INTERVIEW
2020.11.24
6つ子の魅力がたっぷり詰め込まれたTVアニメ『おそ松さん』第3期。目にも耳にも楽しいOP楽曲「nice to NEET you!」は、第1期、第2期から引き続きA応Pが担当。今回、リーダーの春咲 暖、工藤ひなき、堤 雪菜の3人が「nice to NEET you!」の楽曲の魅力や、MV撮影の裏話など、余すことなく語ってくれた。
――「nice to NEET you!」はどんな楽曲ですか?
春咲 暖 今までとは違う視点から『おそ松さん』ワールドを描いた楽曲です。これまで外側の視点から『おそ松さん』の世界を歌にしていたのに対し、今回は6つ子の視点で歌詞が紡がれていて。
工藤ひなき 初めて歌詞を見たときには驚きました……。
春咲 攻めた歌詞だよね(笑)。“頑張りたくない(働きたくない)”という歌い出しもそうだし、“We are パラサイト”と堂々と言っていて。ニートであることへの誇りを感じられます。
堤 雪菜 開き直りつつ、その裏にはメッセージも込められていて。この曲は“頑張れ”“前へ進め”というのではなくて、“頑張らなくていい”ということを伝える応援歌。「“頑張らない”を頑張れ」と言っているような。
工藤 そうそう、前を向かせるとか、背中を押すのではなくて、立ち止まらせて休憩スペースに案内するような曲だよね。
春咲 「働かざるもの食うべからず」なんて言いますが、この曲では“働かずに食う飯もうまい”とか、頑張らなくても幸せがある。頑張りすぎてしまう人、疲れている人が世の中にはいっぱいいて、そんな人に一度肩の力を抜いてほしいという思いを込めています。「あんまり仕事に行きたくないなぁ」と思う日も、「でも頑張る」と思い直す必要はないし、そう思ったままでいい、同じように思っている人がほかにもいることを伝えているんです。
工藤 “はなまるぴっぴ”とか“近うよれ”とか、これまでの『おそ松さん』楽曲を振り返るフレーズが歌詞に入っているのもポイントです!
堤 YouTubeでMV動画を公開してすぐに、それに気づいた方がコメントしてくれていて、嬉しかったです。
――3人にとってこの曲は、A応Pの正規メンバーになってからは、初めての『おそ松さん』タイアップ曲になるんですよね。
春咲 第2期のOP「君氏危うくも近うよれ」と「まぼろしウインク」にも参加しているのですが、当時の私たち3人は、A応Pの研究生・A応P ZEROで、正規メンバーではなかったんです。その後、正規メンバーになり、いろんな活動を経て、再び『おそ松さん』に関わることができて、ぐっとくるものがあります。
堤 「君氏危うくも近うよれ」のときは、楽曲参加も、MV撮影も初めてで。不慣れななかで緊張しっぱなしだったのを覚えています。第1期のオープニング「はなまるぴっぴはよいこだけ」のときは、私たちは研究生でもなくて、普通のオタクであり、A応Pの楽曲ファンでした。だから、第3期のオープニングを担当できると聞いたとき、アニメオタクとしての興奮もあって。
工藤 私たちはとにかくアニメが大好きなメンバーの集まり。アニメの楽曲を務めせていただけるのも幸せだし、それが研究生時代から関わっていた『おそ松さん』というのがまた嬉しいです。
――『おそ松さん』のOP映像をご覧になっていかがでしたか?
工藤 今回も、『おそ松さん』の個性が爆発していて、観ていて楽しい。第1期、第2期のオープニングではなぜか6つ子が裸になっているのですが、それが第3期でも観られました。宇宙空間で、サビに合わせて虹の上を走りながら脱いでいて、とっても不思議(笑)。
春咲 『おそ松さん』の世界だから違和感なかったけれど、たしかに冷静に考えるとすごいシーンだよね(笑)。最後の「シェー!」とか、歌詞に合わせたカットもいっぱいあって嬉しかった。
堤 嬉しかった~! 私たちの楽曲に合わせて絵作りをしていただけるって、夢みたい。
――ちなみに、『おそ松さん』は毎話欠かさず観ているとのことですが、好きなキャラクターはいますか?
