INTERVIEW
2021.11.02
――カップリングの「Determination」はどういうところから生まれた曲ですか?
Hikaru// 「The Sacred Torch」が出来たときにグシミヤギ( ヒデユキ/「「The Sacred Torch」作曲、「Determination」作曲・編曲担当)君とカップリングはどういう楽曲にしようかと話したんですけど、今までにやったことのない楽曲にしようという話になりました。ちょうどグシミヤギ君はTVアニメ『進化の実~知らないうちに勝ち組人生~』の劇伴を担当していて、1曲が色々な場面展開で構成されているような曲や劇伴っぽい曲はどうかな?という話になったんです。実際、1番と2番で曲調がガラッと変わりますし、メロディが同じなのはサビくらいなので、歌詞をはめるのはすごく新鮮でしたね。どう表現しようか、ワクワクしながら歌詞を書いていました。
――1番と2番で大きく展開が異なるということで、歌詞の内容も変えましたか?
Hikaru// 統一性は必要だと思ったんですけど、最初に曲を聴いたとき、1番はダークな感じで入ってきて、2番が始まると少し明るい音がして視点が変わる感覚があったんです。だから、ここまで変わることってなんだろう?と考えたとき、「……性別?」って浮かんで。それで、1番はちょっと男性っぽく、2番はちょっと女性っぽく、ラストは二人で歌っているイメージで書きました。
――男女の交錯から「Determination」というタイトルに繋がったのはどういう流れだったのでしょう。
Hikaru// タイトルは毎回、フルででき上がった曲を聴いてから決めるんですけど、歌詞の二人の男女って、それぞれに思うことがあって、それぞれにどう進むかを決意した状態で相手を思い、語っているんですね。そこから、決意、決心という意味の「Determination」にしました。
――歌詞を書いている段階では、タイトルについてはあまり考えないんですか?
Hikaru// 歌詞を書いた段階とはニュアンスが変わってくることがあるので、レコーディングで歌って、なんだったらアレンジも終わってからタイトルを決めますね。
――じゃあ、名付け親感覚ですね。子供が生まれてから最後に名前を。
Hikaru// そうです、そうです。本当にそういう感じです(笑)。
――楽曲の展開に沿って、歌も幅広い表現を意識したのでは?
Hikaru// そうですね。なので、ワンコーラス目は胸の辺りを響かせて、少し太く、男性っぽい声色で歌っています。2番は女性らしさが欲しかったので音色高めで、なるべく柔らかく、優しく、という感じですね。で、最後のサビはパワーボーカルみたいな感じにして、二人分の気持ちがミックスされているようにしました。「あ、この人がこっち歌ってるのか」「ここはこっちの人か」みたいなところが垣間見えるように。最後のサビだけは、下ハモも少し上げてもらったんですよ。デュエットしているみたいにしたくて。
――「The Sacred Torch」同様、自分で歌詞を書く、というところが歌の表現でも実を結んでいる感じがありますね。
Hikaru// ありがとうございます。ソロとして活動を始めるとき、事務所の人にも自分で作詞をしてみたいという話をさせてもらったんですよ。Kalafinaのときは書いていなかったから。でも、実は全部を自分だけで書くつもりはなくて、「数曲は自分で書きたいな」くらいの気持ちだったんです。ところが、結果的にこれまでのH-el-ical//の活動では全部自分で書かせてもらっていて。毎回が挑戦みたいな感じですけれども、やり続けられる限りやりたいとは思っています。
――ちなみに子供の頃から文章を書くのは好きだったりしたのでしょうか?
Hikaru// 子供の頃の作文なんてひどかったですよ。「楽しかったです、マル」みたいな(笑)。ただ、本を読むのはすごく好きで、小学校の図書室で借りた本を読みながら帰ったりしてました。あ、でも、ちゃんと信号のところでは止まれるんですよ(笑)。
――それなのに歌詞を書きたいと思うに至ったきっかけは?
