REPORT
2021.06.17
ボーカル「みあ」を中心としたプロジェクト、三月のパンタシア。そのデビュー5周年を記念したオンラインライブ、“三月のパンタシア 5th Anniversary Live 「もう一度、物語ははじまる」”が2021年6月1日に開催された。
三月のパンタシアは2016年6月1日に「はじまりの速度」でメジャーデビューした。その日から、ちょうど5年。記念すべき日に行われたライブは、この「はじまりの速度」をテーマにした物語を軸にしたものだった。
ライブはまず、みあの朗読から始まった。
《ストーリー1》
「こうやって会うのはいつぶりだろう――」
“君”との久しぶりの再会。
出会ってからずいぶん月日がたつけど、会うたびにうれしくて、泣きたくなるのは変わらない。
でも、“君”の横顔はなんだかいつもと違うように見えて、言葉に詰まった“私”は、ついぶっきらぼうな返事をしてしまった。
朗読が終わると、最初の曲「パステルレイン」が始まった。“アイドル”のようなパステルカラーのスカートを着たみあが、元気に歌いだす。その後ろと左右、床面に映像が映し出されるようになっていて、配信ライブならではの視覚的な演出がなされていた。
今回はオンラインライブなので、数多くのファンがその様子をチャットしながら楽しんでいた。「どうやったら画面を拡大できるのか」などとみんなで教え合っていて、画面の中と同様にチャットも温かい雰囲気に包まれていた。
そして、2曲目「恋はキライだ」。みあによる小説『8時33分、夏がまた輝く』のED曲として制作された楽曲で、楽曲、物語、映像が組み合わさった三月のパンタシアらしい作品として仕上がっている。バックにはリリックビデオが映されていて、歌詞が視覚的にも胸を突き刺すような感覚に襲われる。続く「青に水底」ではマリンブルーの海中をイメージさせる映像を使用。みあの歌声と水底にいるかのような息遣いが、苦しげな心情を表現していた。
そして、第2のストーリーの朗読が始まった。
《ストーリー2》
最近、“君”となかなか会えない。
今日は特別な日だというのに。
ひとりぼっちの夜、“私”は不安でいっぱいになる。
それは“君”が離れていってしまうかもしれないという不安。
「“私”は何も言えなくて、迫りくるサヨナラの予感を必死に振り払っていた――」
4曲目の「day break」はメジャーデビュー前、初めて公開された三月のパンタシアの原点ともいえる曲。“どうか私がいること忘れないでね”とみあは歌う。別れを予感させる物語と歌詞がリンクする。幻想的な映像も相まって、ライブ中盤で感情が大きく動かされた。続いての「ソーダアイス」は一転して激しいギターロック。ここでは映像演出ではなく、ライトだけの演出だった。生バンドによる激しい演奏と、照明の演出で一気にヒートアップする。
6曲目「青春なんていらないわ」では、みあがまるで会場にみんながいるかのように、大きな振りでクラップをしていた。歓声はないが、配信を見ているファンのチャットは激しい盛り上がり。だが、“この夜ももう終わり お別れがもう近い”と、みあの歌は物語の終わりを告げようとしていた。
最後の朗読が始まった。
《ストーリー3》
ずっとそばにいたいと、いつも胸の中だけで願っていた“私”。
明日の行方すら私たちにはわからない。
でも、それでも“私”は“君”と笑い合える未来を紡いでみたい。
“私”は一歩を踏み出し、また“君”に会いたいと気持ちを伝えた。
「これからも、よろしくね」
そういって、“私”は“君”が差し出した手を両手で包んだのだった。
「私たちはずっと、どこへたどり着くかわからない旅をしている。
ここまで歩んできた君と私の物語。
この曲で、私たちはもう一度始まる――」
物語の最後を締めくくるのは「はじまりの速度」。まさに5年前の今日、リリースされたデビュー曲だ。みあの歌声はやさしくて温かくて、そして力強かった。
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