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2020.11.11

盟友・鈴木このみも登場!ASCA、初のオンラインライブ“ASCA LIVE TOUR 2020 -華鳥風月-”レポート

ASCAにとって初のオンラインライブ“ASCA LIVE TOUR 2020 -華鳥風月-”が、11月7日に配信された。当初は4月に開催予定だった同ツアーだが、新型コロナウイルスの影響により、ファイナルの東京・恵比寿LIQUIDROOM公演を含む全公演が延期・中止に。その悔しい思いもすべてパフォーマンスの原動力に昇華して、一発入魂で取り組んだのが今回のライブ。10年来の盟友である鈴木このみをスペシャルゲストに迎えた特別な共演を含め、彼女のこれまでの歌手活動の集大成と言っても過言ではない、そのステージの模様をレポートする。

ツアータイトルの“華鳥風月”に相応しい雅やかな雰囲気のSEと、本来開催される予定だったツアーの公演日などを紹介するCG映像が期待を高めるなか、バンドメンバーとASCAがステージに登場し、まずは今年2月にリリースした6thシングルの表題曲「CHAIN」で情熱的にライブを開始。TVアニメ『ダーウィンズゲーム』のOPテーマとして、仲間とともに困難に立ち向かい戦う作品の内容に寄り添いつつ、ASCA自身が2019年の初ワンマンライブおよび全国ツアーで感じたファンとの“絆”をテーマに書かれた楽曲だけに、幕開けにはぴったりの選曲だ。黒をベースに袖口などに白いレースの生地をあしらい、左肩には大輪の花が咲いたかのようなアシンメトリーなドレス衣装が、彼女の凛とした存在感を一層際立たせる。

左手のこぶしを握りながら突き上げて、「CHAIN」の最後を締め括ったASCAは、そこからアプリゲーム「ソードアート・オンライン アリシゼーション・ブレイディング」の主題歌でもある「セルフロンティア」を披露。パワフルな歌声で紡がれるサビの“迷わないで 迷わないで どんな痛みも越えてゆける気がした”というフレーズが、聴き手の心を後押しするのと同時に、コロナ禍を越えて今オンラインライブを実現させている彼女自身の状況とも重なるようで、胸が熱くなる。さらにライブ初披露の新曲「OVERDRIVE」と続け、吠えるような歌声で“栄光の向こう側へ 君を連れていくよ”と力強く宣言する。

MCでライブができる喜びを伝え、「この嬉しい気持ちが配信を観ている皆さんにも届けばいいなと思っています」と語った彼女は(ライブ会場にはソーシャルディスタンスを保った環境で観客を入れていた)、続いて「今日こうしてこの場所に、みんなと集まれたこと。それは一人ひとりが、毎日を一生懸命生きているからです」と前置きし、次の楽曲「命に嫌われている。」へ。バーチャルシンガー・花譜などへの楽曲提供でも知られるボカロPのカンザキイオリの代表曲として知られるこのナンバー。ASCAは今年7月に、クリエイターユニットのHALAmin.とのコラボレーションで同楽曲のカバー動画をアップし、話題を集めていた。今回のライブのバックバンドのメンバーである重永亮介(バンマス/key)、Saku(g)、okamu.(b)、関口孝夫(ds)のうち三人はHALAmin.のメンバーであることから、実質的にはそのコラボがライブで再現された形だ。ASCAは先ほどまでの全身を使ったアグレッシブな歌唱から一転、1番では直立姿勢で言葉を1つ1つ大切に表現していく。1つの死生観を描く、鋭く研ぎ荒まれた言葉が、心の中に深々と刺さっていくようだ。そして楽曲の終盤、景色が一変してバンドの演奏が熱狂的なうねりを見せるなか、ASCAも全身全霊で応えるように激唱。歌詞の最後の一節“生きて、生きて、生きて、生きて、生きろ。”を叩きつけるように歌った、渾身のパフォーマンスが目に焼き付いて離れない。

