――緒方さんの今回のアルバム『劇薬 -Dramatic Medicine-』は、「Never, ever」を含め全体的にコロナ禍を踏まえた内容になっています。本作を通じてどのようなことを表現したかったのでしょうか。
緒方 タイトルの『劇薬』は「人によって毒にも薬にもなるもの」というイメージから付けたもので、本来なら「Strong Poison」や「Strong Medicine」と訳すことが多いのですが、それをあえて、私の音楽以外の副業の意味合いも込めて「Dramatic Medicine」と名付けたら面白いのではないかと思ったんです。
HISASHI なるほど。
緒方 今はコロナ禍を過ごすなかで「なんだこれは?」と思うことがたくさんあるじゃないですか。ロックというのは元々、色々なことに対して「それはどうよ?」という思いをぶつける音楽でもあるので、この1年間でたくさん感じた「どうよ、これ?」ということを消化して、どう昇華したら元気の出る音になるか?ということをずっと考えながら作りました。ただ、自分なりに持っている毒の部分を、あまりダイレクトに表現してしまうのは難しいので、「こういう毒があるんだよ」ということを散りばめながら、「私はこういうことが大事だと気づいたけど、みんなはどうかな?」と提案する感じの作品と言いますか。
HISASHI その気持ちはすごくわかります。『劇薬』というのはすごく強い言葉なので、そこで緒方さんが何を歌うのかは気になっていたんですけど、たしかにその通りだなと思って。人間はなかなか分かり合えないことがあるし、それが世界中の色々な問題に繋がっていると思うんですけど、今はそういうことをもう一回考えるべき時代だと思いますし。
緒方 そうですよね。今は価値観にせよ何にせよ、色んな意味でのターニングポイントになっているじゃないですか。特に日本という国は、守る方向が強い国民性で、同調圧力みたいなことが強くて。今まではそれも含めてやってきたわけですが、その常識ではこの先やっていけないということをたくさん突き付けられているわけで、「じゃあこの先、どうしていけばいいんだろう?」と考えたときに、もっと自由になれるんじゃないかなと思っていて。
HISASHI そこは世代の違いがパキッと分かれている気がするんですよね、今は。自由に出来る人はすでにやっているし。
緒方 わかります。そこを私は何とかしていきたい気持ちが強くて。例えばGLAYさんは、すでにファンの方がたくさんいらっしゃるので、こういう時代でも色んな形で道を切り拓いていけるでしょうし、もちろんそうやっていただきたいと思うんですけど、例えば私の周りにいる人たち、ライブの動員が1,000人から2,000人ぐらいが最高のアーティストだったり、これから音楽やお芝居をやりたいという人たちが、表に出てきづらい環境になってしまうのではないかと思っていて。
HISASHI そこはもう、僕らが出来ることを可能な限りやっていくしかないと思っていて。GLAYも2020年末にドーム公演が決まっていたので、それが開催できるかできないか本当にギリギリまで話し合って。もちろん客席の人数を制限して開催している公演もあるんですけど、そういうことはあまり報道されないんですよね。良くないことばかりをピックアップして報道する姿勢には、ちょっと疑問が芽生えたりもして。
緒方 去年の6月~7月ぐらいにお芝居の公演でクラスターが発生したことはありましたけど、それ以降はどこの芝居小屋さんもライブハウスさんも、みんな驚くほど徹底して対策をしていて、全然クラスターが発生していないのに……。そういうことも報道してもらえたらと思うんですけど。
HISASHI そうなんですよね。そのほうが明るい話題に繋がりますし、エンターテインメントも捨てたものじゃないことを見せていきたいんですけど。でも、僕らは逆境を面白がっちゃうタイプなんですよ。うちのリーダー(TAKURO)は、そういう逆境に直面すると「盛り上がってきたね」って言うのが口癖で(笑)。
緒方 そういう気持ちもわかります(笑)。
HISASHI たまにイラっとするんですけどね(笑)。僕らとしては、CDからサブスクに移行していく流れも逆境に感じたんですけど、CDをアーティストグッズ的な形にすることを率先的にやっていて。今回のコロナ禍のなかでも、GLAYはGLAY流に楽しませようということで、配信ライブとかを企画したり。緒方さんのメッセージはすごく突き刺さると思うし、ステイホームの期間を経て音楽を楽しむ環境が変わっていくなかで、僕らは少しでも明るい未来を見せられるように活動していけたらと思っていますね。
緒方 それが私の場合は、皆さんがおうちを出るときに元気や勇気をお渡しできるような楽曲を作ることだとか、お芝居をすることだと思いますし、それをしながら、特に若いスタッフや役者・ミュージシャンの人たちが、場所を失って表に出られないことがないように、何かの形で尽力できればと思っていて。その尽力も結局のところは、楽曲やステージを作るということしかないと思いますし、このアルバムはHISASHIさんに書いていただいた「Never, ever」をはじめとして、たくさんの方々に力をいただいて、そういう楽曲が詰まった作品にすることができて感謝しています。
HISASHI 楽曲というのは結局、作った時点でももちろん満足感はありますけど、そこからアウトプットしてようやく決着するところがありますからね。
緒方 アウトプットしてお渡しすることによって、お客さんのなかでさらに別のドラマを生むものになったりもしますものね。
HISASHI そうなんですよね。だからちょっとワガママではありますけど、そこまでは付き合いたいなと、音楽を作っている身からすると思いますね。
緒方 本当にそう思います。GLAYさんはこれから先、ライブはどのように考えてらっしゃるんですか? まだ言えないこともあるでしょうけど(笑)。
HISASHI 色々考えてますけど、この冬の状況を受けてでないとなかなか見えてこないところがあって(取材は2021年2月に実施)。とはいえ僕らは時代と上手く付き合っていきたいと思っているので、「GLAYはそう出たか!」と思ってもらえるような活動をしていきたいですね。
PHOTOGRAPHY BY 小島マサヒロ
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
●リリース情報
「劇薬 -Dramatic Medicine-」
4月21日発売
品番:LACA-15844
価格:¥3,300(税込)
01. Never, ever
作詞:em:óu/作曲・編曲:HISASHI
02. パンドラ
作詞:em:óu/作曲・編曲:黒須克彦
03. 祈り
作詞:em:óu/作曲:草野華余子/編曲:古川貴浩
04. Buster Master
作詞:em:óu/作曲・編曲:ANCHOR
05. ラボラトリー・マリオネット
作詞:em:óu/作曲・編曲:宮崎京一
06. Precious shining star
作詞:em:óu/作曲・編曲:manzo
07. Like a human
作詞:em:óu/作曲:芳賀政哉/編曲:中土智博
08. Try Out, Go On!
作詞:em:óu/作曲・編曲:伊藤 賢
09. Breaking Dawn
作詞:em:óu、ASH DA HERO/作曲・編曲:ASH DA HERO
10. Repeat
作詞:em:óu/作曲・編曲:佐藤純一(fhána)
緒方恵美 公式サイト
https://www.emou.net/
緒方恵美 公式Twitter
https://twitter.com/Megumi_Ogata
GLAY 公式サイト
https://www.glay.co.jp/
HISASHI 公式Twitter
https://twitter.com/HISASHI_
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