INTERVIEW
2021.10.08
TVアニメ『さんかく窓の外側は夜』OPテーマは、フレデリックの「サイカ」。切なさと解放感を兼ね備えたメロディ、“感情や才能を分かり合えたら、未来は開ける”というメッセージをたたえた歌詞が1つになったこの曲は、アニメの世界観と重なりつつ、現在のフレデリックのモードを強く感じられる楽曲に仕上がっている。
リスアニ!WEBでは、「サイカ」の作詞・作曲を手がけた三原康司(b)にインタビュー。楽曲の制作プロセス、『さんかく窓の外側は夜』の印象、幼少期に好きだったアニメ楽曲などについて話を聞いた。
――新曲「サイカ」は、TVアニメ『さんかく窓の外側は夜』OPテーマ。アニメサイドからのオファーを受けて制作されたそうですね。
三原康司 はい。OPテーマのお話をいただいて、アニメのストーリーだったり、今自分たちが感じていることを重ね合わせながら制作を進めました。まず原作を読ませてもらったのですが、ミステリーでもあり、心霊系でもあるんですが、“目に見えない部分”に重きを置いていて、その描き方がすごく繊細で。音楽も目に見えないものだし、普段から“人の気持ちを動かす”ということも意識しているので、作品にも共感できすぐにのめり込みました。
――霊が見える三角康介、霊媒師の冷川理人もそうですが、作品の主要なキャラクターは自分自身の能力や過去の傷と向き合っていますよね。それを乗り越えようとする姿も、この作品のポイントかと。
三原 そうですね。その話は、楽曲のテーマとも繋がっているんです。「サイカ」という題名は、華やかな才能、漢字で書くと“才華”。『さんかく窓の外側は夜』のキャラクターは、一人一人にすごい才能があって、お互いに繋がることで、活かし合おうとする。そのことの大切さも、この楽曲を書くときに意識しました。アニメの世界だけではなくて、今の時代に対しても同じことを感じるんですよ。普段の生活の中で人と接するときもそうだし、SNSなどもそうですけど、自分とは違う考えの人に対する姿勢や態度って、すごく大事だと思うんです。一方的に決めつけたり、頭ごなしに否定するのではなくて、相手の立場に立って考えるというか。
――特にコロナ禍以降、価値観や考え方の違いによってぶつかったり、分断されることが増えてますからね。
三原 本作のキャラクターもそれぞれが違う考えをもってるんですけど、ぶつかり合いながらも相手を認め合う。その姿がすごく良いなと思ったし、今の世の中にとっても大事なことだなと。それは一人一人の個性を花咲かせることにも繋がるし、色々な問題の解決にもなるんじゃないかなって。楽曲を通して、そういうメッセージを伝えたいという気持ちもありました。
――今の話は、バンドの在り方にもリンクしていると思います。異なる個性と音楽性を持ったメンバーが集まって、認め合い、協力しながら音楽を作るのがバンドなので。
三原 たしかに。自分の場合、兄(三原健司)がボーカルですけど、個性は全然違いますからね(笑)。メンバー全員、考え方や持ってる楽器も違ってるんだけど、そのなかでお互いの良いところを取り入れながら制作して……。特に(コロナの)こういう状況になってからは、バンドのことについて何度も繰り返して考えましたね。何が正解かはまだわからないですけど、自信が持てないときに「頑張ろう」と思えるきっかけになったり、少しでも寄り添える音楽を作りたいという気持ちは変わってなくて。
――「サイカ」もまさにそういう曲ですよね。
三原 微力かもしれないけれど、少しでも背中を押せるような音を鳴らし続けたいんですよね。そこに関しては、逆にメラメラと燃えてます(笑)。自分たちはずっと音楽をやり続けたいし、エンタメも絶対に必要なものだと思ってるんですよ。実際にステージに立っているときに、そのことを何度も実感してきたし、そのなかで築き上げたものもあって。コロナになって全部まっさらになってしまった瞬間もあったけど、それでも絶やすことなくやり続けたい。それも変わらないところですね。
――「サイカ」のアレンジやサウンドについても聞かせてください。これまでのシングル曲に比べると、大人っぽい雰囲気なのかなと感じましたが、その辺りは意識していましたか?
三原 うん、そうですね。たしかにこれまでのフレデリックのイメージとは、また違った楽曲だと思います。フレデリックらしいリズムを重視しつつも、健司のボーカルの良さやメロウな部分を出したかったんですよね。ただ、こういうテイストの楽曲は、自分たちが元々持っているものでもあるんです。シングル(表題曲)以外のEPやアルバムに入ってる曲には、メロディに重きを置いた曲もあるので。今回は「その方がアニメに合うだろうな」と思って、メロウな部分を押し出しました。
――なるほど。コード進行も洗練されているし、ギターのカッティングも含めて、“フレデリック流のシティポップ”という印象もありました。
三原 シティポップ感はたしかにあるかも。僕は元々音楽的に雑食というか、結構何でも聴くので、こういうサウンドも前から好きなんですよ。「サイカ」に対してどういう反応が返ってくるのか、すごく楽しみですね。
――メンバーそれぞれのセンスや技術も存分に活かされていますね。レコーディングのときは、全員でスタジオに入ったんですか?
三原 この曲はそうですね。ただ、アレンジを固めるまでは、デモ音源をやり取りすることが多かったんです。僕が作ったデモをメンバーに送って、それぞれが自宅でアレンジを考えて、さらにやり取りして。スタジオに入ったのは本番のレコーディングの日だけで、直接顔を合わせる機会は少なかったかも。
――リモート制作が基本だったんですね。この方法はやっぱり、コロナ禍になってから?
三原 そうです。会話の回数自体は全然減ってないんですけどね。今日の取材みたいにリモートで繋ぐこともできるし、メンバー同士で色んな話をするなかで、各々の状態や考えていることも理解できて。「サイカ」の制作もすごくスムーズでした。楽曲のテーマやメッセージを伝えて、あとは自由にやってもらったんですけど、良い意味で「お、こうきたか」ということも多かったんですよ。「これは違うな」ではなくて、自分では思いつかないアイデアをメンバーが加えてくれたことで、楽曲がさらに良くなった。その過程も面白くて、自分自身も楽しめましたね。
――コミュニケーションを取ることが大事なんですね。
三原 そうだと思います。楽曲のテーマを共有して、お互いの考え方を理解して、活かしあって……この曲の制作自体も作品のメッセージに合ってたのかも(笑)。さっきも言いましたけど、この期間はバンド活動について改めて考え直すことも多くて。大変な時期もあったけど、普段からよく話していていたし、その結果が楽曲の制作に現われるんだなと。それも1つの発見でした。
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