INTERVIEW
2021.07.05
――主題歌、劇中歌の制作についてもお伺いしたいのですが、制作の際、歌い手のイメージはどれくらい楽曲に反映されましたか?
神前 基本的にスタンスとしてはキャラクターソングなんですよ。なので、ヴィヴィ曲で言えば八木(海莉)さんを想定するとか、そういうことはありませんでした。八木さんに決まったというお話も、何曲か作っているくらいのタイミングでアニプレックスさんからご連絡をいただきました。
――では、あくまでストーリーの展開と、ヴィヴィやディーヴァのキャラクター性から楽曲を制作されたという形ですね。
神前 そうですね。そちら側から。使用される個所も決まっていましたから。
――AIが歌うという点で意識された点はありましたか?
神前 それもなかったですね。AIだから全部打ち込みサウンドで、ということもまったく考えませんでした。『Vivy』でのAIは人間のように心を込めて歌うことを目標としているので。むしろ、この世界で広く愛される「歌」になるように、という意識でした。
――ポピュラーソングという意味での。
神前 そうですね。
――劇中歌のレコーディングは神前さんがディレクションしたということですが、そのときに意識した点はありましたか?
神前 実は今回、「こう歌ってください」というディレクションはしていないんです。
――それは意図的にですか? 結果的にですか?
神前 結果的、ですね。正確には必要なかったというところです。普段は、仮歌の段階である程度表情をつけて、作り込み、それをお手本にして歌っていただくんですが、今回は仮歌にAIを使っています。
――歌声を合成してくれるエンジンのようなものですね。
神前 はい。なので、作曲家の考える「正解」を押しつけてはいないんです。例えば、八木さんが歌うとしたら、この世で初めてその歌を歌うのが八木さんとなるわけで、そのように表現してもらいました。仮歌に使ったAI自体には元となる歌手の特徴が学習されているのでまったくの無機質というわけではなく、癖のようなものもあるのですが、八木さんはそこはあえて気にせず、自由に表現してくれましたね。
――AIで仮歌を入れた意図はなんだったのでしょうか?
神前 アーティストの力が借りられるので、色をつけたくなかったというところですね。。それに、AIで作った仮歌ならばメロディや歌詞を変更してもすぐに仮歌を入れ直せますから。人間にお願いした場合はまた歌い手を呼ばなければいけませんが。なので作業効率的にもありがたかったですね。
――ヴィヴィたちはAIなので、実際にボーカリストが歌うよりも無機質に、といったディレクションはなかったですか?
神前 そういった抑制はしなかったです。が、ヴィヴィに関して言えば、自然とそうなったところはありました。八木さんはレコーディングの経験がまだほとんどなかったので、最初にレコーディングした「My Code」では少し硬さがあったんです。ただ、それが初期のヴィヴィらしくて。その硬さのまま録らせていただいたのですが、それがすごく良かったと思っています。AIである彼女たちは心を込めて歌うというところを目指しているので、硬さを感じるところから始まってどんどん良くなっていくというのが自然な流れである、というの音楽チームの共通認識でしたね。
――BD/DVDには新曲「Present for You」 が特典としてつきますが、こちらはどういった曲でしょうか?
神前 この曲と、シングル「Sing My Pleasure」のc/w曲である「Happiness」は、劇中の時系列では初期になりますが、作業としては本編用の楽曲をすべて作ったあとのものなので、個人的には『Vivy』というプロジェクトとヴィヴィというキャラクター、そして八木さんに対する僕なりのアンサーになっているのではないかと思っています。
――『Vivy』の音楽制作を振り返ってみて、どのような感想をお持ちですか?
神前 完成した映像をオンエアで見て、作品が持つパワーやスタッフの熱量をひしひしと感じました。おかげさまで非常に大きい反響を頂いていますし、音楽についても取り上げていただく機会が多く、大変やり応えのあるお仕事でした。担当することができて光栄に思います。
――『Vivy』の音楽制作を通して、何か発見のようなものはありましたか?
神前 「自分にこういう曲が作れるのか」というところはありました。自分ではあまり知らなかった作家としての引き出しを見つけた気がして嬉しかったですね。
――発注という必要性から生まれた部分だとは思いますが、挑戦心もあったということでしょうか?
神前 そうですね。それと、この素晴らしい作品に応えたいという気持ちですね。
――AIの歌姫たちにもっと楽曲を提供したかったという気持ちもありますか?