堤 キャラクターは全員好きです。でも、実はみんなそれぞれ「推し松」がいるんですよ。
春咲 これまであまり言ったことがなかったんですけど、やっぱりお気に入りの「松」ができてしまう。言うのはちょっと恥ずかしいんですけど……。
堤 言っちゃっていいのかな? ひなきも「推し松」いるよね?
工藤 私、「推し松」が二人いるんですよ。
――ぜひ教えてください!
工藤 トド松と、一松です。トド松は兄たちに内緒でバイトをしていたり、女の子とお出かけをしていたり、別行動しちゃうところがいいし、一松は、みんなと馴染めているように見えて、いざ二人きりになると黙っちゃう感じに共感できます。二人とも、ちょっと冷静な部分があって。
春咲 わかるなぁ。私も一松が好きです。あと、おそ松も。一松はひなきの言うように冷静で、リアリストなところに惹かれますね。みんなが盛り上がっているなかでも、「自分はニートだから」と一歩引いた態度を見せたり。それに対しておそ松は、競馬にパチンコに、ダメっぷりが突き抜けているけれど、それを隠すこともなければ、ニートであることを恥じることもなくて。そんな堂々としているところが、長男たる所以なのではないかと……。あと、もう一人「推し松」がいて。
堤 「推し松」が三人も!
春咲 (笑)。推し松というより、一松と十四松の関係がとても推せるんです。
堤 すごくわかる! お互いのちょっとした変化に気づいていたり、兄弟愛を感じるよね。
工藤 十四松っていろんなことを考えていて、いいですよね。第1期の17話「十四松祭り」で、十四松が一松と会話をしながら、「自分は一体なんなんだろう」と考えていて、その新たな一面がたまらなくかわいいと思いました。
――堤さんの好きなキャラクターは?
堤 実は、一番好きなのはF6のカラ松なんです。普段の6つ子のダメっぷりには安心感があるし、親近感を覚えるんですけど、アニメを観ているとキャラクターに恋をしたくなってしまうタチで。F6のカラ松の、ちょっと俺様っぽい部分にときめきました。
工藤 かっこいいもんね。私もね、実はハタ坊が最推しなの。
春咲 そうなの!? 初耳!
堤 思い返したら、ひなきってよくハタ坊の真似してる!
春咲 たしかに。どんなところが好きなの?
工藤 とにかくすべてがかわいいの。第3期の2話「ハタ坊EATS」でのハタ坊、最高でした。ハタ坊がデリバリーサービスのお仕事で、おでんを配達しようとするんですけど、自分の体のサイズに見合わない大きなカバンを背負っているもんだから後ろにひっくり返っちゃっていて……。「じょ~」と言いながら後ろに倒れていく姿がもうたまらなく愛らしくて……。なんだかお子様ランチみたいで。
春咲 お子様ランチ?
工藤 いろんな料理がかわいらしく盛り付けられていて、旗がちょこんと乗っているところが、ハタ坊みたい。
堤 そんなに好きなんだね。ひなきも頭に旗つける?
工藤 付けようかな……(笑)。
――レコーディングで印象的だったディレクションは?
堤 私はレコーディング1番手で、「まずは自由にやってみよう」と言っていただけたんです。今回の曲にはメンバーそれぞれにセリフを与えられているのですが、その中の1つ、“現実[リアル]で頑張りすぎてない?”を鬱陶しさ満載で言ったところ、採用していただけて、嬉しかったです。
工藤 私はセリフ部分で「とにかく生意気に!」というディレクションを受けました。序盤の“ごちそうさまでした!”を何度も撮り直して……最終的にはふざけた感じのものを使っていただきました(笑)。
春咲 真面目にふざけている感じがいいよね。私は“今、ココニ宣言スル”の部分で、大統領選挙の演説を意識してって言われて。
――タイムリーなディレクションですね。
春咲 「なるほど、わかりやすい」と(笑)。ほかのメンバーのセリフも全部個性的で、一人ひとりの味を引き出してもらえたと思います。
――CDにはファンの方と一緒に歌う「nice to NEET you!(with you Version)」も収録されていますが、聴いてみていかがでしたか?
