INTERVIEW
2020.12.03
20歳の誕生日にアーティストデビューしてから5年、当初はまだ膨らみかけだった夢のつぼみを見事に開花させ、今や日本武道館公演を成功させるほどのアーティストに成長した水瀬いのりが、25歳の誕生日を迎える12月2日に、ニューシングル「Starlight Museum」をリリースした。水瀬自身が作詞に携わり、これまでの軌跡を凝縮した、一番星のように光り輝くこの楽曲に、彼女が込めた願いとは? その思いのたけをたっぷりと語ってもらった。
――水瀬さんは今回のニューシングル「Starlight Museum」のリリース日に、ちょうどアーティストデビュー5周年を迎えます。改めてこれまでの活動を振り返って、どんな5年間でしたか?
水瀬いのり 普段は声優として、キャラクターを介して自分の声や想いを届けていますが、ちょうど5年前の12月2日、キャラクターではなく自分として何かを届ける活動を初めて。当時、私は20歳で、年齢的にも新しい変化がたくさんある環境のなか、自分がアーティスト活動にチャレンジできることにワクワクして、「これからどんなことが待っているんだろう?」という楽しみが広がっていく感覚がありました。ただ、これまでの活動を通して、楽しいだけではなく、個人として歌をうたうことの難しさや重みもすごく感じたので、「楽しかった」のひと言では言い表せない5年間でした。自分の感情の振り幅が、良い方向にも、ちょっとネガティブな方向にも広がったと思います。
――それまで経験したことのない感情を覚えたこともありましたか?
水瀬 それを大きく感じたのは、ファンの皆さんと生で触れ合える瞬間です。ライブは、音楽やキャラクターを通して私を知ってくれた“あなた”と繋がる場所ですし、ファンの方から直接「応援してます」「歌を聴いて元気をもらっています」といった言葉をいただくたびに、「自分は何かを発信している人なんだ」と感じます。そんな実感を通してこのお仕事の意味、自分が何を伝えたいのかが明確になった5年でした。
――自分がたくさんの人から求められている存在だと実感するなかで、責任感やプレッシャーを感じることもあったのでは?
水瀬 応援してくれている人たちが、私のファンではない周りのお友達や家族に、「この子を応援しているんだ、素敵な子だね」と思ってもらえるには、どうアプローチすればいいんだろう?ということはいつも考えています。きっとファンの皆さんは、私がパーフェクトじゃなくても応援してくださるんじゃないかと思うんですよ。ちょっと“好き”の魔法にかかっていると思うので(笑)。でも、そういうものを取っ払った、素の状態の私と向き合ったときに、それでも素敵と思ってもらえたり、毎回、曲を聴くたびに「応援しててよかった」と思ってもらえる、自分の魅力の引き出しはどこにあるのかはすごく考えています。
――いつも新鮮に感じてもらえるよう、意識しているわけですね。
水瀬 親しみのある存在ではいたいけど、当たり前になりたくないというか。私自身もいつも、作品をリリースしたり、ライブを開催できるのは当たり前のことではなくて、もしかしてこれが最後かもしれないという気持ちで、自分の伝えたい想いをそこに一球入魂するんです。もちろん絶対に次があると思いたいですけど、その場その場をみんなと大切に過ごしていきたいという想いがあるので、それをみんなに伝えるにはどうしたらいいのかなって。今はみんなになかなか会えない状況もあって、少し難しさも感じています。
――水瀬さんはライブでいつも、その瞬間の自分の気持ちを素直に表現されている印象があります。昨年の日本武道館公演では感極まって涙を流す場面もあったり、ライブは素の自分を見せられる場所になっているのかなと。
水瀬 ありがとうございます。たしかにライブは、自分自身が変化していったステージの1つだと感じていて。私にとってライブは怖いものだった時期があったんです。最初は生で歌えることが嬉しかったのですが、どんどん自分の実力と向き合うようになって、「私は全然まだまだなんだな」と気づいた瞬間に急に怖くなってしまって。心から楽しんで歌うことと、上手い歌をうたうことは、また違うことで、もちろんそれを両立できたら素晴らしいのですが、感情で歌うことと正確に歌うことの真ん中を上手く探ることができなかったんです。そこからツアーなどでライブの回数を重ねていくなかで、ようやく本当の自分の歌を見つけることができました。
――それはどんな歌なのですか?
