GARNiDELiAのボーカリスト・MARiA(メイリア)によるワンマンライブ“MARiA Live 2021 「うたものがたり」”が、6月5日に東京・チームスマイル豊洲PITで開催された。物心がついた頃から歌とともに生き、シンガーとして様々なキャリアを積んできた彼女だが、実はソロで単独公演を行うのは今回が初めて。豪華作家陣が参加したソロアルバム『うたものがたり』を引っ提げ、MARiAにしか紡ぐことのできない歌をたっぷりと聴かせる、1日限りの貴重な公演となった。
会場には新型コロナウイルスの感染拡大予防対策を徹底したうえで観客を入れ、同時にStreaming+による配信も行われた今回の公演。オープニングではMARiAによるモノローグ調の語りが場内に流れ、彼女が“私の物語”と“あなたの物語”の幕開けを告げると、バトンを持った二人の女性パフォーマーが登場し、華麗なバトントワリングを披露する。彼女らの導きによって、ステージの幕が左右に開くと、暗闇に包まれた舞台の中央にピンスポットが当てられ、MARiAが登場。膝をついて座り込んだ状態の彼女は、ハンドマイクを両手で握りしめながら、ソロアルバムより山下穂尊(いきものがかり)が提供したバラード「憐哀感情」を歌い始める。
インタビューによると、この楽曲は『うたものがたり』収録楽曲の中で一番最初にレコーディングしたもので、彼女自身、現場では「“歌う”というよりも、何にもない暗いステージに私が一人、ピンスポットを受けて立っていて、そこで呟いているみたいな感覚」だったと語っていた。そのイメージから、MARiAが各楽曲の主人公となって全10曲・10編の物語を演じていく、アルバム全体のコンセプトが出来上がったと話していたが、この日のステージでピンスポットを浴びながら静かに歌い上げる彼女は、まさに自身が語っていた前述の印象そのまま。MARiAの歌声は曲が進むにつれて高ぶっていき、最後には立ち上がって身を振り絞るような動きで、この曲の主人公が抱く愛を求める複雑な感傷を表現してみせた。
続けて、山崎まさよしが作曲したブルース調の感傷的なナンバー「マチルダ」を哀愁たっぷりに披露した彼女は、そこから鐘の音を合図に、ラテンのフレイバーを湛えた「ガラスの鐘」へ。MARiAは「“うたものがたり”にようこそ、今日は皆さん楽しんでいきましょう!」と観客に檄を飛ばすと、ステージに現れた四名のダンサーたちとともに“恋という名の煉獄”に捉われた主人公の物語を情熱的な歌唱で紡いでいく。本楽曲の歌詞には童話「シンデレラ」がモチーフに使われているが、このときMARiAが着ていたショルダーレスの華やかなドレス衣装も楽曲のイメージにマッチしていた。
ここで4曲目にして早くも嬉しいサプライズ。なんとこの日のために持ってきたという未発表の新曲「手探る夢、繋ぐ糸」が本邦初披露された。アルバム『うたものがたり』の収録曲にはなかったタイプのジャジーな曲調で、MARiAが冒頭などで聴かせたファルセット交じりのフェイクも雰囲気たっぷり。ダンサーたちと魅せたセクシーな振る舞いを含め、かつてジャズソングも歌っていた彼女だからこその見せ場を感じさせる、大人の恋のナンバーだ。
そのあとに挿まれた最初のMCパートで改めて挨拶し、17ヵ月ぶりとなるライブハウスでのライブ、ファンと向かい合って歌えることの喜びを伝えるMARiA。会場からの拍手に「最初から泣かせないで(笑)」と笑う彼女は本当に嬉しそうだ。オーディエンスに向けて「私が歌をうたい始めて、かれこれ18~19年ぐらいになるんですけど、そんな私が今まで以上に自分の歌にフォーカスを当てて作った1枚、『うたものがたり』のライブですから、今日は私の色んな歌を、隅々まで味わって帰ってください!」と呼びかけると、ここでこの日の一人目のゲスト、草野華余子をステージに呼び込む。
MARiAはステージ上に設置されたバーカウンター風のセットの店主となり、草野はその“バーメイリア”のお客さんという体でしばし歓談。MARiAとはGARNiDELiAでメジャーデビューする前からの付き合いだという草野は、以前からMARiAと会うたびに「楽曲を書きたい」と言い続けていたとのことで、その念願が叶ったのが『うたものがたり』に収録された「おろかものがたり」だったという。しかも同曲は、草野が自身の楽曲として発表してきた“「ものがたり」シリーズ”に連なるナンバーとして書いたもの。ということで、この日は草野の楽曲「おわりものがたり」と、MARiAの「おろかものがたり」を2曲続けて二人で歌う、スペシャルなコラボが実現した。
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