2020年9月12日に開催されたクリエイタートークセッション「アニソン派!vol.3」。豪華クリエイターゲストが大勢集まった濃密すぎる本トークイベントの公式レポートPart.2がアニソン派!projectチームより到着!
クリエイタートークセッション「アニソン派!vol.3」公式レポート(Part.1)はこちら
クリエイタートークセッション「アニソン派!vol.3」、無観客配信で行われた今回もクリエイター目線で最新アニソンの中からおすすめ楽曲を紹介しています。楽曲を堪能するお供に是非どうぞ!
・やなぎなぎ / 芽ぐみの雨 (作詞:やなぎなぎ、作曲・編曲:北川勝利)
田淵智也:『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』の主題歌です。やなぎなぎさんが1クール目からずっとOPテーマを担当されていますが、連続するアニメシリーズの楽曲を手がける場合、プレッシャーがすごいと思うんですね。そんななか、北川(勝利)さんはこの10年、ずっとトップランナーにいるじゃないですか。ROUND TABLE以降、坂本真綾さんの楽曲で名を上げてきた印象がありますけど。
田代智一:ツイッターを見ていると、毎日スタジオにいるから、「この人、家にかえってないんじゃないの?」と思うんだけど(笑)。
田淵智也:この曲はアレンジが潔いなと思っていて。サビ前に急にギターがデカくなるんですけど、僕、最近そういうアレンジが好きなんですよ。こだわりがないとそういうミックスにはならないと思うんだけど、その後のサビではストリングスが主役になるので、ギターは僕の耳ではそんなに聴こえない感じになって。
田代智一:具体的なイメージがあるからこそ、そういう極端なミックスにできるんでしょうね。
・楠木ともり / ロマンロン (作詞・作曲:楠木ともり、編曲:重永亮介)
渡辺 翔:これは曲がめちゃくちゃいいというのもありつつ、(楠木ともり)本人が自作しているというのがあって。曲を作っている人ならわかると思うけど、この人はガチでできる人だなっていう。
田淵智也:わかる! Aメロの1コード目でそれは使わないだろう!っていうのを使っていて。これは藍井エイルさんのバンマスもやっている重永(亮介)くんの編曲によるところもあるのですかね。
渡辺 翔:それにしても、作曲・作詞能力の高さを感じて。多分、知らずに聴いたら、普通にシンガーソングライターの方が出てきたと思っちゃうだろうなと。
田淵智也:声優さんが作詞も作曲も出来るというのは、実は鼻歌で歌ったのをアレンジャーが録音してまとめるということもなくはないわけで。そのなかでこの曲を聴くと、明らかにこの人が作っているんだろうな感というのがあって。
渡辺 翔:チームのリーダーとして引っ張っていってる感じが、この曲からは見えてきますよね。
・イヤホンズ / 記憶 (作詞・作曲・編曲:三浦康嗣(□□□))
eba:この曲はすごいですよね。音が尖ってるだけじゃなくて、声優であることの意味をちゃんと投影した曲で。朗読からラップにシームレスにいくところがあるんですけど、そこは(立川)志の輔さんの落語を聞いているときのような感じがあって。
田淵智也:□□□が元々そういうこともやってたんですよね。いとうせいこうさんがメンバーに入ったりもしてるので、しゃべってることをそのままラップにしてるみたいな。□□□の三浦さんのツイッターによると、昔に作ったアルバム(『everyday is a symphony』)のアイデアを1曲にまとめたという話で。途中で環境音が入ってくるとかいう演出をそこでやってるんですよ。その10年前にやったことを、今、声優という新しい武器と出会ったときに、出来ることがよりあるぞ!というみたいなことをやったんだろうなと思って。
eba:なるほど。これは曲の作り方がよくわからないですよね。たぶん作詞・作曲・編曲をちゃんと全部自分でやらないとできない曲ですよね。
