人気作「ワールドウィッチーズシリーズ」より、501部隊「ストライクウィッチーズ」と502部隊「ブレイブウィッチーズ」のコミカルな日常を描くスピンオフ的なTVアニメ『ワールドウィッチーズ発進しますっ!』が、今年1月から放送されている。そのOPテーマ「Wanna Fly?」を歌うのが、同シリーズには欠かせない存在となっている石田燿子。2008年放送のTVアニメ第1作『ストライクウィッチーズ』から今回の最新作に至るまで、シリーズの全アニメ作品でテーマ曲を歌ってきた彼女に、広がり続けるウィッチーズの世界の魅力と新曲について話を聞いた。
――まずは『ワールドウィッチーズ発進しますっ!』のOPテーマのお話をいただいたときの感想をお聞かせください。
石田燿子 毎回そうなのですが、新しいシリーズの発表がされるときは、私も一ファンとしてそのことを知るので、「今回も(主題歌を)歌えるのかな?」という、合格発表みたいな緊張感があるんです。私自身も歌わせていただけることが当たり前と思わず、毎回、どんな結果でも受け止める覚悟をしていて。『ワールドウィッチーズ発進しますっ!』の制作が発表されたときも、ドキドキしましたし、心の中ではドラムロールが鳴り始めたのですが(笑)、今回もオファーをいただけて嬉しかったです。
――石田さんはこれまでの「ワールドウィッチーズシリーズ」の全作品でテーマ曲を歌っていますから、ファンからすると石田さんが関わらないのは考えられないことですけどね。
石田 いやいや、絶対に気を抜いてはダメなんです(笑)。今回もありがたいことに、ファンの方の「もちろんそうでしょう!」といった声をSNSで目にしたのですが、それで安心してはいけないと思っていて。毎回、決まる前の適度な緊張感と、お話をいただいたときの安心感が合わさって、いいバランスでレコーディングに臨むことができています。
――石田さんは2020年秋クールに放送された『ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN』でもOPテーマ「勇気の翼」を担当されたこともあり、最近は改めて「ワールドウィッチーズシリーズ」に向き合う機会が多いと思います。同シリーズの魅力はどんなところにあるとお考えですか?
石田 「こんな子が戦うの?」という見た目のかわいらしい女の子たちが、一人ひとりでもしっかり気持ちが強いし、それでいてみんなで戦うと絆の力ですごいパワーを出せる、「一人じゃないよ、みんなで力を合わせたらこんなこともできちゃうんだよ!」とチームで頑張るところが、根底にある魅力だと思います。しかもそういった部隊がいくつもいて、それが劇場版やOVA、今回の『発進しますっ!』のようなコメディ作品といった形で、色んな展開が見られるところも素敵ですよね。
――たしかに。特に『ストライクウィッチーズ』のTVアニメ第3期にあたる『ROAD to BERLIN』は、みんなとの絆で困難を乗り越えていく醍醐味が、より強く描かれていた印象です。
石田 そうですね。特に3期は(主人公の宮藤)芳佳ちゃんがすごく頼れる存在に成長していたところからの、魔法力を失って、色々な紆余曲折があるなかで、みんなが駆けつける展開が、感動ポイントだったように思います。501のみんなもそれぞれが成長していて、1期のときは少しぶつかっていたところも信頼感でクリアできていたり、チームとしての成長も感じられたので、よりグッとくるシーンが多かったです。
――石田さんが本シリーズの楽曲を歌うにあたって、大切にしていることは?
石田 ファンの方が聴いてくださったときに、ウィッチたちが大空を駆けまわっている映像が浮かんでくるような部分、そして駆け巡るような疾走感、聴いていて青空の風景が思い浮かぶような気持ちよさが、ウィッチーズの楽曲には欠かせないものだと思います。ただ、毎回同じような感じだと面白くないですし、作品もどんどん進化して、ウィッチたちもたくましくなっていくなかで、私も歌のアプローチを自分なりに変えてみたり、気持ちの作り方や技術面でも色々考えながら、ウィッチが戦うのと一緒に私も歌のなかで戦うような気持ちで毎回歌っています。ウィッチの成長に合わせて曲にも毎回違ったものが入っているので、私も毎回挑戦させてもらっている感覚がありますね。
――『ワールドウィッチーズ発進しますっ!』のOPテーマ「Wanna Fly?」を最初に受け取ったときの印象はいかがでしたか?
