終わりと始まりの物語を空想するボーカリスト「みあ」による音楽ユニット・三月のパンタシアが、TVドラマ「あのときキスしておけば」のOPテーマ「幸福なわがまま」を配信リリース。そして、メジャーデビューからちょうど5周年を迎える6月1日、それを記念した配信ライブ“5th Anniversary Live 「もう一度、物語ははじまる」”を開催する。青春の儚くも美しい感情を物語に落とし込み、音楽に昇華してきた彼女は今、何を思い、どんな未来を空想しているのか。その思いの丈を語ってもらった。
――メジャーデビュー5周年ということで、活動を振り返る機会でもあると思うのですが、今どのような心境でいらっしゃいますか?
みあ 6月1日に行うアニバーサリーライブのタイトル“もう一度、物語ははじまる”に、私の今の思いがギュッと凝縮されています。去年からコロナの影響もあってなかなかこれまで通りに音楽を届けることができず、これからはウィズコロナを意識して音楽の伝え方を考えていかなくてはいけないなかで、「ここからもう一度、新しくなって、一緒に物語を紡いでいこう」というライブにしたくて。もちろんこれまで紡いできた物語の続きでもあって、変わっていくわけではないんですけど、でも新しくなっていくことで進める道もあると思うので、その一歩目をファンの皆さんと踏み出すことができれば嬉しいなと思っています。
――三月のパンタシアは、YouTubeやインターネット上での活動、SNSを通してのファンとの交流、みあさんが書き下ろしたものを含む様々な小説とのコラボなど、元々ウィズコロナ的なものに対応したエンターテインメントを展開してきた印象もあるのですが。
みあ たしかに元々インディーズの頃からネットを中心に活動していたので、これまでもやってきたことではあるんですけど、改めて三月のパンタシアの活動を知ってもらえる機会にもなるのかなと思っていて。例えば、去年の9月にリリースしたアルバム『ブルーポップは鳴りやまない』では、今まで以上に小説と音楽をリンクさせて、その都度SNSを活用しながら、より物語と音楽の親和性を楽しんでもらえるような作品を目指したのですが、やっぱり私たちの音楽表現の軸に小説があることを知らない方も結構いたんです。
――前向きに考えると、これまでYouTubeやTwitterなどを通じて発信してきた三月のパンタシアの活動が、こういった状況下だからこそ届く人には届いたのかもしれませんね。あと、改めて今までの楽曲を聴き返して感じたのは、三月のパンタシアの音楽は、色々なタイプの生き方をしている人たちの孤独に寄り添ってくれるということで。その意味では、コロナ禍の状況で三月のパンタシアの音楽に触れたことによって、心が豊かになった人も大勢いたのではないかと思います。
みあ まさに。『ブルーポップは鳴りやまない』はコロナ禍の状況を受けて制作したところもあって、そういうブルーな気分を拭い去ってあげられるような、ポップな音楽を作りたいという思いから制作を始めたので、そういう風な聴き方をしてもらえていたら、私としても嬉しいです。
――改めて、これまでの活動を振り返ってみていかがですか?
みあ 1歩1歩着実にやってきた感触があります。三月のパンタシアは一足飛びに駆け上がっていくような活動と言いうよりも、ファンと一緒に1つ1つ向き合いながら一緒に作ってきた手応えがあって。だから私は色々な場面で「君と私の物語」や「私とあなたの物語」という表現をするのですが、本当にファンと一対一の物語を一緒に紡いできたなと思います。振り返ってみても最初に思い浮かぶのはファン皆さんの顔だったりしますし。
――こういった状況下のなかでも、みあさんはSNSなどを通じて日々色んな発信をされていて、それに対してファンの方からたくさんの反応やリプライがありますが、そういった声についてはどういった感想をお持ちですか?
みあ 「ランデヴー」という曲があるのですが、あれはラブソングとしても聴けるんですけど、初めてファンへの気持ちをダイレクトに表現した楽曲にもなっていて。想いとしては、自分とファンの1対1の物語であり、私とファンのラブソングでもあるという気持ちで書いていて。「あなたのメッセージ全部覚えてるよ」とか「今でも初めて会ったときのことを覚えているよ」とか、自分でも「ここまで書いていいのかな?」と思うぐらい、素直な気持ちを形にしましたし、私は皆さんの声や笑顔にずっと救われ続けながら活動してきたなと思います。
――この5年の活動の中で、みあさん自身が小説や歌詞を書いたり、コンセプトメイキングにも深く関わることで、ファンとの絆がより深まっていった印象もありますが、その辺はいかがですか?
みあ それこそインディーズで活動してる頃のことを振り返ると、もちろん音楽や歌が好きで活動を始めたんですけど、今だから正直に言うと、そこまで具体的なビジョンや夢は思い描けていなくて。でも、だんだん「こういことをやりたい」というのが見えてきたのは、やっぱりファンの存在が大きかったです。「歌が好きです」とか「毎日聴いてます」といった言葉をもらうなかで、自分を信じられるようになったというか。自分が作ったものをもっと聴いてほしい、もっと喜んでほしいという気持ちが、活動をしていくなかで少しずつ膨らんでいって。自分も曲と一緒に成長しながらここまできた実感があります。
――発表した作品への評価がみあさん自身の自信にも繋がって、より自分を表現できるようになっていったというか。
みあ そうですね。特に初めて歌詞を書いたときは、人に見せるのがすごく恥ずかしくて。昔から自分の内側を見せるのがどうしても苦手なんですよね。でもそうやって内側を引きずり出したものに対して声をもらうことで、「見せていいんだ」と思えるようになって。「じゃあ今度はこういうのを見せてみようかな」みたいな感じで、それが楽しくなっていってるのも大きいかもしれないです。
――そういった心持ちの変化や、YouTubeの動画がバズって話題となった「青春なんていらないわ」、そして高い評価を得たアルバム『ブルーポップは鳴りやまない』などで存在が知れ渡っていったのが、この何年かの活動だったのかなと感じます。
みあ そうですね。特に「青春なんていらないわ」のときは、それまで発表してきたものとは方向性を少し変えてみたんです。サウンド面でもバンド色を強くしてみたり、イラストもダイスケリチャードさんにお願いするようになって。色味やアートワークを含めてガラッと印象を変えたので、最初はそれがどう受け取られるのか不安と興奮が混じった気持ちで公開したんですけど、想像以上にたくさんの人に聴いてもらうことができて。YouTubeの登録者数も一気に増えたので、そこで手ごたえは感じましたね。(「青春なんていらないわ」を作詞・作曲・編曲した)n-bunaさんも「三月のパンタシアにお力添えできてすごく嬉しいです」というメッセージをくださって。本当に周りの人にも助けられながらここまで活動できてきたなと思います。
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