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INTERVIEW

2021.04.21

緒方恵美×HISASHI(GLAY)が語り合う、コロナ禍に表現者として出来ること――アルバム『劇薬 -Dramatic Medicine-』スペシャル対談!

緒方恵美×HISASHI(GLAY)が語り合う、コロナ禍に表現者として出来ること――アルバム『劇薬 -Dramatic Medicine-』スペシャル対談!

あらゆる人々を応援する“エールロック”をテーマに掲げ、声優のみならずアーティストとしても活躍する緒方恵美が、約4年ぶりのオリジナルアルバム『劇薬 -Dramatic Medicine-』を完成させた。em:óu名義で自ら歌詞を綴った全10曲を収録した本作には、草野華余子、伊藤 賢、黒須克彦、佐藤純一(fhána)、ASH DA HEROら豪華作家陣が楽曲を提供。なかでも話題を集めているのが、リード曲「Never, ever」を書き下ろしたHISASHI(GLAY)の参加だ。

実は意外な接点のある二人が初タッグ曲「Never, ever」に込めた想い、そしてコロナ禍の現在における表現者としての在り方について語り合った、スペシャル対談の模様をここにお届けする。

コロナ禍を経たお互いの共鳴が生んだ楽曲「Never, ever」

――――HISASHIさんが緒方さんに楽曲提供するのは今回が初になります。そもそもお二人は元々どんなご縁があったのですか?

緒方恵美 実は1994年に放送された『ヤマトタケル』というTVアニメでご一緒したことがありまして。私は主人公と仲良しの男の子・ロカの役を演じていたのですが、その作品のOPテーマ(「真夏の扉」)とEDテーマ(「RAIN」)をGLAYさんが担当されていたんです。

HISASHI 僕らはその2曲が1stシングルと2ndシングルで、あれがメジャーデビューのタイミングだったんですよ。それまではアルバイトしながら生活していたのが、いきなりテレビから自分たちの楽曲が流れることになって。

緒方 ええ!? あの直前までアルバイトされていたんですか?

HISASHI そうなんですよ。今ではロックバンドがアニメの主題歌を担当するのは当たり前のことですけど、当時は珍しかったので、自分たちの楽曲がアニメの主題歌としてテレビから流れてくることがすごく不思議に感じました。今、振り返ると、すごくいいデビューだったと感じています。緒方さんとご一緒するのは、それ以来ですよね?

緒方 はい。ものすごく時間が経ってしまいました(笑)。

HISASHI もちろん個人的には緒方さんの出演されている作品を楽しませていただいてますけど(笑)。

緒方 私もGLAYさんの作品をずっと聴かせていただいています(笑)。

HISASHI 90年代までのGLAYは、当時所属していた事務所の方向性もあって、自分たち以外の人たちとはあまり接点がない感じだったんですけど、2000年以降はそこから独立して自由に活動するようになって。僕はアニメ好きということもあって、今のレーベル(ポニーキャニオン)に移ってきてから、声優の方やアイドルに楽曲提供を行う機会が増えたのですが、毎回、楽しいんですよね。いつも「自分の持っている世界観とこういうふうに混ざり合ったらいいな」と思いながら曲を作るんですけど、そのゼロがイチに変わる瞬間が刺激的で。今回もお話をいただいてから、非常に楽しく制作することができて、すごくクリエイティブな時間でした。

緒方 ありがとうございます! 私はスタッフから(HISASHIに楽曲提供をオファーする)アイデアが出てきたときに、「えっ! もし引き受けてくれるのであればぜひお願いしたいですけど、大丈夫ですか……」という感じだったんですけど(苦笑)。

HISASHI いやいや。

――HISASHIさんはまず、どのようなイメージで今回の楽曲「Never, ever」を作り始めたのですか?

