2月28日、デジタル声優アイドルユニット22/7が7thシングル「僕が持ってるものなら」のリリース記念ライブを開催した。会場はこれまでで最大のパシフィコ横浜 国立大ホールという、卒業を発表したリーダーの帆風千春がステージに立つ最後の機会にふさわしい舞台。昼夜公演で、レパートリーのほぼすべてを歌い上げるスペシャルな1日となった。ここでは夜公演を配信視聴したライブレポートをお届けする。
開演してオープニングの楽曲が流れ、スクリーンにメンバーとこれまでの軌跡の映像が映し出されると、ステージ上のメンバーやスタッフ、そして会場のファンのすべてが心を1つにして、リーダー・帆風千春の門出を祝うとする雰囲気が配信のカメラからもひしひしと伝わってくる。そしてついにその公演が幕を開けた。
1曲目、「シャンプーの匂いがした」の始まりを告げるオルゴール音に合わせ、いつものように勢いよく飛び出しメンバーとハイタッチをする者もいれば、足元を見てゆっくりとした足取りで所定の位置に向かう者もいる。それぞれがこのステージの意味を噛み締めての登場だ。ドラマチックなイントロとともメンバーが円陣を組み、歌唱が始まる。個々の歌声のゆらぎから昼公演の熱量を残している様子が感じられる。間奏では皆、普段と変わらぬ笑顔でキレのある規律正しい動きを見せ、ボルテージが高いダンスパフォーマンスのなか、カメラはそれぞれのメンバーの想いを映し出す。そこには普段と変わらぬ笑顔もあれば、すでに目を潤ませている表情もある。「未来があるから」は冒頭の静かなピアノイントロから勢いよくスピード感のあるダンスサウンドへと展開し、真っ直ぐに客席を見たパフォーマンス。ペアで繋いでいく歌唱のなか、髪を振り乱し歌う宮瀬玲奈、サビのコーラス部分でこれまでに見せたことがないような強い感情を見せる白沢かなえの表情をはじめとした熱い想いが乗った歌唱となった。
最初のMCでは明るく個別の挨拶をいっていくが、この公演へかける想いがそれぞれの表情や言葉の端々に感じられる。進行する天城サリーも「7thシングルをこのメンバーで歌うのが最後なので」と口に出した瞬間、感情が堰を切りそうになるところを倉岡水巴が抱きとめてフォローする。むしろ最も落ち着いているのは帆風であるように見えた。続く「風は吹いてるか?」「ロマンスの積み木」と、アグレッシブな振付が続く展開ではそれぞれ熱量高く歌い上げ、各パートではかわいらしさや大人っぽさのあるところなどの個性を見せ、セリフパートでも迫真の一言を表現していく。「Rain of lies」の冒頭で一旦クールダウンしたあとすぐに熱量を高める展開で、サビの片足ダンスからの幾何学的な振付に合わせたスピーディーなフラッシュとともに合唱のハイトーンが煌めき、観る者の興奮を高めていく。指先まで神経を張り詰めた綺麗で激しい振付と柔らかなしなりを見せるダンスで魅了した。シリアスなイントロに表情を引き締めて向かう「何もしてあげられない」はメンバーの表情も楽曲に合わせたもので、それぞれ眼力を強く印象づけるだけでなく、ターンやステップも力強い。ポージングの美しさと終盤での全身の情熱的な動きに訴えかけるものを感じさせる楽曲だ。
MCでは「僕が持ってるものなら」の中で取り組まれたユニット楽曲の説明を行う。これは紅組:パンクゴシック、白組:甘ロリというコンセプトやメンバー編成をメンバーが考え、ファンアンケートを踏まえて決定したもの。主導的に取り組んだ高辻 麗がそれぞれのコンセプトを説明し、それぞれがキャラクターを踏まえた自己紹介とユニットへの取り組み方を語り、白組が「キウイの主張」を歌う。このキウイのキャラクターにはそれぞれの性格分けがあり、カワイイ:涼花 萌、セクシー:白沢かなえ、スネてる:海乃るり、恥ずかしがり:西條 和という編成。(神木)みかみんラップを聴かせる涼花、宣言通りセクシーなアクセントを入れる白沢、海乃・西條も普段と違う表情を見せるなど、ユニットによる新たな試みを示した。
