。
Anly 「GO!!!」は本当に少年が走り出していく“少年”という雰囲気だったんですけど、「Sign」にはナルトが思春期を迎えている感じもあり、OP映像もグッとくる演出でしたよね。FLOW先輩とナルトが共に歩んできたんだなというのが、音楽のアレンジからも伝わってきて……。それは「NARUTO」ファンとして胸が熱くなるところだなと思っていました。
TAKE イタチとサスケの真実のところと、ペイン戦、そして自来也の死があるところだったから、あそこで“高みを目指して”“なりふり構わず”はマズいでしょう!と(笑)。
Anly そこで「Sign」のギターのサウンドが自分には響いて、印象に残っています。SpotifyのFLOWさんの人気曲を見ると、「Sign」が一番聴かれていましたし、私の感覚は間違っていなかったんだなと思いました。みんな、やっぱり好きだよねって思いました。
TAKE 物語とのリンク度が高かったから、みんな印象的に感じて聴いてくれていたんだろうと思うし、すごく大事なシーンだったからそれ以上に思い出に残っている、という部分ではあるとは思っていて。だから歴代の、『NARUTO』主題歌のベスト10みたいなもので、「Sign」はありがたいことにずっと1位なんです。でもね、去年「シルエット」(KANA-BOON)に抜かれちゃったんですよ。
Anly 「シルエット」!!
TAKE ここでも「次世代きたな」と。
Anly 映像とリンクしている曲が人気な気がしていて。「Sign」だったら、自来也がアイスを割ってナルトと食べるところとか。もう、それを見ているだけで泣きそうになるんですよね……。ほかにもイタチがサスケのおでこをこつんと指で押すところとか。ファンが「そうそう、そういうところがナルトとサスケにとっての心の癒しだった」と感じるところなんですよね。それをオープニングで感じさせ、何回でも見られる映像だからこそ上位にいるんだろうと思います。
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