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REPORT

2021.07.19

CIVILIAN、“改名5周年”を記念したワンマンライブ“CIVILIAN 5th Anniversary Live “FIVE” -灯命、透明、答鳴-”で見せた『灯命』の世界――。

CIVILIAN、“改名5周年”を記念したワンマンライブ“CIVILIAN 5th Anniversary Live “FIVE” -灯命、透明、答鳴-”で見せた『灯命』の世界――。

ボカロP“ナノウ”として知られるコヤマヒデカズ(vo、g)率いる3ピースバンド・CIVILIANが7月19日、SHIBUYA TSUTAYA O-EASTで“改名5周年”を記念したワンマンライブ“CIVILIAN 5th Anniversary Live “FIVE” -灯命、透明、答鳴-”を開催した。

2016年7月18日にLyu:LyuからCIVILIANに改名した彼ら。メジャー1stアルバム『eve』以来、4年ぶりにリリースされたニューアルバム『灯命』を収録順通りに完全再現した今回のライブは、これまでの三人の軌跡、そして、この先の未来を提示する大充実の内容となった。

ライブ前の“影アナ”は、声優の鈴木達央が担当。CIVILIANがOPテーマ「正解不正解」を提供したTVアニメ『魔王学院の不適合者〜史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う〜』の主人公・アノス・ヴォルディゴードを演じた鈴木のアナウンスによって、このライブの“特別感”は否応なしに増していった。椅子席の観客もきわめて静かで、このスペシャルなライブを心待ちにしている。

ニューアルバム「灯命」を“完全再現”した貴重なステージ

18時ちょうど、ついにライブがスタート。SEとともに、白い衣装を身にまとったコヤマがステージに登場。ギターを手に取ると、「5021年6月2日 ついに最後の電波塔が、太陽の熱と光線によって機能不全に陥りつつある」と語り始める。OPナンバーは、アルバム『灯命』の1曲目「遥か先の君へ」。2021年6月2日から、3000年後の未来に向けた詩を読み上げるこの曲は、アルバム全体の世界観を端的に示している。楽曲の途中でメンバーの純市(b)、有田清幸(ds)も登場し、演奏に参加。コヤマが紡ぎ出す物語に沿い、ディストピア的な雰囲気を増幅させていく。2曲目はアルバムのリード曲「ぜんぶあんたのせい」。エッジの効いたギターリフが鳴った瞬間、観客が一斉に立ち上がり、手を上げる。さらに濃密なグルーヴを放つベースライン、攻撃的なビートを響かせるドラムが絡み合い、CIVILIANならではのバンドサウンドが出現。以前からライブで演奏されているこの曲は、すでに彼らのライブアンセムとして定着している。

高速のビートに合わせてオーディエンスの手拍子が鳴り、“いつか本当の 命を使い道を その手に掴むまで さあ 何度でも 立ち上がれ”というラインが突き刺さる「何度でも」、真っ赤なライトとともに重厚なサウンドがうなりを上げ、“人生=懲役85年”をテーマにしたリリックを歌い上げた「懲役85年」のあとは、「千夜想歌」(TVアニメ『魔道祖師』前塵編OPテーマ)、そして、「導」(TVアニメ『魔道祖師』羨雲編OPテーマ)。アジア大陸的な旋律を取り入れたこの2曲は、明らかにCIVILIANの新機軸であり、この日のライブでも大きなハイライトを演出。CIVILIANとアニメ作品が繋がることで彼らは、音楽の幅を着実に広げ続けている。そのことを改めて示すシーンだったと思う。

コヤマが鍵盤を弾き、温かい旋律と“手を繋いでよ それ以外は 要らないよ もう何も”というラインを奏でる「本当」も心に残った。Lyu:Lyu時代から一貫して、人が生きていくうえでの葛藤、苦しみ、不安などから目を逸らさず、緊張感と危うさを共存させた楽曲を生み出してきたコヤマ。CIVILIANとして活動し始め、彼自身の世界観も大きく広がり、こんなにも愛おしいラブソングを作るに至った。一つひとつの言葉に豊かな思いを込めたボーカルは、会場に足を運んだ観客の心をしっかりと揺らしたはずだ。