続く紅組は「雷鳴のDelay」。MCでの見どころ紹介通り、帆風・倉岡の背中合わせや、宮瀬のポージング、河瀬 詩のウィンクなど有言実行で見せたほか、高辻と天城サリーは悩ましげな表情とポーズでこれまでにない魅力を発揮していた。白組メンバーがステージに戻った「タチツテトパワー」は底抜けに明るい楽曲で会場がまたたく間に笑顔に包まれる。両手を広げて1列に並んだあと明るく笑顔で腕を振り上げたり、円環状に走り回ったりと、振付も楽曲通りエネルギッシュなナンバーだ。「好きと言ったのは嘘だ」は、メロディアスな楽曲に乗せてしっとりとかわいらしい表情を見せていく。縦2列様々な表情をリズミカルに見せる展開は今後の見どころになりそうだ。ニューシングルのタイトルトラックである「僕が持ってるものなら」は、ワルツの楽曲で22/7にとってまた新しい挑戦となった。それぞれパートでは歌詞を咀嚼し情感たっぷりに歌う表情が豊かで、サビの振付は舞踏会のような踊りで、全身を使った優雅な振る舞いをたっぷりと見せてくれる。最後のフレーズでは一列に並んで胸に手を当て合唱し、余韻を残した演出となった。
「ここまで1曲ずつ披露させていただいて、すごく特別な時間だと思っています。これからもたくさん聴いていただけると嬉しいです」と帆風が語ると、いよいよその時が近づいてきたことを意識させる。続けて「私が持てるすべてのものを残りの時間全部詰め込んでパフォーマンスさせていただきます」と気合いを込めて語ると会場からは大きな拍手の音が轟き、「ムズイ」へ。シリアスな歌詞が綴られる歌声に切実なセリフが散りばめられ、サビでは身体を大きく反らしたあと、力を開放させる踊りを見せる。落ちサビでは互いに抱き合ってから開放されたように力強い表情を見せ、オーラスまで凛々しく見せていった。雰囲気を明るくさせた「願いの眼差し」では、西條と白沢のアーチを皆が笑顔でくぐっていく。
そこから美しいハーモニーを聴かせつつしなやかなダンスを踊る皆の表情は明るく、スカートを片手で持って回転したりと軽やかなステップを披露する。そして、ついに帆風が短く「最後の曲です」と曲紹介すると、「循環バス」がゆっくりと始まる。冒頭の場所で帆風は振付にアドリブを入れ、それを受け止める天城は涙を堪えていそうな表情だ。サビの歌詞は“明日も会いたいなんて生まれて初めての気持ち”と始まる。その言葉はこの日、帆風を送り出すほかのメンバーにはどのように響いたことだろうか。このゆっくりした楽曲のテンポが徐々にメンバーの感情を揺さぶり、終盤が近づくにつれて震えた声が混じり、崩しそうになる表情を堪えている姿が見える。最後のパートでは奥歯を噛み締めたり、まぶたを震わせたりする姿が捉えられつつ、メンバーはそっと静かに歌い終えた。
アンコールでは広いステージに5thシングル時の衣装に身を包んだ帆風が一人で立ち、イメージカラーである赤いライトに照らされつつ、佐藤麗華のキャラクターソング「優等生じゃつまらない」を歌う。この演出はこれから声優を目指す彼女にとって何よりの門出の祝となっただろう。バックライトから壁面に照らし出される彼女の姿は大きく、キャラクターの感情とニュアンスを乗せた歌唱でガイコツマイクを斜めに倒して歌うロックな姿も深く印象づけて見せた。
単独のMCでは「私、帆風千春は本日のライブを持ちまして22/7を卒業させていただきます」と改めて告げる。22/7の最終オーディションに合格したときの期待感を振り返り、担当キャラクターの佐藤麗華へと話題が及び、一旦息を継ぐと涙が彼女の頬を伝う。大切なキャラクターに出会ったからこそ見えた声優という次なるステップ。その思いを一切声を崩すことなく、しっかりと語っていく。続けてメンバーに感謝を述べたタイミングでメンバーたちがステージに登場し、順に帆風に向けて手紙を朗読する。これは帆風にはサプライズだったようで、それぞれの言葉と思い出を受け止めていく。
白沢はリーダーとして「ナナニジに与えてくれていたパワーをこれからは全部自分のために惜しまず使ってください」とエールを送り、天城は「共に夢を話し合っていた仲だからこそ、止めることができなかった」と涙ながらに語る。「毎日一緒にいることが当たり前で、頼ってばかりでした」と話す宮瀬は約束通り涙を堪えて語りきった。河瀬は声を震わせ「初めてのことだらけでどうすればいいか不安だったときも、ちはるんが優しく声をかけてくれたおかげで乗り切ることができました」と感謝を述べる。西條は体を小刻みに震わせゆっくりと呼吸を整え手紙を閉じてから、帆風に頼っていたエピソードを話しつつ「この4年間、誰よりも強く正しくいてくれてありがとう。大好き」と締め括った。涼花は何度も天井を見上げ涙を堪え、シンプルな言葉をエモーショナルにつむぎ「ちはるんにたくさんの幸せが訪れますように」と、魔法をかける。