春咲 皆さんに歌っていただいたデータを応募いただいて、それを私たちの歌と合体させたのが、この「with you Version」。ファンの皆さんと遠隔で大合唱したような1曲になっています。
工藤 CDのクレジットには、応募いただいた方のお名前も入れて。みんなで作った1曲という感じで、素敵ですよね。
堤 実は、私のお友達も応募してくれたみたいで。
春咲 そうなの? すごい!
堤 それをつい最近聞いて、すごく嬉しかった! 私たちのファンだけではなく、『おそ松さん』のファンや、たまたま企画を知って気になって一般応募してくださった方もいて。とっても素敵な企画ですよね。たくさんの方と一緒に、形に残る思い出を作ることができました。
――みんなで歌うと楽しい曲なんだなと改めて感じました。
春咲 サビの部分は主旋律のほかに、追っかけが2つ存在していて、さらにハモも入っている。パート分けもすれば、さらに綺麗な合唱になるのかも? ぜひ試していただきたいです!
――MVについてもお話を聞かせてください。今回の見どころは”ニートダンス”とのことですが、実はこのダンス、なかなかキツいそうですね。
堤 そうなんです! 皆さんに楽しく真似していただけるようなキャッチーなダンスではあるのですが、筋トレに近いものがあるんです。
工藤 片足を上げる動きがあるのですが、立っているメンバーは体をちょっと斜めに傾けていたり、横になっているメンバーは片腕だけで体を支えていたり……。
春咲 「ダンスVer.」のMV映像で観られると思うのですが、短い尺の中で、後ろから移動して、寝転んだポーズで足を上げては、起き上がって……の動きをしていたり。かなり体幹を鍛えられました。今までいろんな振り付けをいただきましたが、今回が一番辛いかも(笑)。
堤 うん、一番だよね。見た目より、かなりハードなんですよ。
――この動きを真似すれば、いい筋トレになるかもしれませんね。
工藤 確かにそうですね。上げる足を交代しながら、音楽に合わせてやってほしいです!
春咲 お相撲さんみたいなフリもあって、面白い動きが盛りだくさん。ぜひそれも一緒にやっていただきたいです!
――四股を踏んでいるような動きがありますね。これはどういう意図で取り入れたんですか?
工藤 “夢平らげて”というフレーズに合わせて、「お相撲さんのようにいっぱい食べる」という意図で入れた振り付けなんだそうです。
堤 『おそ松さん』楽曲の振り付けって、かわいいよりも面白さ重視のものが多いんです。
春咲 スカートでも、全力でガニ股をしたり(笑)。踊っている私たちも楽しくやっています。
――もう1つのバージョンのMVについても聞かせてください。パジャマ姿の愛らしい姿など、楽しそうなシーンが多いですね。
春咲 丸1日かけての撮影で、最初の撮影がパジャマ姿のシーンだったんです。私に与えられたのは一人でスリンキーというバネのおもちゃで遊ぶシーンで、みんなも同じようにスリンキーで遊ぶのかな? どんなふうにこれで遊ぶのかなと思っていたら、雪菜とひなきたちは楽しくパジャマパーティをしていて。私だけ、一人……。
工藤 (笑)。私たちは楽しく自然な姿を撮るって言われたよね。
堤 うん。じゃんけんをして買った人がお菓子を食べるとか、いつもの雰囲気をそのまま撮っていただいて。
春咲 楽しそうで羨ましかった(笑)。私は一人でカメラにスリンキー越しの目線を送ったりしていたよ。
――(笑)。スリンキーは今の時代なかなか見かけないおもちゃですよね?
春咲 そうなんです。『おそ松くん』が生まれた昭和、『おそ松さん』が生まれた平成、そして令和になって第3期が放送されて。3つの時代を通して愛されてきたからこそ、昭和・平成初期を感じさせるスリンキーを使ったのかなと。そのほかにも、現代感を感じられるような、スマホで撮影したカットがあったり。
――スマホ画面が7つ登場するシーンですね。
春咲 実際にメンバー一人ひとりをスマホで撮影したのを、そのまま使ってくださっているんです。ちなみに、このシーンをよく観ていくと、ひなきが一瞬画面から消えるんですよ。
工藤 そうなんです。フォーメーションの移動をしないで撮る予定だったのですが、つい癖で動いてしまって……。「やばい!」と思ったんですけど、監督が「いいじゃんそれ」とおっしゃって、そのまま使っていただくことに(笑)。
春咲 消えるひなきのシーン、ぜひチェックしてほしいです(笑)。あと、私と雪菜は屋上でのカットもあって。この日はものすごく晴れていて、眩しかったのを覚えています。
堤 “楽シテ生キルノダ!”の部分、完成した映像を観ると、私全然目が開いていなくて。眩しさに負けていて、悔やまれる……。
春咲 私はすごくいいシーンだなって思ったよ。雪菜は笑顔が素敵なメンバーなんですよ。歌詞に合ったいい笑顔で、個人的にお気に入りシーンです!