水瀬 私はやっぱり、マイクを持ってステージに立ったそのときの感情で歌うことが、一番自分が楽しいと感じるんです。音程や声のコンディションに縛られることなく、今出来ること、自分をさらけ出すのが、自分にとっても無理せずいられるステージングだということがわかって。それに気づけたのはファンの皆さんの応援があったからです。ライブが怖かった時期は、どこか自分中心の視界だったのですが、ファンの皆さんのことを全然見られていないことに気づいてからは、皆さんがどんな顔をしているのか、どんなふうに私を見てくれているのかを意識するようになりました。ファンの皆さんは鏡のような存在だと思うんです。みんなが楽しい顔をしていたら、私も楽しい顔になりますし、私がかっこいい歌をうたっているときは、やっぱりみんなも眉の形をクッとして応援してくれますし、一緒に歌えたときは一緒に涙を流してくれたり。「そういうことでいいんだ」と思ったのが、大きかったです。
――自分は2017年に行われた1stワンマンライブ“水瀬いのり1st LIVE Ready Steady Go!”も現場で観ていたのですが、その頃と比べて、昨年の武道館ライブは、よりお客さんのほうを向いているように感じたんですよね。
水瀬 その間に、私の中でかなり大きな変化があったんです。それが伝わってるんだと思ったらすごく嬉しいですね!
――ニューシングル「Starlight Museum」の発売日である12月2日は、水瀬さんが25歳になる誕生日でもあり、デビューシングル「夢のつぼみ」の発売からちょうど5周年の記念日。そんなタイミングの新曲として、「Starlight Museum」は制作当初、どんな構想を描いていましたか?
水瀬 ファンの皆さんと私、活動を支えてくれているスタッフの皆さんとの軌跡や時間の流れ、今までの活動があったからこそ歌える楽曲にできればと考えていました。自分の中では、アッパーじゃないのに鼓動が速くなる、心の深いところで燃えてくるような曲調、イメージとしては赤い炎ではなく、青だったりオレンジの炎で、これを聴き終わったあとに、なぜか胸が熱くなる曲にしたいと思っていて。なのでコンペの際には、その自分が思い描いているイメージをしっかり伝えさせていただきました。
――では、コンペで集められた曲の中から、この曲を選んだのは水瀬さんご自身?
水瀬 はい。でも、意見としてはスタッフの皆さんとも一致しました。実は数ある候補曲の中で、この楽曲が一番最初に届いたものだったんです。そして、聴かせてもらったときに、これからまだたくさんの楽曲が届く予定なのに、「あれ?この曲がいいかも」と思ってしまって。そこからたくさんの楽曲を聴いて、どの楽曲も素敵だったのですが、一番最初に届いたデモを初めて聴いたときに広がった「これだ!」という気持ちが、結局最後まで変わらなくて。運命的なものを感じました。
――ファーストインプレッションでは、どんなところに惹かれたのですか?
水瀬 イントロの時点で好きだなと思いましたし、そこから聴いていくなかで、自分の活動のダイジェストが見えたんです。初めてのレコーディングがすごく大変で、「レコーディングってこんなに時間がかかるの?」って思った気持ちとか(笑)。ほかにも、初めてのライブだったり、今までのすごくたくさんの思い出や場面が浮かんできて。時の流れを感じさせる音楽、なおかつ初めて出会う曲なのに、自分の活動を振り返られるぐらいの力を持っている楽曲。自分の波長に合ったのもあると思いますが、それはなかなか体験できないことだと思うので、この曲を選びました。
――この曲を書いた櫻澤ヒカルさんは、前作のシングル表題曲「ココロソマリ」を作曲された方でもあります。以前の取材で、「ココロソマリ」もコンペでイントロを聴いた瞬間に心を掴まれたとおっしゃってましたよね。
水瀬 そうなんですよ。きっと私は櫻澤さんの才能から逃げられないんです(笑)。この曲を聴いたとき、きっと巧みな音楽技術を培ってきた年上の方が作られたのかな?と想像していたんです。でも、櫻澤さんは私よりも年下の柔らかい雰囲気の好青年の方だったので、お会いしたときに、いい意味で「えっ!本当にあなたが?」と思って。若者が頭角を表すというか……。
――水瀬さんも充分若者ですが(笑)。
水瀬 そうなんですけど、自分よりも年下の方が書いた曲に関われることが嬉しくて。デビュー当時は当たり前のように年上の方が多かった制作の現場も、自分が活動を続けてきたら、年下の作家さんとお仕事をできるようになるんだと思って。そういうことを含めて、櫻澤さんの才能におののきました。
――先ほど「波長が合う」とおっしゃってましたが、2曲続けてイントロから感じるものがあったというのは、きっと感性的に通じる部分があるんでしょうね。
水瀬 作家さんたちが、どういう視点で曲を書いてくださるのか、すごく興味があるのですが、多分一緒にお仕事をしていくなかで、私の好きな音やフレーズを知っていってくださっていると思うので、それを次回以降の参考にしてくださっているんだと思います。私は櫻澤さんが作る楽曲の沼に、あれよあれよと落ちていってますね(笑)。
――作詞は水瀬さんと櫻澤さんの連名になっていますが、どのように作業したのですか?
