REPORT
2021.04.12
「アイドルマスター シャイニーカラーズ」のライブイベント“THE IDOLM@STER SHINY COLORS 3rdLIVE TOUR PIECE ON PLANET / NAGOYA”DAY1が2021年4月3日、日本ガイシホール+オンライン配信で開催された。
DAY1にはイルミネーションスターズより櫻木真乃役の関根 瞳、風野灯織役の近藤玲奈、八宮めぐる役の峯田茉優、アンティーカより月岡恋鐘役の礒部花凜、田中摩美々役の菅沼千紗、白瀬咲耶役の八巻アンナ、三峰結華役の成海瑠奈、幽谷霧子役の結名美月、放課後クライマックスガールズより小宮果穂役の河野ひより、西城樹里役の永井真里子、杜野凛世役の丸岡和佳奈、有栖川夏葉役の涼本あきほ、アルストロメリアより大崎甘奈役の黒木ほの香、大崎甜花役の前川涼子、桑山千雪役の芝崎典子、ストレイライトより芹沢あさひ役の田中有紀、黛 冬優子役の幸村恵理、和泉愛依役の北原沙弥香、ノクチルより浅倉 透役の和久井 優、樋口円香役の土屋李央、福丸小糸役の田嶌紗蘭、市川雛菜役の岡咲美保が出演した。
本公演は「シャイニーカラーズ」初のライブツアー最初の公演で、延期されていた2ndライブの開催から2週間という前例のないスパンでの開催だ。公演前挨拶ではスクリーンに登場した283プロダクション・天井努社長より「新たなステージであるここ名古屋で、新たな物語を紡げることを嬉しく思う」と告げられた。
ステージには短冊のような縦長のスクリーンが何面も設置されている。上下二段、左右に広がりのあるメインステージはスタンダードな構成。上段と下段、さらに高い場所まで昇降する一人乗りのキューブ型エレベーターが複数機設定されているのが特徴的だ。オープニング映像ではきらめくovertureとともに、意志を持った光たちが夜光虫のように舞って銀河を形作る。幻想的な映像演出と共にステージに登場したのは、本作に登場するアイドルたちを3つに分けた越境チーム・Team.Stella(関根瞳、礒部花凜、河野ひより、黒木ほの香、田中有紀、土屋李央)。衣装はビヨンドザブルースカイで、“PIECE ON PLANET”をサブタイトルに冠したライブのオープニングは、星のチームに託された。楽曲はもちろん「プラニスフィア ~planisphere~」だ。
同曲は2週間前の“THE IDOLM@STER SHINY COLORS 2ndLIVE STEP INTO THE SUNSET SKY”DAY2にて初披露されたが、その日は全員が普段の所属ユニットの衣装を着用していた。その混成感がまた楽しかったのだが、今回揃いの衣装で歌い踊ることでかなり印象が変わる。ストレイライトの田中、アンティーカの礒部などは、普段のユニットパフォーマンスではソリッドな、楽曲の世界に入りこんだ表情が目立つこともあり、歌唱中の朗らかなスマイルはなんだか新鮮だ。落ちサビは関根がソロで担当。芯の強いウィスパーと、零れ落ちそうな瞳のきらめきに意識が吸い寄せられるようだった。
続いてはTeam.Sol(峯田茉優、八巻アンナ、永井真里子、涼本あきほ、芝崎典子、幸村恵理、和久井優、岡咲美保)が「SOLAR WAY」を披露。岡咲が髪をお団子っぽくまとめていたり、幸村が結い上げたポニーテールにしているビジュアル面の変化に目が行く。アイドルたちが服装やシチュエーションによって髪型を変えることもある「シャニマス」ならではの遊びだろう。元気いっぱいで明るくポップで、コテコテにアイドルな楽曲に対応することで、演者とアイドルの様々な側面が引き出されているように感じた。
