アニソンシンガー・亜咲花、2022年第1弾シングル「Ready Set Go!」が1月26日にリリース。TVアニメ『賢者の弟子を名乗る賢者(以下、賢でし)』のOPテーマである表題曲は、光の元へと駆け出していくような疾走感のある明るくポジティブなナンバーで、亜咲花自身が作詞も担当。カップリング2曲も同じく作詞を手がけている。そのリリースにあたって行なった今回のインタビューのなかで、次第に浮き彫りになった亜咲花のデビュー5周年を迎えたからこその変化と成長とは……?
――2022年は、1月10日の有観客でのワンマンライブから幕を開けました。
亜咲花 ライブでもお話ししたんですけど、ライブを通じて皆さんに直接歌を届けるという機会が当たり前じゃなくなった今、これまで以上にライブができることの幸せをステージに立つたびに噛み締めています。なので、常に全力投球だったものが、さらにその上を行くといいますか。自分の上限を超えていくという、自分の歌に対する価値観を良い意味で変えさせてもらった瞬間になりました。
――ここ最近だと、コロナ禍のために無観客になってしまったライブに加え、亜咲花さんは喉の手術もありましたからね。
亜咲花 はい。声帯ポリープを患ったときには「もう昔のように、伸びやかに歌えないのかもしれない」という不安や絶望を感じましたが、この2年間色々あったなかで、自分自身も諦めなかったし「亜咲花ならきっと大丈夫」ってスタッフや家族、応援してくれた皆さん、みんなが誰かを信じていたからきっとあのライブができたし、アーティストデビュー5周年という節目を迎えることができたんだなぁ……とステージに立って思いました。ただ、ライブ中のMCではこんなきれいな言葉はパッと出てこなかったです(笑)。
――ステージ上では(笑)。
亜咲花 冷静になった今なら分析できるけど、お客さんがたくさんいて素敵なペンライトに囲まれて、しかもたくさん歌ってアドレナリンが出ているなかだったので(笑)。なのでライブに参加された方はぜひ補足するような形で、このインタビューをたっぷり読んでほしいです!
――そのライブとともに2022年の幕開けを飾るのが、ニューシングル「Ready Set Go!」です。
亜咲花 表題曲がオープニングになっている『賢でし』を読んで今回私が感じたのが、明るさや元気さと、「もしかしたら自分も、パッとこういう世界に入る日が来るかも!」というワクワクドキドキでした。なので、「日常の中にも、もしかしたらチャンスや大きなものが眠っているかもよ?」という作品から受けたインスピレーションを、この作品を知らない人にも届けられるように、作品自体の良さも詰め込みながらバランスを取って歌詞を書いていきました。あと、今回はサウンドもこだわっていまして。
――特に、どういった部分を?
亜咲花 ただ明るいだけじゃなくて、思わず走り出したくなるような疾走感のある曲にしたかったんです。なのでBPMも上げてもらいまして。重くなりすぎず、軽快で爽快感のあるバンドサウンドを狙って曲のオーダーをさせていただきました。
――まさに、ジャケット画像そのものというか……。
亜咲花 そんな感じです!みんなで一緒に歩んで走って、希望に向かっていくような……。
――その爽やかさや青空が似合うイメージは、僕も最初に感じたものでした。
亜咲花 私も最初に曲を聴いた時点ですぐ、「これは、外でMV撮るだろうな」っていう映像がパッと浮かんだんです!なので皆さんとMVのお話をするときに「絶対野外がいいです」って言ったんですよ。これまでは自分からあまりMVのロケーションについて強く言うことはなかったんですけど、今回そこだけは譲れなくて。しかも「どこを見てもずっと自然が広がるような壮大な高原で撮りたいです!」という細かいオーダーまでさせていただいたんです。青空もあって自然にも囲まれて……という自分の理想を超えるような映像にしていただきました。
――MVやサウンド面に加えて、歌詞や歌い方の面でもかなりこだわられたのでは?
