REPORT
2022.01.20
水樹奈々のワンマンライブ“NANA MIZUKI LIVE RUNNER 2020 → 2022”が、1月3日・4日に、さいたまスーパーアリーナで開催された。彼女が有観客ライブを行うのは実に841日ぶりのこと。本来は2020年に歌手デビュー20周年を記念して行う予定だったものの、コロナ禍の影響で中止になったツアー“NANA MIZUKI LIVE RUNNER 2020”のタイトルやコンセプトを引き継ぎつつ、水樹が今この瞬間、ファンに伝えたい想いを表現したライブとなった。その2日目、1月4日の公演のレポートをお届けする。
この日の会場となったさいたまスーパーアリーナは、フルオーケストラコンサートやファンクラブイベントを含め、水樹が何度となくライブを行ってきた、彼女とファンにとっては馴染みの深い場所。久々の再会にはうってつけのステージだ。やがて照明が暗転し、ついに開演へ。客席のペンライトが水樹のイメージカラーである青一色に染まるなか、まずはオープニングムービーの上映がスタート。ランニングウェア姿の水樹が走り始めると、彼女がこれまでライブを行ってきた会場が次々と表示され、20年の活動の軌跡を辿っていく。そして映像内のランナー水樹がグラウンドに到着したところで、実物の水樹にバトンタッチ。「Synchrogazer」のイントロに合わせてスポーティな衣装を着た彼女がステージ上段に颯爽と登場すると、「帰ってきたぜ、さいたま!行くぜー!」と宣言して、いきなりギア全開で絶唱を響き渡らせる。
最後はとびきりの笑顔で締め括ると、続いて13thアルバム『CANNONBALL RUNNING』より「DAYBREAKERS」を披露。苦難を乗り越えて新しい時代を切り拓くために立ち上がろうと呼びかけるメッセージは、コロナ禍の今、余計に刺さるものとなっており、水樹は圧巻のロングトーンで聴き手を鼓舞する。さらにここで彼女のライブには欠かせない鉄板曲「ETERNAL BLAZE」を早くも投入。イントロのピアノで察したファンはペンライトをオレンジ色に変えて臨戦態勢に。ステージから炎が吹きあがる演出も合わさって会場の熱気が急上昇するなか、声を出せないファンはここぞとばかりにジャンプで応えて、水樹のパフォーマンスと一体になる。やはり「ETERNAL BLAZE」を生で聴くと、改めて彼女とライブを通して触れ合える時間が戻ってきた実感が沸き上がってグッとくる。
MCでは先ほどまでの凛々しい姿から一転、エアギターならぬエアハグや投げキッスを連発して、久しぶりにファンと直接出会えた喜びを子供のように無邪気に表現する水樹。なんでも前日の公演では、1曲目の「Synchrogazer」で最初に声を発した途端に感極まってしまい、泣くのをこらえるため、歌声が震えてしまったという。それほどまでに彼女は、ファンと一緒にライブを楽しめる日を心待ちにしていたのだろう。「弾けていかないと水樹奈々のライブじゃないでしょう!」と頼もしい言葉で期待値をさらに引き上げ、『CANNONBALL RUNNING』より熱狂的なグルーヴが印象深いナンバー「glitch」を披露。今回のライブでは、最新アルバム『CANNONBALL RUNNING』とそれ以降に発表された楽曲を軸にセットリストが展開していく。
続く「METANOIA」では、前奏で水樹が「みんな全力でかかってこーい!」と檄を飛ばし、クラップを煽って場を十分に温めたうえでパフォーマンス。水樹のバックバンド・Cherry Boysによる演奏もとりわけ重厚で、レーザー光線が会場を飛び交うなか、彼女はステージを右に左にと走り回りながら力強い歌声を届ける。その後、水樹は一旦ステージをはけて、Cherry Boysのコーナーへ。ベースの坂本竜太(りゅーたん)がMCを務め、バイオリンの門脇大輔(カドディー)、パーカッション/ドラムスの福長雅夫(ちょーさん)、ギターの渡辺 格(イタルビッチ)、サックスの藤陵雅裕(ファイヤー)、キーボードの佐藤雄大(チャンプ)、ギターの北島健二(ケニー)、ギターの佐々木“コジロー”貴之(コジロー)、ドラムスの松永俊弥(まーちん)を順番に紹介していく。チャンプとコジローは今回が水樹の有観客ライブには初参戦だ(二人とも2020年のオンラインライブ“NANA ACOUSTIC ONLINE”には参加していた)。
りゅーたんが「俺たちと一緒に最後まで走り続けようぜ!」と呼びかけてチェリボコーナーを締め括ると、ボウリングシャツに水玉模様のスカートを合わせたレトロな衣装に着替えた水樹が、バックダンサーのteam YO-DAを引き連れて登場。オールディーズ風のロックンロール「Knock U down」でポップに盛り上げる。最後はスカートを華麗に翻しながら「バキューン!」と決めると、続いてはファンキーでラブリーな人気曲「Lovely Fruit」へ。水樹はプレートを持ったウェイトレス風のダンサー4人とともに花道を練り歩き、大きなリボンとポニーテールを揺らしながら愛らしいパフォーマンスで魅了する。
ダンサブルなサウンドに甘酸っぱい恋の気持ちを乗せた「Light Births Shadow」では、総勢8名のダンサーたちと動きを合わせながらロマンチックな歌声を届け、続くMCではライブ恒例の衣装披露タイムに。チェリボメンバーが「回ってー!」と会場のみんなの心の声を代弁し、水樹も「色々な角度からよく見てください!」とお気に入りの衣装をたっぷりと見せつける。この衣装のパートは「かわいい曲を歌うゾーン」とのことで、続いては水樹がTVアニメ『SHAMAN KING』で演じるキャラクター・玉村たまおのキャラソンをセルフカバーした「花、星、空 -reunion-」を可憐に歌い上げる。たまおの麻倉 葉に対する一途な想い、その溢れんばかりの愛を、彼女は改めて“水樹奈々”としての歌声で表現してみせた。
そしてブレイクビーツ風のリズムとサックスの響きに導かれて始まったのは「innocent starter」。TVアニメ『魔法少女リリカルなのは』のオープニングを飾った2004年発表のシングル表題曲にして、水樹の初期キャリアを代表する人気曲だ(2020年に開催された“S.C.NANA NET ファンクラブイベントVIII”内のファン投票でも、「ETERNAL BLAZE」「New Sensation」に次ぐ3位に選ばれた)。どこか哀感の漂う美しいメロディを、水樹はしっとりかつふくよかな歌声で紡ぎ、そこにイタルビッチのギターソロも合わさってエモーショナルな瞬間を作り上げる。
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