2022年もKOTOKOは“最速”を更新し続けるーー。2020年以降のシーンにおいて、ライブ活動を早くに再開し、2021年もOuterの活動を含めて積極的なライブ活動を展開してきたKOTOKO。そんな彼女が2022年を迎えると同時にリリースするのが、TVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』EDテーマ「Fastest!」だ。この曲で彼女が投げかけたメッセージ、そしてその先に見据える世界とは?
――まずKOTOKOさんの2021年のお話から。昨年は”リスアニ!LIVE”の出演にはじまり、「KOTOKO LIVE TOUR 2021 “The Fable”」のツアーに加えて、現在も開催中のアコースティックツアー「KOTOKO Acoustic Live Tour “心音2”」も含めて、ライブ色の強い1年でしたね。
KOTOKOたしかにライブの1年でしたね。去年はコロナがいつ明けるんだろうなって感じながら年が明けて“リスアニ!LIVE”さんから始まって、私のセットリストもわりと攻め攻めでしたね、もちろん今も感染予防対策はまだまだ引き続き必要だと思うんですけど、そのなかで我慢ばかりはよくないよなって。日本人は真面目なので、我慢しなさいって言われているなかで気づかないうちにその我慢が当たり前になってしまって、自分のストレスすら気づいていなくて、気づかないうちに元気がなくなったり、気持ちが病んでしまったりって人が多かったと思うんですよ。
――2020年からそうした情勢のなかでエンタメとどう付き合っていくか、というのはずっとテーマとしてありましたよね。
KOTOKOそれこそ2020年は我慢できていたけど、それが2年目に入って先の見えない状況になったときに、その不安感とか見えないストレスがすごく大きくなっていたのが2021年の始まりだったんじゃないかなと思うんですよね。そういう意味では“リスアニ!LIVE”さんでも少しはっちゃけたメニューにさせていただいたのはあります。普通だったら大盛り上がりしていただいて、コールもいっぱい入れていただくような感じの曲も多いんですけど、それをこういう時期にあえてやる、ということになったのも、私に対する与えられた使命なんじゃいかなというふうに思っていて。
――使命、ですか。
KOTOKOこのメニューをどういうふうに楽しんでもらおうかというのをまず考えて、見えないストレスを抱えた人たちの心の安らぎやほんの少しの拠り所、希望になれたらいいんじゃないかなっていう思いもあって決行させていただいたんですよね。2020年の『The Bible』ツアーをしたときにもお話したんですけど、音楽業界だけじゃなくてさまざまな仕事をしてる方々が必死にならないと生きていけないような光景を目の当たりにしていて。あの頃はどちらかというと一緒に音楽を作っている仲間たちや地方のライブハウスさんも助けつつ、お互い手を取り合って生きていきたいなって思いも強くてやってたんです。それが2021年に入って、発信する側としてある程度やり方が見えてきたなかで、お客さんの気持ちが離れていってるなっていうのを感じていたんですよね。
――ああ、なるほど。
KOTOKO我慢をしすぎてというか、我慢が日常になってしまったので、なくてもいいもの、なくても我慢できるものって増えていったと思うんですよ。でもそれを放っておくと本当にそうなってしまう。そうならないために、気持ちを健康に保つという面でも娯楽、エンタメって絶対に必要なので、そういう心の灯火を消さないために、私みたいなものがやり続けることに意義があるなと思っていて。その一環で『The Fable』ツアーを回らせていただいていたんですよね。なのでそういう意味では自分が思ったことはできたなって思っていました。
――たしかに2020年の頃からKOTOKOさんはツアーをすべきだと発信、実践してきました。だからこそ今この流れのなかで間を置かずに歌い続けることが大事なんだと。
KOTOKOそうですね。でも私は『The Bible』ツアーからやらせていただいていたことで、ほかのアーティストさんよりもノウハウという意味では持っていたし、チームが感染対策をしながらもきちんとできるんだよっていう前例をちゃんと一緒に作ってくれてたので、そういう意味では2021年のツアーは、胸を張ってやることができましたね。
――そうした発信し続けることの大事さを訴えるなかで、今年もツアーと並行するなかでニューシングルをリリースができる意味は大きいのかなと。
KOTOKOほんとにタイミングが素晴らしいですね。ありがたいことに。しかも発売日が私の誕生日だという(笑)。
――またその新作が『新幹線変形ロボ シンカリオン』のEDテーマというあらたな出会いでもあります。『シンカリオン』というビッグタイトルのコラボもまた新鮮ですよね。
KOTOKOそうなんですよ。(以前OPテーマを歌った)『ハヤテのごとく!』が日曜の午前10時から放送されて、そのときも視聴者層が幅広くなってうれしかったんですけど、『ハヤテのごとく!』よりさらに小さいお子さんたちも観てるような作品なので、自分も17~8年選手になるタイミングでこういった作品に関わらせていただいくのはすごくありがたいですよね。
――そんな『シンカリオン』への印象はいかがでしたか?