水瀬 デモに入っていた櫻澤さんの歌詞がとても素敵だったので、そのフレーズをベースに残しつつ、より自分らしい言葉をプラスしていくような共作でした。大きく言うとサビの部分は櫻澤さんの歌詞を生かしていて、Aメロなどの部分は自分が書いた歌詞になっています。
――具体的にはどんなイメージで歌詞を書いていきましたか?
水瀬 見つけた1つの星が最後には星空になる、というストーリーで歌詞を書いていきました。星をテーマにしたのは、星の記号(☆)は角が5つあるので、それが5周年にも繋がるという、やや強引な理由もあるのですが(笑)。お遊戯会とかでキラキラしたものを表すときに、よく手を広げたりするじゃないですか。そういうのもあって「これは星でいこう!」と決めました。
――1番Aメロの歌詞“夜空に見つけた願いは星のように”は「Starry Wish」を想起させるフレーズだったり、今までの楽曲の要素も散りばめられていますよね。
水瀬 そこは意識しました。自分を象徴するワードや、今までアーティストとして歩んできたなかでキーワードになるものを散りばめることで、私だけでなくみんなにも今までのいろんな景色を思い出してほしい気持ちがあったんです。“虹”というワードも、みんなのなかにも強く残っているんじゃないかと思って入れました。
――それで言うと、3番サビの“あの空に響いたハーモニー”というフレーズからは、「harmony ribbon」を思い出しました。あの曲はファンとの絆を歌った楽曲でしたが、ここで言う“ハーモニー”もそれを象徴しているのかなと思って。
水瀬 そうですね。ハーモニーというのは、レコーディングであれば音を重ねて一人でハモリをつけることはできますが、生で歌うときは誰かと作るものですし、それこそ一人じゃないことを確かめられるものだと思うんです。この曲の歌詞は、1番のサビが“歌声は彼方に響く”、2番のサビが“歌声よ彼方に響け”になっているのですが、その歌声が3番で“ハーモニー”になることで、一人じゃないことがより音になって届くような、「みんながいるから歌えるよ」というメッセージにもなっていて。それは「Catch the Rainbow!」の歌詞を自分で書いたときにぶつけた想いでもありますが、やっぱり楽曲を作るチームのみんながいて、それを受け取ってくれる皆さんがいるからこそ、私はボーカリストとして歌を届けることができるので、この“ハーモニー”は5年の重みと感謝がすごく溢れた部分です。
――そういったこれまでの活動を受けたメッセージに加えて、未来に対する希望も強く感じられる歌詞ですよね。
水瀬 どんなに楽しいことばかりじゃない毎日だとしても、楽しい未来を想像したら今日を頑張れるし、きっと今のこの気持ちがあるから、楽しい未来を迎えられると思うんです。過去は変えられないけど、未来はまだ誰にもわからないことなので、どれだけ素敵な未来を見られるかは、今の自分の頑張り次第だと思いますし、どんなときもプラスに考えられたらいいな、というのが、私の根本的な考え方です。だからこそ、今を楽しめば絶対に楽しい未来が待っていると歌いたかったですし、それがアーティストとしての自分の気持ちにも重なりました。
――今は世の中の状況的に不安な気持ちになりがちですが、そのなかで希望の星のように心を照らしてくれる、素敵な曲だと感じました。歌声も前向きな力強さを感じさせますが、レコーディングではどんなことにこだわりましたか?
