リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

REPORT

2021.05.27

ずっと此処へ、辿り着こうと走ってきたね。“THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 7thLIVE Q@MP FLYER!!! Reburn”DAY1レポート

会場を夕暮れの世界から“夜”へとギアチェンジしたのが、大関英里と渡部優衣の「Super Duper」だ。ユニット・Jus-2-Mintとしての楽曲で、今回がライブ初披露だ。客席をじっと見つめて歌う大関と、会場の各所に目まぐるしく視線を散らす渡部の対比が面白い。メインステージで踊る2人のダンスはキレッキレで、一体になって踊るという表現がふさわしい。終盤のハイトーンの畳み掛けからほとばしるような感情の濃さや、アウトロのダンスの鮮烈さまで、大関と渡部の新境地といってもいい卓越したパフォーマンスだった。

疾走感のある和ロックにテンション上がるイントロは「百花は月下に散りぬるを」。郁原ゆう、南早紀、小岩井ことりのユニット・花咲夜の楽曲で、「ミリシタ感謝祭2019~2020」でサプライズ披露されたのが記憶に新しい。今回のこの曲で特筆したいのはセンターの郁原ゆうで、背中にキャンプファイアの炎を背負ってキレのあるダンスを見せる姿がこんなエミリー見たことない! と感じるほどかっこいい。扇子を持ったダンスにもそれぞれの動きのニュアンスがあり、小岩井は悠然と、南はビシビシとキレよく感じるのが目にも楽しかった。

ここでのMCタイムはかなりテンションが上振れしているキャストが多く、それだけ今日のライブが充実していることが感じられる。トークから、バックヤードのケータリングの豪華さなども垣間見えた。MCの間に、さらに会場の雰囲気は夜に。

ライブ再開を告げたのは「Blue Symphony」。ピアノ主体のメロディアスで壮大な特殊イントロ付きのアレンジだ。メンバーは田所あずさ、平山笑美、香里有佐、雨宮天、麻倉ももの5人。クレシェンドブルーを思わせる顔ぶれで、前半戦八面六臂の大活躍だった小笠原にかわって、香里が歌唱に加わっている。「LTP」ナンバーのこの曲に1人香里が加わっているのを見ても、今日の構成は香里と南に37人+13人だった頃の「ミリオンライブ!」の世界を共有させる意図もあるように感じた。それにしても、このメンバーの中に入ってまるで違和感のない香里のポテンシャルと対応力は傑出している。夕闇迫る世界を蒼く染め上げる、圧巻のパフォーマンスだった。

村川梨衣と渡部優衣の「夜に輝く星座のように」は「LIVE THE@TER DREAMERS 05」収録のデュオ曲。明るく元気いっぱいなイメージの強い奈緒と亜利沙が、楽曲に合わせてクールで妖艶にもなれることを、演者の新しい引き出しとともに見せつけた楽曲だ。ポンチョ衣装のキャラクターカラーは青と赤で、左右に別れたふたりの対比がまるであつらえたユニット衣装のようだ。情感豊かなボーカルと共に手を差し伸べあったふたりの背後に控えるダンサーたちが、動きと表情でぴったりと渡部たちにシンクロしている姿にもプロフェッショナルを感じた。

「待ちぼうけのLacrima」は、平山笑美、愛美、駒形友梨の星座ユニット・アクアリウスの楽曲で、原曲メンバーが揃った。この曲は原曲メンバーでなければならないと思うのは、素晴らしい歌唱力を持った3人が、このメンバーなら全力以上の魂を歌唱に込めても必ずそれ以上の物を返してくるという信頼で結ばれたユニットだからだ。この曲はカメラワークも見どころで、空と木々、湿ってけぶる空気、それらの大自然を背負って歌うアイドルたちの姿を瑞々しく切り取っていく。超絶表現の応酬が、どこまでも高みに昇っていく様子は圧巻。最高点に達したのは駒形の「夜が…はじまる」の圧巻のロングトーンだと思うが、それも直近の愛美の「こぼれたミルク色の~」、平山の「世界の中心がそこに~」で練り上げたテンションがあるからこそピタリとハマるのだと思う。やはりこの3人の組み合わせに、ライブハウスは狭すぎる。