Hikaru// 昔から歌を仕事にしたいという話を家族にはしていて、協力してもらってもいたんですけど、母に「歌詞が書けるようになったらいいんじゃないか」と言われたんです。それで、どこに出すわけでもない歌詞を書いてはいました。それがいいものだったかどうかはわからないですよ(笑)。
――「楽しかったです、マル」の子にお母さんは、思いきったアドバイスをされましたね。
Hikaru// 準備運動をさせてくれたのかな。いつか機会ができたとしても、「楽しかったです、マル」の状態では絶対書けないから。
――今回の3rdシングルの初回限定盤には、ライブ音源を収録した特典CDが付きます。
Hikaru// 2020年の4月にアコースティックライブを予定していたのですが、中止になり。でも、ライブをやりたいという話はずっと事務所の人と相談していて、結果、12月に思いが叶って――そのときのライブ音源です。ライブのたびに毎回、「LIVE生産限定アルバム」を出していて、だから4月の段階ですでに5曲作っていました。そして12月が決まったときにさらに新曲をプラスしたんです。それらがほぼ初披露で、H-el-ical//として初のアコースティックライブだったので緊張していましたけど、でもライブができる嬉しさが1曲目の「咲-SHOW-」に表れています(笑)。この曲は「ようやく会える」で始まる曲で、目を合わせて歌えることが幸せという気持ちを込めた歌詞なんです。レコーディングでもその気持ちで歌いましたけど、ライブで歌うとその思いがさら増すというか、気持ちが乗りました。いつも、ライブで歌うことがみんなとの会話だと言っているんですけど、そのことも実感したし、なんて言うか、歌いながら「今、生きてるんだな」って思いながらステージに立っていました。
――やはり、失くして初めて気がつく……というところはありますよね。
Hikaru// 失くしたときに沈み込んでしまうんですけど、少しずつ取り戻して、いざ大きな何かに取り組むと、マイナスのぶんプラスが大きいというか。自分の中ですごく大きなものになりますね。目に見えないところでもたくさんの人が自分の曲を聴いてくれている、ということを改めて感じられて、心が満たされました。SNSなどでも感じてはいますけど、やっぱり目の前にして歌うと違います。皆さんが生きている中にHikaru//がいて、わざわざ自分の時間を使って会場に来てくれて、一緒に時間を共有してくれて……「幸せな仕事をしているんだな」と改めて思いました。
――その溢れる思いをライブ音源から感じ取ってもらいましょう。
Hikaru// 生でやったものをCD音源で届けるというのは緊張感があるんですけどね。視覚もありの映像込みのものと、聴覚のみのものでは変わってくるので。でも、たくさん想像してもらえたらいいなって思います。
――改めて、今回でアニメタイアップ3曲目となったことについて、そしてアニソンシンガーとしての今の気持ちについて教えてもらえますか。
Hikaru// 次の4作品目ももう発表になっていますが、アニメが好きだからこそすごく嬉しいし、すごく難しいですね。やっぱり、アニメへの愛があるゆえに、作品を愛している人に自分のできる100%をぶつけたいし、「なんでこの人が歌ったの?」とは思われたくないので。今は、歌詞も書くし歌も全部を一人で歌うしというところで、皆さんに自分の想いが伝わればいいなと思っています。アニメに関わることのできる喜びと幸せと面白さと、そして責任感……。
――やはり責任感は感じますよね。
Hikaru// 責任感を果たしてこそのアニソンだとは思うので。作品に対して愛があるかないかというのは伝わるじゃないですか?その時々でのオタクなりの愛の捧げ方というのは絶対あって。
――Hikaru//さんは毎回、歌詞に作品とのリンクを仕掛けていて、そういった部分があることでアニソンとしての深みは増すと思います。
Hikaru// そう思ってもらえたら、という気持ちで全力でやらせてもらっています。熱を込めてますから(笑)。
INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司(セブンデイズウォー)
●リリース情報
TVアニメ『最果てのパラディン』OPテーマ
「The Sacred Torch」
【初回限定盤(2CD)】
品番:GNCA-0643
価格:¥2,420(税込)
【通常盤(CD)】
品番:GNCA-0644
価格:¥1,320(税込)
<CD>
1.The Sacred Torch
2.Determination
3.The Sacred Torch <instrumental>
4.Determination<instrumental>
<CD/初回限定盤特典>
2020年12月29日、KT Zepp Yokohamaにて開催された『H-el-ical// acoustic LIVE 2020「咲 -SHOW-」』昼公演のライブ音源
H-el-ical// 公式サイト
https://h-el-ical.com/
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https://www.youtube.com/channel/UCAT-pP5n5RqBMrLfyawDHwg/featured
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