水瀬 今回、AメロやA’のメロのキーが低くて、声が綺麗に出るか不安でしたが、歌いやすい語尾を無意識に並べていたので、レコーディングはスムーズに進みました。歌いながら、皆さんのことを考えたり、自分のこれまでの5年間を考えたり、目をつぶりながら歌ったりもして。普段なら「ここはどう歌おうかな?」って鉛筆で印をつけたり、試行錯誤しながら歌を作っていくのですが、この楽曲に関しては1本1本がライブの歌唱みたいなテイクになりました。本当にライブ会場が見えたといいますか、ステージに立っている気分でしたし、みんながどんな顔で聴いてくれるのかを想像しながら歌えたのも、スムーズにいった要因の1つだと思います。
――まさにライブで楽しんで歌えるようになった気づきが、この曲にも活かされたのでしょうね。バックのオーケストラサウンドが、終盤になるにつれてどんどん盛大になっていくところも素晴らしくて。
水瀬 ドラマチックですよね。私もデモの音源を聴いたときに「まだいくの?」と思うぐらいギアが上がっていくので驚きました。静かなメロディですが、音の広がりを感じて、星空に包まれるような感じがして。まさに星の祭典のような、すごく希望に満ちて、前を向ける終わり方だと思います。
――最後の“星空になる”という一節の水瀬さんの歌い方が、まるで空を見上げているような感じで、この先にもいろんな景色が広がっていくことを感じさせる終わり方だと思いました。その意味では、この曲は5周年のタイミングの歌であると同時に、6年目以降もちゃんと感じさせるなと。
水瀬 節目に捉われず、今を歌うだけじゃなくて、これからの景色を一緒に見に行きたいという、新たな一歩を感じさせる曲にもしたかったんです。5周年があるからこそ6年目がありますし、多分この「Starlight Museum」は、これから何年経っても変わることのない自分のテーマソングになると思います。自分はどんなときもこういう気持ちで前を向いていくんだろうなと思える曲、活動をしていくなかでの指標になる曲ですね。北極星みたいに、どんなときでも目指して歩くことのできる、空に1つ輝く星のような曲に仕上がったと思います。
――MVはどんなコンセプトで撮影されたのですか?
水瀬 今回は音楽ホールの客席側に作ったステージで歌唱するシーンが主になります。監督さんが「Starlight」というワードからイメージを膨らませてくださって。全面ミラー仕様のシートで覆われたステージに、いろんな場所からライトを当てて、あらゆる方向に屈折しながら光の線を描くことで「Starlight」感を出していただきました。それともう1つのテーマとして、私は声優活動も2020年で10周年を迎えたので、監督が声優としての私、そして素の様子をぜひ撮りたいということで、マイク前で芝居している自分ではなく、そこに挑む前の準備中の私をイメージしたカットも撮りました。そのシーンでは、歌をうたう私ではなく、家でひたすらセリフのチェックをしたり、くつろいだりしている様子を再現しています。当日は自宅からお仕事のアフレコ台本を持参して、現場で実際に台本チェックをさせてもらいました。最後はベランダに出て星空を見上げるシーンもあります。
――普段の水瀬さんの姿が見られるわけですね。
水瀬 普段MV撮影のときは曲を流しながらやることが多いのですが、台本チェックのシーンのときは無音で、カメラがあることを忘れてひたすら台本チェックするようにと指示を受けまして、最初は「これでいいのかな?」と不安に思っていました(笑)。そのシーンのセットも、私が自室で台本チェックしている写真を母に写真で撮ってもらって、それに忠実にお部屋を再現していただいたんです。カーテンの色は若干違うのですが、テレビやローテーブル、ソファーのシルエットは、ほぼほぼ私の自室に近いものを美術さんが用意してくださって。なるべく背伸びしていない、家にいるときそのままの素の自分を再現したくて、着ているものも、いわゆるふわふわモコモコのパジャマではなく、このままコンビニに行けそうな緩めの服装を選びました(笑)。ここまでリアルな私が入っているMVは今までになかったと思います。
――それはファンとしても嬉しいですよね。
水瀬 「なんだ、ふわふわ着てないんだ」みたいに思われないといいのですが(笑)。私は実用性重視なんです。
