INTERVIEW
2022.02.05
アーティスト・ASCAのニューシングル「君が見た夢の物語」がリリース。昨年末に放送されたTVアニメ『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』特別編 主題歌で、本人としても待望の梶浦由記プロデュース楽曲となっている。梶浦由記の巧みなディレクションによって引き出されたASCAの新しい歌の世界とは――?
――ニューシングル「君が見た夢の物語」(TVアニメ『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』特別編 主題歌)ですが、今回は梶浦由記さんの楽曲ということで、まずはこのお話をいただいたときの感想はいかがでしたか?
ASCA 本当に本当に嬉しかったです。以前、「雲雀」という楽曲で梶浦さんと一緒に音楽を作らせていただいたときに、改めて歌う楽しさを感じたんです。しかも、初めてバラード曲をリリースしたので、反響がたくさんあって、未だにいい曲だって愛してくれる方もたくさんいらっしゃるんですね。今後も音楽を通して梶浦さんと関わっていけたらいいなという夢があったので、喜びでいっぱいでした。
――しかも『ロード・エルメロイ』ですからね。
ASCA 作品自体も大好きですし、そもそも今回の企画がアニメのオープニングのインスト曲なんですよ。
――聴いたときびっくりしました。これ、あのオープニングじゃないか!って。
ASCA 私も配信を観ながらかっこいいなと思って聴いていた曲なので、驚きましたし、最初の印象としては「これを歌ものにするとどうなるんだろう」っていう、未知なところがありました。しかもこれは私が歌うということで、梶浦さんが新たに考え直していただいたメロディなんですよ。
――あのOPテーマって『ロード・エルメロイ』の作品の象徴的な音になってるわけじゃないですか。それを託してもらえたというのは、作品からの信頼もそうですし、梶浦さんからの信頼というのもきっとあるんじゃないかなと。
ASCA ただ、前回の「雲雀」よりも、この梶浦さん色の強い楽曲を私はちゃんと歌えるのだろうかという不安はありましたね。
――でも、梶浦さんに手を加えていただいた楽曲ということで、ASCAさんの曲としてハマったものになっていますね。
ASCA それが不思議でしたね。梶浦さんにディレクションしていただいたときに、1つテーマとしてあったのは「ミュージカルのように」というものだったんです。
――ミュージカルですか?
ASCA この曲をミュージカルとして考えて、歌うというよりはセリフをしゃべるように、ということでした。そうすれば、後ろの演奏に負けずに、演奏にも合うだろうって。でも、完成形が見えないまま進んでいったような感覚はありましたね。初めて私が挑戦するような曲調だったので。でも、ミックス作業に立ち会わせていただいて、完成版を大きいスピーカーで聴いたときの感動はすごかったです。特にすごいのはサウンド面ですよね。色んな弦やフルートなど、たくさんの楽器が豪華に使われていて、自分の人生さえも振り返ってしまうような音だったんです。去年、駆け抜けてきた活動も全部浮かび上がってくるような楽曲になったと思いました。大きなスピーカーの前で「報われた!」って気持ちになって、涙したのがすごく印象に残っています。
――作品の枠を超えた感動があったということですよね。
ASCA 本当にそうですね。最初に曲をいただいて、歌詞を読んだら、本当に素敵な歌詞だったんです。もちろんこの『ロード・エルメロイ』という作品で夢や憧れを持っている彼らに寄り添った歌詞になっているのですが、梶浦さんはいつもそこを超えて、私たちにも語りかけてくれるんですよ。闇の中にもしっかり希望を感じられるような歌詞で、これを歌えるのはすごく幸せだなと思いつつ、自信を持って歌いたいなと思いましたね。
――『ロード・エルメロイ』の作品で考えると、個人的には“最果ての海へと続く道”なんかはもう……。
ASCA はい、アニメの最終話の映像が浮かび上がりますよね。
――ライダーとウェイバーの絆も思い出されました。
ASCA 原作ファンにも宛てた歌詞だなと思いますし、梶浦さん自身も『事件簿』アニメをとても愛されているんですよね。
――以前、ASCAさんと梶浦さんの対談のときもライダー推しとおっしゃってましたね。作品に対する愛も感じつつ、おっしゃるようにさらに大きな愛があるんですよね。
ASCA 「雲雀」のときからそうだったんですけど、「一人じゃ生きていけないし、愛がないと生きていけない」っていう大事なことを教えてくれる方だなと思いましたね。どうしてもコロナ禍で1人きりでいる時間が増えてきていて、私だけじゃなくそういう方はたくさんいらっしゃると思うんですけど、1人きりで生きているような気持ちになっちゃうんですよ。でも、そうじゃないなと。近くに支えてくれたり、助けてくれる人はたくさんいて、そういう愛があってこそ生きられるんだってことを、梶浦さんはいつも教えてくれるんだなと思いました。
