エレクトロユニット・OOPARTZのコンポーザー兼トークボクサーとして活動する傍ら、DJ・音楽プロデューサーとして幅広いジャンルのアーティストや楽曲を手がけるJUVENILEが、キャリア初のソロアルバム『INTERWEAVE』を完成させた。May’nや声優の福山 潤、オリエンタルラジオの藤森慎吾ら楽曲提供で縁のある面々に加え、俳優の中尾明慶、☆Taku Takahashi、TeddyLoid、おかもとえみ、児玉雨子ら幅広い顔ぶれが勢揃いした、JUVENILEだからこそ実現し得た全10曲。そのアルバムのこだわりを中心に、近年、アニメ音楽周辺でも注目を集める彼のクリエイターとしての矜持についても語ってもらった。
――JUVENILEさんと言えば、OOPARTZの活動やRADIO FISHへの楽曲提供がきっかけで名前が知られるようになりましたが、そもそも音楽活動を始めたきっかけは?
JUVENILE ピアノを子供の頃から高校卒業までやっていたんですけど、昔からヒップホップが好きで、学生時代に趣味でトラックを作って、地元のラップをしている仲間に提供したりもしていて。で、大学に入ってから自分でもライブをしたくなって、トークボックスで歌い始めたんです。ただ、その当時、2010年前後の頃はEDM全盛で、そういうヒップホップやファンクは流行りの反対側というか、絶妙に需要がないところだったんですよ(笑)。
――たしかにトークボックスがよく使われるウェッサイ系のヒップホップは、その頃ちょうどブームが落ち着いた感じでした。
JUVENILE なので、まずは友達を増やそうと思って、大学のダンスサークルに入ったんですけど、そこにトークボックスの曲で踊ってる人たちがいたんですよ。それはいわゆるロボットダンスみたいな“ポップ”っていうジャンルのダンスなんですけど、「ここなら僕にも需要がある!」と思って、ダンサーが踊るための曲を作るようになって。その頃に出会ったのが、今の相方のRYUICHI(OOPARTZ)や、RADIO FISHのFISHBOYさんだったんですね。で、ある日FISHさんから「兄貴(オリエンタルラジオの中田敦彦)が歌いたいって言ってるんだけど、どうしたらいい?」という相談を受けて。
――それがRADIO FISHの始まりだったわけですね。
JUVENILE 僕はその当時から、音源のアレンジからレコーディング、ミックスまで全部自分で作業していたので、そこからRADIO FISHの曲を作ることになったんです。でも、何曲か作ってるうちに、中田さんから「俺が思ってたほど話題にならない」って言われて(笑)。それで藤森さんと中田さんと僕の3人で作ったのが「PERFECT HUMAN」でした。それがTV番組きっかけで超バズって、僕とRYUICHIでやっているOOPARTZも徐々に認知されていった感じですね。だから僕はエレクトロのイメージが強いと思うんですけど、元々はヒップホップが好きだし、精神的にはヒップホップが根底にあると思います。
――そのヒップホップの精神性が、クリエイターとしての活動で役立つことはありますか?
JUVENILE ヒップホップにはサンプリングという手法がありますけど、例えばクライアントさんに「こういう楽曲を作ってほしい」と言われたときに、僕のDJとしての引き出しの中から何曲か例を挙げて、「この曲とこの曲のいいところを混ぜて曲を作りましょうか?」と提案することがあるんですよ。既存の楽曲のいいところ、コード進行や構成といった外側の部分を分析して、それを3つぐらい混ぜてイチから新しい曲を作る。それって楽曲の構造をサンプリングしていることだと思うんですよね。
――JUVENILEさんは近年、アニメ音楽周辺でのお仕事も増加しています。2020年の秋アニメだと、Liyuuさんに提供した「カルペ・ディエム」が、TVアニメ『100万の命の上に俺は立っている』のEDテーマとして話題になりました。
JUVENILE Liyuuさんとは、1stシングル「Magic Words」のカップリング曲(「魔法とガムと勇気」)を提供したのが最初だったんですけど、そのときはちょっとかわいい東京シティエレクトロみたいな路線でいきたいというお話で、「Magic Words」がテンポの速い曲だったので、僕はミドルテンポの曲を作ったんです。で、その柔らかい感じが好評だったみたいで、次のシングルのお話をいただけて。今度はテンポの速い曲を作ることになったんですけど、Liyuuさんは歌に関してはまだ早口でしゃべる日本語が難しいこともあり、なるべく歌いやすいメロディとテンポを意識して作りました。
――たしかに中田ヤスタカさん以降のエレクトロポップやKawaiiフューチャーベースの系譜を感じさせつつ、ちゃんとLiyuuさんの声質やキャラクター性にマッチした楽曲になっているように感じました。
