――アグレッシブなバンドサウンドとアジア大陸的な音像が融合したアレンジも素晴らしいなと。これはもちろん、アニメの世界観に沿っているんですよね?
コヤマ はい。『魔道祖師』のストーリーにおいて、琴や笛という楽器が非常に重要なアイテムになっていて。アニメの制作サイドからも「曲の中に琴と笛は必ず入れてほしい」というリクエストをいただいていたんです。そこから「自分たちが培ってきたバンドサウンドと、笛、琴の音色をどう合体させるか?」というテーマと向き合って。映画のサウンドトラックだったり、中国の楽曲をたくさん聴いて、研究したんですよ。音楽を聴いていて、音階や音色によって、国や地域を感じることってあるじゃないですか。例えば「これはインドっぽい」とか「沖縄っぽい」とか。「だとしたら、中国らしさってなんだろう?」と考えて、雄大な大陸を感じさせるようなコード進行とメロディ、リズムを作っていったんです。かなり試行錯誤しましたけど、バンドサウンドと中国っぽさがちょうど五分五分で混ざったんじゃないかなと。
――ちなみにこの楽曲はMVも公開されていますが、改めてどのようなMVになったか教えていただけますか。
コヤマ MVのほうは『魔道祖師』との関連性というよりも、撮っていただいた監督さんが楽曲から感じたイメージを元に、みんなで話し合いを重ねて完成させたものです。でも、完成してみるとやっぱり藍湛と魏嬰の二人を想起させるようなイメージにもなっていて、とても良いものになったなと思っています。二人の人物が夢の中で何度も顔を合わせていて、「夢にいつも出てくるこの人物は一体?」というところから始まるのですが、観る人によって様々な解釈が出来るような映像になったのではないかと思います。個人的には、演奏シーンの雰囲気は過去のMVの中で一番好きかもしれません。
――カップリング曲の「千夜想歌 -World Arrange Ver.-」は、中国大陸的なイメージがさらに増幅されていますね。
コヤマ シングルを出すにあたり「カップリングはどうする?」という話をしていくなかで、『魔道祖師』のファンの皆さんに喜んでもらえて、なおかつ、CIVILIANのファンも「こんなの聴いたことない」と思ってもらえるものをやれたらいいねということになって。そこから出てきたのが、ガッツリと中国楽器を入れた別バージョンを作るというアイデアだったんです。さすがに中国楽器のアレンジは経験がないので、アレンジャーの方に入ってもらって、相談しながら進めて。レコーディングには本物の奏者の方に来ていただいたんですが、素晴らしかったですね。
――伝統的な楽器の音色がすごく活かされていて。歌詞、メロディの壮大さがもっと際立っているというか。
コヤマ アレンジの力を感じましたね。コード進行、メロディ、歌詞はまったく同じなんですけど、楽器の音色やテンポ、アレンジが違うと、こんなにも曲の表情が変わるんだなと。実際に演奏を聴かせてもらって、「この楽器にはこういうフレーズが合うんだな」ということもわかってきたし、すごくいい勉強になりました。
――「千夜想歌 -World Arrange Ver.-」と『魔道祖師』のスペシャルムービーも話題を集めています。
コヤマ まったく予定になかった映像なんですよ、実は。アニメの制作スタッフの皆さんが「World Arrange Ver.」をすごく気に入ってくれて、急遽、スペシャルムービーを作ってくださることになって。本当に光栄だし、嬉しかったですね。当たり前かもしれないけど、映像と一緒だと聴こえ方が変わるし、楽曲の意味合いが広がる感覚もあって。しっかり作品に寄り添った楽曲を作れたんだなという実感がありましたし、感慨深いですね。
――初回盤に付いているDVDには、今年1月3日に配信された“Sony Music AnimeSongs ONLINE 日本武道館”から「正解不正解」「千夜想歌」の映像を収録。日本武道館のステージは、このときが初ですよね?
コヤマ 生まれて初めてでした。配信された映像はARを使って演出してたんですけど、収録のときはまったく人がいない武道館で演奏したんですよ。めちゃくちゃ楽しかったし、武道館のステージで演奏させてもらえてすごく感激したんですが、同時に「お客さんで埋まった武道館でやってみたい」と素直に思いました(笑)。
――そうですよね(笑)。元々「武道館でやりたい」という気持ちはあったんですか?
コヤマ バンド名を(Lyu:LyuからCIVILIANに)改名して、メジャーレーベルに移籍したときに、「わかりやすい目標があったほうがいいよね」という話になって、「武道館でワンマンがやりたい」って言ってたんですよ。「やってやろうぜ」くらいのノリだったんですけど(笑)、武道館のステージに立ったときに、「やっぱりここでやりたい」と改めて思って。イベントに呼んでいただいておいて申し訳ないんですけど、ワンマンの予行演習みたいな気持ちも少しありました。もしワンマンをやるんだったら、しっかりステージセットも組むだろうし、「ここに満員のお客さんが入ったら、さぞかし壮観だろうな」と。
――ぜひ実現させたいですね、それは。CIVILIANとして活動して約5年。音楽性もどんどん広がっている印象がありますが、コヤマさんの実感はどうですか?
コヤマ 色々なタイミングに恵まれて、アニメ、ゲームなどの楽曲を担当させてもらった経験が生きてるんですよね。『魔道祖師』もそうですけど、オファーをいただいて、作品に合った楽曲を作らせてもらって。シンセをふんだんに使ったり、やったことがないアレンジに挑戦することで、自分たちの幅も自然に広がってきたんだと思います。
――映像作品の楽曲に関わることで、新しい表現を手に入れたと。
コヤマ 作ってるときは「新しいことをやろう」とは思ってなくて、いい曲にすることしか考えてないんですけどね。アニメ作品は、その作品を作っている人たちや、ファンの方もいて。その人たちのためにもいい曲を作ろうとしてきたし、それが自分たちの力になっているんだと思います。そのおかげで以前よりも多彩な曲が作れるようになったのかなと。
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