INTERVIEW
2022.01.26
2022年の、そしてこれからのアニソンにおいて最重要キーパーソンの1人であることは間違いないTRUE。アニメ『リアデイルの大地にて』のOPテーマ「Happy encount」などが収録された今作は、アルバム『コトバアソビ』を経て辿り着いた境地を惜しみなく詰め込んだ1枚でもある。彼女の言葉からは、TRUEとしての活動7年目にして成長と躍進が止まらない理由と意味を確信させる。
――まずは「Happy encount」がどのようにして生まれたのか、経緯を教えていただけますか?
TRUE 「Happy encount」は、『リアデイルの大地にて』のOPテーマというお話をいただいてから制作がスタートしたんですが、コロナ禍になって1年半以上経っていたこともあって、すごく明るくてハッピーな曲をみんなにお届けしたいという思いがありました。だから作品側とも、TRUE史上でもっとも楽しくポップな楽曲を目指そう、というお話をさせていただきながら、長く愛されている作品なのでその世界観に寄り添えるように、作品に出てくるような酒場感というか、みんながワーッと盛り上がっているような雰囲気の楽曲が良いのではないかと制作を始めました。そのなかで、一番イメージにふさわしい曲を選び、それをアニメサイドに確認していただく、という感じで進んでいきました、
――成本智美(SUPA LOVE)さんの曲が選ばれた、その決め手となったポイントは?
TRUE 決め手はやっぱり多幸感ですね。誰もが楽しく幸せになるメロディラインだったのと、私自身も3年ぶり4枚目のアルバムを経て最初のシングルということで、新たな世界を見てみたいという気持ちがありました。なので、今までのTRUEの音楽をなぞるのではなく、ケーナと同じように新しい世界へ飛び込める楽曲を探していたので、「まさに」という感じでした。
――楽曲のどこに一番多幸感を感じましたか?
TRUE 全体的にですね。最初にデモでいただいたときからメロはいじっていません。それをベースに、アレンジはアルバムのリード曲「MUSIC」の作・編曲をしていただいたトミタカズキさんにお願いしました。
――イントロのアイリッシュサウンドはトミタさんの賜物ですか?
TRUE フィドルを使った、楽しげなアイリッシュサウンドにしたい、というのはこちら側からの提案です。作品の世界観にも、今の私たちが求めている、幸せを味わいたい気持ちにもフィットすると思いました。私としてもここまで振り切ったアイリッシュサウンドは初めてだったので、チャレンジする機会をいただけてありがたいです。
――歌詞については、どこが出発点でしたか?
TRUE 私は今、TRUEとしてアーティストデビューして7年目になるんですけれども、コロナ禍という状況はありつつも、音楽と向き合えているという幸せを感じる機会がとても多くて。特に、5年目の年に1年間リリースせずにライブだけをやり続けたんですけど、そこから音楽に対する向きあい方がどんどんと変わっていきました。今感じている幸せな気持ちを皆と共有したいという思いがすごくあって。生きているといいことだけじゃないし、悩むことも立ち止まってしまうこともたくさんあるけど、そういうときにふと手を伸ばすような、ふと顔や心がゆるんでしまうような楽曲になったら、そうすれば、新たな自分として生きているケーナにもリンクするんじゃないか、という思いで歌詞を綴りました。
――ケーナとリンクすると感じた部分というのは?
TRUE ケーナって現実世界ではとても不運な結末を迎えましたが、それでも新しい世界でより自分らしく生きていこうとします。私も7年前からTRUEとしてアニソンに関わる活動を始めて、新たな世界でまた命をもらったと思っているんです。なので、新しい場所で思いっきり好きなことをして、思いっきり人を愛して愛されて生きていこうという、そんなすごく清々しくて迷いがないケーナに対して、私もそうありたいというシンパシーを感じています。そういった、自分に重なる部分を素直に表現していけば『リアデイルの大地にて』のオープニングにふさわしい楽曲が完成するんじゃないかと思っています。
――実際の作詞はスムーズでしたか?
TRUE そうですね。ほぼ第1稿のまま、最後まで駆け抜けました。「Happy encount」=幸せとの遭遇というテーマも早い段階から自分の中にあったので。実はMVもリンクした映像になっているんですけど、それは、幸せを1つ1つ誰かに渡していたら巡り巡って自分に返ってくる、という内容なんです。そのとき、制作しながら「まさに私とファンの方みたいだなぁ」と感じました。誰かの力になれるように綴ってきた言葉が巡り巡って、今では私自身が音楽活動を通してみんなから励まされているんですね。(『響け!ユーフォニアム』OPテーマの)「DREAM SOLISTER」や(『転生したらスライムだった件』EDテーマの)「Another colony」などは当時の私が曲に込めた想いよりも聴いてくださる方が何十倍、何百倍の想いで曲を育ててくれました。そうやって誰かのためにした何かが自分に返ってくるということはコロナ禍を通してすごく感じることでもありました。『リアデイルの大地にて』はほんわか日常の、幸せを毎週わけてもらえるような作品なので、皆には私の楽曲という作品を通してたくさんの幸せに遭遇してほしいと思っています。
――ただ、不幸な状況から立ち直り、というドラマを描くのではなく、全編すごく前向きな歌詞に仕立てています。
TRUE そう感じていただけたのなら、それは彼女(=ケーナ)の力だと思います。私は決してすごくポジティブ人間ではなくて、ネガティブの上にある上澄みのポジティブで一所懸命生きている人なので(笑)。でもケーナは、不幸な生活からもう1回命をもらったときに、すんなりと受け入れるんですよね。そういう強さって彼女の魅力だと思うし、なんでも楽しんでみようって姿は私が憧れるところでもあります。あと、メロディラインの中に起伏のある面白い楽曲なので、重くならないように、軽く聴いてもらえるようにカタカナの言葉を意識して歌詞の全体を構成しました。そこは、『コトバアソビ』というアルバムで得たものが大きく影響していると思います。10の想いを語るのに全部を語ろうとするのではなく、言葉で遊びながら伝えることで伝わる想いもあると気づきました。なので、すべてを言葉で伝えるのではなく、音感だったり音のはまりだったり羅列だったりみたいなものからも、幸せだったり多幸感は伝わると思って書いています。
――お気に入りの箇所はありますか?