・CrazyB / Be The Party Bee! (作詞:松井洋平、作曲・編曲:三好啓太)
草野華余子:『あんさんぶるスターズ!』は最近いろんなグループが増え始めているんですよね。シャッフルしたりとか、普段出会わなかったグループ同士とかの絡みも増えていて。ストーリーの中で学年が変わったり、いろいろあるんですけど、そのなかでも彼らは結構新しめのグループなんです。新しく参加される作家さんも増えてきていて、かなりコンテンツが多様化してると思います。
田淵智也:アレンジ込みで曲の熱量がすごいんですよね。売れてるコンテンツだと思うので、予算がすごいんだろうな思って。このクオリティにはある程度の予算は必要な気がする。
草野華余子:(参加クリエイター側も)やる気が出ますよね、きっと。しかも、私は2.5次元の舞台もよく観に行くんですけど、全部のユニットにそれぞれの楽曲があったりして、曲の数がとにかく多くて。私ももう拾いきれないぐらいたくさんいい曲があります。
・中王区 言の葉党 / Femme Fatale (作詞:Reol、作曲:Reol・Giga、編曲:Giga)
草野華余子:Reolは元々仲がいいので、この曲は仮歌の段階から聴かせてもらっていたんですけど、やっぱり彼女自身の仮歌のクオリティが高いから、それに声優さんが応える形になっていて、すごい曲だと思います。
田淵智也:最近、『ARGONAVIS from BanG Dream!』の曲でも、凛として時雨のTKさんが、凛として時雨そのままみたいな曲を提供していて(εpsilonΦ「光の悪魔」)、それを歌いこなすボーカリストって何?っていうのを感じて。アーティストって容赦なくいろいろ突きつけるところが今逆に来てるのかもしれない。
草野華余子:Reolはこれが初めてのキャラソン仕事だったらしくて、やっぱり誰よりも中王区・言の葉党のことを愛さないと曲を書けないからということで、資料をかなり読み込んで作ったみたいで。それだけの努力が素晴らしい曲になったんだと思います。
・ニノミヤユイ / つらぬいて憂鬱 (作詞:hotaru(TaWaRa)、作曲:Tom-H@ck(TaWaRa)、編曲:Tom-H@ck(TaWaRa)・KanadeYUK(TaWaRa))
田淵智也:『ピーター・グリルと賢者の時間』のOP主題歌でございます。この曲はTom-H@ckくんが曲を書いていまして、MVもすごく良かった。監督が女優の佐津川愛美さん。音楽のことをよくわかっている感じがして。ありがたいことにTom-H@ckくんから、編曲を手がけたKanadeYUKという男女のユニットについてのコメントをいただきました。「ハードロックからアカデミックなオーケストラまで、全ジャンルをハイレベルで表現できる音楽家。最近はメンバーのうたたね歌菜と劇伴チームで制作することが多いです。今が旬であり、また、息の長い音楽家になることを信じています」。この曲をオススメしてくれたのは華余子さん。
草野華余子:私は夜中、必ずアニメをやってるチャンネルをつけるんですけど、『ピーター・グリル』のオープニングが流れた瞬間に、構成が超面白くて、ハロプロ(ハロー!プロジェクト)みたいだなと思って。
田淵智也:Bメロがめっちゃ短いですよね。あれはJ-POPではなかなかできない構成だと思う。
草野華余子:そう。で、ネットでクレジット調べたらトムさんだったから、アニメが終わった後の朝4時ぐらいに「トムさん最高でした!」ってLINEしたら、「君は早く寝なさい」って返ってきました(笑)。
・鈴木みのり / 茜空、私がいた街 (作詞・作曲・編曲:照井順政)