そのあと、照明が落ちて真っ暗闇のなか、吉田篤貴(EMO strings)による悲哀に満ちたバイオリンの響きに導かれて「サルベージ」を披露。冒頭の歌声にかけられたくぐもった質感のエフェクト、濃い藍色のライト演出などが、深い水底で歌っているようなイメージを生む。続いてデビュー前から温めていたという悲恋を描いたバラード「ハイドレンジア」を歌唱。相手の心が自分から離れていくことに気づきながらも、溢れてしまう想いの切なさと、そこから前に歩み出そうとする心の動きを、感情を絞り出すように切々と表現する。ASCAの太く存在感のある歌声は、ニュアンスに陰影が必要とされるこれらの楽曲において、その真価を発揮するように感じた。

とはいえ、そういったディープな表現ばかりに終始しないのが彼女の魅力でもある。続くアコースティックコーナーでは、柔和な一面を披露。ピアノの流麗なイントロから始まった「光芒」では、ASCAもスツールに腰かけてリラックスしながら、明るく希望のこもった歌声を聴かせる。“どんなに暗く怖くても手を伸ばすよ 必ず君を一人にはさせないから”という優しい言葉はもちろん、クラップを誘いながら楽しそうに歌うASCAの姿に、こちらも思わず笑顔になってしまう。次曲「ただいま。」の夕景のように赤みがかった照明のもとで紡ぐ、“かけがえのない愛の日々”に思いを馳せるような歌声も素晴らしかったし、デビュー曲「KOE」のあらゆる物語や運命を受け止めるような、包容力を感じさせるアプローチも、彼女の成長と進化、そしてさらなる可能性を感じさせる名演だった。

バンドメンバーの紹介を挿み、鮮烈な歌声で一気に楽曲の世界観へと観る者を引き込んだ「凛」、さらに「タオルでもこぶしでも一緒に回しましょう!」と呼びかけて、自らもタオル片手にステージを上手・下手と行きかいながらオーディエンスとの交歓を楽しんだ「道シルベ」でギアを上げると、ここで「10ヵ月ぶりのワンマンライブ、何度もライブが延期・中止になって、ようやく開催することができました。そんな日に、私は、彼女を呼びたいなと思います」と語り、スペシャルゲストの鈴木このみをステージに招き入れる。登場するなり「イエイ!」と嬉しそうにハンドタッチを交わす二人。2011年に開催された“第5回全日本アニソングランプリ”で出会って以来、お互いシンガーとして切磋琢磨してきた、まさに戦友の間柄だ。

ステージ上で「ずっとずっと一緒に歌えることを希望として、頑張ってきた10代だったから、ようやく隣で、今から一緒に歌うんだなっていう……なんか何が起きてるんだろうっていうぐらい」(ASCA)、「私も同じ気持ちだと思う」(鈴木このみ)と言葉を交わした二人は、「1曲入魂だから、思い切り楽しんでいきましょう!」(ASCA)と早速パフォーマンスへ。二人で仲良く声を合わせて宣言した、これから歌う曲のタイトルは「DAYS of DASH」。鈴木の2ndシングルであり、ASCAも縁のあるTVアニメ『さくら荘のペットな彼女』のEDテーマとして知られるだけでなく、迷い悩みながらも夢を追う“君と僕”の青春を描いた畑 亜貴の歌詞を含め、こんなにも二人が初めてのコラボで歌うに相応しい楽曲は、ほかにないのではないだろうか。

歌い出しの1番AメロはASCAから。“過ぎるだけの時間じゃ悔しい 刻まなくちゃ ここにいると心が叫ぶ瞬間 I’m dreaming”というフレーズが、一足先にデビューした鈴木の背中を追ってここまでやってきたASCAの心情をそのまま表現しているようで、聴いていて目頭が熱くなる。Bメロでお互い見つめ合うように向き合って歌い、風のように気持ちよく吹き抜けるサビへ。歌と共に駆け抜けてきた10代の青春の日々と、その先に出来上がった二人の努力の結晶が、今このステージで交差する素晴らしさ。1サビ終わりで声を上げて喜び合う二人の晴れ晴れとした表情、2番サビ頭の“EYES to EYES”で再び向き合って指で指し合う姿、間奏でASCAが小型カメラを持ち出して二人で仲良く手を振る場面など、どの瞬間からも歓喜が溢れ伝わってくる。落ちサビの分け合って歌うパートではASCAが感極まって言葉に詰まるシーンがあったが、その直後に二人で歌った歌詞が“もう言葉いらない世界 君と僕の世界”というのも、偶然のこととは言えどあまりにも感動的だったし、今回のコラボは、大きな夢と未来を追ってダッシュし続ける二人にとっての、さらなるはずみの一歩となったはずだ。

