声優ユニット・Run Girls,Run!(以下、ランガ)のニューシングル「ドリーミング☆チャンネル!」が、5月19日にリリース。TVアニメ『キラッとプリ☆チャン』のOPテーマに起用された表題曲は、『プリ☆チャン』はもちろん『プリティーシリーズ』全体への思い出と愛が詰め込まれたような、ファン垂涎の楽曲に。加えて、歌声やMVにも収められたダンスといった側面からは、ランガらしいハツラツさも感じられる非常に濃い1曲に仕上がった。本稿では、集大成感のある楽曲に3人が込めた想いや、互いに感じた成長などを中心に、たっぷりと語ってもらった。
――今年の2月には、皆さん舞台「プロジェクト東京ドールズ」に出演されました。
林 鼓子 私自身、元々舞台がすごく好きで舞台観劇も趣味なので、だからこそ客観的に舞台での立ち回りなどについて考えられた気はしています。それに、声優としてのお芝居とは少し違う部分があったようにも感じていて。例えば掛け合いのシーンでは、稽古のときから相手の方が実際に目の前にいるので、より相手の芝居を聞くことの重要さを実感しました。
――そういった経験で得た感覚を、アフレコに反映できたりも?
林 すごくあります。アフレコの段階だと映像が絵コンテの状態だったりもするんですけど、「その先を想像する」ことをより意識するようになりました。元々距離感やキャラクターが向いている方向などを考えてはいましたけど、舞台を経験したことでさらに想像しやすくなったように思いますね。
森嶋優花 それに、舞台では自分が喋っていないときも常に見られているので、ずっと演技が繋がっている状態なんですよ。だから改めて、自分がしっかり役に入り込まないと演じることってできないんだなぁということも実感しましたし、演じるというのはマイク前に立ったときだけ切り替わるものなくて、作品丸々1本で役に入るものなんだなぁ……と思いました。
厚木那奈美 私、今回の舞台を経て臨んだアフレコ現場で、呼吸の流れが自然になったなと感じることがあったんですよ。それまではセリフのタイミングや、口パクや秒数を意識しすぎて、セリフの直前に息を吸って準備をしてしまいがちだったんです。でも、その「合わせなきゃ」という意識が減ったような気がしまして。
――何が作用したと思いますか?
厚木 「どういう喋り方や呼吸をしたら、自分はこの空間で(演じた)カナとして生きられるんだろう?」と一生懸命考えることが多かったからかもしれません。例えばカナ自身は前線に立って戦うわけではないんですけど、指示1つでもしかしたらドールズの誰かが死んでしまうかもしれない。そんな緊迫感のなかで呼吸が浅くなってしまったりといった経験が、舞台後に活きてきた実感がありました。
――舞台に加えて、有観客ライブも昨年末から少しずつ開催されるようになってきましたね。
林 まず、「お客さんが入ってるって楽しいな!」って純粋に思いました。それに、目が合ったりペンライトを振ってくれる姿が見えるとすごく力になるので、お客さんの力の偉大さも強く感じています。
森嶋 私も、「お客さんありきだな」って思います。レコーディングのときも、私はライブのときの空気感を想像しながら歌うタイプなので、お客さんがいて曲が完成すると感じる部分がすごくあるんですよ。本音を言えば、100%お客さんが入って一緒に声を出して楽しめる時間が早く戻ってきてほしいですけど、声は出せなくてもみんながペンライトで応えてくれるのを感じられることが、今はすごく嬉しいですね。
厚木 私、久々にお客さんが入っているのをステージから見て、一緒にライブの時間を過ごせる日を待っていた私と、みんなの気持ちって同じだったんだなぁ……って感じました。ライブ中も、空気感やみんなの一生懸命な身振り手振りを通じて、それが伝わってきたんです。そのとき、改めてこういう空間が好きだということと、待っていてくれるランナーさん(ファンの総称)がいるってすごいことなんだ! と感じました。
――さて、続いてニューシングルについてお聞きします。まず表題曲である『キラッとプリ☆チャン』の新OPテーマ「ドリーミング☆チャンネル!」は、今までのシリーズを強く感じる集大成感のある曲です。
林 「ここにきてまた、オープニングらしいオープニングが来るか!」というところにまず意外さを感じましたし、最初のOPテーマ「キラッとスタート」も思い出しました。イントロからダーン!って出てくる感じも結構似ているし、「咲かせよう」に近い歌詞も「キラスタ」にあるので、「3年経って、ここで回収してくるかぁ!」って感動したんです。それに2サビの“Rhythm! × Paradise! × Bright!”が『プリティーリズム』と『プリパラ』に、“Bright=キラッと”で『プリ☆チャン』とも結びつく……といった部分を通じて、改めて『プリティーシリーズ』を繋ぐ一員になれたんだと実感できたこともすごく嬉しかったですね。
森嶋 この曲はそういう『プリ☆チャン』のための部分も素敵なんですけど、ほかにも歌詞の表現方法が好きなところはたくさんあって。例えば2サビの“眩しい花みたいに”という表現がとても魅力的に感じたんです。リズム感とか楽曲の持つ雰囲気を楽しめるのももちろんなんですけど、「ここの歌詞、すごくいいな」という部分がたくさん見つかるのも魅力だなぁと思います。
厚木 逆に『プリ☆チャン』に繋がる歌詞でいうと、“エール”や“七色”といった言葉からはキャラクターやその成長も感じられるので、集大成として今までの思い出も表しながら物語が続いていくワクワク感も詰まっていて……本当に、「『プリティーシリーズ』っていいな」と改めて思えるようなオープニングだな、という印象でした。
――始まり感からドラマチックさまで、本当に色々な面をもつ曲ですよね。
林 そうですね。サビの後半にマイナーな音が入ってくるところでも、「あ、こんな明るい曲なのにそういうオシャレさ出すんだ!」と思いました。(桃山)みらいたちも大人になっているので、そういった部分でも「キラスタ」からの成長を感じます。
――歌詞は、掘れば掘るほど色々な要素が出てきますよね。例えば2サビの最後には、皆さんが演じられているキャラ名が隠れていたり。
森嶋 ただ実は今回はコロナ禍でレコーディングでも作詞家さんや作曲家さんとお会いできなくて。
林 現場で詳しいお話を聞けなかったので、そこは私たち自身も歌いながら「そうなのかな!?」みたいに思った部分なんですよ。しかも、(青葉)りんかだけちょっと離れてるから(笑)。
厚木 そう! (紫藤)めるとみらいはそのままなんですけど、りんかだけ「“リン”クする“Color”」なので……でも、2番はきっと私たちとキャラとを結んでくれているんですよね。「“七”色」はきっと私が那奈美だからで、「眩しい“花”」が優花で「“鼓”動」は鼓子で……。
林 「……かな?」って、私たちは思っています。
――レコーディングのときに皆さんがこだわられたのはどんなポイントでしたか?