JUVENILE ありがとうございます! 個人的には、第一線で流行っているサウンドを昇華して歌もののポップスにするのは、かつてJ-POPが得意だったことだと思うんですよ。SMAPや嵐、モーニング娘。とか。でも、今それを一番上手くやっているのはK-POPだと思うんですね。僕も日々K-POPを聴いて勉強していますけど、「カルペ・ディエム」はそれを参考にして作った部分もあります。
――もう1曲、「アイドリッシュセブン」発の4人組ユニット、ŹOOĻの1stアルバム『einsatZ』に収録されている「4-ROAR」についてもお聞かせください。この曲はトラップやエレクトロの要素が混ざり合った、ハイブリッドなサウンドが新鮮でした。
JUVENILE 最近のエレクトロの曲は、AメロとBメロとサビが全部違う音になっていて、ドラムやベースの音もぞれぞれ違うものを使っていたりするんですよね。でも、テンポ感やキーが統一されているので1曲として成り立つっていう。この曲に関しては、最初からそういうトレンドを意識した作り方にしたくて、Aメロはトラップ、Bメロはバチバチと切れる感じ、サビは4つ打ちっていう構成にしました。ŹOOĻはみんな歌が上手いし、特に木村 昴くんがいるので、攻めたものにしても大丈夫だろうと。制作サイドからも、今までのアニソンの流れを踏まえつつも、もっと攻めたい・面白いことをしたいという意志を感じましたし。
――そういえば、JUVENILEさんと木村さんは地元が一緒らしいですね。
JUVENILE そうなんですよ。年齢は木村くんのほうが1つ下なんですけど、それこそ僕がヒップホップを好きになった中学の時から、彼はすでに有名人だったし、相方(RYUICHI)とも高校の友達で……でも、彼は今やとんでもないところにいますから(笑)。コロナ禍ということもあって、レコーディングでも会うことはなかったんですけど、バッチリ歌ってくれたので、やっぱりわかってくれてるんだなと思いましたね。
――今はJUVENILEさんが得意とするクラブミュージック寄りのサウンドのニーズが高まっている印象もあるのですが、それを肌で感じることはありますか?
JUVENILE 変わらないところはありつつも、特にアニメカルチャーからの熱視線を感じることはありますね。舞台版の「ヒプノシスマイク」(『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage)の楽曲もやらせていただいているので。でも、結局、一番イケてるところが一番イケてることをやりたいだけだと思うんですよ。2020年現在、一番攻めたことができるのはアニメコンテンツなんだと思います。僕も今一番かっこいいものをやりたいし、きっと向かってる先が一緒なんだと思いますね。
――ちなみにアニメは普段から観るタイプですか?
JUVENILE 好きですね。僕が大学生で就活をするか迷っていた時期に『けいおん!』のアニメが放送されていたんですけど、その当時、Tom-H@ckさんが24~25歳ということを知って「嘘だろ!?」と思って(笑)。僕はその頃、根拠のない自信があって、同年代では僕が最強だと思ってたんですよ。後に今回のアルバムにも参加してもらってる同い年のTeddyLoidくんに出会って、井の中の蛙だったことを知るんですけど。当時は自分がトムさんの年齢になるまでにまだ4年ぐらいあったので、「この人に追い付かなくちゃ!」と思って、音楽の道を選んだきっかけでもあって。今ではTomさんとも仲良くさせていただいてますし、Tomさんと僕とTeddyくんと志倉千代丸さんで“千代丸会”というのがあって、たまに集まっていろんな話をさせていただいてます。
――今回の『INTERWEAVE』は、JUVENILEさんにとって初のソロアルバムになります。そもそもソロアルバムを作ろうと思ったきっかけは?
JUVENILE 僕は毎年、来年の目標を立てているんですけど、一昨年は「自分のスタジオを作りたい」と言ってて、去年の秋ぐらいにそれを実現したんです。で、次は何をしよう?と考えたときに、OOPARTZの活動も変わらず続けつつ、ソロでもアルバムを作りたいと思ったんです。元々は僕が今までお仕事してきたアーティストさんたちと楽曲を作って、その方々を集めて“JUVENILEフェス”みたいなイベントをやれば超盛り上がるじゃん!と思っていたんですけど、コロナで難しくなって。でも単純にアルバムは作りたかったので、今までお世話になってきたMay’nさんや福山 潤さん、藤森慎吾さんといった人たちに加え、交流はあるけどお仕事ではご一緒していなかったアーティストさん、それと初めましての方にお声がけして、全曲フィーチャリングゲストを迎えたアルバムを作ることにしました。
――タイトルの『INTERWEAVE』にはどんな意味を込めたのですか?
