INTERVIEW
2021.09.05
――そうやって見守られている成長が『DIALOGUE+1』の中で1つ形になったのが、「はじめてのかくめい!2021」だと思います。今回デビュー曲を歌い直されて、いかがでしたか?
緒方 私は最初の「はじめてのかくめい!」のレコーディングのときに、まずサビが一発で全部歌えなくて……。
守屋 うんうん。
緒方 息継ぎがすごく大変で、あのときは切って切ってなんとか録った曲だったんです。なので「あっ、今の私は普通にツルツルっと、サビを全部一人で歌えるようになったんだ!」ということにまず感動しました。あと2番のAメロでソロで歌わせていただいている“毎日何かしらはトラブル”という部分は、初期は歌うことだけで精一杯だったのに、今回は「あ、大変!」みたいな気持ちも乗せられるようになりまして。田淵さんもそれを聴いて「もっとやっていいよ」みたいに言ってくださって、ディレクションの内容が変わったこともすごく嬉しかったです。
田淵 緒方さんは、最初の「はじめてのかくめい!」のレコーディングから比べると抜群に別人になった。だからやっぱり、録っていて感動しましたね。僕、一緒に音楽をやる人に音楽嫌いになられるのが一番嫌で。でもその理由ってこういう仕事の中だといくらでも転がってるんですよ。だから「そうならないといいな」と思いながらできるアドバイスをしてきましたけど、おかげさまで現時点では二人とも、音楽を嫌いにならずに、色んな引き出しも増えている。それが僕的には嬉しいし、声表現にも圧倒的に出ていたんです。だから「緒方さんのこの2年」みたいなものを、噛み締めながら聴いていた気がします。
緒方 わー、嬉しいです……ふふ(笑)。
田淵 特に守屋さんと緒方さんは、トップクラスに変わったと思いますよ。
――守屋さんはセリフの部分もあるので、ああいう部分の感情の幅の変化もわかりやすく感じた部分でした。
守屋 私も「歌う」ということにあまり触れてきていなかったので、苦手意識も強かったんです。だから歌うことに手一杯で、多分感情を乗せたり歌詞の意味を考えて歌いきることができていなかったんですけど、今回はそこに感情を少しは乗せられるように成長できていたかなと思います。あと私、高音しか出なくて低音が圧倒的に歌えなかったんです。でも時を経て歌ってみると「出るようになったな」と感じるところもあって……それも嬉しかったですね。もう、一生低い音が出せないと思っていたから。
田淵 そうだ、「はじめてのかくめい!」の一番低いところが出なかったんだよね。すごく覚えてる。ある時レコーディングでそれと同じくらい低い音が難なく出るようになっていて、感動したのを覚えています。
守屋 ソロの部分でも、出ないところが結構あったんですよ。でも2番の頭のソロも、最近はライブでも出せるようになりました。
――その「はじめてのかくめい!2021」の直前に置かれているのが、リード曲の「透明できれい」です。こちらの曲を最初に受け取ったときには、どんな印象を持たれましたか?
守屋 泣きました……。私は昔からあまり喜怒哀楽を表に出さない人間だったんですけど、ユニット活動を始めていつも一緒にいて支えてくれるメンバーや、色んな人に出会えて……私はDIALOGUE+チームの人たちをよく“家族”というふうに表しているんですけど、そういうのも含めて今までやってきたことと重ね合わせると、すごくぐっとくるものがありました。
緒方 私はイメージの話になっちゃうんですけど、最初「物語みたいな曲だな」という印象でした。「はじめてのかくめい!」とか「大冒険をよろしく」みたいに「DIALOGUE+といえば!」という曲って、最高・最高である瞬間を歌っているなと感じることが多かったんですよ。でもこの曲は一人でいる状態から、八人になってそれがもっと大勢になって、最後また八人がいる……みたいな、1つの物語を読んでいるように感じたのを覚えています。
――それを歌として表現するうえで、一番大事にしようと思われたことは?
緒方 そのイメージを持ってレコーディングに行ったら、現場で田淵さんから「ステージ上でスポットライトが当たっている状態を最初の舞台として頭に入れておいて」と言われて。ステージ上に立っているということは、自分の中だけでこの気持ちを完結させちゃダメで、「伝えなきゃいけないな」と気づいたんです。それで、私は強くパンッ!と出すことはまだできないけど、1つ1つの文字の表現をつけることは少しずつできるようになったかなと思ったので……文字1つ1つに対する表現を高められるように、丁寧に歌っていきました。……思い出して、今泣きそうになっちゃった(笑)。
田淵 この曲は全編歌ってもらって合いそうなところを振っていく、という感じでレコーディングを進めていったんですけど、一文字の表現に対する機微の出し方みたいなところってまさに緒方さんの武器というか。緒方さんって歌がただ上手くなっただけじゃなくて、そういうほかの人が真似できないような武器を持って成長してくれたんです。なので「じゃあその武器を出せる場所は、この曲ではどこかな?」とディレクションしたり歌割りを決めていったので、そこにちゃんと食らいついて色々試しながらやってくれたことが記憶に残っています。
――守屋さんは、この曲を歌う際にはどんな点に力を入れられましたか?