――レコーディングでは梶浦さんが直接ディレクションされたんですよね。
ASCA そうなんです。今回、この曲も「雲雀 -winter whisper version-」もディレクションしていただきました。いやー、すごいんですよね、梶浦さんのディレクションって。歌う人をどんどん乗せてくれるようなディレクションをされる方なんです。リアレンジをしていただいた「雲雀 -winter whisper version-」のレコーディングのときも「改めて2年前にリリースした『雲雀』を聴き直したんですけど、やっぱりいい声ですね~」から始まるんですよ。そんなの誰だって嬉しいじゃないですか。
――あの梶浦さんにですからね(笑)。
ASCA そうなんですよ。やっぱり色んな方のボーカルディレクションをされてきて、こうやってこの方はいい歌を録り続けてらっしゃるんだなと、少しだけですけど見させていただいたような気持ちになりました。
――梶浦さんはお世辞をいうタイプの方ではないと思うので、それは本心で言ってるんだと思います。
ASCA しかもほめ方も詩的というか、「ASCAさんの声の成分って、ハスキーで繊細なんだけどその中に芯があって、芯の横に光の粒がキラキラしているような声ですよね」っておっしゃってくださって、「ええー!」って。人って具体的、かつ何かに例えられてほめられると嬉しいんだなって、勉強になりました。
――客観的にわかりますよね。先ほどの「ミュージカルのように」というお話も、聴いたときにストーリーづいてるようなイメージが浮かんだので、なるほどなって思いました。
ASCA 歌のディレクションなんですけど、セリフのディレクションみたいだったんですよ。例えば、“優しい”という歌詞があったら、言葉をどう表現して“優しさ”を出すのか、技術的なディレクションよりも梶浦さんが歌詞に込めた想いのお話をしていただいて、「ここはこういう気持ちがあるので、もうちょっと明るく歌いましょう」とか、たくさんヒントをいただいたので、本当に楽しく歌えました。しかも例えが本当にわかりやすいので、すぐ理解できましたね。学生のとき梶浦さんが先生だったらよかったなって。本当に尊敬しております。
――そういう感情の色付け方で、印象に残ってることはありますか?
ASCA 色々あるんですけど、この楽曲のテーマが梶浦さん曰く“終わりある場所で終わらないものを僕ら夢に見ていいんだ”という歌詞に集約されているそうなんです。後ろの音がゆったりするので、歌もゆったりしがちなんですけど、「ここははっきり対になっている言葉だから、それぞれしっかり歌ってあげてね」とおっしゃていましたね。あ、ここにすごくこだわりを持って作られているんだなと思って、私もすごく好きなフレーズです。
――“終わりある場所で終わらないものを僕ら夢に見ていいんだ”。すごい言葉ですね。
ASCA 全肯定ですからね。嬉しいですよね。私もこんな歌詞を書きたい! メロもそこで上がるんですよ。“いいんだ~♪”って、肯定の言葉で上がっていくんです。歌詞とメロが連動していて、歌ってる私自身もすごく励まされながら歌っていました。
――Dメロの“迷子のように”のところから場面の変化があって、そういう表現の変化がすごい印象に残ってます。
ASCA はい、私も残ってます。「雲雀」の歌詞で“懐かしく”というワードが入ってるんですけど、ここでも「雲雀」と同じ歌詞が入ってるんですよ。そこはピュアに歌いました。
――やっぱりASCAさんのボーカリストとしての進化がこの曲から伝わってくるなと思いました。
ASCA ありがとうございます。一音一音、全ての歌詞が、歌詞カードを見ずとも聴こえてきて、言葉がすごくクリアに聴こえてきて、自分で感動してしまいました。梶浦さんの力をお借りして作ることができたなとすごく感激でしたね。
――MVも公開されていますが、バンドを背にしたASCAさんの身のこなしのかっこよさが伝わりました。横たわっていたシーンもあって、めちゃめちゃかっこよかったです。
ASCA 寝そべって上から撮るんですけど、チームの皆さんにベスポジを探っていただきました。実は倉庫っぽいスタジオだったんですが、寝ていてすごく冷たかったです。だけど、撮影終了時間も迫っていて、1回か2回で撮り終えなきゃいけなかったんですよ。だから、これは「1回で決めてやるぞ」の顔なんです(笑)。
――ばっちり決まってたじゃないですか(笑)。
ASCA はい、頑張ってましたね。ヘアメイクさんもスタイリストさんも完璧なお仕事をされてました。弦もバイオリン、チェロの女性の方二人が入ってくださって、あのお二人の輝きもすごかったですね。
――ASCAさんの曲といえば弦が印象的に使われるので、そういう意味でも集大成感がありますね。
ASCA 原点回帰した感じですね。楽曲はもちろん新境地なんですけど、やってきたことの積み重ねが出てるなと思ったので、ほっとしました。
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