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INTERVIEW

2021.12.29

【インタビュー】胸いっぱいの冬をあなたに――。南條愛乃、“冬”がテーマの4thオリジナルフルアルバム『A Tiny Winter Story』リリース

【インタビュー】胸いっぱいの冬をあなたに――。南條愛乃、“冬”がテーマの4thオリジナルフルアルバム『A Tiny Winter Story』リリース

2021年12月22日にリリースされた南條愛乃の4thオリジナルフルアルバム『A Tiny Winter Story』。オリジナルフルアルバムとしては4年半ぶりのリリースで、“冬”がテーマの本作について、それぞれの制作過程をインタビューした。先日YouTubeで生配信を行った<リスアニ!Presents クロスフェード動画公開直前!「A Tiny Winter Story」楽曲お披露目会>での本人による楽曲解説と併せてぜひ本インタビューをチェックしてほしい。

リード曲「A Tiny Winter Story」は「白い季節の約束」のアンサーソング

――南條さんのアルバム作品って7月の誕生日前後に発売されることが多くて、12月のリリースはメジャーデビューミニアルバム『カタルモア』(2012年12月12日発売)以来ですね。

南條愛乃 そう、珍しいんですよ。春先にそのリリース時期を聞いたときは「ラッキー!ついに冬がきた!」と思いました。夏にアルバムを出せるのも嬉しいけど、曲に季節を反映するなら秋や冬もやってみたかったですし、次はいつ冬に出せるかわからないので、「1回冬をやっておこう!」みたいな。

――たしかに今まで冬の曲って少ないですよね。

南條 明確なのは今回の1曲目に入れている「白い季節の約束」だけなんですよね。

――今回、作家の皆さんにも「冬をテーマにお願いします」というオーダーをされたんですか?

南條 そうですね。齋藤真也先生にだけは「かっこいい曲ください!」っていうお願いをしたんですけど(笑)、歌詞にしろ曲にしろ、作家の皆さんが思う冬のイメージの曲を聴いてみたくて。結果、温かい冬もあれば寂しい冬、強めの冬もあって、聴き応えのある面白いアルバムになりました。プロデューサーさんは「11曲だと足りないんじゃないか」って最後まで心配していたんですけど、私からすると、「これ以上入っていたら多分胸焼けする」っていうギリギリのところまでいっていて。

――冬の胸焼け(笑)。

南條 はい。冬の胸焼けは結構辛いと思うので(笑)。これでもお腹いっぱいです。

――そんなお腹いっぱいになれる収録曲について順番に聞かせてください。まず1曲目、2017年リリースの「光のはじまり」カップリングである「白い季節の約束」はやはり最初からアルバムに入れる予定だったんでしょうか。

南條 実は、最初は入れない予定でした。

――なぜ入れることに?

南條 制作が始まってから「どうしよう、リード曲の歌詞が何も思い浮かばない……だって暑いもん!」みたいな時期があって(笑)。でも、冬の気持ちになるために「白い季節の約束」を聴いたらそのアンサーソングを書けそうな気がしてきて、リード曲を書き始めることができたんです。

――たしかに歌詞は対になっているところがありますね。

南條 「白い季節の約束」は女の子目線。隣を歩いている男の子を見ながら、「この時間がずっと続けばいいのにな」と未来を思う曲で、私からファンの方に対する気持ちと合わせて書いた曲です。「A Tiny Winter Story」は、そのとき隣を歩いていた男の子目線で書いてみて。別にそれがファンの方から私への気持ちっていうわけじゃないんですけど(笑)。だってそれだと圧じゃないですか。「好きでいるよ」っていう歌詞に対して「来年も私のこと好きだろ?そうだよな!なぁ!」みたいな感じになっちゃうのは違うので(笑)。物語として「白い季節の約束」もこのアルバムに入れたいなと思ったのが発端でした。そういう経緯があって「今からでも追加できますか?」とお願いして入れてもらいました。

――曲順にも何か意図が?

南條 わかりやすく隣り合わせにはしたくなかったんですよ。繰り返し再生するとこの2曲が隣り合うようにしたくて、最後が「A Tiny Winter Story」、1曲目が「白い季節の約束」という順番にしました。

――そうやって5周年のときに書かれた曲と今の曲が一緒に入っていたり、「A Tiny Winter Story」の歌詞に“白い季節の約束を 僕はずっと覚えてる”というワードが出てきたりするのがグッときました。

南條 「THE MEMORIES APARTMENT」なんかも過去の楽曲の歌詞やシチュエーションをちょっとずつ入れていたんですけど、今回はこの2曲どちらにも入っている“横顔”っていう言葉がポイントで。背中ではなく横顔っていうことは、隣を歩いているわけじゃないですか。私自身がファンの方と地続きのところで一緒の時間軸を生きる関係性でいられるといいな、という理想も含まれていて、そういった関係性を感じ取ってもらえると嬉しいです。

アニソン業界のボスみたいな方々に曲を作ってもらって……

――「白い季節の約束」の次は「Merry」で、続く「vignette」も割と「冬、楽しい!」系の楽曲ですが、このような楽しい曲を歌ってみていかがでしたか?