守屋 最初に受けた印象から、メンバーをはじめファンの人や、田淵さんのようにいつもDIALOGUE+を支えてくださってる方々に向けて想いを伝えたくて。そういう意味で、成長も見せなきゃなと思ったのもあって、今回初めて裏声とかウィスパーに挑戦したんですよ。普段高い音はよく出るので裏声は使わないし、難しいから「ある程度歌える人がやるもの」だと思っていたんです。でも今回は初のフルアルバムなので、技術的な面も研究して練習も重ねていって、レコーディングに臨みました。
緒方 落ちサビのところ、すごく好きだった。みんな言ってたよ。
田淵 実はそこ、2テイク目の歌声なんですよ。
守屋 そうなんですか!?
田淵 そう。早かった。それも守屋さんに決めた一因でした。守屋さんは裏声というか……具体的に言うと子音の“h”の表現が、「はぁっ」っていう歌い方が結構独特で。これまたほかの人が真似しようとして簡単にできるものではないんです。なのでほかの曲でも、そういうところを歌ってもらうことが実はちょこちょこあるんですけど。そういう武器が出た瞬間って、自信を持っていいと思っているポイントで。実はほかの人がなかなかできないことをやってますよー……という気持ちで、最近は聴いています。
――さて、『DIALOGUE+1』にはそのほかにも新曲や、ライブ披露済の初音源化曲もたくさんあります。そんななかからお二人が、あえて1曲だけお気に入りを挙げるなら?
緒方 ……すごく悩むね、そう言われると(笑)。
守屋 うん、めちゃめちゃ悩ましい(笑)。
緒方 そうだなぁ……私、「プライベイト」が印象に残っています。ちょうどこの曲みたいに、「ラップみたいなものが入った曲をやりたい」と思っていたんですよ。しかも、元気な女の子というよりは少し大人びた女の子が歌っている曲のようなイメージも浮かんだし素の自分に近い状態で歌えるのかな……と感じたのもあって、お気に入りの1曲になりました。
――レコーディングのときや披露されるときには、比較的素に近い感じで歌えましたか?
緒方 そう……ですね。若干美化した素ですけど(笑)。ただ、勢いのある曲を歌うときに入れる元気スイッチみたいなものを無理に入れなくても、スッと入れる曲ではありました。
田淵 この曲では落ちサビのソロを緒方さんに振っていまして。それは曲調もさることながら、緒方さんが成長曲線に入った瞬間だと感じたので、「今すごく歌えるようになっている実感がありそうだから、頑張ってね」と期待してそこを振ったんです。そこはこだわってたくさん歌ってもらったおかげで、とても良いテイクになったと思っています。
守屋 私は1曲選ぶとしたら、村上まなつちゃんと一緒にセンターボーカルをやらせていただいている「20xxMUEの光」です。
田淵 この曲のレコーディング、面白かったね(笑)。
守屋 そうなんです。この曲はまず私が先に録りまして。そのあとに来たまなつの歌をちょっと聴いてから帰ろう……と思っていたら、まなつが結構遊んできたんですよ。
田淵 「そういう壊し方もあるか!」っていうものを、色々持ってきたんだよね(笑)。
守屋 そうなんです。それで「自分もここをこうしたほうが、二人の息が合うんだろうな」とか「こうやって歌いたいな」という欲が出てきて。結局そのあと録り直しをしながら、二人で一緒に歌うことができたんです。
田淵 最初に録ったときも、そのときの一番良いものを作ったつもりではあったんですけど、今思うと僕が割と模範解答っぽいものを目指しちゃっていたんですよね。でも守屋さんから「私、もうちょっと色々やったほうがいいですか?」と言ってくれたおかげで、「時間あるなら、やろう!」って言って(笑)。
守屋 ギリギリまでやらせていただきました。ソロの部分もまなつとのバランスを見ながら、まるっと歌声を変えたりもして……そういうふうに一緒に録ったことも初めてだったし、センターボーカルをやる子と二人で作り上げて歌うことができたことがすごく嬉しかったんですよ。一緒にやれたからこそ足せた遊びもあるので、そういうところもぜひ音源で聴いていただきたいです。
田淵 そのほかの曲でも、実は彼女たちのパフォーマンスを聴いて楽曲の解釈が変わることって結構あるんですよ。そういうふうに音楽での発見があることは僕もとても楽しいし、DIALOGUE+をやらせてもらうなかで僕も一緒に勉強させてもらっているような感じがしています。
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