化学変化を強く感じたのが、雨宮天と香里有佐の「絵本」だった。この曲は雨宮天と北沢志保の代表曲の1つであり、彼女の世界のイントロの中で香里が見せたゆったりと舞うようなダンスの表現力が素晴らしい。香里の感情を振り絞るようにまっすぐ歌う力強い歌唱は、新しい一面かもしれない。雨宮は光の中、一つひとつのフレーズを本当に大切に歌っているのが印象的で、“お姫様は強いもの”のフレーズの響きと広がりの美しさは音楽的ですらあった。

傑出したボーカリスト2人が、まるで2人で1つの歌声を奏でているような一体感が心地よい。北沢志保といえば孤高の代名詞だった頃もあるが、それが他者を許容するしなやかさを手に入れたのなら間違いなく成長だろう。そして、誰かと歌うことが、ソロの「絵本」では生まれない表情や表現を引き出していたように思う。ラストに視線を流す余韻までシンクロしていたのが印象に残った。

今回のライブでの新しい挑戦が、幕間的に行われたランタンパフォーマンスだった。しっとりとした音楽とともに、ポンチョのフードを下ろしたアイドルたちが、ランタンを掲げてゆっくりと花道を歩む光のパフォーマンスだ。おだやかでゆるやかなダンスとともに、ランタンの灯が蛍火のように舞う。やがて彼女たちがランタンを足元に置いて去ると、そこには花道を照らすランタンの光の道ができあがった。

ランタンパフォーマンスの余韻が残る中、ジャーンとアコースティックギターを鳴らしたのは愛美。それに続いて本当に美しい歌声を響かせたのは、なんと渡部恵子だった。愛美と渡部恵子による「流星群」アコースティックパフォーマンスの時間だ。

この曲の歌い手である愛美自身のギターとともに、渡部が想いを込めて、本当に大切に歌っていることが伝わってくる。それを受けた愛美自身の歌声はハスキーで、情感もマシマシだ。日が落ちた会場をサイリウムの光が満たす中、キャンプの火を囲みながらギターを奏で、ともに歌うのは宝石のような時間だ。サビでは渡部の主線に、愛美が下の線を歌って合わせて美しいハーモニーを響かせた。

実は渡部は、2016年のイベントでほんのワンフレーズ「流星群」を歌ってみせたことがあった。それがまさか、屋外の大ステージで愛美と一緒に歌う日が来るとは思わなかった。そして大きな成長を感じたのが愛美のギターの表現力で、彼女が間奏でアコースティックギターを奏でるだけでしっかり間が持つ、いや、聴き惚れてしまう。ギターで語るとは、こういうことか。ラストのフレーズで歌声と感情が溶け合った最高の余韻が残る中、歌い終えた渡部がはにかんだように愛美に笑いかけた。

流星から星屑へ。壮大なイントロとともにスタートしたのは田所あずさ、田村奈央、香里有佐、駒形友梨、小岩井ことり、諏訪彩花、麻倉ももによる「星屑のシンフォニア」だ。オリジナルメンバーからは小岩井と駒形が参加。斉藤佑圭と野村香菜子(と美希)は今回のライブに不参加なこともあり、仲間たちの想いも背負っての歌唱となった。個人的には、4人での「星屑のシンフォニア」の想いの結晶としての側面は、“THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 4thLIVE TH@NK YOU for SMILE!!”でのパフォーマンスが究極だと思っている。だから6人のアイドルたちが会場センターのキャンプファイアを囲んで、軽やかなステップとともに美しい歌声を響かせる姿は新鮮な気持ちで楽しむことができた。曇天の下、会場いっぱいに色とりどりの星屑がきらめき、歌っているみんなが笑顔。それはとても幸せな情景だった。