田淵智也:「アニソン派!vol.1」でも1stアルバム(『見る前に飛べ!』)の収録曲(「おセンチなメンタル」)を挙げさせていただきましたけど、この度、2ndアルバム(『上ミノ』)がリリースされたので聴いてみたところ、相当完成度が高くて。僕的にはアニソンを通して聴くのが疲れてきたなと思っていた時に射した希望の光みたいなところがあって。インタビューとかも読み漁ったんですけど、フライングドッグの名物プロデューサーの福田(正夫)さんと北川(勝利)さんの共同プロデュースで。北川さんもたくさん曲を書いているんですけど、アニソンの潮流ではない人たちも参加していて。この曲を書いてる照井順政さんはsora tob sakanaのプロデューサーをやっていた人で、元々ハイスイノナサというポストロックバンドもやっていて。照井さんが書く曲は、曲が強すぎて、飲まれる危険性もあるなと思っているんですが、鈴木さんのボーカル力がいい感じに張り合っているのが象徴的で。他にも堂島孝平さんとかいろんな方が曲を書いていて、全方位型のアルバムだと思います。
・日高零奈(CV:蔀 祐佳) / Favorite Days (作詞・作曲・編曲:kz)
田淵智也:kzさんの書いた曲は絶対にいい曲になるっていう。これは何なんですかね? kzさんもずっとトップランナー。有能な作家というのはどこかで落ち目みたいなものがきがちなのに、kzさんは絶対に落ちない。
eba:やっぱり専門家が作る音楽は強いですよね。どうしても作家が出せないものを持ってらっしゃるので。
田淵智也:このコンテンツはバンダイナムコが立ち上げた『電音部』というもので、Yunomiさん、TEMPLAIME、イノタク(TAKU INOUE)さんとか、要はトラックメイカーが勢揃い。僕はここ数年、クリエイターフィーチャー時代がちょっと危ないなと思っていて。ニュースバリューをかせぐためにクリエイターを広告塔として呼んでも、そこでクライアントの人がつまらないといい曲ができないじゃん。でも『電音部』は今のところ全部いい。
eba:自分と近いジャンルの人が集まってるからライバル感があると思うんですよね。だから変なものは出せないという緊張感もあると思うし。熱を持ってやっている感じがあって、楽しそう。
・月ノ美兎 / アンチグラビティ・ガール (作詞:MCTC、作曲・編曲:TAKU INOUE)
田淵智也:出たー!絶対いい曲を書くTAKU INOUEさん!(笑)。この曲をオススメしてくれたのは栁舘周平くん。にじさんじのVTuberの曲ですが。
栁舘周平:まず月ノ美兎さんがめちゃくちゃ良くて。それに音作りにしても、ファミコンっぽい感じがあって。前にイノタクさんがツイッターに上げていたんですけど、小さいエフェクターみたいなシンセを使っているみたいで、そういう実験的なことをたくさんやっているし、ドラムは生っぽい音だし。
田淵智也:しかし本当にTAKU INOUEさんも絶対に良い曲書きますよね。一時期の箱根駅伝の青山学院みたいに、kzさんも含めてこの人たちずっと1位みたいな(笑)
・夏川椎菜 / アンチテーゼ (作詞・作曲・編曲:すりぃ)
eba:これは最高。圧倒的な熱量ですよね。
田淵智也:最高だよね。今、声優業界のシンガーで頭一つ抜けてると思う。この作家を呼んできたことから音作りまで全部が「他の人がやらないことをやりましょうよ」で成り立ってる感じがする。すさまじい気概を感じる曲ですね。「アニソン派!Vol.1」のときに、夏川さんの1stアルバム『ログライン』をオススメさせていただいたのですが、翔さんもebaくんも大絶賛していて。
渡辺 翔:(『ログライン』は)明らかにクオリティが高いし、リスナーに戻してくれるところがあったんですよね。僕は(クリエイターとして)研究するつもり聴いたりするところがあるんですけど、聴いた瞬間に曲が良すぎて、リスナーに戻ってしまう。
田淵智也:今回のシングルも、クレジットを見るとあまり生演奏のレコーディングをしてないんだけど、それだから出せる音像という感じもします。多分相当のこだわりを持ってやっている音楽プロジェクトなのかなと。
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