――ここからはカップリング曲のお話を。2曲目の「クリスタライズ」はフューチャーベース寄りのダンスポップチューンです。
水瀬 EDMともまた違っていて、根底にはちゃんとポップス要素があるので、どこまで振り切るかの判断がすごく難しい曲でした。私の声を加工したものが入っていますが、そこもキャラクターっぽくならないように、慎重に作っていただいて。
――この曲は、スマートフォンゲーム「アークナイツ」のイメージソングですね。
水瀬 個人的に「アークナイツ」にはシリアスなイメージがあって、見た目はかわいらしい女の子のキャラクターたちが、生きることや死ぬことに向き合う、重厚でリアルな作品という印象だったのですが、制作サイドからは、当たり前の日常のなかにあるキラキラした感情、毎日を過ごしていくなかでの気づきみたいなものを曲で描いてほしい、というお話をいただいたんです。意外な方向性だったので「どうなるんだろう?」と楽しみにしつつ、コンペで楽曲を選ばせていただきました。
――それで選んだのが、これまで水瀬さんに「Winter Wonder Wander」「Well Wishing Word」を提供してきた栁舘周平さんの楽曲だったと。
水瀬 栁舘さんも私が逃れられない作家さんのうちのお一人です(笑)。いい意味で、どこか変で引っかかる曲を書かれる方なんです。「いい曲だなあ」と思いながら聴いているなかで「ん!?」と思うポイントが必ずあって。この曲も間奏ですごくいろんな要素が散りばめられているのに、綺麗にまとまっていて、広げたぶんだけごちゃごちゃするのではなくて、ちゃんと全員が役割を持って走り切っている印象なんです。本当に音を楽しみながら曲を作る方なんだと感じています。1回聴いただけでは見つけ出せない音がたくさんある楽曲になっているので、何回もじっくり聴いてほしいです。
――それこそ2番終わりの間奏のところに、話し声みたいな音がうっすらと入っていたりしますね。
水瀬 あれはレコーディングが終わったあとに、「おはようございます」「こんにちは」といった日常的な言葉を、感情を一定にして読んで、その音声を後日加工していただいて、ああいう不思議なものができました。同じ要領で歌詞も全部音読したのですが、栁舘さんは自分が書いた歌詞なのですごく恥ずかしがっていました(笑)。
――そこから急展開するサウンドにも驚きました。
水瀬 急にテンポがゆっくりになったり、誰も予想できないような展開を曲の中で作ってくださって。物語のように起伏が変わっていくので、旅をしている気分といいますか、私はスペース・マウンテンに乗ったあとみたいな気持ちになりました(笑)。
――個人的に水瀬さんが“pray”と歌う箇所の、甘酸っぱくも切なさを感じさせるニュアンスが大好きです。
水瀬 あれもいろんなパターンで録ったのですが、あえて儚く言っているテイクを使っていただきました。その後ろでクリスタルが弾けたような、「もしかして壊れてしまった?」と思うような音が入っていたり、歌詞にもところどころにシリアスな意味合いに取れる言葉が入っています。1番では“日々を結び”となっているのが、2番では“ヒビは脆く”になっていて、「日々」も脆いし、当たり前にみんなと一緒に過ごす時間があるけれど、それも永遠ではないかもしれないという歌詞にすごくハッとしましたし、それをポップに歌うところがすごくマッチしていて、クセになる1曲だと思います。
――同じく栁舘さんが作詞・作曲した「Well Wishing Word」(2020年リリースのシングル「ココロソマリ」収録)も、曲調は華やかだけど、歌詞で描かれるテーマ性は“今生の別れ”で、そのマッチ感が絶妙な曲でした。
水瀬 そうなんです。どちらもそういうシリアスなテーマを持ちながらも、軽快に走り切れる曲になっています。重たくないとまでは言わないですが、どんな感情のときにも聴くことができますし、それでいてメッセージ性を受け取ることができて。栁舘さんはいつもそういうアプローチをスラッと書いてくださるので、こんな曲を書けたら楽しいだろうなあと思って、すごく憧れます。私も楽しく歌いました。
――もう1曲の「思い出のカケラ」は優しい曲調のミディアムナンバー。これはどんなコンセプトで作られたのですか?