KOTOKO作品のシナリオも途中まで読ませていただいたんですけど、アニメとしてすごくいい作品なんですよね。もちろんロボットが出てくるちびっ子が好きな要素が中心なんですけど、登場人物が訪れるその街とかもすごくちゃんと紹介していて、地方の特性、特産物とか観光の名所だったりとかおいしいものとかが必ず出てくるんですよね。それこそ地理の勉強みたいな要素もあって、私はありがたいことにライブツアーで全国回らせていただくので地方の良さもわかっているんですけど(笑)。それをアニメを通して自然と覚えてもらえるような素敵なアニメだなって。
――ちょうどツアーを回っているご自身ともシンクロするというか。
KOTOKOそうそう、「ちょうどこの間ここ行ったな」とか結構あったりして(笑)。
――そうした出会いのなかで作られた「Fastest!」ですが、作編曲はKOTOKOさんの作品でもお馴染みの齋藤真也さんになりますね。
KOTOKO一応「作家は誰がいいですか?」って聞いていただけて、シャイニー(齋藤)さんがいいということで指名させていただきました。
――KOTOKOさんご指名だったわけですね。
KOTOKOそれでお願いしたんですけど、最初に書いてきてくださったのがカップリングの「♡sweet×spicy♠Valentine」のほうだったんですよ。
――あっ、そうだったんですか?
KOTOKOあれを最初に真也さんが書いてきてくださったんですけど、イメージがちょっと違ったので、新しく作り直してくださったものが今の「Fastest!」になりました。でも最初に書いてくださったのを没にするのももったいないぐらいすごくよかったので、じゃあカップリングにしようよということになって。
――じゃあ元々の『シンカリオン』のEDテーマに込めたい要素として「♡sweet×spicy♠Valentine」のようなものがあったわけですね。
KOTOKO曲を発注する段階で、西P(西村潤。NBCユニバーサル プロデューサー)さんが、「今回はKOTOKOちゃんの得意な、男の子っぽい感じで歌ってほしいんだよね」って話をしていたんです。で、元々Folderという三浦大知くんが子供の頃に活動していたグループがあって、私はFolderの曲をオーディションで歌ってI’veに受かってるんですよ。今回の作品は子供も観られるというのもあって、私がFolderから2曲選んで「こんな感じで、真也さんだったらこれプラス少年アニメっぽい感じで書いてもらえれば、きっとバッチリになりそうですよね!」ってお願いしたら、カップリングのダンサブルな感じになったんですね。
――そこから現在の「Fastest!」のようなロッキンな楽曲を作り直していったわけですね。でもたしかに2曲とも、少年っぽさが感じられますね。
KOTOKOそうですね。「Fastest!」は主人公のシンくんになったつもりで歌ってたので、完全に気持ちは男の子でした。最初はもうちょっとかわいらしく、年齢低めで歌っていたんですよ。でも西村さんが言うには、「もっとKOTOKOでいいよ」って。今よりもっとかわいらしく、低年齢の少年っぽく歌ってたんですけど、いつも通りでいいと言われて、歌い直したバージョンが今のものなんです。
――たしかにアグレッシブなサウンドですけど、ボーカルはハードに攻めるというよりかは軽快な印象が強くて。
KOTOKOそうですね。例えば「LIGHT MY FIRE」や「TOUGH INTENSION」はもっと雄々しく作り込んで歌っているんですけど、「Fastest!」は等身大な感じで歌っているんですよね。
――そうした等身大感は、歌詞のワードのシンプルさにも表れているのかなと。
KOTOKO私の曲は、なかにはわりと捻っていてよく読まないとわからなかったり、行間を作る部分があったりするんですけど、今回は受け取られる方が低年齢層ということで、丁寧でわかりやすい言葉で作ろうというのは心掛けましたね。
――そこに『シンカリオン』らしく“出発進行!!”や“レール”といったワードが入っていて、非常にわかりやすいというか。
KOTOKOそうですね。今回は本当にシンプルにわかりやすくいこうというのが目標だったので。
――それが総じて少年っぽさという全体のコンセプトに繋がってくるのかなと。
KOTOKOあとひとつ裏話をすると、レコーディングの3日くらい前に鼻風邪をひいてしまったんですよ。だからなおさら少年ぽい感じもするのかな。ちょっと鼻が詰まってるからいつものように細かいフレージングだったり、がなったりとかしゃくったりとかがしづらい状態で、とにかく真っ直ぐ歌うしかできないような状況も手伝ってて、力入れないでおこうって感じでした。
――災い転じて、ではないですが結果少年っぽさに繋がっていったと(笑)。
KOTOKOそうなんです、結果的にはよかった気がします(笑)。なのでライブではもうちょっと抜けた声になるのかな? このときだけにパッケージされた歌って感じで、それはそれで貴重かなと思うんですけどね。
――新しい出会いや試みも含めた「Fastest!」とともに、2022年を駆け抜けていくことになりそうですね。
KOTOKO「Fastest!」って“最速”って意味なんですけど、今年はこれを掲げて何かと最速を狙っていこうと思います。一番手は私がけん引するぞと。
――そうしたテーマというのもイメージされながら作られていた?
KOTOKOそうですね。もちろん新幹線をイメージした言葉として「Fastest!」を選んだんですけど、今の自分にぴったりだなと思いました。このワードが自分を表してるなっていうのがあったので。
――それこそ一昨年のツアーからのご自身のスタンスもそうですが、今年もつねに先陣を切って背中を見せ続けると。
KOTOKOそうですね。2番手になるのが嫌なんです。誰もやってないことをいちばん最初にやりたくて。それを真似されるのはいいんですけど、真似する側にはなりたくない。2020年のコロナ禍で「『The Bible』ツアーやる?」って相談されたときに、みんなやってないからこそ私はやりたいですって始めたことなんですけど、そういう立場でいたいというのは常にあります。
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