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2020.12.11

無観客の横浜アリーナから届けたファンへの無限の愛と感謝――。水瀬いのり、初のオンラインライブ“Inori Minase 5th ANNIVERSARY LIVE Starry Wishes”レポート!

無観客の横浜アリーナから届けたファンへの無限の愛と感謝――。水瀬いのり、初のオンラインライブ“Inori Minase 5th ANNIVERSARY LIVE Starry Wishes”レポート!

アーティストデビュー5周年を迎えたばかりの水瀬いのりが、12月5日、自身初のオンラインライブ“Inori Minase 5th ANNIVERSARY LIVE Starry Wishes”を開催した。会場は横浜アリーナ。コロナ禍の影響を受けて全公演中止になった今夏のツアー“Inori Minase LIVE TOUR 2020 We Are Now”の最終日に、彼女が立つ予定だった場所だ。水瀬本人はもちろん、ファンやスタッフ、たくさんの人々の願いを受けて実現したこのステージ。無観客のアリーナから届けられたのは、その無数の願いを1つに束ね、絆を確かなものにする歌声だった。

ライブは、水瀬のアーティスト活動の軌跡をまとめたOP映像からスタート。2015年12月2日、20歳の誕生日にリリースしたデビューシングル「夢のつぼみ」の頃のメイキング映像に始まり、様々なシングル曲のMVやその撮影風景、2017年12月2日に行われた初めてのワンマンライブ、2018年の初ツアー、2019年のツアーとその千秋楽となった日本武道館公演の模様などが、彼女の楽曲「僕らは今」をBGMに流れていく。この曲は元々“Inori Minase LIVE TOUR 2020 We Are Now”のラストに披露される予定だったもの。同じ旗のもとに集った仲間たち(=ファン)との連帯感が表現されたナンバーだ。映像の最後は同楽曲のMVのワンカットで締め括られ、ついにステージの幕が上がる。

初のオンラインライブの1曲目に選ばれたのは「夢のつぼみ」。彼女のデビュー曲であると同時に、昨年の日本武道館公演のラスト、ダブルアンコールのときに歌われた曲でもある。5周年を記念したライブの幕開けを飾るにふさわしい1曲と言えるだろう。水瀬はアリーナ中央に特設された円形のステージでパフォーマンス。周囲に張り巡らされた棒状のライトが煌めくその中央に立ち、溌溂とした歌声を響かせる。衣装は水色で統一したセパレートタイプで、スーツ型のトップス、ハーフパンツとスカートを合わせたような形状のボトムス、頭の大きなリボンが、かわいらしくも上品な印象を与える。

楽曲の終盤でトロッコに乗ってメインステージに移り、バックバンドであるいのりバンドのメンバーと合流した水瀬は、「続いてはこの曲、配信をご覧の皆さんも一緒にタオルを回しましょう!」と煽って、ライブの鉄板曲「Ready Steady Go!」を披露。彼女も左手にタオルを持ち、間奏ではソロを取るバンドメンバーを指さしてアピールしたり、カメラ目線で「もっともっと(タオルを)回して!」と盛り上げる。最後はタオルを上空に投げてキャッチして締めると、今度は自身のラジオ番組「水瀬いのり MELODY FLAG」のテーマ曲「MELODY FLAG」を歌唱。“ひとりじゃない ここにいるよ”と歌う箇所では、カメラに向けて指をさした後、胸元でこぶしを握り締め、モニターの向こうのすべての人と繋がりを確かめ合う。「ラララ~♪」と歌いながら左手を左右に振る彼女の眼には、きっとたくさんのファンの姿が見えていたのではないだろうか。