水瀬 先ほどライブを通して私の感情がいろいろ動いたお話をしましたが、この楽曲は、それがあったから思いついた感情のままに作っていただいた、「ライブのあとに聴いてほしい曲」というテーマの曲になっています。さっきまでみんなで盛り上がっていたけど、それぞれが自分の家に帰っていく瞬間で、それでも「また会おう」と言える温度感。みんなの日常でも、通勤通学の帰り道に友達と別れた瞬間とか、ちょっと懐かしい幼馴染に会った帰り道とか、懐かしくて哀愁を感じる瞬間があると思うんです。ふと一人になったときに「自分はこんなに支えられていたんだなあ」と思い返したり。その積み重ねで毎日は成り立っていると思うので、この曲はアーティストとしての自分だけじゃなく、生まれてからいつも自分の中にある気持ちだったり、今までの自分の感情、この活動を始めたから言える言葉が入っています。歌詞にも“流す涙さえ大事なひとカケラ”とありますが、思い出のかけらは1つでも欠けたら駄目ということが伝わればいいなと思う曲です。
――そういった意味では、「Starlight Museum」と「クリスタライズ」を含め、時間の大切さ、過去・現在・未来が繋がって今があるということを歌ったシングルになりましたね。
水瀬 偶然ではあるのですが、どの曲も時間の流れについて歌っていたり、“星”“クリスタル”“カケラ”と、どこか共通しているような部分がありますね。何かが集まってできたものは頑丈ではなくて、叩くと砕けてしまいますし、その脆さすらも美しさだったりすると思うんです。当たり前を当たり前と思わないで生きていたい気持ち、自分の気持ちに正直であれば輝いていけるというメッセージ性がどの曲にもあって、すごく親和性を感じました。
――「Starlight Museum」の歌詞に“ほらね叶えたい夢がね待っているよ まだ消えない願い胸にあるのなら”とありますが、5周年を迎えた水瀬さんの胸には今、どんな夢や願いがありますか?
水瀬 私は目の前にあることに一生懸命取り組むタイプなので、明確な目標や夢をあまり持つ方ではなくて、未来に関しては漠然とした気持ちでいることが多いのですが、今は何周も色々考えた結果、楽しく歌をうたい続けることが私の願いになっています。どんなときも歌の気持ちに寄り添える自分でいたいですし、歌をうたうことが、1つの感情の表現になっていったらいいなと思っていて。楽曲1つ1つが、1つのシーンのように、みんなの日常に溶け込んでくれたらと思っているので、どんなときも音を楽しんで歌をうたっていけたらと思います。
――その願いが、横浜アリーナから届けられる12月5日の配信ライブ“Inori Minase 5th ANNIVERSARY LIVE Starry Wishes”にも繋がっていくわけですね。最後にライブへの意気込みをお願いできますか。
水瀬 “Starry Wishes”という複数形のタイトルには、たくさんの願いたちが集うという意味を込めています。皆さんのもとに星空を届けられるようなステージにできればと思います。自分らしさと、今までやってきた自分の音楽を振り返るセットリストになっているので、衣装も含めて注目してほしいです。
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
●リリース情報
「Starlight Museum」
発売中
01. Starlight Museum
(テレビ朝日系全国放送「musicるTV」12月度オープニングテーマ)
作詞:櫻澤ヒカル・水瀬いのり 作曲・編曲:櫻澤ヒカル
02. クリスタライズ(スマートフォンゲーム「アークナイツ」イメージソング)
作詞・作曲・編曲:栁舘周平
03. 思い出のカケラ
作詞・作曲・編曲:遠藤直弥
●ライブ情報
Inori Minase 5th ANNIVERSARY LIVE Starry Wishes
2020年12月5日(土)19:00 開演予定
ライブ特設ページはこちら
チケット代金
一般チケット:4,000円(税込)
販売期間
一般チケット:11月28日(土)0:00~12月12日(土)18:00
※チケット代金とは別途、配信メディアごとに異なる手数料がかかります。
配信メディア
・PIA LIVE STREAM
・ローチケ LIVE STREAMING
・GYAO!
・ニコニコ生放送
※チケットのご購入前に、各配信メディアサイト記載の注意事項をよくお読みいただき、ライブ配信視聴に適したインターネット環境・推奨環境をお持ちかどうか必ずご確認ください。
視聴可能期間
ライブ配信:2020年12月5日(土)19:00~ライブ終了時間まで
各配信メディアでは配信終了後~12月12日(土)23:59までアーカイブ配信がございます。
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