近藤玲奈が、昨年12月1日にリリースしたコンセプトアルバム『11次元のLena』を引っさげてのライブ『近藤玲奈2nd LIVE~11次元のLena~』を、1月29日(土)渋谷duo MUSIC EXCHANGEで開催した。ライブのタイトル通り、『11次元のLena』の世界を表現するものとなったのだが、昼・夜公演の模様をレポートする。
“暴力的”というキーワードからスタートし、そこから世界観を膨らませ完成させていったコンセプトアルバム『11次元のLena』。中学生の〈僕〉と〈玲奈〉、そして11次元にいる玲奈のもうひとりの自分〈Lena〉の物語が楽曲として描かれていくのが特徴的で、曲ごとに主人公が変わったり、ブックレットに物語を補完するショートストーリーが掲載されていたりする。また、それ以外にも明かされていない物語や設定があるということは数々のインタビューでも触れられていた。
そんな『11次元のLena』の世界観をライブでどう表現していくのかというのが一つの見どころではあったが、アルバムの楽曲をすべてやるというだけでなく、曲の前後にBGM付きの朗読を挟み、さらに物語に添った新曲を2曲も披露するなど、観客が『11次元のLena』の世界を、より解像度高く感じられるような仕掛けが施されていた。
作品の世界へ引き込むトラックが鳴り響くなか、黒いセーラー服で登場した近藤玲奈。オープニングの「Overture」……いわゆる序曲は、歌ではなくサウンドとモノローグ(朗読)となる。そこで〈僕〉が怒りにも近い感情を吐き出したあと、〈僕〉視点の楽曲「僕だけが消える世界」へと繋がっていく。近藤は、感情を爆発させながらも不安定な〈僕〉を表現していったかと思えば、続く「Interlude1」では、〈玲奈〉になり、混沌としたBGMのなかで彼女の心境を語っていくーー。そこで、周りに合わせていた自分の中に“黒い感情”が広がっていく〈玲奈〉の心の葛藤が手に取るように分かった。その後、鋭い目つきで〈玲奈〉視点の「Erase Me」を歌っていくのだが、これも歌詞にある心情をそのまま声にしていて、〈玲奈〉の葛藤やいらだちや苦悩がごっちゃになっている様子が伝わってきた。
「Interlude2」は“黒い感情”の正体でもある、彼女の中のもうひとりの〈Lena〉と決着を付けに屋上へ行くというストーリー。トラックには鼓動や廊下を駆ける音、ドアが開く音などのSEもあって、どんどん物語に引き込まれていく。そして〈僕〉と〈玲奈〉が出会う、作品で唯一と言ってもいい明るさを感じる楽曲「放課後のデカダンス」へ……。同じ想いを抱く2人が〈「ねえ死にたくなったらまたここで会おうよ」〉と約束をするのが何とも儚く切ない。このシーンはこのあとの「Interlude3」でより詳しく描写される。〈僕〉視点でのモノローグになるのだが、これはアルバムのブックレットに掲載されたショートストーリーのままであった。2人の距離が縮まり、少しの希望が感じられた瞬間から、突如〈僕〉の後悔へと変わっていく話なのだが、なぜそうなったのかは、アルバムでは詳しく描かれていない。
それがこのライブでは新曲「逆さまの世界」として表現された。おそらくこのセットリストの中でも一番辛い状況が描かれているのだが、時折美しさをも感じる彼女の歌声が印象的だった。そしてそのまま「僕が愛される日は」へ。この曲は近藤玲奈自身が作詞した曲で、ここで〈玲奈〉と会えなくなった〈僕〉の絶望を歌い、さらに新曲「Lena」へと続いていく……。アルバムにはない〈Lena〉視点の曲で、オルタナティヴなサウンドに乗せた、どこか浮遊感のあるボーカルは、これまでの曲とまったく違うものだった。
そして物語を締めくくる「ライカ」へ。アンビエントミュージックのような美しさを持ったサウンドに包まれながら、〈玲奈〉を失った〈僕〉の心境を歌っていくのだが、音源よりもさらに悲痛に、そして声を震わせながら最後のフレーズ〈君には笑って 笑っていてほしいんだ いてほしいんだ〉という言葉を残し、そのままステージを去っていく……。映画を1本見たかのような大きな余韻を残して終わった本編。よりはっきりと、そして深く『11次元のLena』の物語を知ることができたのと同時に、その世界に入り込んでパフォーマンスをする近藤玲奈の表現者としての凄みや魅力を感じるライブだったように思う。
アンコールでは、一転してデビューシングルのピンクのワンピースを着て登場した近藤玲奈。デビューシングルのカップリング曲「Listen~真夜中の虹」を披露し、最後は力強いロングトーンを響かせる。そしてこの日最初のMCへ。
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