「バーチャルシンガーのパイオニア」として2018年に活動を開始し、歌ってみた動画やオリジナル曲を多数リリース。2020年にはメジャー・レーベルとの契約を発表し、今年6月16日にメジャー・デビュー・アルバム『eternal journey』を完成させたYuNi。彼女の最新ライブ「YuNi ONE MAN LIVE『UNLOCK』」が、7月30日~31日の2日間、池袋のharevutaiで開催された。ここでは公演最終日となる31日の模様をレポートする。
今回のライブは、単独公演としては昨年のVRライブ「YuNi 3rd VR Live『eternal journey』」から約8か月ぶり、リアル会場でのワンマンライブとしては2019年の「UNiON WAVE-evolve-」以来実に約2年ぶりの公演となる。2年の間にYuNiを取り巻く環境は大きく変化しており、2020年8月には参加していたバーチャルタレント支援プロジェクト・upd8を離脱。その後自身のプライベートレーベル+メジャー・レーベルに活動の場を移行している。初期から続いていた体制を一度見直し、さらなる飛躍を求めて新しい場所に飛び込んでいったのが、前回のリアル会場でのライブから今回の公演までに起こった変化と言えそうだ。
そうした変化にリンクするかのように、最新アルバム『eternal journey』には、GigaやNor 、ampstyle(Dareharu)、R Sound Design、ゆよゆっぺ、emon(Tes.)、かいりきベア、tilt-six、八王子P 、そしてデビュー曲からタッグを組んでいるYUC’eなどこれまで以上に様々なクリエイターが参加。ポップなエレクトロからバンドサウンド、バラードまでを自在に横断するもともとの音楽性に、K-POPなどを連想する華やかなボーカルポップ曲を加えることで、自身の音楽性をさらに広げている。この日のライブからも、そんな今ならではの雰囲気が全編を通して伝わってくるようだった。
まずは冒頭から、最新アルバムの収録曲を多数披露。歌だけでなくこれまで以上に本格的なダンスを披露した華やかな「DAYZ」、一体感のあるエレクトロポップ「YuNiSoN」など、高揚感溢れる楽曲で会場を盛り上げていく。続く「And Another」では、しっとりしたイントロと一気に盛り上がるサビとのコントラストで観客を魅了し、「夜と幽霊」では都会の夜を舞台に繊細な気持ちを歌いあげる。楽曲ごとに切り替わる映像演出は銀河や空、都会など様々で、それ自体が「旅」を連想する今回のアルバム名とリンクするような雰囲気だ。
また、ドラムンベース+ポップ風の楽曲「キライ」では、負の感情に向き合うことで感情の振り幅を表現。「平坦人生活劇」で「ベノム」などで知られるかいりきベアらしいリズミカルな楽曲を歌いこなし、続く「ココロノック」では一転、伸びやかな歌声で観客を魅了した。
ライブ中盤で印象的だったのは、emon(Tes.)が作曲し、YuNi自身が作詞を担当した「ユニークアビリティ」だろう。この曲では冒頭で「『流行』の磁石/引き寄せられた/砂鉄のような君には/『キョウミ ハ アリマセン』」と伝えたうえで、「世の中には様々な好きや嫌いがあり、それは他人と比べることじゃない」と自分の道を進むことの大切さを歌っている。
YuNiはもともと、多くのバーチャルタレントがゲームや歌、雑談など様々な分野を横断する活動をする中で、一貫して「音楽」を中心に据えた活動を続けてきた人であり、VTuberの活動の主流が動画からライブ配信へと変化していく中でも、歌ってみたやオリジナル曲、ライブといった「音楽そのもので勝負する」という自分のスタイルは今も変えていない。この日観客の前で披露した「ユニークアビリティ」からは、そんな自身の活動に込めた信念や、「自分らしさを大切にしていいものを届けたい」という思いが伝わってくるようだった。
ライブ終盤は、tilt-sixが手掛けたK-POPスタイルの華やかなポップチューン「Dreamin’ Dreamer」を経て、YUC’eが手掛けた2018年のデビュー曲「透明声彩」へ。その後もファンへのアンケート結果でリクエストの多かった「KING」のカバー、VRゲーム『ALTDEUS: Beyond Chronos』に提供した全編英語詞の「Dawn」、どこか優しげな表情の「Beautiful World」などを次々に披露していく。最後はMCでこれまでのことを振り返りながら「今日この景色を見れて、諦めなくてよかったなって改めて思ってます」と感謝を伝え、『eternal journey』のラスト曲「光風声月」を歌うと、笑顔で「また会いましょう!」と告げてライブを終えた。
「光風声月」はデビュー曲「透明声彩」以降、YuNiの楽曲に欠かせない存在として知られているYUC’eが同曲の続編としてつくったもので、「透明声彩」と同じ冒頭のフェードインを経て、デビュー当時から現在までの道のりを振り返りながら、「星の数の存在でも/あなたのために歌おう/心からの声を/もっと響かせよう」と、年月を経た今だからこそ言える人々への感謝や、これからに向けての思いを歌った楽曲になっている。その様子はまさに、YuNi自身の活動が「eternal journey(終わりのない旅)」であることを伝えるようだ。
全編を通してYuNiのバーチャルシンガーとしてのこれまでの歩みや、活動の中で大切にしてきたことが伝わってくるような雰囲気が印象的なライブだった。
TEXT BY 杉山 仁
「YuNi ONE MAN LIVE『UNLOCK』」
2021.7.31 @harevutai
<セットリスト>
1.DAYZ
2.YuNiSoN
3.And Another
4.夜と幽霊
5.キライ
6.平坦人生活劇
7.ココロノック
8.ユニークアビリティ
9.Dreamin’ Dreamer
10透明声彩
11.KING(カバー)
12.Dawn
13.Beautiful World
14.光風声月
●アーカイブ配信中
30日公演:8月6日23:59まで
31日公演:8月7日23:59まで
配信(オンライン視聴)チケット:4,200円(税込)
YuNiオフィシャルサイト
https://yunionwave.com/
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