MCでバンドメンバーの島本道太郎(b、バンドマスター)、植田浩二(g)、藤原佑介(ds)、小畑貴裕(key)、沢頭たかし(g)を紹介すると、続けてラジオ番組「水瀬いのり MELODY FLAG」の話に。「皆さん、初代のEDテーマを覚えていますかね?」と呼びかけ、その楽曲「笑顔が似合う日」を披露することに。話によると、実は彼女がアーティストとして初めてレコーディングした楽曲とのことで、水瀬は「自分にとっても思い入れがあるし、この曲を今歌うことで、当時の自分から応援されたり、笑顔をもらったり、この場所にいるということを、もう一度深く考える1曲になっています」と語る。そしてステージの2階に上がり、そこに備え付けられた大きなスクリーンの前で歌う彼女。楽曲の展開に合わせて、部屋の中から公園や森、遊園地といった外の様々な場所へと移り変わる映像をバックに、自分を信じて“だいじょうぶ 笑顔の似合う日はくる”と前へ進む気持ちを表現する。最後のフレーズ“だいじょうぶ 笑顔が似合う日だから”で頬に手を当てて浮かべた表情は、まさに最高の笑顔だった。

そこからメインステージに戻り、マーチング風の祝祭感に満ちたナンバー「Wonder Caravan!」へ。水瀬が立つステージ中央部分には、背面から床にかけて幻想的な映像が投影されており、ステージセットに散りばめられた光る星と共に、まるで夜空を旅している気分を演出する。続いてキーボードの流麗なイントロに導かれ、爽快なナンバー「春空」が流れ出す。衣装チェンジした水瀬は、スカートに花の飾りを散りばめた水色のドレス姿で、まるでお姫様のようだ。さらに人気のシングル曲「アイマイモコ」に繋げ、大きなスカートの裾を優雅に揺らせながらステージ上を下手から上手へと移動しつつ、恋する女の子の気持ちをロマンチックに歌い上げる。

MCで衣装のことに触れ、「私のライブ衣装史上いちばんボリュームのあるドレス」「心はプリンセス気分」と語った彼女は、2020年はアーティストデビュー5周年であると同時に、声優デビューから10周年の年でもあることを明かす。声優としてアニメのキャラクターに声をあてる仕事をするなかで、彼女は歌手としても作品に関わることが夢だったとのことで、その夢が叶ったアーティスト活動ができていることに対して、改めて感謝の気持ちを言葉にする。そんな彼女が初めて自分の作詞でアニメの主題歌を担当したのが、次に歌われた「ココロソマリ」。自身が主演を務めたTVアニメ『ソマリと森の神様』のEDテーマであり、彼女曰く「家族や大切な人に向けた深い愛をテーマにした1曲」だ。照明の色が白からオレンジ、深い青へと、時間の経過を表すように変化していくなか、それでも変わることのない“特別な愛”を、朗々としながらも温もりのある歌声で表現してみせた。

そして晴れやかな表情と共に披露されたのが「harmony ribbon」。この曲におけるハーモニーとは、ファンとの絆の象徴であり、その声による繋がりを胸に前進する気持ちが歌詞に描かれている。胸元に手を当てながら“大丈夫 もうひとりじゃないから”と歌う彼女が、このライブで伝えたかったのは、例え直接会うことが難しい状況であっても、決して損なわれることはない、お互いへの想いだったのではないだろうか。“時にどんな悲しみが胸を 埋め尽くしたとしても”“大丈夫 明けない夜などないから”という歌詞は、コロナ禍の今に照らし合わせると一層心に響くフレーズだったし、最後に水瀬自身が「皆さんも一緒に歌ってください」と呼びかけて歌った“la la la la…”のパートでは、モニター越しからでも一体感が伝わってくるようだった。

そこから一転、今度は月と星の飾りや星座の模様をあしらった濃紺色のドレス衣装に着替えた水瀬が、ステージの2階に姿を現し、クールかつ力強いアップ「TRUST IN ETERNITY」を歌唱。スクリーンには銀河のような映像が映し出され、明滅するセットの星やムービングライトが、宇宙空間を駆け抜けるようなイメージを演出する。間奏でステップを下りてメインステージに降り立った水瀬は、激しさを感じさせながらも透明感のある、あくまで凛とした歌声で楽曲の世界観を表現。彼女のライブを観たときにはいつも感じることだが、歌っているうちにどんどん気持ちが乗ってくるのか、歌唱力も表現力も尻上がりで凄まじくなっていくし、観ている側はその歌に引き込まれるような感覚を覚えてしまう。