JUVENILE 僕は普段歌詞を書かないし、曲の造形美みたいなものを突き詰めてきた人間なので、そこに感情やメッセージ性を込めることはあまりしてこなかったんですよ。なのでタイトルも全然思いつかなくて、マネージャーの催促も聞かぬふりをしてたんですけど(笑)、改めて自分の活動を見つめ直したときに、音楽的にいろんなことをやってきたし、アルバムもいろんな人を集めて作っていたので、そういうことを表す単語はないかなと思ってたんですよ。僕は“Inter”の付く言葉が好きで、それって何かと何かの間を表す言葉だし、自分が所属している事務所もホリプロインターナショナルなので、調べていたら、“織り交ぜる”という意味の“Interweave”という単語を見つけて「これだ!」と思って。
――様々な縁が混ざり合った作品というわけですね。
JUVENILE ジャケットのイラストを描いてくださったnajucoさんも、僕が好きでお願いしたんですけど、この絵のタッチからするとアニメの造形も深いと思うし、一度しっかりとお話してみたいんですよね。今、全曲のリリックビデオを用意しているんですけど、それもnajucoさんに描いていただいていて。ジャケットのイラストは僕のスタジオをイメージして描いてもらって、イスやヘッドホンも実際に使っているのと同じものです。なので「JUVENILEって女性?」って勘違いする人もいるかもしれないですけど(笑)。
――ここからは楽曲単位で詳しくお話を伺っていきます。まずリード曲の「Into U」は、m-floの☆Taku Takahashiさんとのコラボ曲。
JUVENILE ☆Takuさんには「PERFECT HUMAN」のリミックスをしていただいたことはあったけど、今まで面識はなかったんですよ。でも、今回のアルバムでは、大御所の人とご一緒して、僕が完全にもらう立場になる枠もほしかったので、☆Takuさんにお話をしたらOKしていただいて。そこから☆Takuさんのプライベートスタジオに通って作りました。
――データのやり取りではなく、実際に会って一緒に作られたんですね。
JUVENILE 最初はビデオ会議でミーティングしたんですけど、その後、直接お会いして、そのときのお話を元に、まず僕が簡単なデモを作りました。歌ってくれたsheidAさんはLA出身の女の子で、その子に歌詞も書いてもらうことになったんですけど、彼女はアメリカ暮らしのほうが長いので、細かいニュアンスの日本語があまりわからないんですよ。この曲はハッピーな恋愛の曲、相手が好きかどうかわからないけど自分だけが舞い上がってるときの楽しい気持ちを表現してほしかったので、片想いとか色々話したんですけど、あまり伝わらなくて。で、「文化祭って準備しているときがいちばん楽しくない?」って言ったら「わかりました!」って伝わって(笑)。そこから自分のスタジオでボーカル録りして、☆Takuさんのスタジオに通ってアレンジを詰めていきました。
――特にサビのリズムトラックが2ステップになっているところに、☆Takuさんらしさを感じました。
JUVENILE m-floの「come again」がヒットした当時、僕は小学生高学年から中学生の頃で、ちょうど自分の音楽の好みがわかってきたときだったし、CHEMiSTRYや平井 堅さん、EXILEの曲にも2ステップのものがあって、好きで聴いていたんですね。で、☆Takuさんとやることになって、心の奥底では「come again」みたいな曲をやりたいと思っていたんですけど、☆Takuさんの気持ちを考えると、なかなか言い出せなかったんですよ。でも、☆Takuさんとだいぶ打ち解けたある日、ポロっと言ってみたら、「なんでそれを早く言ってくれないの?」って言ってくださって。そこから当時の「come again」にはなかった、Aメロ・Bメロ・サビがそれぞれ違うという文法に当てはめて楽曲を作っていきました。ビートや効果音は☆Takuさん、ベースラインやコードの鍵盤系は僕が弾かせてもらって。サビは2ステップでお願いしたら、☆Takuさんから「これ俺っぽくなりすぎてない?大丈夫?」って言われたんですけど、僕は「いや、それでいいんです!」っていう(笑)。
――「Into U」に続くアルバムの3曲目「Do Or Do Not」も、いわゆる2ステップの曲ですよね。
JUVENILE 「Do Or Do Not」は、まだ☆Takuさんに参加してもらえるかわからないときに作った曲で、元々☆Takuさんにお願いできなくても、2020年ならではの2ステップを作ろうと思っていたんです。面白いのは、☆Takuさんの「Into U」の2ステップと、それに憧れて僕が作った「Do Or Do Not」の2ステップでは、結構違うんですよ。☆Takuさんは打ち込みを手動でずらして調整するので、ビートが有機的なんですよね。僕はグリッドに合わせて打ち込むので、☆Takuさんよりも無機的な感じ。それが僕の個性でもあるんですけど、その違いもわかって面白かったです。
――「Do Or Do Not」に参加したおかもとえみさんとは、どんなご縁で?