Team.Luna(菅沼千紗、成海瑠奈、結名美月、丸岡和佳奈、近藤玲奈、前川涼子、北原沙弥香、田嶌紗蘭)は「リフレクトサイン」を披露。Team.Lunaは本公演で初めてフルメンバーが揃った。上手のステージに登場した8人は、決然とした足取りでステージのセンターへ。先頭に立つのはもっとも新しい仲間である田嶌だ。クールでスタイリッシュな楽曲に寄り添ったパフォーマンスでまず目が行くのは、やはり前川が表現するクールな甜花の姿。“マニフェストサイン”の決めポーズの場面では、この曲に初参加の近藤にカメラが大きくフォーカス。暗い照明の中にミステリアスな表情が浮かぶ。“風野灯織”という新しいピースが加わると、後半の歌詞がイルミネの中の灯織に重なる気がしてくるのが不思議だ。菅沼の“ひとすじ”、成海の“二度とない”といったソロパートは、たった一言のフレーズにそのアイドルらしさを強烈に匂い立たせてくるのが流石だ。そして近藤にとってのワンフレーズであるところの“そばにいる”で彼女が見せた謎めいた笑顔は、残像のように記憶に焼きついた。
ここで、Team.Lunaの8人がショートMCを担当。ステージ狭しと動き回りながら、舞台の飾りをチェックしたりとハイテンションで自由なトークを繰り広げた。ややツッコミ不足な節がある。リフレクトサインのハンドサインを説明する時に近藤が「フレミングの法則の距離を詰めて、お寿司をなでる感じで」と話していたのは、久しぶりにれいれいワールドを見た気がした。パフォーマンスがかっこよかった分、チームの多くがボケっぱなしのトークとの落差が楽しい。
暗転を経て、全員での「Spread the Wings!!」。はじまりの曲である同曲は開幕やラストに置かれることが多く、この配置は少し新鮮だ。おなじみのきらびやかなイントロの前にメロディアスなピアノアレンジが加えられており、一体何が来るんだろうというワクワク感があった。この曲の配信映像ではAR演出が効果的に用いられており、「Spread the Wings!!」の曲名表示が消えるのと同時に画面いっぱいに白い羽根が弾けた。会場を覆うスモークの雲が集まって翼の形を取るような見せ方はARならでは。ホールの天井には旋回する四面スクリーンが設定されているのだが、実はこれもAR表示された仮想スクリーン。巨大なスクリーンが楽曲によって現れたり消えたりするのは未来感がある。
オープニングの挨拶では、芝崎が「でーらいいライブにするまい!」と挨拶したり、田中が「プロデューサーさん、来たっすよ、なーごやー!」と呼びかけたりとご当地要素もあった。個人的には和久井が浅倉透として発した「ツアー……ヤバい、ツアーだって」の台詞が、あの透でさえテンションが上がっていることが伝わってきて印象的だった。最初の挨拶が終わったユニットからステージを降りていき、最後に残ったノクチルがしばしMCを行なう。岡咲もMCで触れていたが、この構成は「THE IDOLM@STER SHINY COLORS 2ndLIVE STEP INTO THE SUNSET SKY」でイルミネーションスターズがステージに残った構成と対になっているようで、2ndも含めた大きなつながりを感じた。ノクチルのMCでは会場演出の素晴らしさや会場の拍手の暖かさなどについて盛り上がっていた。
ユニットブロックのトップバッターであるイルミネーションスターズは、新衣装で「Twinkle way」を披露。衣装は「GR@DATE WING 02」のジャケットイラストをベースにしたデザインで、3人とも色と意匠が違う。峯田の衣装は周囲から「プリンアラモードみたい」と評されたそうだ。3人はそれぞれのイメージカラーに光るキューブエレベーターに乗って登場。ヘッドドレスを身に着けた関根がキューブエレベーターに収まると、キューブ自体がまるでドールケースのように見えてくる。峯田の動きや表情、歌声にはひとつひとつに情感が込められていて、歌いながら演じているようだ。そして、ついに近藤を含めた3人が揃った「Twinkle way」だ。新しく加わったのは近藤なのに、関根と峯田のパートもより鮮烈に感じるのは、お互いに支えあって魅力を引き出し合うトライアングルユニットならではかもしれない。