レーザーなどの照明演出が美しい景色を生んだ「Million Futures」では、自信に満ちた振る舞いが印象的で、最後の“「君のために ねぇ 僕がいるよ」”と歌う箇所で自分の胸元を親指で指す姿には、頼もしささえ感じられた。その後MCを挿み、今度は今回のライブタイトルにも引用された「Starry Wish」へ。この楽曲は彼女にとって初めてのアニメタイアップ曲(TVアニメ『ViVid Strike!』のEDテーマ)で、彼女は「この曲でたくさんの人に私の音楽を知っていただけた、キーになる1曲だと思います」と感慨深げに語る。壮大な銀河がスクリーンに映し出されるなか、日常的な気持ちを歌った楽曲が並んだこのライブの前半パートとは別人のようなオーラを纏って、威風堂々と歌う水瀬。髪に編み込まれたエクステがキラキラと光り、まるで星々を見守る女神のようにも見える。

そして、この日のライブのハイライトとなったのが「BLUE COMPASS」。彼女の2ndアルバム『BLUE COMPASS』の表題曲でもある、美しくもエモーショナルなバラードだ。まずは真っ暗のステージに、水瀬とキーボードの小畑の姿だけが照明に照らされて浮かび上がる。ステージ前面には透過スクリーン代わりの紗幕が張られ、そこに泡の映像が投影されることで、まるでステージが海底にあるかのような効果を生む。ピアノの調べをバックに、ファルセットを織り交ぜながら伸びやかな美声を広げる彼女。楽曲が進むにつれて、スクリーンには羅針盤の映像が映し出され、2番の終わりと同時に紗幕が落ち、視界が一気に明るくなる。水瀬の足元に大海原の映像が投影され、そこに広がるのは“海原にたった一人で だけど本当は一人じゃなくて”という歌詞そのままの情景だ。変われない自分、叶うことのない憧れ――そんなネガティブな感情から一歩踏み出し、コンパスを頼りに無限の可能性が広がる大海原へと一緒に旅立つ。「BLUE COMPASS」の世界観とメッセージ性を見事に落とし込んだステージだった。

そのあとのMCで「BLUE COMPASS」の感想について、「離れてはいるけども、みんなが応援してくれているような風景が、目を閉じれば浮かんできて、それを思い出したら感動してしまいました」と語ると、ライブ本編の最後の楽曲、12月2日にリリースしたばかりのニューシングル「Starlight Museum」へ。彼女は「離れていても、星を見上げたときに、同じ空を見ていることを伝えられたら嬉しいし、私自身も寂しいとき、辛いときに、俯くのではなくて、空を見上げて、星を見て、勇気をもらって、今日まで頑張ってこられたので、そんな思いを皆さんに届けられたら嬉しいです」と、自身が作詞に携わったこの楽曲に込めた想いについて話す。星々の輝くセットに囲まれて、星空に願いを託すように歌う彼女。“一人じゃないこと 教えてくれたね”という言葉が、無観客のアリーナで余計に強く響く。ミラーボールが旅人を導く一番星のように輝くその下で、彼女は自身のこれまでの軌跡と、みんなと出会えた奇跡の素晴らしさを、深く慈しみのある歌声で届けた。

そしてアンコール。ライブTシャツとふんわりとした布地の白いロングスカートを着て、髪は三つ編みにした水瀬が、「皆さんまだまだ一緒に歌いましょう!この曲はみんなと私の歌です!」と前置きして歌ったのは、彼女が初めて自分で作詞した楽曲「Catch the Rainbow!」。ファンのみんなと一緒にいられることの幸せ、これからもずっと一緒にいたい気持ちを、真っ直ぐに、透明に表現した歌詞が、彼女の元気溌剌なパフォーマンスと相まってストレートに胸に響く。バンドメンバーの演奏もノリノリだし、銀テープも発射されて、とにかく盛大かつハッピー極まりない。