堤 嬉しいことを言ってくれる……! ありがとう!
春咲 どういたしまして(笑)。
――では、最後にこのインタビューの読者にメッセージを。
工藤 この曲は、楽曲もMVも、何度聴いても何度観ても楽しい「スルメ曲」です! これからも、たくさんの人に楽しんでいただけると嬉しいです。
堤 最初のほうでも言わせていただいたのですが、この曲は「頑張らないことを、頑張れ」という楽曲です。疲れたときにふと思い出して、仲間がいるんだと思ってほしい。肩の力を抜く手助けができればと思っています。普段アニメを観ない方にもぜひ聴いてほしいと思っているんです。なので、皆さんの周りに頑張りすぎている人がいたら、そっと近づいて、この曲をスピーカーで流してくださると嬉しいです!
――直接聴かせる感じなんですね(笑)。では締めはリーダーの春咲さん。
春咲 改めて、第1期からOPテーマを担当させていただいていること、A応Pとして、アニメオタクとして光栄です。とても大きなプレッシャーもありましたが、楽曲を聴いた作品ファンの皆さんから「今回も神曲」「A応Pでよかった」というコメントを寄せていただき、ほっとしましたし、嬉しかったです。私たちA応Pは「アニメ“勝手に”応援プロジェクト」と銘打っていて、大袈裟かもしれませんが、全員がアニメを生きがいにしています。これからもずっと作品も楽曲も、大事に、愛していきます。そして私たちが皆さんに大事にしていただける、愛していただけるようなアーティストになる努力もしていきます。これからも、私たちを見てくださると嬉しいです。
INTERVIEW & TEXT BY 許士明香
●リリース情報
A応P
「nice to NEET you!」
11月25日発売
<収録楽曲>
01. nice to NEET you!
作詞・作曲:村井 大 編曲:倉内達矢
02. nice to NEET you!(with you Version)
作詞・作曲:村井 大 編曲:倉内達矢)
03. nice to NEET you!(TV Version)
作詞・作曲:村井 大 編曲:倉内達矢
04. nice to NEET you!(Instrumental)
作曲:村井 大 編曲:倉内達矢
【スタッフ】
原作:『おそ松くん』 赤塚不二夫/「週刊少年サンデー」(1962年~1969年)他で連載
監督:藤田陽一
シリーズ構成:松原秀
キャラクターデザイン:安彦英二
アニメーション制作:studioぴえろ
【キャスト】
おそ松:櫻井孝宏
カラ松:中村悠一
チョロ松:神谷浩史
一松:福山 潤
十四松:小野大輔
トド松:入野自由
トト子:遠藤 綾
イヤミ:鈴村健
チビ太:國立 幸
デカパン:上田燿司
ダヨーン:飛田展男
ハタ坊:斎藤桃子 ほか
<イントロダクション>
日本一有名な6つ子の伝説、3度目の開幕!!!!!!
今度はかつてない新展開が待ち受ける!?
2015年、赤塚不二夫生誕80周年記念作品として、赤塚不二夫の名作ギャグ漫画「おそ松くん」を原作に、6つ子が大人になった姿を描いたTVアニメ「おそ松さん」。
20歳を過ぎてもクズでニートで童貞。でもどこか憎めない松野家の6つ子が繰り広げる日常を描き、社会現象を巻き起こした。
あれから5年―。
TVアニメ第2期、劇場版「えいがのおそ松さん」を経て、待望のTVアニメ第3期が2020年10月より 放送決定!
お馴染みの冴えない6つ子たちは、今作でも色々間違った方向に大暴れ!?
そして、松野家に新たな変化も訪れる…?
あの問題作が今、再び!
©赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会
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