そんな特別な共演に続き、ライブは今やASCAの代表曲となっている『ソードアート・オンライン アリシゼーション』のOPテーマ「RESISTER」で一層熱く盛り上がる。A・Bメロの低音とサビのハイトーンの対比によるドラマティックな歌唱表現はもとより、『SAO』の作品世界ともリンクする未来的な幾何学模様をあしらった映像演出、さらにはテンポよくスピーディーに切り替わるカメラのカット割りが、楽曲が持つ疾走感や躍動感をさらに高め、オンラインだからこその視覚効果で視聴者を引き込む。そしてASCAは「今はみんなが思うように声を上げられない時代で。そんな時代だからこそ、みんなと声を上げたくて、この曲が出来ました。今日は私の声と、みんなの心で、一緒に叫びましょう!」と語り、『魔法科高校の劣等生 来訪者編』のOPテーマとして発売されたばかりのニューシングル「Howling」を歌唱。ライトが激しく明滅するなか、声を上げることができない会場のオーディエンス、そして画面の向こうの視聴者のぶんまで、力強く叫び続けるASCA。その声を信じ続けた先には、必ず希望が待っていることを、身をもって証明するかのようなステージングだった。

そこから「まだまだついてこれますか?」と呼びかけ、ラストスパートに突入。まずはクールでエネルギッシュなハードロックチューン「NO FAKE」でさらなる熱気を呼び込むと、そこから「1つになってこぶしを掲げましょう!」と「いかれた世界だろ構わないぜ」を投下。カラフルに点滅を繰り返す照明が狂騒的な雰囲気を作り出すなか、ASCAはラストにかがみこんで艶めかしい動きを見せたりと、アグレッシブなパフォーマンスで観衆から熱狂を引き出す。

続くMCで「私がいま、自分を信じて歩くことができているのは、みんなが私を信じてくれているからです。長い長い自粛期間の間、みんなに会えない間、初めてのワンマンライブ、初めてのワンマンツアー、この記憶が私の中にずっとあったから、ここまで腐らず、折れず、歩いてこれました。だから今日は、私がまた、歩いていくための燃料を、みんなにもらいました」と、自身の活動にとってのライブの大切さについて語るASCA。「まだまだ、私に期待して、ついてきてほしいです。もっともっとみんなと一緒に輝ける場所、そこまで必ず、連れて行きます。今日の公演にアンコールはありません。次の曲に、ありったけの想い、全部込めて歌います」と続け、この日、最後に歌ったのは「このメロディにのせて」。ASCAの活動を最初期からサポートするSakuと重永亮介が作編曲を手がけ、ASCA自身が作詞したナンバーだ。地元から上京してきた当時の不安な心情から、デビューやたくさんのファンとの出会いを経て、改めて自分は一人ではないことを知った、その感謝の気持ちを、優しいメロディに乗せてしっかりと届ける。

歌唱後、ASCAは「まだここは夢の続きです。また絶対、生きて、必ず生きて、会いましょう。今日は本当にありがとうございました。ASCAでした!」と深くお辞儀して公演は終了。そう、「このメロディにのせて」の歌詞にもあるように、彼女にとっては、このライブもまた“まだここは夢の続き”に過ぎないのだ。その声が紡ぐ“終わらない物語”の行く末に、今後も期待しかできない、そんなライブだったように思う。

PHOTOGRAPHY BY SHIN ISHIHARA
TEXT BY 北野 創(リスアニ!)

<セットリスト>
01. CHAIN
02. セルフロンティア
03. OVERDRIVE(新曲)
04. 命に嫌われている。
05. サルベージ with EMO Strings
06. ハイドレンジア(新曲)
07. 光芒
08. ただいま。
09. KOE
10. 凛
11. 道シルベ
12. DAYS of DASH
13. RESISTER
14. Howling
15. NO FAKE
16. いかれた世界だろ構わないぜ
17. このメロディに乗せて

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