その曲の終盤でトロッコに乗り、アリーナ中央の特設ステージに立った水瀬は、ここでファンクラブイベント“いのりまち町民集会”のオンライン版を、2021年2月21日に開催することを告知。「(アーティスト活動)6年目もまた、みんなと楽しいことがたくさんできたらいいなと思います」と、今後の抱負を語る。そして「次はこの横浜アリーナで、ファンのみんなに囲まれながら歌える日を願って、ここに私だけの花を咲かせたいと思います」と宣言して、最後の曲「Innocent flower」を披露。円形の特設ステージには、同曲を収録した1stアルバム『Innocent flower』のジャケットにも映る、黄色い花びらが敷き詰められている。「夢のつぼみ」から始まったライブは、“穢れのないいのり”の花を咲かせて、大団円へ。2番を歌い終えて、トロッコで再びメインステージに移動した彼女は、Dメロの“振り返れば どんな時も ひとりぼっちじゃ なかったと知るよ”の部分で、想いが込み上げてきたのか、涙声になる。それでもしっかりと持ち直し、頭上から花びらが舞い降るなか、最後まで歌い切って、大切な人たちへの感謝の気持ちを伝えた。

その後、オフィシャルファンクラブ「いのりまち」の会員限定でアフタートーク生配信を実施。水瀬とは同業の声優であり、親友でもある大西沙織をゲストに迎え、リラックスした雰囲気のなか、ライブの感想を言い合ったり、Twitterのトレンド入りを喜んだり、水瀬の誕生日プレゼントを賭けたシンクロゲームで仲良く盛り上がっていた(ちなみに大西がこの日のライブで一番刺さった曲は「笑顔が似合う日」とのこと)。

水瀬いのりの初オンラインライブを観て改めて感じたのは、彼女が何よりもファンとの繋がりを大切にしているということ。そして彼女自身、ファンや周りのスタッフといった人々の支えを、アーティスト活動における最大の原動力にしていることだ。今回のライブのセットリストに、聴き手あるいは自分自身が「一人ではない」ことを歌った曲が多く並んでいたのは、明らかに意図があってのことだろうし、それがこのライブ、引いては彼女自身が歌を通じて伝えたいことなのだと思う。その意味では、彼女がライブでみんなと一緒に作り上げるために制作した連帯の歌「僕らは今」を、早く現場で聴きたいし、いつか横浜アリーナで高らかと歌い上げられる日が来ることを、心から願う。

PHOTOGRAPHY BY 加藤アラタ
TEXT BY 北野 創(リスアニ!)

Inori Minase ANNIVERSARY LIVE Starry Wishes
2020.12.5(sat) 横浜アリーナ

<セットリスト>
01. 夢のつぼみ
02. Ready Steady Go!
03. MELODY FLAG
04. 笑顔が似合う日
05. Wonder Caravan!
06. 春空
07. アイマイモコ
08. ココロソマリ
09. harmony ribbon
10. TRUST IN ETERNITY
11. Million Futures
12. Starry Wish
13. BLUE COMPASS
14. Starlight Museum
15. Catch the Rainbow!
16. Innocent flower


●配信情報
“Inori Minase 5th ANNIVERSARY LIVE Starry Wishes”
12月12日土(土)23:59までアーカイブ配信中!
視聴チケットの購入は12月12日(土)18:00まで。
詳しくはこちら

●リリース情報
「Starlight Museum」
発売中

※リリースインタビューはこちら

品番:KICM-2065
価格:¥1,300+税

<CD>
01.Starlight Museum(テレビ朝日系全国放送「musicるTV」12月度オープニングテーマ)
作詞:櫻澤ヒカル・水瀬いのり 作曲・編曲:櫻澤ヒカル
02.クリスタライズ(スマートフォンゲーム「アークナイツ」イメージソング)
作詞・作曲・編曲:栁舘周平
03.思い出のカケラ
作詞・作曲・編曲:遠藤直弥

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