南條 楽しい曲だし、実際楽しいんですけど、歌っていてすごく辛かったです。「なんかわくわくしながら待ち合わせしてますけど……めっちゃ楽しそうじゃん、この人たち。はしゃぎやがって!」みたいな気持ちがどこかにあって(笑)。

――逆に言うと、それくらい楽しさが溢れた楽曲ということで。

南條 そうですね。ハッピーな曲です。冬と言ったら、やっぱりクリスマスを楽しみにされている方もいると思うんです。でもこのアルバムは1曲目が静かに始まっているので、この2~3曲目で「あ、冬のアルバムなんだ!楽しい!」という気持ちになってもらえたらと思っています。

――「vignette」は作詞が桑島由一さん、作・編曲が井内舞子さんとお馴染みの方々による制作です。

南條 『グリザイア』シリーズの曲を歌うなかで、桑島さんにはいつかノンタイアップのオリジナル曲もお願いしたいなと思っていたので、すごく楽しみにしていました。桑島さんには先に9曲目の「シュガーポット」を作詞していただいていたんですけど、「vignette」の曲が出来上がってから歌詞を誰にお願いしよう?っていう状態で止まっていたときに、これも桑島さんに書いてもらうことにして。で、悲しくない歌詞なら『グリザイア』シリーズとの差もついていいんじゃないかということで、大人っぽさとハッピー感のあるお洒落な曲になりました。

――そして4曲目、「物語よ始まれと願う空に」。

南條 実は特典CDのカバー曲候補に上松(範康)さんの曲が入っていたんです。それを聴いて改めて「なんてきれいなメロディを作るんだ」と思って、本編の曲を作ってもらえないかお伺いしたところ、なんとか調整していただけて。編曲のKeikoさんにも私からオファーさせていただきました。「いいですよ!」と快くお受けいただいて、超女神です!でも、この曲を4曲目に置くことで「楽しいだけのアルバムじゃないよ」みたいなことを少し匂わせたかったんですけど、作詞の畑 亜貴さん含めアニソン業界のボスみたいなお三方に曲を作ってもらって……私の出る幕なんてないんですよ。レコーディングのときも「本当に歌いたくない……歌詞見ながら聴いてたい……」と思っていました(笑)。

――5曲目の「ありったけの愛しさで」はいかがですか?

南條 初めて曲を聴いたときに「これはrinoさんに歌詞を書いてほしい」と顔が浮かんできました(笑)。2番のAメロの、“些細なケンカ そのたびに「怒ると敬語だね」って笑う君”ってすごくピンポイントじゃないですか。そういうちょっとリアルさを感じるようなところがグッときましたね。

――5~6曲目というのがキーになっているというか、キラキラした「ありったけの愛しさで」のあとに「全ては不確かな世界」というヘビーな曲が入ってくるこの流れ、好きな人多いと思います。

南條 ありがとうございます!1曲単位で聴くのと、この流れで聴くのとではまた印象が違って聞こえると思いますので、それも楽しんでほしいです。

――そのあとは「青星」「My Heart My Hope」と、齋藤真也さんの作・編曲が2曲続きます。

南條 シャイニー(齋藤)先生って、ソロのときはfripSideとの差別化を図るために「and I」みたいな優しい曲を作ってくださるんです。だから「ソロでもシャイニー先生のかっこいい曲を歌いたいです」とお願いしたらこの2曲が上がってきて。「好きなほうを使ってください」というお話で、大人たちには戦法だと言われてました(笑)。

――なるほど(笑)。

南條 ディレクターさんも「曲調は違うから2曲でもいいですよ」ということだったので、「じゃあどっちもにしましょう!」と。「青星」のほうは、「この強さとかっこよさは(川田)まみさんに歌詞を書いてほしい」って、これまた顔が浮かんできました(笑)。まみさんには「強くてかっこいい歌詞を書いてくださるんだろうな」っていう信頼がありますし、あとは青色のイメージがあって。なので今回の冬のアルバムでは「ぜひ!」という感じでしたね。

――それに対して「My Heart My Hope」では南條さんご自身が詞を手がけてられていますね。

南條 冬の次は春なので、冬っぽいワードだけではなく春を感じられるようなワードも最後のほうに入れました。この寒い凍えそうな季節が明ければ温かい季節がくるのと同じように、今置かれている環境がたとえ辛いものでも、ぬくもりのある環境に変わっていきますように、という歌詞になっています。

――そこからまた桑島さん作詞の「シュガーポット」にいきます。

南條 アレンジの方向性としては『グリザイア』の要素を出してくれたのかな、というふうに思っていて。作・編曲の藤間 仁さんは「藪の中のジンテーゼ」なども作ってくださっているので、絶対にガラッと雰囲気の違う曲も作れるじゃないですか。でも、このコンビっていうことでこういう音色でやってくださったのかな、と。桑島さんの歌詞はピンポイントでお洒落なんですよねぇ。

――たしかに、冬のいわゆる恋人感はあるんだけど、それだけじゃないような。

南條 そう。落ちサビのピンポイントさが好きで。“私の秘密は 世界中 君しか知らない 誰にも言わずに できるかな? 隠し事 下手な君だから”。このお互いのウィークポイントを交換しあった仲の2人が別れちゃうっていう。「なんでこんなピンポイントなことが書けるの?」と思いますし、本当に少女マンガを読んでいる気持ちになります。

次ページ:先輩・あさのますみの著書に感化されてできた「余韻」

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