JUVENILE 前から仲は良かったんですけど、一緒に曲を作ったことはなかったので、今回声をかけました。彼女も最近はK-POPをよく聴いてるという話で、彼女はソロ名義だとゆったりした曲が多いし、フレンズの活動だとバンドでJ-POPをやっている感じなので、そういうBPMが130周辺の曲は今まであまりやってきていないという話になって。それで、僕から2ステップを提案して出来た曲です。アルバムは“Love”をテーマにしようと思っていたので、この曲はその中でも「自分を愛していこう」というテーマで歌詞を書いてもらいました。
――2番にラップが入るところも今っぽいですね。
JUVENILE 「カルペ・ディエム」もそういう構成ですけど、1番と2番でメロディがまったく違うのは今のトレンドですからね。
――May’nさんをゲストボーカルに迎えた「AWESOME」は、ディスコフレイバーのダンスポップチューン。
JUVENILE 彼女と最初に仕事したのは「恋しさと せつなさと 心強さと」(篠原涼子の楽曲)のカバーのアレンジだったんですけど、そこから仲良くなって、ライブを観に行かせていただくようになって。それまでは『マクロスF』のシンセを中心とした、菅野よう子さんの書く不思議な世界観のイメージが強かったんですけど、ライブではBPM200ぐらいのゴリゴリのバンドロックをやっていたので、そのイメージで作ったのが「涙の海を東へ」だったんです。
――2019年のシングル「graphite/diamond」のカップリングに収録されたナンバーですね。
JUVENILE それを踏まえて、今度は僕のフィールドでどんな曲をやるか考えたときに、May’nさんに最近どんな音楽を聴いているのかを聞いてみたら、彼女は元々R&Bやファンクが好きなので、今もそういう音楽が気になってるという話になって。じゃあそれしかないでしょ!ということで、ブルーノ・マーズとかジャスティン・ティンバーレイク、最近で言うとデュア・リパとかの文法をイメージして作りました。
――たしかにデュア・リパの「Don’t Start Now」にせよ、ドージャ・キャットの「Say So」にせよ、今はディスコっぽい曲が世界的なトレンドになっていますもんね。
JUVENILE USはそういう楽曲とトラップに分かれてきてる感じですよね。やっぱりMay’nさんもアーティストですから、ファンから求められている像にしっかりフィットしつつも、自分が次にやりたいことを貪欲に見据えていたので、じゃあ挑戦してみようと。仮に何か言われたとしても、僕の作品でやっていることなので、僕が背負う!って(笑)。
――藤林聖子さんによる歌詞もすごくいいですよね。“マスクのせい ミライ曇る”というフレーズを入れ込みつつ、いい塩梅に背中を押してくれる曲になっていて。
JUVENILE これも「自分を大事にしていこう」みたいなテーマで、最初はMay’nさんに書いてもらう予定だったんですけど、スケジュール的に厳しかったので、彼女が全幅の信頼を置いている藤林さんであれば間違いないものを書いてくださるだろうということで、僕からテーマをお伝えしてお願いしたら、初稿で完璧な歌詞を上げてくださりました。自己愛をテーマにすると、熱血系になりがちですけど、この歌詞は「とにかく自分を大事にしてればいいんじゃない?」みたいな感じで、ちゃんと今っぽいんですよね。May’nさんとも「押し付けないところがすごく令和っぽい歌詞だね」という話はしました。
――もう1曲、アニメファン的に注目なのが、声優の福山 潤さんがマイクを握るラップ調のナンバー「君と僕の記録」です。
JUVENILE 福山さんとは、レコード会社を移籍して最初のシングル(「KEEP GOING ON!」)からご一緒してるんですけど、そういえば恋愛の曲を歌ってないなと思ったんですよ。なので打ち合わせの時に「福山さんは恋愛の曲がNGなんですか?」と聞いてみたら、そんなことはないけどなぜかやってこなかったというお話で。じゃあ僕の作品でやらせてもらえないか?ということで、作ったのがこの曲です。福山さんには、テンポが遅くて、ぼそぼそとした感じの等身大のラップ、そしてめちゃめちゃ未練たらしい恋愛の歌を歌ってもらいたくて。
――というのは?