石田 「空を飛びたい」とか「頑張ろう!」といった前向きなメッセージは一貫して変わらないんですけど、今までの主題歌とは少し違う流れの楽曲だと感じました。楽曲タイトルも初めての疑問形ですし(笑)。曲調もいつもはガーンと抜けるような高めのキーの曲が多いのですが、今回はキー設定がいつもより低くなっていて。歌詞にも“翼よ 折れるな”や“「ためらわず行け」”といった、ちょっと強い口調のチームを統率するようなフレーズが多いので、今回は初めて芳佳ちゃんというよりも坂本少佐のようなイメージで歌いました。
――今までは芳佳のイメージで歌っている部分が強かったんですね。
石田 歌詞も割と芳佳ちゃんの想いであったり、芳佳ちゃんが実際に劇中で言うセリフが入っていたりしていたので。『ブレイブウィッチーズ』のOPテーマだった「アシタノツバサ」(2016年)のときも、“やってみなきゃ 分からないよ”というフレーズが(主人公の雁淵)ひかりちゃんのセリフにあったりするので、基本はメインのキャラクターの気持ちを考えながら歌うようにしていたんです。今回は初めてそうではないパターンになりました。
――坂本少佐をイメージして歌うにあたって心がけた部分、それが一番よく表れているフレーズをお聞かせいただけますか?
石田 命令っぽい口調の歌詞が入っていた時点で、気持ち的にはそういうふうにもっていっていたのですが、例えば2コーラスめの“曇り空の中を不安そうに泳げ”は今までにないフレーズだなとすごく感じて。今までの「もっと頑張らなくちゃ!」「みんなを守りたいんだ!」という感じよりは、「別に不安そうでもいいんだよ」と言っているのが、なんとなく坂本少佐っぽいなと思いましたね。あとキーが低いのも、そういう言葉を伝えるのにちょうどよく感じました。
――個人的には冒頭の“折れない心は要らない 削れた分だけ高く飛べるさ”というフレーズが印象深くて。“折れない心は要らない”ということは、いわば「折れてもいい」わけじゃないですか。そのように弱い部分もそのまま許容する包容力みたいなものが、今回の楽曲には感じられました。
石田 それは全体的にあるかもしれないです。今までの楽曲はちょっとがむしゃらな部分がありましたけど、この曲はただみんなで飛んでいくだけではなく、チームをまとめる力だとか、何かがあったとしても「大丈夫だよ」「背中を押してあげるよ」と包み込むような温かさみたいなものを感じて。私もこの1行目の歌詞は、今までにないなと思ました。でも、『発進しますっ!』シリーズは相変わらず自由なんですけどね(笑)。
――たしかに(笑)。キャラクターのコミカルなかわいらしさや面白さがより強調されていますよね。
石田 前作の『ストライクウィッチーズ 501部隊発進しますっ!』よりもさらに輪をかけて自由だなと思って(笑)。『ROAD to BERLIN』のシリアスで最後の感動した気持ちのまま観ると、すごいギャップがあるのもまたいいですよね。
――オープニングアニメをご覧になった感想はいかがでしたか?
石田 絵のタッチがいつものシリーズよりもかわいらしいじゃないですか。しかも今回は501と502のメンバーが全員登場するので、芳佳ちゃんとひかりちゃんが一緒に登場したり、その真ん中に黒リーネ的なのが出てきたり(笑)、オープニングも隅々まで目が離せないですよね。メンバーも勢揃いしてすごくかわいいなと思いました。
――また、今回のシングルのカップリングには、前作『ストライクウィッチーズ 501部隊発進しますっ!』のEDテーマだったキャラソン「Treasure of life」のカバーが収録されています。
石田 私も前からこの曲を歌ってみたかったので、今回カバーを収録してもらえるのはとても嬉しかったですし、実際に歌ってみたら「これ、私の曲なんじゃない?」と思うぐらいピッタリでした(笑)。すごくしっくりきたし、歌っていてすごく楽しかったんですよ。カバーではありますけど、(服部)静夏ちゃんの次の13人目の501のメンバーとして、石田大尉という新しいキャラクターの気持ちで歌わせていただきました(笑)。
――石田さんはこれまでにも「ワールドウィッチーズシリーズ」の楽曲をたくさんカバーしてきましたよね。
石田 もう隙あらばカバーさせていただいています(笑)。キャラソンも含めて名曲揃いなので、歌い手としては歌いたくなっちゃうんですよね。
――なおかつ今回の「Treasure of life」もまさにそうですが、どの曲も石田さんの伸びやかな歌声にとても馴染んでいるように感じます。
石田 私も相性はめちゃくちゃいいと感じています(笑)。『ソラノウタ』(2018年)というアルバムで結構たくさんの曲数をカバーさせていただいたんですけど、もうレコーディングが楽しくて楽しくて。ウィッチの楽曲は歌っていて気持ちいいですし、自分で歌っていても歌詞がスッと入ってきて、元気になったり、心の隙間を埋めてくれたり、「大丈夫だよ」って応援されている感じになるんです。レコーディング自体にヒーリング効果があるので(笑)、本当に癒しの時間ですね。
――「ワールドウィッチーズシリーズ」の楽曲はどれも聴いていて元気になれますし、歌詞にも難しい言葉があまり入ってないですものね。
石田 わかりやすりし、伝わりやすい。心にスッと入ってくれる歌詞が多いと思います。あと、キャラソンはやはりそれぞれのキャラクターに沿った曲でもあるので、例えばバルクホルンさんの曲を歌うと、彼女のことや色んなシーンが浮かんでくるんですね。それが一人シアターみたいな感じで(笑)、幸せなレコーディングでした。
――『ソラノウタ』の収録曲だと、個人的には「Fly up so high」のカバーが大好きです。
石田 あの曲はバルクホルン役の園崎(未恵)さんが歌ったバージョンを聴きながら覚えて歌ったんです。後々、歌詞の“Fly up so high!”というフレーズのところを聴き比べたら、全員それぞれの個性が出ていて、すごく面白かったですね。同じ曲なのにこんなにカラーが違うんだと思って。
――改めて振り返ると、石田さんと「ワールドウィッチーズシリーズ」とのお付き合いは今年で13年目になるわけですが、ご自身にとって同シリーズはどんな存在になっていますか?
