INTERVIEW
2021.06.22
真っ赤な髪に天を突くようなハイトーンで、個性際立つ歌い手シーンにて強烈なインパクトを残し続けるシンガー・あらき。そんな彼がおよそ5年ぶりとなるニューアルバム『UNKNOWN PARADOX』をリリースした。DECO*27、すりぃ、堀江晶太、かいりきベアなど錚々たるクリエイターを迎え、自由な発想で作られた本作。久々となるアルバムであらきは何を思い、歌い、そして物申したのか。
――近年はGero×ARAKI名義でのリリースもありましたが、あらき名義のアルバムとしては久々になりますね。
あらき 久しぶりですね。『THE SKY’S THE LIMIT』以来なので、4年ちょっとぶりになります。
――その間、自身のバンドのAXIZでのリリースは挟んでいますがソロ名義では4年あまり空いていますから、当時とはご自身の環境など違ってきますよね。
あらき 全然違いますね。何もかも違います(笑)。
――そんななか満を辞してリリースされる『UNKNOWN PARADOX』ですが……。
あらき いやあ、辞していますね(笑)。
――辞していますか(笑)。久々のアルバムですが、どのように制作を進めていったのですか?
あらき アルバムのコンセプトを完全に固めてから作家さんの方に投げて、楽曲を書いてもらおうというのが根本にありました。昔から歌い手の人たちは、コミケとかでCDを出す際に大体カバー曲中心だったのが、最近は作家さんにお願いしてとか、オリジナル中心のアルバムを作るというのが主流になってきているんですよね。自分もそういうオリジナル中心のアルバムを作りたかったんですけど、個人でやっていると何人も作家さんに連絡するのも脳みそが回らない部分があるので、そこはレーベルさんにお願いして……。レーベルさんの力を借りないといけないな、というアルバムにしたかったというのもありました。
――メジャーからリリースするという点においては、そういった面でも大きいですよね。それだけに多くのクリエイターとともに作られた、実に個性的な楽曲が集まったアルバムになりましたね。
あらき 各曲ごとのクオリティはとてつもなく高いですよね。すべて僕的には1位という曲なんですけど、それを最終的にアルバムとして1つにまとめなくてはいけない。そういう“起”と“結”をつける意味で、1曲目と12曲目が最終的に足されたんですよね。
――あらきさんとK.F.Jさんによる「DOXA」と「Relight」ですね。それによって個性的な楽曲たちがアルバムとして1つにまとまるという。作家さんとのやりとりはどのように進めていきましたか?
あらき 作家さんとは一人ずつオンライン会議をやったんですけど、楽曲のイメージやジャンル的なリファレンスを一応出してはいるんですけど、自分としては作家さんの特色を尊重したいのがあったので、「アルバムのコンセプトはこれです、強いていえばこういう単語を織り交ぜてほしいです」っていうくらいの発注しかしていないですね。その人の色でこのテーマを表してほしいというので最初進めました。
――ある程度自由な発注になったわけですが、そこで上がってきたものはあらきさんの思惑にはしっかりとはまった?
あらき すべてがバチっとはまりましたね。自分で選んだ方々でしたし、この人にこそお願いしたいという方ばかりなので、僕としてはどういう曲が来てもOKだったんですけど、「これこれ!」っていうものばかりでしたね。
――自由な発注というなかで、唯一押さえたところがアルバムのコンセプトとのことでしたが、そのコンセプトはどういったものでしたか?
あらき まず『UNKNOWN PARADOX』というタイトルを一番最初に決めまして。“誰も知らない矛盾”をテーマに、それだけを作家さんにお伝えしました。僕からすると「この作家さんが実際に何を考えているかわからない」というのもあって、そこを”誰も知らない”というのを当てはめて。皆さんの中で何か矛盾していることを楽曲に起こして提示していただきたいというコンセプトですね。
――非常に実験的な発注というか、そこからどんな楽曲が来るのか、というのも刺激的ですね。
あらき こういう形のほうがアルバムを作るには面白いんじゃないかなと思いましたね。例えば、「ライブで盛り上がる曲をお願いします」とか、「4つ打ちでシンガロングがある曲をお願いします」とか、そういう発注はあえて一切せずにやりました。
――ではそうして作られていった『UNKNOWN PARADOX』の収録曲について、1曲ずつお話をお伺いします。まずはアルバムの幕開けとなる小曲「DOXA」です。
あらき かなりインパクトがあると思っています。歌詞もたった4行しかないんですけど、これは作曲のK.F.Jと話し合いながら作りまして、まず出来上がった作家さんの曲を暫定の曲順で聴いてもらって、「この並びで聴いたときに、最初に1曲目に追加するとしたらどんなイメージがあります?」という話し合いのなかから出来ました。タイトルだけは最初から考えていて。「DOXA」ってギリシャ語で考えや意見という意味なんですけど、この曲から始まって次の2曲目から意見を述べていきたい、個々の作家さんの意見を代弁していきたいという、まさにタイトル通りの楽曲を1曲目に入れていきました。
――約90秒の短い曲ながら、あらきさんのボーカルも非常にインパクトのある楽曲ですよね。
あらき 「これから俺は意見を言うんだぞ」という曲です(笑)。4行の歌詞も小難しく書いたんですけど、言いたいことはそれなんですよね。
――そこから2曲目の表題曲「UNKNOWN PARADOX」へと続いていきます。
あらき この流れ、きれいですよね。
――詞曲はDECO*27さんですが、DECOさんが表題曲を書くことは決まっていたんですか?
あらき 発注段階ではDECOさんには楽曲を書いてほしいなっていうぐらいで何も決まっていなかったです。ただ、ほかの作家さんはオンラインで会議するんですけど、DECOさんとは直に会うんですよね。色々な話をしながらフラッシュアイデアを出し合うというのを楽曲を作ってもらうたびにやっていまして。待ち合わせている段階では何も決まっていないんですけど、その話し合いのなかでDECOさんが「自分、表題曲もらっていいですか?」って言うので、僕も「じゃあその感じでやりましょうよ」っていう感じで(笑)。そこから広がって出来た曲です。
――それがこのアルバム全体を表現する、DECOさんらしいアグレッシブなサウンドになりましたね。
あらき アルバムを表現する意味でもそうだし、「あらきってこうだろ」っていう俺の表題曲というのもちょっとまかなっているかなって聴こえますね。DECOさんも色んな方に書きおろして多種多様なサウンドを生み出していますけど、DECOさんから見た俺ってこういうことなんだっていうがこの楽曲なのかなって。
――そんなご自身を表する楽曲を歌った感想はいかがでしたか?
あらき いやあ、難しかったです……。楽曲のパワーが高いので、自分のマックス値に近いコンディションで、かつ脳内のイメージがバチっときていないとレコーディングできないなと思いましたね。そうじゃないと楽曲のパワーに押されてしまうので。
――そんなインパクト大の冒頭から、続いてはすりぃさんによる「拡声ノイジー」です。この曲はサビが素晴らしいですね。
あらき ガツンときますよね。すりぃさんの楽曲は投稿されるといつも聴いているんですけど、そのなかには軽快なチューンのほうが多いと思うんですけど、あえてすりぃさんのギターロックの要素を前面に出してもらい、自分のルーツにもあるパンクロックを表現してもらいつつということですね。
SHARE