アルストロメリアの「ダブル・イフェクト」は、「GR@DATE WING 05」のジャケットイラストをモチーフにした衣装。それぞれ色味が違い、前川のさわやかな緑はアルストロメリアの衣装としては新鮮だ。センターの黒木は活動的なショートパンツタイプの衣装。芝崎は黒と白でフェミニンにまとめつつ、ストレートヘアにあしらった白い花飾りがとてもよく合っている。短いスパンで多くのライブを行なう中で、衣装や演出でバリエーションを出すのはとても良い試み。ジャケットイラストのアイドルたちには翼があるのだが、そういえば「ダブル・イフェクト」は翼を失ってもキミのもとで笑っていようという歌だった。
放課後クライマックスガールズは「GR@DATE WING 04」ジャケットベースの新衣装で「五ツ座流星群」を披露。河野はヒーロー、丸岡はヒロイン、涼本は海賊、永井はカウボーイという放クラならではの遊び心のあるデザインだ。個人的に、西城樹里というアイドルが持つイケメンかつ端正な顔立ち、金髪のショートカットという属性はリアル再現がなかなか大変だと思うのだが、この衣装の永井は再現性と自然さ、何よりかっこよさのバランスが抜群に良かった。丸岡のヒロイン衣装も浮世離れした凛世の演技と良い意味でのギャップを生んでおり、永井の超イケメンラップ→丸岡の「あ~れ~」に代表される掛け合いもさらにパワーアップして見える。樹里と夏葉という完成された相棒がいるユニットで、この編成ならではの組み合わせの妙を追求しているように感じた。
アンティーカは「GR@DATE WING 03」ジャケットベースの新衣装で「Black Reverie」(古い英語をイメージした発音で“ブライク・レヴェリー”と読む)を披露。イントロでは紅く染め上げられたキューブの中に、影絵のように菅沼の……いや田中摩美々のシルエットが浮かび上がる。やがて光の中に歌う礒部の姿が現れると、身にまとうのは吸血姫然とした“ルーラーブライク”衣装だ。二次元ならではのデザインをよくぞここまで衣装に落としこんだと思うし、それを着こなしているのも素晴らしい。続く八巻がまた強烈で、ゴツいデザインの帽子がボンテージっぽさをかもしだす。黒いリップや歌唱のニュアンスなど、全方位から衣装のテイストと世界観に合わせていく意志を感じる。菅沼の衣装名は“ブライクブラン”。黒き白、と読んでも摩美々らしいし、黒い鴉と読んでもそれっぽい。いずれにしても黒で、白で、ゴシックで、何より田中摩美々そのものだ。結名は黒と灰を基調にしたメイド服がとても似合っていて、こちらも衣装について深読みしだすときりがない。そして、成海瑠奈のクラウンだ。この衣装はやはりピエロではなくクラウンと呼びたい。成海がキメッキメで歌う時ににじませるケレン味、ある種の過剰さといった魅力をそのまま形にしたようで、サビ前のロングソロは彼女のための劇場だった。
ストレイライトは「GR@DATE WING 06」ジャケットベースの新衣装で「Hide & Attack」を披露。あっとなったのは3人が般若、翁、ひょっとこの能面を手にしていたことで、これもジャケット通り。すっくと並び立った3人が表情を面で隠したまま現れると、ダンスのスタートと共に惜しげもなく投げ捨てる。ストレイの新衣装はサイバーパンク世界のストリートの普段着という感じで、田中のフードとキャップが一体になったようなかぶりものが放つオーラがすごい。アニメなら高い場所から状況を見守っていそうなビジュアルだ。幸村が和のテイストの衣装であでやかに笑いながら踊っていると、ポニーテールもニンジャ? シーフ? といった感じに見えてくる。普通のアイドルとは一線を画すデザインとたっぷりとした布地が、彼女たちのダンスのすごさをさらに強調している感じだ。北原のあの傾いた衣装を着こなせるのは彼女だけに思えたし、圧倒的なダンスとの相乗効果たるや。そして、“姿形を変えながら進化する”のフレーズで田中が悠然とフードを脱ぎ捨てたのもやられた! という感じだった。ジャケットの一枚絵の中にいるストレイライトの世界を、現実の3人が拡張していくような不思議な感覚があった。