石田 ありがたいことに、ちょっとした親戚のような身近さを感じています。キャストの皆さんも本当に仲が良いですし、2020年は難しかったですけど、基本的に年に2~3回ぐらいはイベントなどでお会いする機会があって。ウィッチの絆が深まるのと一緒で、私も会うたびに仲良くさせてもらっているので、ファンの方々を含め皆さんと会うのが楽しみですし、SNSとかを見ていると「ウィッチーズ専属歌手」と見かけることがあるんですけど、その通りだなと思っています(笑)。本当にありがたいことですね。
――最初にも言いましたが、最早「ワールドウィッチーズシリーズ」の主題歌は石田さんの声以外に考えられないですから。
石田 ありがとうございます! それは一生、大きな声で言い続けてください(笑)。もちろん私も歌い続けていきたいですし、毎回、新しいシリーズの制作が決まると、合格発表を待つ気持ちでドキドキしてると思います(笑)。
――では最後に、アニメや楽曲を楽しみにしているファンの方に向けてメッセージをお願いします。
石田 2020年はコロナの関係でイベントの開催が難しいなか、『ROAD to BERLIN』の放送があり、それから年明けすぐに『発進しますっ!』が始まって。私としても、何年もシリーズから離れている時期があったなかで、立て続けで新シリーズに関わることができたこと、こんなときだからこそ「またウィッチたちに会える!」という気持ちになれたことが本当に嬉しくて。今は辛い時期が続いていますけど、皆さんにもウィッチーズが近くにあることを感じてもらえたら嬉しいです。今回の「Wanna Fly?」と「Treasure of life」も、皆さんがいい作品と楽曲に巡り合えたと思っていただけるように、心を込めて歌いましたので、ぜひ聴いてください。
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
●リリース情報
TVアニメ『ワールドウィッチーズ発進しますっ!』OPテーマ
「Wanna Fly?」
2月17日発売
【DVD付き限定盤】
品番:COZC-1726~7
価格:¥1,800+税
【通常盤】
品番:COCC-17859
価格:¥1,200+税
<CD>
01.Wanna Fly?(TVアニメ『ワールドウィッチーズ発進しますっ!』OPテーマ)歌:石田燿子
作詞・作曲・編曲:園田健太郎
02.Treasure of life 歌:石田燿子
作詞:荘野ジュリ 作曲:池田健二(TRYTONELABO) 編曲:滝澤俊輔(TRYTONELABO)
03.Wanna Fly? -Instrumental-
04.Wanna Fly? -TV Size Version-
<DVD>
第3回妹ドラフト会議
出演:小清水亜美、名塚佳織、五十嵐裕美、石田嘉代
●作品情報
アニメ『ワールドウィッチーズ発進しますっ!』
TOKYO MX TOKYO MX1にて 毎週火曜 深夜0時45分~
MBS 毎週土曜 深夜4時53分~
BS11 毎週水曜 深夜0時15分~
※放送時間は変更となる場合がございます。予めご了承ください。
【CAST】
宮藤芳佳:福圓美里
坂本美緒:世戸さおり
リネット・ビショップ:名塚佳織
ペリーヌ・クロステルマン:沢城みゆき
ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ:田中理恵
ゲルトルート・バルクホルン:園崎未恵
エーリカ・ハルトマン:野川さくら
フランチェスカ・ルッキーニ:斎藤千和
シャーロット・E・イェーガー:小清水亜美
サーニャ・V・リトヴャク:門脇舞以
エイラ・イルマタル・ユーティライネン:大橋歩夕
雁淵ひかり:加隈亜衣
雁淵孝美:末柄里恵
管野直枝:村川梨衣
ニッカ・エドワーディン・カタヤイネン:高森奈津美
ヴァルトルート・クルピンスキー:石田嘉代
アレクサンドラ・I・ポクルイーシキン:原由実
ジョーゼット・ルマール:照井春佳
下原定子:水谷麻鈴
エディータ・ロスマン:五十嵐裕美
グンドュラ・ラル:佐藤利奈
(C)2020 島田フミカネ・KADOKAWA/第501統合戦闘航空団
(C)2021 島田フミカネ・藤林真・KADOKAWA/501部隊&502部隊発進しますっ!
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