INTERVIEW
2021.09.04
――その直前、アルバム12曲目にはリード曲「透明できれい」が収録されています。
村上 この曲はまず、イントロにみんなのコーラスが入っていたり、オーケストラの音があったりと壮大さを感じました。あと、これは私たちからログっ子の皆さんへの曲でもあるとは思うんですけど、個人的には田淵さんから私たちへの曲だなぁ……というふうにも感じて。今までの活動を通じて、最初に掲げた目標のなかで達成できたことももちろんあるけど、それを達成したからゴールではなくて。さらにその上のステップにもいかなきゃいけないしもっと成長しなきゃいけない部分もあるから、新しい目標を作っていかないといけないんですよ。そこが歌詞の“夢ってのは 叶えたら 夢じゃなくなる? もしそうだとしても もう一回 目指すんだ”みたいな部分にも表れているように感じて。それに“どんな道だとしても 負けたりしないでね 君と僕らでさ 作ろうよ 未来を”っていう部分は、田淵さんからのエールのようにも解釈できるなぁ……と思いました。
田淵 作詞に関しては変に説明しすぎると想像力を削いでしまうのでアレですけど、揃って歌ったときにメンバーが「これは田淵からの鼓舞なのだ!」みたいに解釈してくれるなら、その見方も正解だし。ちゃんと歌詞を噛み砕いて歌うということも歌表現にとってはとても大事なことなので。僕、自分のバンドとか書く対象によっては、正直歌詞なんかなんでもいいという考えでもあるんですけど、彼女たちの場合は自分たちが歌っている意味をちゃんと理解して、メッセージとしてお客さんに発信したりステージで表現することはとても大事だと思っています。そういうなかで生まれるお客さんとの関係って、美しいじゃないですか?だから、少ない引き出しの中から自分なりにメッセージ的なものがこもるようにして彼女たちに託しているところがあって……うん。「この言葉を、お客さんにわかるように歌ってくれ!」って“託す”ような気持ちで書いている部分が多いかもしれませんね。
飯塚 この曲は、田淵さんの仮歌を聴いて泣いちゃったんですよ。
村上 あー!言ってた!
飯塚 で、レコーディングしたあとのラフミックスを聴いても、素敵すぎてなんだか泣けてきちゃって。メンバーに「今すぐ聴いて!」って送ったくらいなんです。まだMVを撮っただけでライブではやっていないんですけど、歌詞を見てもレコーディングしていても、この曲に触れるたびにどんどんメンバーのことが好きになってきちゃって……。
村上 あー……。
飯塚 この曲は、なんだか素直に口が動くんですよ。自分自身で考えてお手紙のように言葉にした歌詞ではないのに、スッと出てくるんです。「好きだよ、好き。」のときにも同じような感覚があったんですけど、自分の言葉じゃないのに「あれ?これ自分が思った言葉だっけ?」みたいな感じになる歌詞ばかりなので……見透かされてるんですかね?(笑)。それくらい、スッと出てくる歌詞です。
村上 逆に私は歌うときに1個1個考えてしまうので、この曲を歌うときには「ダイアローグ+インビテーション!」でいただいた「重要拠点ムードメーカー」というキャッチフレーズをイメージして、私が歌ったところでみんなが明るくなったりとか元気になってもらえたらいいな、と思っていました。それが「負けたりしないでね」の、ちょっとした力強さや手を引く感じに表れていたら嬉しいです。
――そのほかにも『DIALOGUE+1』には新曲や、ライブでは披露済の初音源化曲も多数収録されています。その中から飯塚さんと村上さんが特にお気に入りの曲を、あえて1曲挙げるなら?
村上 全曲個性があっていいのはもちろんとして……個人的には「アイガッテ♡ランテ」ですね。ポップで明るい曲調もすごく好きだし、歌詞を聴くと皆さん一旦「え?」ってなると思うんです。それくらい良い意味で引っかかる言葉がたくさんあって、心をぐっと引きつけてくれる曲なんですよ。あとこの曲を歌うときには、私以外もなんですけど、結構遊びまして。例えばAメロのソロの“審美眼”の部分をめちゃめちゃだらーんと歌ってみたり、採用されなかった部分でもオペラ風に歌ってみたりしたんです(笑)。そのぶん思い入れもあるので、みんなの遊びを聴いて楽しんでほしいです。
田淵 これ実は、村上さんが勝手に遊んでて。
村上 そう、勝手に遊んだんですよ。
田淵 これ、すごいことなんです。しかもそれを、音楽人が歌うときにはあんまり出てこないような引き出しで歌うんですよ。恐らく文字の意味を行や単語単位で解読して、なんでしょうけど。それが歌表現としてマッチしていないときは調整しますけど、面白いときには全部オッケーにする……というのは、村上さんをディレクションするときには大事にしています。
――ちなみに、ほかの曲のレコーディングでもそういうアプローチを?
村上 しました。「20xxMUEの光」では、最初に1曲全体で遊び倒しまして。そのあと残すところ・戻すところを割と細かく決めていったんです。
田淵 でもそれも、さっき言った「そこまで考えなくてもいいのに」っていう選択肢までまず出す、みたいなことを平気でやれるからできることなんです。やっぱり自由に自分で考えて、それをレコーディングのときに自分で考えて持ってくるのはとても良いことで。「遊ぶ=個性」という意味ではないんですけど、「個性を出すことで面白くなる」ということにほかのメンバーも触発されて、それぞれの個性の出し方…表情でも振り付けでも何でもいいですけど、そうやってモチベーションがトータルで上がってくる……みたいなことを、結構ライブのときも彼女はやっている。個性や表現についてみんなで考えるための起爆剤を持っていることって、すごい才能なんですよね。
飯塚 私のお気に入りは1曲目の「Sincere Grace」です。今回のアルバムにも色んな曲が収録されていて、曲ごとにみんなの声の表現の幅広さを感じているんですけど、そんななかで「みんなの素直な歌声って、もしかしてこれ?」みたいなのを勝手に想像しながら聴いているのがこの曲なんです。その素直な歌声がすごくきれいなので、今回はこの曲をイチオシしたいです!
――ご自身が歌うときも、素直に歌うことを大事に?
飯塚 結構意識して歌いました。この曲はほかの曲とは違って、最初どう歌おうかちょっと悩んでしまって。個性通りにやってもいいのかな?とも思ったんですけど、考え抜いた結果、どちらかというとあまり色付けよりもするフラットにしよう……と決めました。
田淵 DIALOGUE+の曲には毎回オーディションをする部分があって、この曲ではソロだけオーディションにしています。そのなかで飯塚さんは、2-Aメロの歌い出しが抜群に良かった。彼女はオーディションの勝ち方を知っているというか、針の穴を通すようなピンポイントな「たしかにこれ、聴き逃せなくなっちゃうな」という表現をぽーんと出してくるので、そこが頼りになっている部分もすごくあるんです。しかもデビューからただ歌が上手くなっただけじゃなくて、歌に対する理解のクレバーさが反射神経で出て、思い浮かべた理想に近づくまでのものすごい瞬発力がついた気がします。それは「透明できれい」のときにもすごく思ったことで、飯塚さんのここ最近の進化な気がしているんだけど、それは自分でも感じてる?
飯塚 ……ちょっとだけ(笑)。
田淵 ちょっとだけ?
飯塚 レコーディングで自分の中での理想を形にできたときは選んでもらえるんですけど、逆に「明確に理想があって、いい感じだけど惜しい」みたいなときは絶対に取れないんです。だから、「“惜しい”はダメなんだな」っていう感覚はあります。
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