――あらためて『閃光のハサウェイ』の音楽制作についてお伺いします。本作は澤野さんが手がけられた『UC』『NT』と比べて、”大人のガンダム”ともいえる重厚なドラマが描かれた作品となりました。澤野さんには事前にどんなオーダーが来ましたか?
澤野 プロデューサーの小形さんからは、今回は”大人のガンダム”にしたいので、昨今のハリウッドのような音楽がいいと。最近のハリウッド映画の劇伴って、なるべくメロディを排除して大人向けのサウンドやアレンジで聴かせるところがあるんですが、『閃光のハサウェイ』も音楽面ではそういう方向でいきたいと。僕のなかでも『UC』はメロディをはっきり聴かせたいなというのがあったので、『閃光のハサウェイ』ではそうしたハリウッド的な要素を取っ掛かりとして作るのも面白そうだなと思いました。とはいえ、メインテーマやキモとなるシーンには『UC』のようなメロディアスな音楽が欲しいというのもあって、逆にそこを立たせるためにほかを抑えたいという意図も加わり、こういったサウンドになったというのはありますね。
――たしかに本作は、メロディを際立たせたものより、ビートを聴かせた重厚なサウンドという印象がありました。まさにハリウッド的というか、具体的にいうとクリストファー・ノーラン作品的というか。
澤野 そこを意識したのはあります。ただ、メロディはなくても淡々とした音楽にはしたくなかった。そういう意味でリズムやサウンドの作り込みで緩急や抑揚をつけて、メロディがないけどエモーショナルに聴かせたいというのはありました。
――この重さというのが本作のポイントではあるのかなと。例えば序盤のハイジャック襲撃シーンでの「CC…12yl」は、ビートは軽快なんだけどその後ろで鳴っている「ズーン」という音が非常に効いているなと。あそこはノーラン作品でも『インセプション』を思わせるような。
澤野 そうですそうです。ああいう音でインパクトをつけたりするのはここ最近のほかの作品でもやっているんですけど、特に今回はそこを際立たせてやった気はしますね。
――そうした重さは地球が舞台というのもあって、モビルスーツの市街地戦やそれを人間の視点で観ているのも踏まえて、独特のリアリティを感じさせるものがありました。
澤野 今回は大人の作品という部分と、未来を感じるサウンドというのもある程度入れてほしいというのがあったので、自分が観てきて影響を受けてきたもの、例えば『インターステラー』とか、遡ると『ブレードランナー』とか、デジタルなものだったり、そうした未来を感じるサウンドをある程度取り込んでいけたらいいなと思って作っていったのはありますね。
――またMS(モビルスーツ)戦などの音響が、これまた今っぽいエフェクトを感じさせるもので、そこもまたガンダムとしてもフレッシュだったなと。そこで澤野さんの劇伴も、ハサウェイとギギがホテルを脱出するシーンでの「ESIRNUS」などで、デジタルや弦のエフェクティブな使い方が印象的で。そこのリンクというのは意識されましたか?
澤野 音響に関しては事前には特に何も聞いていませんでした。ただああいうエフェクティブな音を劇伴に入れたのも、SF的なものとかを自分なりに汲んでサウンド的に面白いものが構築できたらなというのがあって、もしそう感じていただけたのならそこがうまくハマったのかなと。
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