亜咲花 そうですね。色々あるんですけど……今回の歌詞では、作品とのリンクをいつも以上にこだわりました。例えば“止まってた針動き出す”というフレーズは、主人公の(咲森)鑑がゲームの中で少女の姿になって目を覚まし、ミラとしての人生の針が動き出して物語が始まる……というところになぞらえたり。あと“Do you know why you are here?”というフレーズでは、「どうしてあなたがここにいるかわかる?」ってミラに問いかけているんですよ。
――俯瞰した目線から。
亜咲花 はい。そこには「あなたが仲間と一緒になって戦って、この世界を変えていくんじゃないの?」っていう私からのメッセージも込められていたりしていて。ただこれを日本語にすると直接的すぎてしまうので、聴く方が柔らかく受け取れるように、英語というフィルターを通してあえてぼかしてみたんです。あと「ポジティブに受け止めちゃえばピンチもチャンスに変わるよ」みたいな、私が最近感じていた価値観や性格の芯となる部分も、包み隠さず取り入れていったりしています。
――そういう意味でも、今まで以上に亜咲花さんが歌う意義のある曲というか。
亜咲花 そうなっていたらいいなぁ……。歌う意義といえば、この間のライブでこの曲を初披露させてもらったときに、また楽曲が生まれ変わったように感じたんですよね。
――どの部分で、特に強くそう感じましたか?
亜咲花 間奏部分のみんなでコーラスを歌う部分ですね。元々は歌詞を乗せるためのメロディが入っていたんですけど、一緒に走るイメージがある曲だから、みんなで1つになれるようなフレーズも欲しくて、みんなとユニゾンで歌えるように歌詞をあえてつけなかったんです。実際ライブでもその部分で、声は出せないライブだったのに、手を挙げてくれたみんなが一緒に心で叫んでくれている声が聴こえてきたんですよ!
――となると、声出しOKのライブになったとき……。
亜咲花 一番化ける曲になりそうですよね!今までだったら普通に言葉をつけていたと思うんですけど、歌詞を書かせていただく機会が増えたなかで、「直接的な言葉じゃなくても、歌ってかっこよく聴こえるんだな」と感じていて。それが味になるというのを勉強して取り入れた結果、ライブでそういう形を感じられたのも嬉しかったですね。
――そうやってこだわられた部分が多かったぶん、レコーディングでは考えることも多かったのでは?
亜咲花 そうですね。今回は頭からお尻までずっと元気な曲だから、最初からずっと100%の力で歌うと、2番辺りから聴いてて疲れちゃうとも思いましたし(笑)。
――逆に最初は、そう歌われていたんですか?
亜咲花 はい。歌うのが楽しくて(笑)。でも1番を録り終わった時点で、歌う側も聴く側も結構お腹いっぱいになった感じがしたんです。それで、歌詞的にも“マンネリ化した Boring day”や“淡々と続くGray sky”と一歩引いてもいいようなフレーズだったので、序盤は一旦クールダウンさせることにして。“止まってた針 動き出す”というところから徐々にアクセルを踏んでいくようなイメージで歌ったら、すごくバランスの取れた楽曲に仕上がりました。
――全部全力で行くと、サビが映えないかもしれないですしね。
亜咲花 そうなんです。歌うことが好きなのでどうしても“楽しさ”が滲み出すぎちゃうんですけど(笑)、今回は「自分はどう見られているのか?」と客観的に見るために第三者の意見も取り入れてみたんです。最近はマイクも色々提案していただいてこだわったりもしているので、5周年を迎えたからこその引き出しというか、徐々にやれることや取れる選択肢が増えてきたんだな……って今ちょっと思いました(笑)。
――そして序盤でも話題に出たMVには、草原に加えて図書館のシーンもありました。
亜咲花 そこは衣装も含めて壮大な草原と対比できるように、監督や撮影チームの皆さんが一丸となって考えてくださったところなんですよ。MV全体としては、クリスタルを探している学者が図書館で地図を見つけて、そこから冒険が始まる……というストーリーがあるんです。だから設定的に、あれは学者ということになっているんですよ。そのほかにも賢者の冒険物語であるアニメ本編と要所要所でリンクしているので……自分でも観ていて「良いなぁ」って思います(笑)。
――撮影前からアイデアを積極的に出されたぶん、今まで以上に全体の完成図が頭に浮かびながらの撮影だったのでは?
亜咲花 そうですね。私の中にもスタッフの皆さんの中にも「こういう映像を撮るんだ」という明確なビジョンがあったので、迷うことはなくて。それに向かってみんなで決められた道や手順を踏んで一緒に撮っていくという、すごく楽しい撮影でした。
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