海乃は「心配をかけないために見せないし口に出さない、千春みたいな人が本物のプロなんだと思います。(中略)これからの千春の歩んでいく道が幸せなものでありますように」と力強く話すと、受けた帆風も号泣。倉岡は明るく端正な声で話していたが、やがて涙声を交えつつ彼女らしい笑いの要素を交えつつ、「千春ちゃんは優しすぎるから自分よりメンバーを優先してくれました。ファンの皆さんにも千春ちゃんは本当にスゴイと言いたいです」と、最後まで涙を伝わせながら語り尽くした。高辻は「誰よりも末っ子気質で甘えたい人なのに、リーダーという頼られる立場を誰よりも優しくメンバーに寄り添った形で全うしてくれました。千春はそのときどきに与えられた役目に対応できる力があります。それは役者としていろんな人になれる才能です」と、彼女の視点から祝う言葉を紡ぎ、続けて本日不在の武田愛奈の手紙を代読し、「もっともっと上を目指して努力する様子を近くで見続けてきました。努力という才能を信じて前に進み続けてほしいです」とメッセージを伝えた。
「最後に円陣を組みたい」という天城の提案によって掛け声を行ったあと、ファンへの感謝の言葉を述べようとすると帆風の声にとうとう涙が混ざり、「まだ夢を見ていいんだよと勇気をくれたファンの皆さん、メンバーのみんな、22/7という場所はこれからも私にとってとっても大切な場所です。ありがとうございました」と語ると、オーラスの「空のエメラルド」を紹介する。
帆風パートから始まるこの楽曲。メンバーはそれぞれの想いを胸に歌い始める。涙声を交えたままの者、笑顔いっぱいの者、振付を力いっぱい行う者と、それぞれの形で表現してこの歌を捧げた。歌い終えたあと、帆風はメンバーカラーで彩られた花束を受け取り、「ここまできても実感が沸かないけど……皆が隣りにいるのが当たり前だと今でもすごく思っちゃうけど、これからは自分が決めた道を胸張って歩いていけるように頑張ります。本当にありがとうございました」と挨拶し、メンバーを送り出したあと、一人残って「今日という日に赤をいっぱいみんな振ってくれてありがとうございます。またどこかでお会いできるように頑張っていきますのでこれからも応援をよろしくお願いします。ありがとうございました!」と締め括った。
TEXT BY 日詰明嘉
写真提供:ソニー・ミュージックレーベルズ
<セットリスト>
●リリース情報
「22/7 LIVE at STUDIO COAST ~11(イレブン)~」
2021年4月21日発売
【完全生産限定盤(DVD)】
品番:SRBL-1990~1991
価格:¥6,500(税込)
【通常盤(DVD)】
品番:SRBL-1992
価格:¥5,200(税込)
【完全生産限定盤(Blu-ray)】
品番:SRXL-315~316
価格:¥7,500(税込)
【通常盤(Blu-ray)】
品番:SRXL-317
価格:¥6,200(税込)
<DVD/Blu-ray>
夢の船/河野都(CV.倉岡水巴)
人生はワルツ/戸田ジュン(CV.海乃るり)
優等生じゃつまらない/佐藤麗華(CV.帆風千春)
感情無用論/丸山あかね(CV.白沢かなえ)
孤独は嫌いじゃない/斎藤ニコル(CV.河瀬詩)
One of them/滝川みう(CV.西條和)
生きることに楽になりたい/藤間桜(CV.天城サリー)
Moonlight/立川絢香(CV.宮瀬玲奈)
神様に指を差された僕たち/神木みかみ(CV.涼花萌)・東条悠希(CV.高辻麗)・柊つぼみ(CV.武田愛奈)
~overture~
●リリース情報
『11という名の永遠の素数』
2021年6月30日発売
【完全盤A(2CD+Blu-ray)】
品番:SRCL-11780~11783
価格:¥9,980(税込)
<CD>
後日発表
<Blu-ray>
『22/7「僕が持ってるものなら」発売記念LIVE』昼公演@パシフィコ横浜(2021.02.28)
【完全盤B(2CD+Blu-ray)】
品番:SRCL-11784~11787
価格:¥9,980(税込)
<CD>
後日発表
<Blu-ray>
『22/7「僕が持ってるものなら」発売記念LIVE』夜公演@パシフィコ横浜(2021.02.28))
【完全盤C(2CD+Blu-ray)】
品番:SRCL-11788~11791
価格:¥9,980(税込)
<CD>
後日発表
<Blu-ray>
Music Video集
【通常盤(CD)】
品番:SRCL-11792
価格:¥2,500(税込)
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