INTERVIEW
2021.08.05
――そんなこの曲、最初に聴いたときから「こういうふうに歌いたいな」みたいなビジョンのようなものは浮かびましたか?
大橋 かわいい曲なので明るく元気に歌えたらいいなというのはあったんですけど、レコーディング前は割と素で歌うメージだったんです。でも実際のレコーディングでは「一応“HASSY”だから」ということでちょっとデフォルメしまして。よりかわいさを強めに入れて、ラップパートのかっこよさとのギャップが出るように意識しました。なので、少しキャラソンに近い感じかもしれないです。逆に「Bメロだけは自分でもいい」みたいに言われてもいたので、この曲は3人いるような感じなんですよ。
――なるほど。素と甘めと、ラップ部分のスタイリッシュな……。
大橋 そうですね。ハシアナさん。
――“ハシアナさん”?
大橋 あ、エイプリルフール動画のときの私がちょっとアリアナ・グランデに似てるっていうことで、よくスタッフさんから「ハシアナ・グランデ」と言われてるんです(笑)。
――ラップ曲ということで、レコーディングの準備にも従来との違いがあったのでは?
大橋 あー、それが……過去イチ準備しなかった気がします(笑)。それは今回の企画に、チームみんなで遊ぶようなイメージがあったので、余計な緊張をせずに臨めたというところがあったからかもしれないです。それに今回は、すごくよくお世話になっている岡嶋かな多さんにディレクションしていただいていたのもあって、本当に“仲間内で楽しく録っている”感じがあって。ラップも結構、かな多さんが導いてくださったんですよ。最初はほんっとうに何すればいいかわからなかったんですけど、おかげでなんとか形になりました。
――特によく覚えているアドバイスは、何かありますか?
大橋 ニュアンスについて、すごく教えてくれたことですね。私、譜面みたいなものがないとできないタイプだったので、かな多さんが実演して教えてくれたものを頑張って真似する!みたいな感じで進めていきました。
――やっぱり最初は、教えてくれる方の真似から始まりますもんね。
大橋 そうですね。元々の仮歌さんが結構ナチュラルな感じだったので、そこに自分の味を出していかないといけなかったんですけど、ラップって決まった正解がないから何をやってもいいっていうのがめちゃくちゃ難しくて。最初は仮歌さんの真似をすることしかできなかったんですけど、そこからかな多さんがいろいろ教えてくれたことで、表情感がだいぶ出たような気はしています。それにかな多さんは私が好きな音楽も結構ご存知なので、「誰々さんの、あの曲のこんな感じ」みたいな例も使いながら、わかりやすく教えてくれたんです。
――ということは、今回は御自身のお好きなアーティストのイメージなどは、ディレクションのヒントとして結果的に少し反映できたかもしれない。
大橋 それはあるかもしれないです。だから今回の制作を通じて、これまで自分がいかにラップを意識しないで聴いていたかがすごくよくわかりました(笑)。今までは普通に好きで趣味としてラップパートを聴いてたんですけど、この企画に携わってからはラップがすごく際立って聴こえるようになったんです。
――それは1曲制作を経験したことで、勉強する耳になったからかもしれませんし。
大橋 はい。皆さん滑舌めっちゃいいですよね。早口が結構多いのに「よくこんな綺麗に言えるなぁ」って(笑)。そこに感情も乗っているうえに、外国語だと日本語よりも早口感がさらにすごくて。同じラップでも、国によって全然聴こえ方が違うところに面白さを感じました。
――その他、歌っていて気持ちよかったり楽しい部分も?
大橋 そうですね。Dメロの「ヨコヨコ タテタテ――」のところは、コール・アンド・レスポンスしているみたいな感じで歌ってくださいと言われて。今はできないけど、皆さんといつかコール・アンド・レスポンスできると信じてその光景を想像しながら歌ったのが、結構気持ちよかったですね。ただ、ここも歌詞がすごいんですよ。「井桁(いげた)じゃない」って、最初「な、なんだ?」って思いました(笑)。
――直前の「♯(シャープ)じゃない」とあわせて、ハッシュタグの記号を表した部分ですね。
大橋 はい。Dメロ最後の「二礼 二拍手 一礼」も、「ヨコヨコ タテタテ」で描ける鳥居からの連想でしょうし……これだけ歌詞で遊ばれてるのは、やっぱりすごいなぁと感じます。その他にも今どきの言葉が使われていたりもするので、10年後ぐらいに聴いたら「懐かしいなぁ」ってなっちゃったりするのかもしれないですね。これまでの私の曲って、特に表題曲はアニメの主題歌になっていることが多かったから、今っぽさとか流行りを詰め込んだ曲があんまりないんですよ。だから今まででいちばん、あとから振り返って「懐かしいな」とか「こんなんあったな」と思える、2021年の流行りみたいなものが詰まっている曲になりました。MVもちょっとTikTokっぽいですし。
――歌ったあと、手応えみたいなものは感じましたか?
大橋 「意外とちゃんとした企画になったな」という感じはしありた(笑)。というのも、エイプリルフールネタがきっかけだから、MVも撮らずにもっとふわっとした感じのものになると想像していたんですよ。だから途中で急にプレッシャーを感じたりもしたんですけど、新しい姿も普段のおちゃらけた自分も詰まっている、私のいろんな一面を楽しんでもらえる曲になりまして。MVもキメキメというよりも親しみやすさのあるものになっているので、新しく好きになってくれる方はもちろん、ずっとファンだった方にいちばん楽しんでもらえるようなものにできたと思っています。
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