HISASHI 緒方さんと直接お会いするのは今日が2回目で、最初の打ち合わせ以降はコロナの影響でオンラインでのやり取りになってしまいましたけど、初めてお会いしたときに緒方さんからリフが聴こえてきたんですよ。今回の楽曲は緒方さんが歌詞を書かれていますけど、僕は歌詞以外の部分でも、音の説得力というメッセージを感じたんですよね。なので制作はすごく速かったです。

緒方 すごく嬉しいです。私も最初にデモをいただいたときから、「なんでこんなに心に残る曲なんだろう?」と感じました。でも、そこからキー合わせを行う頃には、緊急事態宣言が発令されてスタジオが封鎖されてしまい……プリプロも出来ず、HISASHIさんにはしばらくお待ちいただく状態になってしまって。その節は本当にすみませんでした。

HISASHI でも、どうしようもないですよね。GLAYもスタジオ作業はストップして、オンラインで作業していましたから。僕は昔からオンラインには慣れていて、氷室(京介)さんとレコーディングしたときも、自宅からLAの氷室さんとデータのやり取りで作業したので、コロナ禍でもあまり変わらぬ生活ができて。

緒方 そうだったんですね。私はオンラインでミーティングを行う体制も完全には整っていなかったので、まず機材を揃えるところから始まって……私とは全然違いますね(笑)。

――HISASHIさんは緒方さんが書かれた歌詞を受け取って、どのような印象を抱きましたか?

HISASHI 僕も仮歌詞を書いたんですけど、緒方さんには楽曲の温度や色がちゃんと伝わっていたんだなと思いました。僕は結構、世界を斜めに見ているけど実はポジティブっていう歌詞を書くことが多いのですが、今回の楽曲もそういうふうなものになればと思いながら書いたもので。それが緒方さんらしいメッセージとして出ていると感じました。

緒方 歌詞を書く段階でコロナ禍に入っていたので、そのときに感じていたことをそのまま歌詞にしたから、そういう内容になったんだと思います。歌詞にもありますけど、もし街を歩いているときに、マスクをしないままだったら、誰かとすれ違ったときに感染させてしまう可能性もあるわけで。自分が知らないうちに誰かのことを殺してしまっているかもしれない事態を、今ほど身近に感じることはないですし、そういう厨二的な歌詞がリアルになるかもしれない時期に、たまたまなってしまったっていう。

HISASHI ちょっと世紀末的な感じですよね。人間がこの先どういうふうに未来を作るかを試されているというか。

緒方 ただ、歌詞を書きながら、お客さんの元に届くときにはコロナが終息して、こんな感覚もなくなってしまうかもしれないと思っていたんです。まさか今でもずっと同じ気持ちを持っていることになるとは思ってもみませんでした。

HISASHI さらに大きくなりましたものね。

緒方 その意味ではコロナ禍に入って一番最初の気持ちが、この曲には入っていると言いますか。もしかしたら自分が誰かを殺してしまってるかもしれないけど、そんな状況だからこそ、人と普段通りの関係でいられるのはすごく大事なことだと改めて気付かされて。それで歌詞の最後のほうに“光に変われ”というフレーズを入れて、そういう日常に戻っていけばいいなと思っていたのですが……。それが今も変わらず、変な話ですけど、これからもコロナが完全に無くなることはきっとないと思うので、その気持ちを逆にずっと忘れないためにも、この歌をうたい続けていくのは大事なことになるんじゃないかなと思いました。

HISASHI すごくわかります。

緒方 あと、制作途中でHISASHIさんがデモから生音の演奏に差し替えてくださったときに、流石のギターだなと思いました。

HISASHI 今回は僕が思い描いていたもの作ることが出来ました。ベーシストの方がスタジオで素晴らしい演奏をしてくださったおかげで、僕もめちゃくちゃテンションが上がって。色んな作家の人が参加されるアルバムの場合、僕は負けたくない!っていう気持ちがあるんですよ(笑)。作家の人たちというのは、ある意味、ジビエだと思うんですよね。

緒方 ジビエというのは?

HISASHI ジビエの肉というのは独特の臭みがありますけど、それと同じで、作家やミュージシャンが制作した楽曲にはそれぞれの癖がどうしても滲み出てしまう。でも、だからこそ色んな作家さんが集まる作品は面白いと思うんですよね。僕はそのミュージシャンの臭みみたいなものが、良くも悪くも好きなんですよ。僕も今回の楽曲には、シンコペーションのところにオケヒ(オーケストラルヒット)を大きめに入れていたり、90年代っぽいシーケンスや僕が影響を受けたものを色々詰め込んでいて。なおかつサビは緒方さんの声をポジティブに聴かせるものにしようと決めていたので、緒方さんに書いた曲としての純度がものすごく高いと思うんですよ。その意味では瞬発力みたいなものをすごく感じることができました。

緒方 ありがとうございます!

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