この時点ではもっとも新しいユニットであるノクチルは、いつもの衣装で「いつだって僕らは」を披露。新しい衣装は変化をもたらすものだが、誰よりも速いスピードで進化し、変化している最中の彼女たちに外装のアクセントは不要だろう。というか、“僕の靴はまだ白いままで”のフレーズで土屋の足元の動きがクローズアップされてはじめてヒールが高めのブーツをはいていることが気づいたぐらいなので、4人が揃ったこの衣装すらだまだ発見がある。刻一刻と成長していることを一番に感じるのはボーカル面で、特に和久井の伸びやかなソロの安定感は怖いくらいだ。安定感という意味では、雛菜をキープしたまま歌声を見事にコントロールしている岡咲もすごい。とにかく4人が4人ともボーカル面で明らかに成長しているので、ぜひツアーを通して見守っていきたいユニットだ。後のMCでこの曲を振り返った岡咲は「あんなに気持ちよく歌えたのは初めて」と語っていた。
ユニットメドレー明けは、アンティーカのMCから。話題は当然着用中の新衣装について。衣装の素晴らしさに、礒部のテンションが高まりすぎてしばらく戻ってこないほどだ。5人揃ってくるりと回ってみせる時、菅沼は逆回転なのが摩美々っぽい(礒部も逆だった)。5人揃うと圧があると語る八巻だったが、他の4人からは八巻の衣装や黒リップに「超かっこいい!」の声が飛んでいた。
アンティーカの「純白トロイメライ」では、イントロの旋律に合わせて5人が小刻みにポーズの角度を変える。ソロの頭は玉座から悠然と立ち上がる八巻から。やはり八巻と成海のケレン味のあるパワフルな歌声は、最近のアンティーカのひとつの武器になっているように思う。その色が濃いほど、そこにぽとりと白を落としたような結名の澄んだボーカルが際立って感じられる。AR演出では額縁や雷鳴がステージを彩り、サビでは画面に真紅の薔薇が舞う。衣装で薔薇を感じさせるのは礒部なのだが、衣装名に薔薇を冠する(「ローザブライク」)のは結名なんだよな……と考えている時点で術中のようで悔しい。アウトロで5人が歌い出しと似たフォーメーションに戻ると、玉座に座っているのが礒部に変わっている幕切れに至るまで、最後まで謎と幻想を散りばめたアンティーカのステージだった。
アルストロメリアの「Anniversary」は、美しい表現の中に、どこか別れや死の香りを感じさせる楽曲だ。スクリーンの映像とARで映し出された光の滝は、藤棚のようにも見える。藤は古来より不死や不治になぞらえられ、「君の愛に酔う」「決して離れない」といった花言葉がある。会場から光の粒子が天に登っていく演出が美しい。そんなどこかこの世ならざるような幻想的な楽曲の中で、不意にステージ上のカメラが階段を登る3人の姿を一緒に歩きながら撮るライブ感のある演出が差し込まれるギャップに虚をつかれた。あとは芝崎の手元に意味ありげなニュアンスが時折あり、特に“束ねては 贈る ひとひら”で親指と人差し指で輪っかを作って連ねるような動きには何か意味がある気がする。手話ではそれらしいものが見つからず、阿弥陀如来が極楽浄土より迎えに来るときの来迎印を模しているのでは? とも思ったが、今後の識者の研究を待ちたい。
ノクチルの「あの花のように」は、トロッコに乗って披露。会場を動き回る4人の上空に、ARの花火が弾ける。ノクチルと花火という組み合わせから想起するのは、やはりゲーム内でのイベントシナリオ「天塵」だ。物語の中では海岸にいる観客の誰もが花火に夢中で、誰も彼女たちのデビューステージを見ていなかった。だが今日この場所では、花火ではなく幼なじみ4人こそが主役だ。樋口円香を演じる土屋の表情が、今にも微笑みそうなぐらい柔らかかった。
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