JUVENILE ちょうどその頃、瑛人さんの「香水」が流行りだして。あの曲は失恋した男性目線でずっと引きずってる歌じゃないですか。Official髭男dismさんの「Pretender」も同じで、僕はめっちゃポジティブな陽キャなので、僕の中ではあの歌詞の世界観がとても斬新で(笑)。ただ、僕は実験したい気持ちが強かったんですね。そこで、相方のRYUICHIに「香水」のラップバージョンというか、ずっと過去の恋愛を引きずっているような男の歌を歌詞を書いてもらって、RYUICHIの仮歌を聴いた瞬間、これが福山さんのイケボに変わったらイケる!と思って、お願いしました。
――福山さんの明朗な歌い口だからこそ、成立する楽曲といいますか。
JUVENILE 福山さんは朗読劇をよくやられていて、僕も何度か観に行かせていただいたのですが、泣けるんですよ。今回の曲はラップというよりも、リズムが付いた朗読みたいな感じで、それは福山さんからもらった部分ですね。歌詞も良くて、“オレンジ色が君を連れ去る”で夕暮れとともに彼女がいなくなって、最後は夜に向かって一人で歩き出すんですけど、実際のところは何もいいことがないし、まったく救われてないんですよね。でも、絶望を感じさせないのが福山さんの上手いところで、福山さんの声のおかげで、聴いたあとに「なんかいいなあ」ってなるんですよ(笑)。「Pretender」も「香水」もそういう構造の曲なので、この曲にどんな反応があるのか楽しみですね。
――ほかにリスアニ!の読者に向けておすすめの楽曲を選ぶとしたら?
JUVENILE どれも推したいですけど、まだ取材で全然しゃべってないのは、藤森さんとの「プレイボーイ」かな?
――児玉雨子さんが作詞で関わっている、メロウなR&Bチューンですね。
JUVENILE 児玉さんには「カルペ・ディエム」の歌詞を書いていただいたんですけど、現場で直接会ってコミュニケーションを取ることはなくて。でも、とある新年会みたいな場所で初めてお会いしてご挨拶させてもらったときに、児玉さんから「1番が歌で2番がラップになっているところが、大変だったけどすごく楽しかったです!」と言ってくださって。で、また面白い曲を作るタイミングがあればご一緒できればと思っていたところ、藤森さんとラップ曲を作ることになったので、これは児玉さんしかない!と思ってお願いしました。
――児玉さんにはどんなテーマで歌詞をお願いしたんですか?
JUVENILE 児玉さんには「藤森さんの良さは、チャラいけど、誰も傷つけてないところにあるんですよ」みたいなお話をして。ラップってバトルやディスが多いですけど、藤森さんは相方をパーフェクトと言ったり、「あっちゃんカッコイイ!」とか、女性に「君、かわうぃーね」と言ったり、全部褒めてるんですよ。相手をめっちゃ立てる男なんですよね(笑)。その誰も傷つかない軽さ、相手を絶対に傷つけないところが藤森さんの良さだと思うので、ただひたすら「女の子がいい」って言っている歌にしてもらいました。
――児玉さんらしい言葉遊びもたくさん入ってますよね。
JUVENILE 「プレイボーイ」という曲名も、“祈る”と“チャラい”の意味合いがかかっていて。“まず稲妻”とかもちょっとアホくさくていいですよね(笑)。歌詞はちょっとふざけてもらうようにお願いしたんですよ。やっぱり芸人さんなので笑いがないといけないし、ビートや歌い方をかっこよくすることでバランスをとって面白くしようと思って。
――アルバムの最後に収録されている「Flashlight」は、JUVENILEさんがトークボックスで歌っているほか、作詞も担当。百合香さんのバイオリンがエモーショナルな雰囲気を演出する、ミディアムテンポのR&Bです。
JUVENILE マネージャーからトークボックスがメインの曲も作ったほうがいいと言われたときに、たしかに自分の言いたいことを1曲ぐらいはやらなきゃなと思って。今回のアルバムは“LOVE”がテーマで、中尾明慶さんに歌ってもらった「パパだから」は家族愛、藤森さんとの「プレイボーイ」は女の子大好き、1曲目のインスト曲「INTERWEAVE」は全部アナログ機材で作っていて、機材大好きっていう曲なんですよ。で、自分はほかに何が好きなんだろう?と考えたときに、やっぱり仲間とか地元かなあと。
――なるほど。それで東京をレペゼンする曲になったわけですね。