ロックバンドとしての魅力と真摯なメッセージを描き出すパフォーマンス

クリスマスの光景が広がるなか、“あなた”と“あたし”の痛々しい関係を浮き彫りにする「人間だもの」から、ライブの高揚感はさらに上がっていった。繊細な鍵盤のフレーズ、ノイジーなギターサウンド、しなやかで濃密なリズムが絡み合う「残火」、爆発的なテンションを備えたドラムを軸に、ポップな手触りのメロディと“きっと掴めると そう信じながら 死ぬ気で夢を見る”というラインが共鳴する「夢の奴隷」、そして、シャープな疾走感、凛としたメロディ、「世間が決めた正解や不正解、勝者と敗者に捉われず、自分の生を真っ当したい」という思いを込めた歌が炸裂する「正解不正解」。ロックバンドとしての魅力とあまりにも真摯なメッセージ性を同時に体感できる、まさに圧巻のステージだ。

フランケンシュタインをモチーフにしたストーリーテリング的な楽曲「フランケンシュタイナー」、“躓いたって どのみちそうだ 後ろにはもう戻れぬ僕らだ 軽やかに僕らは向かうのさ 世界の果て”というフレーズが気持ち良く広がるギターロック「世界の果て」、そしてライブの最後はアルバム『灯命』のタイトル曲「灯命」。生きることにうんざりしながらも、“また明日が来るって 疑いもなく信じている”という思いを綴ったこの曲は、アルバム全体のメッセージを象徴すると同時に、現在のCIVILIANの核になっている。鍵盤の弾き語りによる美しい歌を聴きながら、そのことを強く確信した。

メンバー三人がステージを去ったあと、パソコンのキーボードを叩く音、そして、鈴木達央の声が聞こえてきた。「最後の日記を書き終え、モニターの電源を切ろうとした瞬間、この端末宛てに、1件のメッセージが届いた」から始まるその声は、「遥か先の君へ」のアフターストーリーであり、アルバム『灯命』のエピローグでもある。3000年前(2021年6月2日)から届いたメッセージには、“感染者が増えたり減ったり”する状況が綴られていた。ウイルスが蔓延する世界の中で、それでも“未来への希望を勝手に握らされてしまう”――そこには確かに、この先の日々に対する光が込められていた。どんなことあっても、この命が終わるまで、私たちは生きていくのだと。

5周年を記念したライブで、アルバム『灯命』の世界をリアルに体現してみせたCIVILIAN。まったく先が見えない状況のなか、それでも希望をもって進もうとする意思を刻んだ彼らの音楽は、ここからさらに存在感を増していくはず。今後の活動にも大いに注目してほしい。

TEXT BY 森 朋之

CIVILIAN 5th Anniversary Live “FIVE” -灯命、 透明、 答鳴-
7月18日(日)TSUTAYA O-EAST

<セットリスト>
01. 遙か先の君へ
02. ぜんぶあんたのせい
03. 何度でも
04. 懲役85年
05. 千夜想歌
06. 導
07. 本当
08. 人間だもの
09. 残火
10. 夢の奴隷
11. 正解不正解
12. フランケンシュタイナー
13. 世界の果て
14. 灯命


●リリース情報
2ndフルアルバム
『灯命』
発売中

【初回生産限定盤(CD+Blu-ray)】

品番:SRCL-11803~4
価格:¥6,800(税込)

【通常盤(CD)】

品番:SRCL-11805
価格:¥3,300(税込)

<CD>
01. 遙か先の君へ
02. ぜんぶあんたのせい
03. 何度でも
04. 懲役85年
05. 千夜想歌
06. 導
07. 本当
08. 人間だもの
09. 残火
10. 夢の奴隷
11. 正解不正解
12. フランケンシュタイナー
13. 世界の果て
14. 灯命

<Blu-ray>
CIVILIAN 4th Anniversary Live”FOUR”
01. セントエルモ
02. カッターナイフと冷たい夜
03. 赫色 -akairo-
04. 回転
05. 記憶
06. 君から電話が来たよ
07. ハロ/ハワユ
08. 朧月夜に星は無く
09. I feat.まねきケチャ
10. サクラノ前夜
11. ハッピーホロウと神様倶楽部
12. 何度でも
13. ぜんぶあんたのせい
14. 正解不正解
15. メシア
16. 顔
EN1. 暁
EN1. 花よ花よ

関連リンク

CIVILIAN オフィシャルサイト
https://civi-l-ian.com/

CIVILIAN 公式Twitter
https://twitter.com/CIVILIAN_LyuLyu

CIVILIAN 公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCcfmRBgqTMNbQj-QHNYR2UA

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