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INTERVIEW

2021.06.23

主演を務める鬼頭明里からコメントも! “狂ったサーカス”をイメージしたTVアニメ『シャドーハウス』の世界の音とは――。物語を彩る音楽担当・末廣健一郎インタビュー

主演を務める鬼頭明里からコメントも! “狂ったサーカス”をイメージしたTVアニメ『シャドーハウス』の世界の音とは――。物語を彩る音楽担当・末廣健一郎インタビュー

――シャドーと生き人形が出て来る物語。その双方の存在を音で意識はされたのでしょうか。

末廣 打ち合せではシャドーと生き人形の音楽を分けてもいいかもしれない、という話は少し出ていたのですが、実際に原作を読んでみると、独立したシーンはそんなになくて。基本的にはシャドーと生き人形が会話でコミュニケーションを取っているシーンが多くて、片方だけが活躍するシーンがないわけではないですが、どちらかを音楽として分けることはないかもしれない、とその辺りはあまり考えずに、シャドーと生き人形を合わせた雰囲気で音楽は作っています。

――一緒にいるタイミングでどちらの世界とも浸透するように、というのはどんなところを意識されたのでしょうか。

末廣 この作品を読んでいると、例えばアニメでいう序盤である1巻の辺りは怪し気な雰囲気で、ここから何が始まるのか、というワクワクで惹きつけられるのですが、物語が進むにつれて「お影様」と「生き人形」の関係性みたいなものが重要になってくる作品だなと思って。むしろ関係性が物語の主役なのではないかとも思っているんですね。関係性が育ち深まっていくシーンも多いですし、そこに焦点を当てて心情の音楽などは作っています。関係性に焦点を当てるとすれば、いちいち音楽で説明をする必要もないのかなと思って、妖しげな世界でくるんであげた方が作品を見ている人は見やすいだろうなと思いました。

――先ほどおっしゃっていた「狂ったサーカス」要素はどのように散りばめましたか?

末廣 そこを音楽的に自分の中で解釈したときに、ベートベンとラヴェルとピアソラの要素を混ぜることだったんだと思います。リズムのアプローチに関しては、クラシックだけに留めてしまうと、古典の要素もあってどうしても行儀良くなりすぎてしまうので、もう少し『シャドーハウス』の普通ではない世界観として、どうにか汚したいという想いがありまして。主張の強い和音進行であったり、リズムの取り方とシンコペーションを取り入れたら、バランスとしても歪になるなと思って。あとはクラシックの中でも近代の方の和音を少し混ぜたりしながら気味の悪さを表現しています。

――今回の多彩なメニューの中で特に苦心されたのはどのような部分でしたか?

末廣 先ほども少しお話をしましたが、音楽と映像が同時に進んでいくアニメの場合は、組曲みたいな曲は映像で実際に見られるわけではないので、どこに音楽が当たるのかもわからない状況の中で、曲の途中でガラッと世界を変えるような曲の発注って本当に珍しいんです。そういう意味でも組曲っぽい構成になっているというのは、イメージとしてもどこで切り替わるのかが難しくもあったのですが、楽しんで作ることもできました。

――では楽しんで作られたのはどの曲でしょうか。

末廣 メインテーマですね。とにかく独特な世界観を表現するべくモチーフとなるメロディを決めてしまって、そこから制作していったのですが、そのメロディを作っているときが『シャドーハウス』の世界観に没頭している時間でもあったので楽しかったです。とりあえず1曲で世界観の全てを表そうと思っていたので、そういう意味では一番楽しみながら作っていた曲でもありました。アレンジバージョンもたくさん用意していますし、作品の中にモチーフを散りばめて、気づかないうちに耳にしているような使い方をしている箇所もところどころありましたね。

――レコーディングは生楽器で録られたのでしょうか。

末廣 やっぱりこの作品は壮大に聴かせたい、という想いもあり、生楽器で録りました。一部は打ち込みを使っていますが、今回は9割が生楽器での演奏ですね。しっかりとした編成での楽器で録らせていただきました。特に大変な曲が1、2曲あったので、ミュージシャンの皆さんには今回もご苦労をおかけしました……。

――実際に音楽がついた絵で印象的だったシーンを教えてください。

末廣 第1話の冒頭なんですが、組曲を2曲繋げているんですよね。1曲で聴けるような雰囲気で繋げてくださっているんですが、組曲の前半と、途中からメインテーマが入っていくという流れがまるで映画を観ているような感じにさせているのが印象的でしたし、オープニングからエンディングまで1つの世界の中にずっといるような気にさせてくれる映像と音楽との混じり方が、すごく良い意味で溶けあっているのが印象的だなと思いました。

――あの第1話についてはフィルムスコアリングっぽい作りでしたよね。

末廣 セリフもなかったですしね。まるであて書きしたようにつけていただいていたのが素敵でしたね。

――第8話については最後にエドワードがピアノを弾いている、その曲がそのままエンディングになっていくのも驚きでした。

末廣 特殊エンディングで劇伴が使われたのですが、半分絵に当てて作っているので、より魅力的なシーンになっていますよね。ピアノの指の動きを撮影させてほしい、ということでピアニストの指や後ろ姿を撮影したんです。その撮影のためだけにピアニストを呼んで、実際のピアニストの指を確認して絵をつけられたシーンでした。とても印象深いですね。