「STANDING ALIVE」を披露したのは雨宮天、大関英里、愛美、近藤唯、南早紀、渡部恵子、原嶋あかり、村川梨衣、渡部優衣の9人。原曲ユニット・ARRIVEからはセンターの近藤唯のみが参加した。あえて1人、それもセンターという配置には逆説的に1人を際立たせる効果があって、個性豊かな綺羅星のごときアイドルたちの中で、なおセンターを務めるだけの輝きが今の可憐(近藤)にはある証左であるように思える。また、古くからのファンからすれば「星屑のシンフォニア」と「STANDING ALIVE」は対になる曲として記憶している人も多いだろう。そして、何故この曲がライブのクライマックスに持ってこられたかは、近藤と仲間たちが曲頭のフレーズを歌いはじめてすぐにわかった。

「ずっと“そこ”へ辿り着こうと走っていたよ
So we still stand alive. We can arrive at the place!」

それは先の見えない時間の中を、ただこの日を目指して耐えて努力し続けてきた仲間たちの命の讃歌だった。

田所あずさが「ラストナンバー、行きましょう!」と宣言してスタートした楽曲は「brave HARMONY」。“THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 4thLIVE TH@NK YOU for SMILE!!”に向けて制作されたテーマ曲の1つで、武道館の2日目を担った「BlueMoon Harmony」によるチーム曲だ。「ミリオンライブ!」の前半期の集大成ともいえる楽曲の1つで、当時は武道館の観客席からステージを見つめていたはずの南と香里がこの曲を共に歌う意味は大きい。

星座たちが集って歌う壮大なる青の全体曲を受けて、誰からともなく会場が自然に青く染まる。それを何気ない当たり前の変化に感じさせるのがプロデューサーたちの素晴らしさだ。青い光の海の中、ラスサビで炊かれるウルトラオレンジと、キャンプファイアの篝火が美しく調和する光景は夢のように美しかった。

アンコールの最新情報告知では、「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズの」4th Anniversaryを祝うフェスティバルが秋葉原で開催されることなど、様々な発表が行なわれた。その中でも(拍手が)盛り上がっていたのが、「AIKANE?」がメインコミュとして実装される発表とMVの初公開だった。この盛り上がりは楽曲の強さはもちろん、今回のライブの前半戦で誰よりも頑張っていた小笠原に対する祝福の意味もあったのではないかと思う。

青羽美咲の「みんなの笑顔で灯した炎が、未来まで照らしますように!」という祈りにも似た前フリから流れ始めたのは、「THE IDOLM@STER」シリーズ15周年記念曲である「なんどでも笑おう」のイントロ。アイマス5ブランドを横断して歌う楽曲だけに、現地ライブでの初披露が「ミリオンライブ!」の単独ライブになったことに驚いた人は多いだろう。しかしこの曲に込められた想いを考えれば、ライブの中止から一年の時を経て、笑顔でライブ開催に至ったこの日ほど初披露にぴったりなタイミングはなかったように思う。

「ミリオンライブ!」のアイドルだけで歌い、歌いだしを田所の伸びやかなソロが担う構成はとても新鮮で魅力的だ。ステージ上空の蝶のロゴが、「ミリオンライブ!」だけでなく他のアイマスブランドの色にも変わる。ステージのアイドルたちが、各ブランドのポーズを決める。今日は代表してこの曲を披露しているけれど、すべてのアイマスの魂を共に携えて歌っていることが伝わってくるステージだった。

そして「シアターデイズ」の3周年楽曲である「Glow Map」は、このライブでの披露が何より待ち望まれていた楽曲の1つだろう。時間はかかってしまったが、なんとか“3周年”の間に間に合った。全員曲でポンチョモチーフの衣装のアイドルたちがステージにズラリと並ぶと、ステージに色とりどりの花が咲いたように色鮮やかだ。田所の「行ってきます!」の宣言とともに、アイドルたちは花道を駆けてセンターステージへ。ラストは未来への号砲を思わせる花火が上がり、華やかにステージを締めくくった。