JUVENILE 相方のRYUICHIと一番最初に遊びで作った自主制作の曲に「Mirage In Tokyo」というのがあって。「ヒップホップならまずは仲間と地元の曲でしょ!」と思って作ってから7年経つんですけど、結局、僕が言いたいことはそれだなと思って。東京が大好きだし、自分が見える範囲の仲間を大事にしたいっていう。“『公園』にはbling blingのハイブランド”という歌詞の“『公園』”は宮下公園のことで。宮下公園と言えばストリートカルチャーの聖地だったけど、それが今はハイブランドのお店が並ぶ場所になってしまって、「あれ?」と思って。もちろんいいことでもあるとは思うんですけど、何かを投げかけなくてはヒップホップではないし、変わってしまったけど、変わらないものもある。大事なものは大事にし続けたいし、みんな頑張ってるよね、っていう曲ですね。
――“結局「普通」の積み重ねが いつかgame changer”というフレーズも、コロナ以降の今の状況へのメッセージを感じさせて、いいなと思いました。
JUVENILE この時期にとても悲しいニュースが続いて、2番の頭の部分とかは広い街なのに一人を感じてしまうのかなと思いながら書きました。“それはまるで線香花火 消えてから大騒ぎ”するけど、“すぐリセットでまた次のネタがSET”されて、みんな忘れていってしまうのかな…という。自分にも意外と書きたいことがあったんだなと思いましたね。
――いろんな方との共演を楽しみつつ、どの楽曲にもJUVENILEさんらしさが感じられる作品になりましたね。最後に、今後アーティスト/クリエイターとしてどんな展望を描いているか、お聞かせください。
JUVENILE まずはソロアルバムを第2弾、第3弾と続けていきたいです。今回はスケジュールなどの都合でご一緒できなかった方もいるし、まだまだやりたい方はたくさんいるので。あと、僕は今年で31歳なんですけど、20代はずっと曲を作ってきたので、30代は曲を作る以外のことにも興味があるんですよ。
――それは例えば?
JUVENILE 今はまだ探しているところですけど、例えば誰かを育てるとか。僕はずっと一人で制作してきたんですけど、仕事の規模が大きくなってくると、誰かに助けてもらうことがあるので、僕も30代は助ける側に行けたらなと思って。それプラス、若い子や同年代のこれからの人と一緒に何かを出来ればなと思っていて。僕もまだまだですけど、何か引っ張ってあげられることができればなと思っていますね。
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
●リリース情報
JUVENILE セッションアルバム
『INTERWEAVE』
発売中
価格:¥2,800+税
品番:HPI-0004
配信リンクはこちら
1.INTERWEAVE
Music&Arranged:JUVENILE
2. Into U feat. sheidA
作詞:sheidA
作曲: JUVENILE & ☆Taku Takahashi
編曲:JUVENILE & ☆Taku Takahashi
3. Do Or Do Not feat. おかもとえみ
歌詞:おかもとえみ
作曲:JUVENILE
編曲:JUVENILE
4. AWESOME feat. May’n
歌詞:Shoko Fujibayashi
作曲:JUVENILE
編曲:JUVENILE
5. After Rain feat. claquepot
歌詞:claquepot
作曲:JUVENILE & TeddyLoid
編曲:JUVENILE & TeddyLoid
6. プレイボーイ feat. 藤森慎吾
歌詞:Ameko Kodama & 藤森慎吾
作曲:JUVENILE
編曲:JUVENILE
7. パパだから feat. 中尾明慶
歌詞:KURO
作曲:JUVENILE
編曲:JUVENILE
8. 可能我有病(SICKEN ME)feat. Teresa
歌詞:Teresa,Lynn Su
作曲:JUVENILE
編曲:JUVENILE
9. 君と僕の記録 feat. 福山潤
歌詞:RYUICHI(OOPARTZ)
作曲:JUVENILE
編曲:JUVENILE
10. Flashlight feat. 百合香
ヴァイオリン:百合香
歌詞:JUVENILE
作曲:JUVENILE
編曲:JUVENILE
ジャケットデザイン:najuco
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