声優アーティストの大橋彩香が、約2年半ぶりとなる3rdアルバム『WINGS』を、12月16日にリリース。昨年9月開催のワンマンライブで制作を発表していたファン待望の作品は、水野良樹氏(いきものがかり)の手掛けたリード曲「START DASH」といったこれまでの大橋につながるエールソングも収めながら、様々なクリエイターとのタッグによるバラエティ豊かな楽曲を通して、あらたな表情をみせてくれるアルバムに仕上がっている。本稿では彼女のさらなる可能性感じるそれぞれの楽曲と、その先に見据えるアーティスト像について、存分に語ってもらった。
――大橋さんにとって2020年はどんな年でしたか?
大橋彩香 あんまり人に会えない年で、すごく寂しかったです(笑)。いろんな意味で我慢の年でもありました。でも、コロナがあったからこそ新しいやり方みたいなものを日本全体で模索した年だったとも思うんですよ。ライブができないぶん、どうしたらいいのか?みたいなことは、すごく考えた年だったような気がします。
――直接的に新型コロナを歌った曲はないとは思うんですが、作家さんへの曲の発注などには心情的な影響もあったのでしょうか?
大橋 GRANRODEOのe-ZUKAさんが作ってくださった「MASK」は、「最近マスクをしている人が多いね」みたいな話から始まった曲なんですよ。マスクをしていると表情もよくわからないから、それをモチーフにした曲があっても面白いかも、という話になって。でもコロナだけを感じさせるようなものではなくて、時間が経ったら「あんなことあったな」ぐらいに感じられる曲だとは思います。
――アルバム全体のテーマやタイトルは、かなり前から決まっていたのでしょうか?
大橋 最初の打ち合わせ自体は去年(2019年)の11月頃で、そこでタイトルのアイデアを出し合いました。やっぱり『起動 ~Start Up!~』『PROGRESS』と来たので、もうちょっと上に行けるように“羽ばたいていく”という意味を込めた『WINGS』になったんです。
――3作のタイトルで、ホップ・ステップ・ジャンプのような。
大橋 はい。たぶんそのシリーズはいったんここで終わりにして、次からはガラッと変わるのかな。WINGSしたらもうどこへ行けばいいか、タイトルが難しくなってきますから(笑)。
――1回羽ばたいていったら、行き先は自由ですもんね。
大橋 そうですね。きっと着地もするでしょうし。
――新曲には直接“翼”など、鳥の要素をモチーフにした言葉が組み込まれた曲も多いですね。
大橋 そうなんです。最初にタイトルが決まったのでその要素を入れていただいたんですけど、今までのアルバムでは明確に言葉で一貫したテーマを盛り込むことがなかったので、初めての試みなんです。
――コンセプトアルバムではないけど、いつもよりもコンセプトが少し強め。
大橋 強めですね。ジャケットも羽が生えてますし、「羽ばたきます!私!」みたいな強い意志が(笑)、前面に出たアルバムになっています。
――そういう強い意志を入れたいという想いも、制作の序盤からあったもの?
大橋 ありました。やっぱりアーティストデビュー5周年を迎えてからのアルバムなので、一区切りついたあとの自分をちゃんと見せなきゃいけないな、っていうプレッシャーみたいなものもちょっとありましたし。それに、前作の『PROGRESS』が、自分にとってすごく大きなアルバムになったんですよ。いろいろな挑戦を通じて新しい自分をたくさん見せられて、アーティストとして一皮むけることができたので、だからこそ「そのあとのアルバム、どうしよう?」というプレッシャーみたいなものを勝手にひとりで感じていたんです。
――いいものだったからこそ、より高いハードルに。
大橋 そうなんです。なので「START DASH」というリード曲には、5周年を経てもう1回新しい5年間のスタートを切る、みたいな意味も込めてもらいました。
――作家陣や楽曲の方向性についてのリクエストも、最初から明確に出されたもの?
大橋 そうですね。水野さんに関しては、3年ほど前からずっとオファーを出していたんですけど、エールソングを歌うことが多いので大橋彩香といえば“元気で明るくて笑顔”というイメージを持たれている方も多いと思うんですよ。そういう意味で水野さんはやっぱりすごくピッタリだなってチームでずっと話していましたし、新しくスタートラインを切るタイミングで国民的なアーティストさんに楽曲提供していただけたらというのもありました。
――他の作家さんも、指名された方はいますか?
大橋 GRANRODEOのe-ZUKAさんも前からずっと、いつお願いしてみようかとチームで相談していましたし、ボカロ曲を手掛けられている方から楽曲提供をいただきたいなと思っていたので、昔から活躍されているDECO*27さんも挙げさせていただきました。
――ボカロは昔からお好きだったんですか?
大橋 中学の頃からずっと好きでした。家に帰ったらずっとニコニコ動画ばっかり見てたぐらいで、家にはボカロのアルバムがいっぱいあって、コミケでもボカロのCDを買ってたんですよ。
――同人音楽の日がありますからね。
大橋 そうなんです!あと、知らない方も多いと思うんですけど、デビュー当時“大橋彩香のボカロ祭り”っていう、私がボカロのカバーをするイベントをやらせていただいたことがあって。それぐらいボカロの歌をうたいたいなとずっと思っていたのですごく嬉しかったです。
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