2019年に始動し、数々の配信リリースを経て、2021年には1stシングル「DiViNE」をリリースするなど、精力的な活動を展開する西沢幸奏のソロプロジェクト・EXiNA。2022年最初のリリースとなる「ENDiNG MiRAGE」は、TVアニメ『終末のハーレム』のEDテーマであり、「グランツーリスモ」などで知られる作曲家のdaiki kashoとの刺激的なタッグを結成した、彼女にとっても新境地となる一枚だ。新たな扉を開きながら、一方で自身のルーツも伺うシングルはどのようにして生まれたのか話を聞いた。
――昨年は1stシングル「DiViNE」のリリース、そして今作「ENDiNG MiRAGE」の制作がありましたが、EXiNAとしてはどんな1年だったと感じていますか?
EXiNA やっぱりEXiNAの1stシングルをリリースできたことで、コロナ禍を経てやっとスタートを切れた年でしたね。大きな出来事としては「ENDiNG MiRAGE」の制作が昨年の夏ぐらいにあったんですけど、そこで作曲してくださったdaiki kashoさんとの出会いがあって。それがすごくいい組み合わせだなっていう発見があり、そこからEXiNAチームが制作などにも熱量がガっと上がってきたので、すごく意味のあるいい1年になったなって思っています。
――2019年のデビュー以降立て続けに配信でのリリースがあり、そこで様々なサウンドアプローチに挑戦されている印象がありましたが、昨年の「DiVINE」、この「ENDiNG MiRAGE」でEXiNAとしての音楽性も大きく広がった?
EXiNA かなり広がりましたね。特に全体的にそうなんですけど、サウンドの面が大きく広がったなっていうのがありまして。今回の「ENDiNG MiRAGE」は、私のなかでは懐かしさのある曲だなって思っていて。私が好きな荒さの残る90年代後半から2000年代初頭にかけてのサウンド感で、それがまず私が歌うのは初めての経験で、好きだけど私にはなんとなく合わないんじゃないかって思ってやっていなかった部分だったんですよね。daiki kashoさんと出会ってそれをやる機会を作ることができて、ある種チャレンジな部分もあったんですけど、やってみたらものすごくハマったので、自分の音楽の振り幅が広がったなという感じですね。
――いわゆるdaiki kashoさんのルーツでもあるハードロック/ヘヴィメタルの要素ですよね。それこそ「ENDiNG MiRAGE」のAメロでのギターリフの刻みなんかはまさにそれで。
EXiNA あーそう!そうなんですよ!そこに気づいてくださるのが本当に嬉しいです(笑)。あのAメロの後ろで鳴っている「デッデケデッデケデッデケデッデケ」っていうフレーズは最近あまり聴かないと思うんですよ。「あえて今だからこそ、このフレーズどうかな」っていうのをやってみたんですが、みんながそれを作っているときに「ちょっとこれ古いかな、どうかなどうかな」って作っていたんですけど、完成したらめちゃくちゃいいじゃんっていうものができて。かなりやってよかったなっていう制作でしたね。
――たしかに最近聴かないフレーズでありますし、それだけにフレッシュに感じる人は多いと思いますね。またそうしたサウンドで歌ってみた感想はいかがでしたか?
EXiNA daiki kashoさんからは、私の声がちょっと懐かしいメロディやサウンドに合うんじゃないかっていう提案をしていただいた感じなんですよね。私もそういうサウンドが大好物だったんですが、一方で「本当に私なんかがこんな音で歌っていいのかな?」って疑問がありつつ。じゃあ「いい」って言ってくれる人がいるなら一度身を任せてみたいなっていう気持ちでまずは自宅で歌を乗せてみたらハマった感がすごくて、「あっ、なるほど!」みたいな感じになったんですよね。
――なるほど。
EXiNA daiki kashoさんは私の声の、今まではなかった魅力というのを見出してくださっていて、どっちかというと私は高い声を使っていたタイプだったので、こういった低めの声がいいというふうに自分も気づけていなかった節がありまして。そういう自分の声と、懐かしさのあるメロディのマッチング感というがいいものなんだなって発見出来た、いい機会でしたね。
――たしかに「ENDiNG MiRAGE」で耳を引くのはAメロの低い声ですよね。ご自身にとってもこうした低域のアプローチは新鮮でしたか?
EXiNA まさかここまで低い声を、しかも曲の入りの部分でアピールしていくということがあるとは思っていなかったんですよね。でもやってみたら、自分で聴いてみても、低い声って結構魅力的なんだなって。私の声というより低い声の良さをすごく感じることができて、もしこれを今後武器にすることができたらいいことだなって、歌い手としても感じましたね。
――そうしたAメロから、サビに向けてボーカルの感情の流れというものはどう歌おうと考えましたか?
EXiNA 流れというか、曲全体を通してあえて感情を乗せ切らないみたいな見せ方が、この曲に関してはできたかなって思っておりまして。「今私は怒ってるんだ!」とか「すごく悲しいんだ!」って表現するというより、この曲のテーマってそういう単純な気持ちじゃない、ちょっと複雑な乙女心だったりするんですよね。本当はこういうことを言いたくないのに言っちゃう自分、みたいな。そういう気持ちをあえてこの曲を聴いて伝わったらうれしいんですけど、内に秘めたる想いを声に出してしまっているみたいなボーカルアプローチができたかなって思っていますね。
――それこそこの曲がEDテーマとなった『終末のハーレム』の、好きというだけではない男女の壮絶さというものにもリンクするのかなと。
EXiNA 『終末のハーレム』の原作を読んでこの歌詞を書いたんですけど、私が作品を読んで表現したかったのは、男の人がほとんどいなくなってしまった世界で、女の人が男の人を取り合ってしまうという場面が出てしまうということなんですよね。女目線で作品を読んだときに、すごくたくさんの女の子が失恋しているなと思って、めちゃくちゃ切なさを感じたんですよ。ダメだとわかっているんだけど求めてしまう乙女心とか、抑え切れない気持ちというのを表現したいなと思って書いて。
――そうした作品から出た、内に秘めたる情念というものが感じられるボーカルですよね。そうした感情もレコーディングで出してみた感想は?
EXiNA レコーディングはすごく楽しかったですね。今までそこまで見せたことのなかった声の表情を歌に乗せていった感覚があったんですけど、最初に「これどうかな?」っていう感じで録ったときに、daiki kashoさんをはじめとしたチームのみんなが「めちゃくちゃいいよ」ってリアクションをくれて、そこから自信が湧いてきつつ、そうやってどんどん自分の新しい面を発見しながらの制作だったので、「こんなのもいいんだ、こんなのもいいんだ」って楽しんでいるうちに終わった感じですね(笑)。
――繰り返しになりますが、本作によってEXiNAとしての新たな扉を開いた1曲になったわけですね。
EXiNA そうですね。daiki kashoさんとの出会いによって、おっしゃってくださったように新たな扉を開いてくれて。それでEXiNAチームも活気に溢れている感じがしていて、今は早く次の曲を作りたいという感じなんですよね。新たにやりたいことが見えているという状況です。
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