この日のライブは月も星もない曇天だったが、地上には色とりどりの輝きがあった──そんなフレーズを考えていたとき、最後の挨拶で郁原ゆうが「じゃーん、月が」ととっておきの秘密を明かすように天を示した。超満員の観衆が、キャストたちが、その場にいた全ての人間が天上に顔を出した月を見つけた。上弦から満月へと向かうラグビーボールのような小さな月が、たしかにそこにあった。そして、みんなが月を見つけた頃合いで一言、「仕掛け人さま、月がきれいですね」。全員が挨拶しなくてはいけない限られた時間の尺の中で、月の存在を共有して、夏目漱石(俗説諸説あり)を引用してみせる知性とウィット。アイマスのMC史に残る名フレーズだった気がする。ラストの挨拶は久しぶりのライブを無事に終えた感謝と喜び、そして翌日のDAY2の成功を祈るあたたかな言葉で溢れていたのだが、今回はあまりにも鮮やかだった“月”の言葉を取り上げたい。

最後の挨拶を終えてのラストナンバーは「Thank You!」。どれほど大切で特別か、どれだけ言葉を尽くしても足りない“はじまりの楽曲”だ。

だがこの日の選曲からは、この場所から数えきれないステージをまた、つくっていく。そんな強い意志を込めた、レジスタンスの一曲であるように感じた。

TEXT BY 中里キリ

「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 7thLIVE Q@MP FLYER!!! Reburn」DAY1
2021年5月22日(土).山梨県・富士急ハイランド コニファーフォレスト

<セットリスト>
M01:Flyers!!!(ミリオンスターズ)
M02:Legend Girls!!(ミリオンスターズ)
M03:ランニング・ハイッ(郁原ゆう、平山笑美、田村奈央、駒形友梨、渡部優衣)
M04:アニマル☆ステイション!(田所あずさ、雨宮天、南早紀、諏訪彩花、原嶋あかり、小笠原早紀)
M05:Helloコンチェルト(田村奈央、大関英里、村川梨衣)
M06:空に手が触れる場所(平山笑美、小笠原早紀)
M07:HOME, SWEET FRIENDSHIP(近藤唯、渡部恵子、小岩井ことり、原嶋あかり、麻倉もも、村川梨衣、渡部優衣)
M08:Bigバルーン◎(愛美、近藤唯、南早紀、小岩井ことり、諏訪彩花、小笠原早紀、田村奈央、渡部恵子、原嶋あかり)
M09:Good-Sleep, Baby ♡(田村奈央、香里有佐、渡部恵子、原嶋あかり)
M10:夢色トレイン(郁原ゆう、麻倉もも、田村奈央、渡部恵子、原嶋あかり)
M11:Melody in scape(大関英里、駒形友梨)
M12:君だけの欠片(郁原ゆう、諏訪彩花)
M13:Flooding(田所あずさ、平山笑美、雨宮天、小笠原早紀、麻倉もも)
M14:Do the IDOL!! ~断崖絶壁チュパカブラ~(田所あずさ、郁原ゆう、近藤唯、小岩井ことり、村川梨衣、ミリオンスターズ)
M15:SUPER SIZE LOVE!!(大関英里、諏訪彩花、原嶋あかり、小笠原早紀)
M16:ココロがかえる場所(田村奈央、愛美、南早紀、渡部恵子)
M17:夕風のメロディー(香里有佐、近藤唯、駒形友梨)
M18:Super Duper(大関英里、渡部優衣)
M19:百花は月下に散りぬるを(郁原ゆう、南早紀、小岩井ことり)
M20:Blue Symphony(田所あずさ、平山笑美、香里有佐、雨宮天、麻倉もも)
M21:夜に輝く星座のように(村川梨衣、渡部優衣)
M22:待ちぼうけのLacrima(平山笑美、愛美、駒形友梨)
M23:絵本(雨宮天、香里有佐)
M24:流星群(愛美、渡部恵子)
M25:星屑のシンフォニア(田所あずさ、田村奈央、香里有佐、駒形友梨、小岩井ことり、諏訪彩花、麻倉もも)
M26:STANDING ALIVE(雨宮天、大関英里、愛美、近藤唯、南早紀、渡部恵子、原嶋あかり、村川梨衣、渡部優衣)
M27:brave HARMONY(ミリオンスターズ)
-encore-
EN1:なんどでも笑おう(ミリオンスターズ)
EN2:Glow Map(ミリオンスターズ)
EN3:Thank You!(ミリオンスターズ)

(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

関連リンク

「アイドルアスター ミリオンライブ!」ランティスサイト
https://www.lantis.jp/imas/

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP