2020年9月12日に開催されたクリエイタートークセッション「アニソン派!vol.3」は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて無観客配信で開催されることに。「多くの人にアニソンシーンの現状が届くようなプログラムを」という意思のもと、豪華クリエイターゲストが大勢集まった濃密すぎるトークイベント。その一部のレポートがアニソン派!projectチームより到着!
アニソンクリエイターが楽曲提供だけではなくユニット単体をプロデュースする。そんな現象が起きています。なぜクリエイターがプロデュースまで担当するのか?それによる音楽への影響はどのようなものなのか?cadodeのebaさん、DIALOGUE+の音楽プロデューサー田淵智也さん、CYNHNメインコンポーザーの渡辺 翔さん、わーすた音楽プロデューサーの岸田勇気さん、最後に共同司会でもある小林愛香の音楽プロデューサー・田代智一さんにプロデュース論を大解剖していただきました!
※出演アーティストのパートは構成の都合上割愛しております、ご了承ください。
・「複数歌唱の強み」 by 田淵智也(DIALOGUE+)
田淵智也:プロデュースというのは「どう目立たせるか?」「いまここが空いてますよ」というのを提案することが重要だと思っていて、それは今、クリエイターのほうがわかっているんじゃないか?という。で、僕がクリエイターとして曲を提供したときによく言われるのが「息継ぎが出来ない」「キーが高い」「ライブだと歌えない」ということで。であれば複数人で歌わせたら、その問題がクリアされるのではないか?ということをやるのが面白いんじゃないかと思ったんですよね。
田代智一:(複数人だと)息継ぎのことを考えなくていいもんね。
田淵智也:キーに関しても、みんなで力を合わせたら高いキーが出るんです。彼女たち(DIALOGUE+のメンバー)は元々、ユニットを結成することになったときに、歌がうまい人だけが集まったユニットではなかったこともあって、じゃあその中でどうやって目立たせるかを考えたときに、一人の歌のうまさだけで頑張ろうとしても、それだと複数人でやっている意味がなくなるじゃないですか。ということで、みんなで力を合わせて他の人には歌えないような曲をやろう!と。
・「自分の好きなボーカルに歌ってもらえる」 by eba(cadode)
eba:歌ものに関してはボーカルがすべてだし、(ユニット活動においては)ずっと同じボーカルになるわけじゃないですか。ということは、クセも全部わかってるし、かつ絶対自分の好きな歌になるというのはわかってるので、それはモチベーションに繋がるし、それがさらに熱量に繋がって、いい曲に繋がるという図式になると思うんです。
田淵智也:極論を言うと、アニソンで曲を提供するとき、シンガーの人はどういう歌をうたうのかは、当日までわからなかったりするじゃないですか。そのなかで今までは、声優さんが歌って良い音楽をクリエイターとして作ってきたけど、じゃあそれ以外のものは何なのか?となったときに、パフォーマンスや力量がわかっているボーカルがいる前提で書く曲は、当然変わってくると。
eba:そうですね。わかっているボーカルがいると現場で積み上げていけるんです。(歌が)あまりわからない人だと、現場でどうなるかわからない緊張感を持ちながら作業することになるし、積み上げていくという意味では、はじめから(歌が)わかっているかわかっていないかでオケの作り方も変わってくるし。その意味では、わかっているボーカルがいたほうが自由度は高いですね。
・「ユニットのストーリーラインに合わせた曲が書ける」 by 渡辺 翔(CYNHN)
渡辺 翔:僕ら作曲家は普段、1曲ごと、もしくは深くてもシングル一枚という関わり方が多いですけど、長く関わっていると、楽曲ごとにストーリーがあるので、そのストーリーラインごとに合わせて曲が書けるというのがあって。「水生」の話で言うと、前回のシングルからの時間の経過を表現しているんですよ。一つ前のシングル(「2時のパレード」)は夜中で、「水生」は朝になる少し前、そこから最新シングル(「ごく平凡な青は、」)へと移り変わるというバランスを自分で整えながら、楽曲の雰囲気もずらしながら作れる楽しさというのがあります。
田淵智也:そういう時間の経過とか成長の度合いがわかる歌詞のほうが、ユニットの人たちの思い入れが深まるということはあるんでしょうか?
渡辺 翔:それは本人たちに聞いてみないとわからないですけど、(スタッフの)皆さんと会議をしながらそういう作り方をしていて。
田淵智也:メンバーに歌詞が時系列で繋がっていることを説明していますか?
渡辺 翔:そこは最初から分かっていると思うんですけど、歌詞の主人公がどういう人でどんな気持ちかという細かい部分は、各々の解釈で歌ってもらっています。
・「フューチャーベースは絶対合うと思っていた」 by 岸田勇気(わーすた)
田淵智也:そもそも岸田くんがわーすたの音楽プロデュースを始めたのはどこから?音楽プロデュースへのモチベーションがあった?
岸田勇気:『最上級ぱらどっくす』という曲でアレンジを頼まれて、そこから入っていった感じです。僕もやりたかったし、先方もお願いしたいということだったので。元々、作曲や編曲の仕事をしたいという気持ちがあったので、今は鍵盤をやりながら同時進行でやっている感じですね。
田淵智也:わーすたにフューチャーベースが合うと思った理由は?
岸田勇気:わーすたは元々日本のkawaii文化を押し出していく大きなコンセプトがあるので、比較的新しい音楽ジャンルのフューチャーベース、特に最近だとkawaiiフューチャーベースというのもあるから、「これはわーすたのためのジャンルじゃん!」と思って。そこでディレクターさんに「こういうジャンルの音楽が絶対に合うと思うのでやらせてください!」とお願いしました。
田淵智也:今までのわーすたの良さがある中で、新しい流れを入れるというのは、チーム的にも望んでいたことだったのでしょうか?
岸田勇気:新しい風を入れたいということで僕を迎えてくれたところもあるでしょうし、どんどん新しいことにトライしたいという僕の気持ちも汲んでもらっています。この曲はフューチャーベースですけど、最近のシングル曲(「サンデー!サンシャイン!」)では「夏曲をやりたい」という話が出たので、僕からスカを提案してやらせてもらいました。
・「こだわりの歌割り」 by 渡辺 翔(CYNHN)
渡辺 翔:長く関わると、メンバーそれぞれの得意なもの・苦手なものがわかってくるので、そうすると、歌からインスピレーションを得てメロディを作れるようになるので、歌割りを自由自在に組めるんです。
田淵智也:リスナーさんから質問がきています。「複数人歌唱の歌割りについて、どの立場の方が、どのように決めているのかが気になります」とのことですが、CYNHNの場合は翔さんが決めている?
渡辺 翔:基本的にはそうですね。もちろん曲によりけりで、僕も相談をするので一概に僕が全部を決めているわけではないですけど。
田淵智也:それと「歌う側の方々に決定権はあるのでしょうか?」ということですが。
渡辺 翔:本人から「ここを歌えて良かったです」と言われたことはありますけど、「ここが歌いたいです」と言われたことはないですね。要は曲ができて、歌割りを決める前にメンバーと会うことがないので。もし会う機会があれば言われるかもしれないですけど。それと、あえて苦手そうな部分を歌ってもらうこともあるんですよ。本人は「いけるのかな?どうだろう?」と感じているところも、僕は「これはいけるでしょ」と思っていたりするので。
田淵智也:あとは「レコーディング順番の方針も気になります。最初に録ったメンバーの印象に引っ張られる、と聞いたことがあります」という質問も。仮歌に引っ張られるというのはアニソン界にもよくありますけど。レコーディングの順序はどうなっているんですか?
渡辺 翔:予定がある子は早めだろうけど、スケジュール次第だと思います。でも、1曲マルっと一気に歌える子が一番手にくることが多いですね。
・「夏っぽいの欲しい」 by 岸田勇気(わーすた)
岸田勇気:「夏っぽいの欲しい」というのは、マネージメントサイドから言われたことですね。僕とわーすたチームとの関係は、(先方からもらった)ざっくりしたオーダーを僕が翻訳することが多いんです。この場合は「ライブで映える夏っぽい曲がほしい」ということで。
田淵智也:オーダーのときに参考曲を出してくるディレクターもいるし、「夏っぽければOK」ってフワッとしたオーダーをする人もいるけど、この場合はどっちのケース?
岸田勇気:「夏っぽいの欲しい」だけでした(笑)。でも、だからこそ僕の思惑を入れることができるし、「夏といえばこうでしょ!」というのは人によって違うじゃないですか。大多数の人はタオルを回す曲というイメージがあると思うんですけど、僕はちょっと変化球を入れたかったので、ブラスが入る感じの曲にしたくて。そういうサウンドとわーすたを組み合わせたら絶対に面白い曲になると思ったんです。
・「普段できないことやってください」 by eba(cadode)
eba:僕が作家で普段できないことをやっているように、関わってくれるクリエイターにも、「普段の仕事でできないようなことをやってください」とお願いしていて。それはエンジニアさんや映像を作ってくれる方に、普段できないけどやりたいと思っていることをやってもらうことで、熱量やモチベーションを上げてもらうっていう狙いがあって。そっちのほうがいいものができると思っています。
田淵智也:でも、ebaくんが「自由にしていいよ」と言うと、「音楽の自由度」という意味で矛盾が発生しかねないと思うんだけど。
eba:だからこそ頼む相手はすごく選んでいます。「この人なら絶対に大丈夫」という人に頼んでいます。
田淵智也:ちなみに「タイムマシンに乗るから」で普段できないことをやってくださいって頼んだ対象は誰?
eba:エンジニアの藤巻(兄将)さんです。田淵さんともよく話してますけど、とにかく時間があるといいものができると思うんです。この曲の場合、藤巻さんには一ヶ月の時間をお渡しして、その期間に何回も試行錯誤してもらって、なおかつ、藤巻さんのほうで(楽曲を)再解釈してもらって。例えばアレンジで使っている音を消してもらってもいいし、わりとメンバーに近い関わり方でやってもらいました。ギターの使い方とかパンとかを含め、自分が想像していたのを超えるものになりましたね。音に関しても、元々の音源から無くなった音もあると思います。
田代智一:エンジニアさんから戻ってきた音源に気に入らない部分があったら、ネゴシエーションするの?
eba:もちろん意見を言うことはしますけど、否定をすることはしないです。
・「口アレンジ」 by 田淵智也(DIALOGUE+)
田淵智也:デビュー曲のカップリングでZAQさんが作詞・作曲をしてくれた「ダイアローグ+ インビテーション!」なんですけど、ポニーキャニオンのプロデューサーさんと飲んだときに「音楽プロデュースしてくれませんか?」とお話をいただいたので、誰にアレンジしてもらうかを考えたときに、堀江晶太くんにやってもらおうと思ったんです。ただ、デビュータイミングということで、メンバーはまだそんなに歌える子たちでもなかったし、晶太くんに何個かお題を出したんです。まず「ドラムとベースに関してはそんなに動かさないでほしい」、その代わり「ギターはずっと何かをやっている曲にしましょう」と。この曲はメンバーの自己紹介曲なので、8人全員のソロパートがあるんですね。そこにチョーキングから、ピックスクラッチ、コーラスギター、タッピングまで、8種類のギター奏法を入れましょうと。なおかつ、僕はプロデューサーの権限として、晶太くんが自宅でそのギターを入れる作業をするときに「後ろにいていいですか?」ということをお願いして。
田代智一:なるほどね。ギターを弾いている後ろで「もうちょっとピロピロさせて」とか指示するわけだ。
田淵智也:僕はアレンジも出来ないし、ギターもピアノも弾けないので、自分のイメージをプレイで伝えられないところがあるんですけど、プロデューサーをやっていることによって、「田淵がなんか言ってるから一回聞いておこう」みたいな時間が発生するんですよ。その隙に、なるべく「僕はこんなことを考えてます!」ということを伝えるようにしていて。このときも、ずっと後ろでギターのフレーズを口で説明して。例えばサビのリードフレーズは1小節目から8小節目までの動きは晶太くんが提案してくれたもので、僕は「だったら9小節目以降は逆回転にしましょう」と提案して、ギターのリードが別の動きをしてるんですよ。
田代智一:でも口アレンジは皆さんやっていると思う。ライブリハとかでも、バンマスの人が「そこはトゥルットットゥー」とか言ってるし(笑)。
田淵智也:翔さんは自分でアレンジすることはあまりないですけど、アレンジに関していかがですか?
渡辺 翔:僕は基本メールで伝えるので、口アレンジというのはないんですけど、自分で音を作るときはたしかに言ってますね。その自分で作った「こんなイメージです」という音源と文章を添えてお願いすることが多いです。
田淵智也:僕はドラムフレーズも全部文字で書くんですよ。「ダイアローグ+ インビテーション!」もZAQさんに「Bメロは“ダダッ!ダダッ!ダダッダッダッダッ!”がいいと思います」って送ったんだけど、ZAQさんは何を言ってるのかわからなかったそうです(笑)。
渡辺 翔:それはイメージに近い参考曲を送る、というのもないんですか?
田淵智也:僕は音楽のライブラリーが少なくて、そういうのが出てこないんですよ。そのコンプレックスはあるんですけど、それがあるがゆえに、熱意をもって口アレンジでもいいから直接会って伝えられたら音楽をもう少し良くできるかも、というロマンがありまして。
・「メンバー個々の担当領域」 by eba(cadode)
eba:僕ら(cadode)は(メンバーが)3人いるので、「ここは僕がやりました」という役割を3人とも持てるようにしています。(作詞を担当しているkoshiの歌詞について)多少意見をすることもありますけど、最終的にはkoshiに決めてもらっています。よく「(クリエイティブに関して)ケンカするほうがいい」と言うけど、しないほうがいいと思うので。そうするとお互い譲り合えるし、意見も言えるっていう。あと、それぞれに「僕がやりました」という部分があると、お互いコントロールしている感覚があるので、それもモチベーションに繋がると思うんですよ。
田淵智也:メンバーの話で言うと、F.M.Fに所属しているディレクターの谷原 亮さんが、ゼネラルマネージャーという、いまだ見たことのないような役割で参加しているけど、これはなぜメンバーに?
eba:別にメンバーに入れなくても活動はできたと思うんですけど、メンバーだと見返りがあるじゃないですか。仮に(cadodeが)めちゃくちゃ売れて何十億とか稼いだとしても、(谷原がマネージャーの立場だったとしたら)彼は月給になってしまうので。モチベーションや熱量というのは、やったことに対してそれに見合った対価(お金に限らず)がないとついてこないし、自由度的な意味でも、メンバーだったら地元の友達を連れて来たり、普通ではできないこともできると思うので。
・「これ最高です」 by 岸田勇気(わーすた)
岸田勇気:僕は作曲家でありながら、いろんな作曲家さんに楽曲をお願いする立場でもあって。(渡辺)翔さんにもお願いしたことがあるんですけど、誰かにお願いする場合、最初から「この人は絶対に神曲を書いてくれる」と信頼している人にお願いするので、デモが上がってくる前から受け入れ態勢を取って、何が来ても「これ最高です!」と言う準備はしています。
田淵智也:そういうディレクター好き!曲を書く側としては気持ち良くしてほしい気持ちもあると思うんですよ。メールの一行目が「以下、要点を記します」みたいな内容だとちょっとショックで(笑)。まず1行目は「最高です!」であってほしいんですよ。「最高です!……しかし数点、よろしいでしょうか?」というメールがくると、「ありがとう!」と思いながら(相手の要望を)聞くから(笑)。でもプロデューサーとしてはディレクションも必要じゃないですか。例えば「Bメロはもっとこうしたい」みたいなやり取りはするんですか?
岸田勇気:もちろんありますけど、アレンジで補填できるところは自分がアレンジするので。メロはすごく良いけどアレンジが少し合わないデモが来たという場合でも、そこは僕が何とかするので大丈夫ですっていう。
・「メンバーに合わせたディレクション」 by 渡辺 翔(CYNHN)
渡辺 翔:僕の場合はメンバーのボーカルディレクションをやっているので、メンバーによって調子が尻上がりだったり、一気に録れてしまう子がいるので、それに合わせてディレクションをやるようにしています。
田淵智也:「アニソン派!」の一回目で渡辺 翔さんや草野華余子さんに出てもらったときに、「私たちにボーカルディレクションをやらせたら、もっといい歌が録れるはず」という話もありましたが。
渡辺 翔:たしかに歌詞やメロディを書いてるとだいぶイメージがありますからね。ただメンバーが多いと時計とのにらめっこがすごいですね。「1時間待ってる子がいるぞ、ヤバい!」となったりして。
田淵智也:歌割りはどうしてますか? ちゃんと割り振って録りますか? それとも全員フルで録る?
渡辺 翔:僕は歌う箇所だけをお願いしています。時間的な制約というのもありますが、メンバーがそれぞれのアプローチを考えてくれて、そこから相談とかもできるので。
・メールは早く返す by 田淵智也(DIALOGUE+)
田淵智也:とにかくすぐメールを返す。僕もどちらかと言うと岸田くんと同じような音楽プロデューサーとしての関わり方をしていて、曲を書くのは僕だけじゃなく、ほかのクリエイターさんにも書いてもらうんですけど、何か連絡が来たときには、自分が止めてる時間はロスだと思うので、なるべく早く返します。ただ、めちゃくちゃ酔っぱらってるときは止めようというボーダーがあって。でも、酔ってても書けるときは書こうと思ってる。例えば、家で映画を観ていても、メールが来ると「早く返さなきゃ!」って思っちゃって、映画を止めるぐらいなんですよね(笑)。
今回ご本人をゲストにお招きしたわけではありませんでしたが、共同司会の田代智一さんも声優・小林愛香さんの音楽活動をプロデュースしています。イベントの中で田代さんにお話しいただいた箇所をピックアップ!
田淵智也:田代さんも声優の小林愛香さんのプロデュースをされていますよね。小林さんは『ラブライブ!サンシャイン!!』に出演されている方で、トイズファクトリーから(シングル「NO LIFE CODE」で)デビューしました。作曲家として、とプロデューサーとして関わるのとでは、違いはありますか?
田代智一:やはり自由度が高くなるというのはありますね。特にカップリングは、表題曲だと実験的過ぎるとかやり過ぎと言われるようなことも比較的やりやすいので、アーティストとしての表現力の幅を試せるチャンスだったりします。
田淵智也:トータルイメージというか、大枠になるものは?
田代智一:やはり新しい時代のアイコンになって欲しいというのはあるので、多様性とかボーダーレスといった先進的な価値観が進んだ2010年代を過ぎて2020年代の世界の在り方に対する希望も込めて「価値観はグラデーション」というのが一つのテーマにはなっています。あとはまだあまり表には出してないけど、等身大というか、本人が肩の力が抜けた感じのことをやりたいんじゃないかということは、ミーティングを重ねていくなかで感じていまして。今の世の中、いろんなバリエーションのアーティストがいらっしゃるので、あまり技術バトルとか、高音バトルみたいなところには参加させたくないというのはあります。もちろん真剣に取り組む姿勢はあるけどシリアスになり過ぎず、少しのユーモアがあって、もっと肩の力を抜いて、音楽を楽しもう、ゆったりした感じでやろうというのもコンセプトとしてあります。
田淵智也:プロデュースをするの中で、田代さん的な流儀とはなんでしょう?
田代智一:僕は小林愛香さんの現場では基本的にデモに仮歌さんを入れないようにしていて、本番レコーディングの前にキーチェックや歌詞の譜割りの確認を兼ねて本人で一度プリプロをやるんです。譜割りはその時に僕が鼻歌で伝えたりします。その本人仮歌で本番レコーディングまでに練習してきてもらうんです。一度歌ったことで改善点も見えてくるし、歌録りの時にはもう細部は改善された状態で来てくれるので、あとは声の出し方とニュアンスだけ本人と相談しながら決めていくというやり方ですね。贅沢なやり方だけど、その分、仮歌さんの手配や仮歌費は要らないし、仮歌さんのニュアンスに引っ張られる影響をゼロにできる。ワンコーラスぐらいはいろいろ試して相談しながらテイク6ぐらいまで録るけど、方針が決まってしまえばあとはテイク2か3で決まる感じです。本人の中から自然に出てくるニュアンスを最大限に生かせるので気に入っているやり方です。
いかがでしたでしょうか?クリエイターがユニット全体をプロデュースすることによって、更にオリジナリティが深まるということがおわかりいただけたかと思います。
これからも各クリエイター・ユニットの活躍にご注目下さい!
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