林 私は、Dメロの“「ワタシ」と「ミンナ」つないだら ”の部分にこだわりました。『プリ☆チャン』のテーマの1つに“繋ぐ”というものもありますし、“ワタシ”と“ミンナ”にわざわざカギカッコがついた意味も深く考えまして。
――林さんは、どんなイメージで歌われましたか?
林 普通の表記だったら「ランガとみんな」という意味になると思うんですけど、カギカッコがついたことによって「“ワタシ”って誰でもいいんだよ」という意味だと思ったんです。それは聴いてくださっている方かもしれないし、『プリ☆チャン』のキャラかもしれないし、全然関係ない方かもしれない。同じように“ミンナ”も聴いている方によって定義が違うだろうから、誰にでも当てはまるように……ということを考えながら、歌いました。
森嶋 私は、2番最初の“はなれていたって感じるエールは”の部分です。そこでは急にリズムが落ち着くんですけど、この曲は全体を通してみんなへの応援ソングにもなったら嬉しいなという想いもありまして。この部分自体もみんなを鼓舞するような歌詞になっているので、あまり落ち着きすぎずにみんなを応援するような明るさもちょっと含ませて歌っていきました。
――違和感を出してはいけないけど、トーンは変えたくないし。
森嶋 そうなんですよ! 少しの歌い方で楽曲の雰囲気ってすごく変わってくるので、何パターンか録りまして。実は、最初は落ち着いた感じで歌っていたんですよ。
林 ここ、すごくかわいいですよね。なおかついじらしい感じもして、ここは私、すごく好きです。
厚木 ねー! すごくいい。
森嶋 わ、嬉しい……! ほかの部分に明るいイメージがある分、落ち着いている部分がより目立ってくると思うので、特に大事に歌いました。
厚木 私はこの曲の歌い出しです。実は3年間『プリ☆チャン』のオープニングを歌わせていただいてきたなかで、出だしを歌うのが初めてなんですよ! それは、私がランガの中で一番緊張しいなので、「最初の緊張している表現が一番上手くできるのは、絶対厚木さんだよ」と言っていただけたからで。なので「3年間色々な経験をさせていただいたなかで味わってきたドキドキを、全部ここに込めよう!」と思いました。
――歌う際には、何を思い浮かべられましたか?
厚木 歌詞にちなんで「初めてのこと」に繋がる自分の過去のドキドキを思い出して歌っていきました。昔から大好きだった『プリティーシリーズ』のアフレコにりんかとして参加するときや、実際のライブでりんかとしてソロで立ったときの気持ちを思い出していましたね。
――まさに、『プリ☆チャン』で感じたドキドキを詰め込んだ1曲になったんですね。
厚木 そうなんです。だから実は、歌声だけ聴くと最初の部分はかなり固くて緊張した歌声になっていると思います。そのあと、コーラスまで全部を録り終わってから改めて聴いたあとも、その最初の部分だけをもう一度録り直させていただいたりもしまして。ほかの部分も含めてニュアンスにとことんこだわって形にできた、本当に思い出深い曲になりました。
――そうやって歌われたこの曲、完成版を聴かれて率直に皆さんはどう感じられましたか?
林 曲調が「キラッとスタート」と似ているのもあって、聴き比べて「成長してるー!」って素直に感じました(笑)。当時はまだ「明るく歌おう!」みたいな意識ぐらいしかなかったんですけど、さっきもっちー(=森嶋)も少し触れていたように「この部分はこうやって歌おう」とそれぞれがレコーディング前によりしっかりと考えるようになったのもありますし、曲についての込み入った話を3人の中であの頃以上にできるようになっているので、そういう部分で歌い方に“揃える意識”ができたというか。
森嶋・厚木 うん。
林 「こういう曲の流れが来たら、こうだよね?」みたいな認識も自然と揃ってきていて、曲の中でもだんだんと強弱がつくようになってきているのもすごく感じます。
森嶋 私も本当に、3人とも表現の幅がすごく広がったなぁと感じました。普段は声優というお仕事もさせていただいているので、表現の部分については厳しく見たいなと思ってはいるんですけど、この1曲の中だけでも色んな表情を見せられているように感じたんですよ。それも、ただ明るく楽しく歌うだけではなくて、些細な感情を入れつつ歌えるようになったと思っています。
厚木 私もこの曲での3人のユニゾンを聴いたときに、今までの楽曲などから少しずつ学んできたことが入っているような印象があったんです。3年の重みも感じましたし、同時にきっとみんなも私たちの成長を感じてもらえるんじゃないかな……と自分で言えるぐらい、自信を持てるような曲になりました。
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