TRUE どこかな?サビの“直感だ JoyでPopなStory 謳歌しよう”は、デモをもらって鼻歌で歌っているときから頭にありました。私は、「書くぞ」と思って書くのではなく、常に楽曲を流しながら、そのとき出てきた鼻歌のフレーズを大事にしているんです。この曲に関しても、かしこまって書いたというよりは、なんとなく生活の中で生まれていった、っていう感じですね。
――冒頭のラララはデモ段階から入っていたものですか? それともアレンジからですか?
TRUE それもたしか、最初のオーダーでお願いしていた気がします。コロナ禍ということもあって、みんなで歌うというのがどこまで可能なのかはわからないけど、そういう世の中が再び来たときにみんなで一緒に唱えたり、(手を左右に振る)ワイパーで同じ動作をしたりできるように意識して入れています。多分、ライブでかなり育っていく曲になるんじゃないかな。本編の最後に皆で大団円、ってなりたいですね。
――“(あたりまえの 日常に)”のように、歌詞では()内で書かれているような、掛け合い部分もありますし。
TRUE そうですね。これも元々からの構成で、「またいつかみんなで歌えたら」という気持ちでした。
――歌に関してはどういった意識でレコーディングされましたか?
TRUE 今回は、歌い上げ過ぎないをテーマに作っていきました。歌詞と同様に、音の軽さやノリを大事にして、歌の中で思いっきり遊びましょうというテーマで歌いました。ただ、レコーディングの際、本番の歌入れを行う前に様々なアプローチの歌い方を試してしていて、最終的に音源の歌い方に定まるまでには時間がかかりました。でも、すごくいい着地ができたんじゃないかと思っています。
――サビで一転して、力強い低音を効かせていますね。ここは最初からのイメージでしたか?
TRUE 最初からある程度イメージしていましたけど、今回に関しては本当にレコーディングを通してどんどん変化していった感じですね。それは(シングルに収録した)3曲ともそうかもしれないです。
――たしかに今回のシングルは3曲とも異なる歌い方、豊富な表情を見せています。それはさきほど仰った、2019年から2020年にかけて磨かれ、得られた表現力が元になっているのでしょうか? その1年間でどのような気持ちの変化があったと感じていますか?
TRUE 当時の私ってすごく音楽をすることに迷っていて、自分が良いと思った曲を誰かが同じように思うとは限らないし、私の歌を聴いて嫌な気持ちになったり悲しい気持ちになったりする人もいるのかもしれない、ってすごく悩んでしまっていました。ステージに上がることがすごく怖かった瞬間もたくさんあって……。でも。そんなときでもステージに上がり続けることで、私が歌う意味をお客様からいただいたんです。私の歌で少しでも気持ちが変化したり支えられたりする人がいる、ということを教えてもらった1年間でした。そこを経由したことですごく表現者としての自分に自信がついたし、1人の女性としこの場所に立っていてもいいんだ、と思えることがすごく力になったんです。そこからは歌うことにあまり迷いがなくなり、自分が歌うことの役割、というと少し大げさなんですけども、そういうものがより明確に見えてきました。それで、どんどん歌うことが、あ、幸せだなって思えるように変化していきました。
――実際、今までも表現力はTRUEさんの武器だと思ってはいましたが、今回のシングルではさらに自信に満ち溢れているようにも感じました。
TRUE 今は、心をそのまま歌に投影することに怖さがなくなりました。アーティストさんってどうしても「上手く歌いたい」「アーティストとしてのいい側面を見せたい」と思ってしまうじゃないですか?私もずっとそうでした。だからこそ、「上手いでしょう?上手いでしょう?」って気持ちでステージに上がってしまうことも、過去には多々あったと思います。でも今は、それよりも伝えないといけないことがあるとわかっているので、上手く歌うことよりも、心で楽しみながら歌う方が大事なのかなと思っています。なので、今回は3曲通して全く違う歌い方、全く違う心の投影の仕方をしています。「Happy encount」や「透過」の歌い方や声質は前作のアルバムで学んだことで。さまざまな表現をすることで、アーティストとして自信がついたので、楽しみながら歌い方をセレクトできるようになりました。
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