――そんな劇伴もさることながら、やはり今回はオープニングテーマも末廣さんが作られたインスト曲になっていることで話題をさらっています。最初からオープニングはインストで、というお話だったのでしょうか。

末廣 劇伴の納品が全部終わったあとで改めて発注をいただいたんです。始めは「オープニングテーマは誰が歌うんだろうな」くらいでいたんですけど、納品が終わってだいぶあとになって「オープニングを音楽のみのインストでお願いできないか」というオーダーをいただきました。世界観を作ったあとでしたし、メインテーマのメロディを使って作るというお話だったのですが、「こんなオファーってあるんだなぁ」と驚きました。なかなかないですよね、歌のないオープニングテーマって。

――鮮烈な印象です。

末廣 そうなりますよね。元々こういうことが好きで劇伴の世界に入っていますし、インストで始まる有名な作品は「スター・ウォーズ」であったり「007」や「ピンク・パンサー」など世の中にはたくさんあるので、自分の中では自然な作業でもありました。アイデアもいっぱいありましたね。

――89秒のOP曲。どのような意識を持って制作されたのでしょうか。

末廣 音楽プロデューサーから具体的なリクエストがあったんです。まず、元々3拍子の曲を4分の4拍子の曲にしてほしいということ。あとはリズム隊とストリングスにプラスしてコーラスのような何か、という大枠を決めてくださったので、そこに沿って作ったのですが、相談をいただいたときに4分の4拍子にすることとリズム隊を足すことである程度の疾走感やライブ感みたいなものも必要かなと思ったんです。そこがアニメのオープニングらしさになるのかなと感じながらの制作でした。

――幕開け感がある1曲ですよね。劇場の幕が上がる、という演出もあって。

末廣 幕開け感を僕が意識したわけではないのですが、映像で舞台を表現しているのはとても面白いですよね。たしかにオープニングですし、幕開け感はあるのですが、あんなにどんぴしゃで“幕開け”を演出してくれると思っていなかったので、自分の音楽と合わさって見ごたえのあるオープニングになって良かったなと思いました。

――このサウンドトラックをどのように楽しんでもらいたいですか?

末廣 もちろん作品と一緒に楽しんでもらいたいですし、アニメだけではなく原作のファンの皆さんには原作を読みながらも楽しんでもらいたいです。もちろん音楽だけを聴いてもらってもケイトとエミリコをはじめ、ほかの「シャドー」や「生き人形」が生き生きとしているようなシーンが思い浮かぶ音楽を用意していますので、色々な楽しみ方を皆さんが見つけて楽しんでいただけたら嬉しいですね。

INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち

【鬼頭明里 コメント】
『シャドーハウス』の世界観に寄り添った楽曲ばかりで、アニメを観ていても「あ、この劇伴好き!」とふと思うことが多いです。
お屋敷やミステリアスな雰囲気で流れる重厚感のあるサウンドもあれば、エミリコたちの会話のシーンの可愛らしい楽曲もあって、サウンドトラックで聴けるのが今から楽しみです!


●リリース情報
TVアニメ「シャドーハウス」Original Soundtrack

6 月23 日(水)発売

価格:¥3,850 (税込)
仕様CD2枚組
品番:SVWC 70535-6
※アニメ描き下ろしジャケット/ブックレット(音楽・末廣健一郎によるライナーノーツ収録)

●作品情報
TVアニメ『シャドーハウス』
現在放送中

【キャスト】
ケイト:鬼頭明里
エミリコ:篠原 侑
ジョン/ショーン:酒井広大
ルイーズ/ルウ:佐倉綾音
パトリック/リッキー:川島零士
シャーリー/ラム:下地紫野
エドワード:羽多野 渉

【スタッフ】
原作:ソウマトウ(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載)
監督:大橋一輝
シリーズ構成:大野敏哉
キャラクターデザイン:日下部智津子
美術設定:前田みつき
美術監修:加藤 浩
美術監督:坂上裕文・後藤千尋
プロップデザイン:吉田優子
色彩設計:漆戸幸子
撮影監督:小畑芳樹
2Dワークス:久保田 彩
3D監督:宮地克明
編集:新居和弘
音楽:末廣健一郎
音響監督:小泉紀介
音響制作:HALF H・P STUDIO
制作:CloverWorks

【イントロダクション】
この館には秘密がある──
断崖に佇む大きな館「シャドーハウス」で貴族の真似事をする、顔のない一族「シャドー」。
その“顔”としてシャドーに仕える世話係の「生き人形」。
ある日、“シャドー”一族の少女・ケイトのもとに一人の“生き人形”が訪れ、
“影”と“人形”の不思議な日常が始まる。世にも奇妙なゴシックミステリー、ついにアニメ化!

Ⓒソウマトウ/集英社・シャドーハウス製作委員会

関連リンク

TVアニメ『シャドーハウス』公式サイト
https://shadowshouse-anime.com

TVアニメ『シャドーハウス』公式twitter
https://twitter.com/shadowshouse_yj

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