神前 もちろんあります。そもそもエステラやエリザベス、あとグレイスは一度もステージで歌っていないじゃないですか? ヴィヴィ/ディーヴァやオフィーリアはライブシーンがありましたが。
――彼女たちは全員、「シスターズ」と呼ばれる、ヴィヴィの後継機ですから。
神前 全員が歌姫になれると思うのですが、アニメ本編ではそういう機会に恵まれなかったので、彼女たちがステージで活躍するifの世界は是非見てみたいですね。
INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司(セブンデイズウォー)
▼後編(『Vivy -Fluorite Eye’s Song-』100年の刻を旅しながら出会った歌の数々の楽曲制作の裏側。神前が考える理想の歌姫像とは――? 音楽・神前 暁(MONACA)インタビュー【後編】)はこちら
●リリース情報
劇中歌収録アルバム
『Vivy -Fluorite Eye’s Song- Vocal Collection ~Sing for Your Smile~』
発売中
【通常盤(CD1枚組)】
価格:¥3,300(税込)
品番:SVWC-70541
作中で歌姫AIたちが歌ったすべての歌を収録。
キャラクターデザイン:高橋裕一描き下ろしデジジャケット、三方背スリーブケース仕様。特製ブックレット封入。
<CD>
01.Sing My Pleasure / ヴィヴィ(Vo.八木海莉)
02.Happy Together / 汎用型歌姫AI(Vo.コツキミヤ)
03.My Code / ヴィヴィ(Vo.八木海莉)
04.A Tender Moon Tempo / ヴィヴィ(Vo.八木海莉)
05.Ensemble for Polaris / エステラ(Vo.六花)・エリザベス(Vo.乃藍)
06.Sing My Pleasure(Grace Ver.) / グレイス(Vo.小玉ひかり)
07.Galaxy Anthem / ディーヴァ(Vo.八木海莉)
08.Elegy Dedicated With Love / オフィーリア(Vo.acane_madder)
09.Harmony of One’s Heart / ディーヴァ(Vo.八木海莉)
10.Fluorite Eye’s Song / ヴィヴィ(Vo.八木海莉)
・キャラクターデザイン:高橋裕一描き下ろしジャケット
・三方背スリーブケース仕様
・特製ブックレット
オリジナルサウンドトラック
『Vivy -Fluorite Eye’s Song- Original Soundtrack』
発売中
【通常盤(CD2枚組)】
価格:¥3,850(税込)
品番:SVWC-70539~70540
神前 暁(MONACA)作曲・プロデュースによる、作品を彩る劇伴を完全収録。
キャラクターデザイン:高橋裕一描き下ろしデジジャケット、三方背スリーブケース仕様。特製ブックレット封入。
<CD>
劇伴44曲収録
・キャラクターデザイン:高橋裕一描き下ろしジャケット
・三方背スリーブケース仕様
・特製ブックレット
●作品情報
『Vivy -Fluorite Eye’s Song-』
【スタッフ】
原作:Vivy Score
監督:エザキシンペイ
助監督:久保雄介
シリーズ構成・脚本:長月達平・梅原英司
キャラクター原案:loundraw(FLAT STUDIO)
キャラクターデザイン:高橋裕一
サブキャラクターデザイン:三木俊明
メカデザイン:胡 拓磨
総作画監督:高橋裕一・胡 拓磨
美術監督:竹田悠介(Bamboo)
美術設定:金平和茂
色彩設計:辻󠄀田邦夫
3Dディレクター:堀江弘昌
撮影監督:野澤圭輔(グラフィニカ)
編集:齋藤朱里(三嶋編集室)
音響監督:明田川仁
音楽:神前 暁(MONACA)
アニメーション制作:WIT STUDIO
【キャスト】
ヴィヴィ:種崎敦美
マツモト:福山 潤
エステラ:日笠陽子
エリザベス:内山夕実
グレイス:明坂聡美
オフィーリア:日高里菜
【アーティスト】
ヴィヴィ:八木海莉
エステラ:六花
エリザベス:乃藍
グレイス:小玉ひかり
オフィーリア:acane_madder
(C)Vivy Score / アニプレックス・WIT STUDIO
『Vivy -Fluorite Eye’s Song-』公式サイト
https://vivy-portal.com/
『Vivy -Fluorite Eye’s Song-』公式Twitter
https://twitter.com/vivy_portal
神前 暁 公式Twitter
https://twitter.com/MONACA_kosaki
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