INTERVIEW
2020.09.09
中川翔子が2020年4月から放映されている『ハクション大魔王2020』でEDテーマを担当。同作で主役を務めるアクビは、カン太郎という少年が夢を見ることを後押しするが、そんなアクビらしさと、コロナ禍にあるみんなへの思いを合体、明るく元気な応援歌を歌い上げる。一方カップリングには、10年前にリリースした「フライングヒューマノイド」の2020年バージョンを収録。今回のインタビューでは、欝々としたコロナ禍の中での発見、これまでの10年とこれからの10年を見つめた思いを、しょこたんらしい言葉で紡ぐ様を収めた。
――まずは、「フレフレ」を歌うことが決まったときの感想から教えてもらえますか?
中川翔子 昨年は、映画『ミュウツーの逆襲』主題歌(「風といっしょに」)とか、アニメ『ゾイドワイルド』のEDテーマ(「blue moon」)で、たくさんの子どもたちに会うっていう壮大な夢が叶って、幸せを使い果たしている感があったんですけど、まさかまさか、今年もアニメの歌をうたえるとはものすごく嬉しくて、びっくりしました。そして、応援歌がいいなっていうのはすごく思っていました。なぜなら、今年は東京オリンピック・パラリンピックの年だし、流れる頃には私も聖火ランナーをやっているはずだったので。誰かが誰かを応援できるってすごく素敵なことだから、『ハクション大魔王2020』のEDテーマを歌うと聞いたときから応援歌にしたいとなんとなく思っていました。でも、まさかのコロナの世界になってしまって、世界が一気に変わってしまって……。子ども達も、学校に行けなくなって入学式や卒業式を全部我慢して、だけど、お家でアニメ観てる時間とか、インターネットと触れ合っている時間とか、そういった中でもキラリと光る大切な思い出を見つけているんですよね。『ハクション大魔王2020』のEDテーマということもありますし、そういった一部になれたらいいな、優しい心の応援歌にしたいなって思いで作詞もさせていただきました。だからコロナがない世界だったら、歌い方とかが少し違ったかもしれないし、今の世界だからこそ感じた気持ちや、出てくる言葉になったんじゃないかな、って思いますね。
――歌詞は岩里さんとの共作ということですが、自身ではどの歌詞が会心の一撃でしょうか?
中川 えー?普通にタイトルですかね。どんな曲かまだ分からないときから、「フレフレ」がいいな、とは思っていました。「ドリドリ」って曲から5年経ったんですけど、いまだにキラキラしてくれている曲で、歌い重ねるたびにワクワクさせてくれるので、その物語が続いているって感じがほしかったんですよね。
――「ドリドリ」の遺伝子を継ぐタイトルなんですね。
中川 「謎の四文字」っていう(笑)。覚えやすいし。
――岩里さんとの共同作業はどうでしたか?
中川 私が一通り書いた歌詞をお送りして、それを岩里さんがブラッシュアップしてくれて。細かくやりとりしたわけではないんですけど、ただの応援歌ではなく、今この世界の中だからこそ、というところをすごく意識してくださいました。音楽って、積み重ねてきた人生の最先端がタイムカプセルみたいに残るもの、って感覚があるんですよ。Dメロの“あたりまえの日々がずっと続くと思ってた”も、去年と、今この状況下とでは、意味が全然違ってくるんですよね。その意味を見つけられるように、歌詞で気持ちをシフトさせてくれたのはもう、さすがすぎますね。安心感と尊敬とに身を任せる感じでした。ラストの“僕らはまた会える”って言葉も、すごくシンプルだけど尊くって染みますよね。去年を思い出すと、全国の何ヶ所もめぐって子ども達にたくさん会って、一緒に歌って、触れ合って、「本当に幸せだったな」って思うんですけど、子ども達にとっても思い出になっていたとしたら……、って思うとその子たちにこの曲を通して「また会えるよ」って約束したい気持ちになります。だから、子どもたちにはぜひフルサイズで聴いてほしいです。
――歌うときも気持ちがこもりましたか?
中川 原点回帰という部分と、ずっとやりたかった「大人のお姉さんとして優しい気持ちを込める」ってところを目指しました。特に、Dメロの「夢のそーらー♪」は「この曲のエモポイントだ」って思って何回も挑戦しました。どこか、頭の中はいっぱいいっぱいなまま、ここまで(芸能活動を)やらせてもらってきたんですけど、大人のお姉さんとしてね、未来の地球を支える子ども達に届くといいなって思います。
――昔のアニソンエンディングの王道ですね、優しいお姉さん感は。
中川 候補曲はいっぱいあったんですよ。めっちゃ元気な曲とか、もっとシュールな曲とか。その中でアニメ側の皆さんがこの曲を選んでくださって、「そうか、優しくってキラキラウキウキできる曲なんだな」って思いました。一周回って、アニメのエンディングってやっぱりこうって感じがしますよね。自分も、そういう曲の素晴らしさに興奮してアニメソングを大好きになった、という根っこの部分があるというか。その憧れの世界を目指したって感じですね。(『ポケットモンスター XY』のEDテーマである「ドリドリ」から)3作連続でEDテーマを担当させていただいているので。エンディングを歌う、大人のお姉さんになってきている。嬉しい。
――中川さんの頭の中で、これぞアニメのエンディング、というものはなんでしょうか?
中川 そうだな……、「ロマンティックあげるよ」とか、山野さと子さんの「パティの日曜日」とか。あ、(「パティの日曜日」がエンディングの)『メイプルタウン物語」は私、世代じゃなくてあとからさかのぼったんですけど(笑)。でも、幼少期の(1989年版)『魔法使いサリーちゃん』や『美少女戦士セータームーン』もそうでしたけど、エンディングといえば優しくってキラキラして綺麗な声のお姉さんが歌っていて、優しい気持ちにさせてくれましたよね。子どもって大人よりもずっと体感時間が何倍も長くて、瞬間瞬間が濃かった気がするんですね。ホント、大人になると一瞬で2ヶ月とか過ぎて恐ろしい(笑)。だからこそ、アニメを観たとかそのエンディングとかが濃く刻まれていたんだな、と思います。私、土曜日の夕方から夜が死ぬほど好きで。
――ゴールデンタイムでしたよね。『セーラームーン』がまさにそうでしたし、『幽☆遊☆白書』とか『少年アシベ』とか。
中川 みんなそうですよね、子ども達も大人も大好きな時間に流れるアニメのエンディング……。『アニソンアカデミー』ってラジオでいつも、懐かしいアニメのEDテーマをプッシュしているんですけど、心のふるさと的な、落ち着くし優しいし安心するしキラキラしてるし、って曲ばかりですよね。アニメのエンディングあるあるですけど、聴くと「今日も土曜日が終わった」っていうのを感じますよね。「明日は日曜日だな」とか「学校は来週からか」とか。土曜日になると授業中にEDテーマ曲が頭の中を回る思い出もあるし。大人になって思い出すと、「ああ、懐かしいな」って気持ちになりますけど、そういう思い出に寄り添える感じになれたらいいな、って思いがありました。また、『ハクション大魔王2020』がいい時間(土曜の夕方5時半~)ですからね。親子で聴いていただきたいなって思います。子ども達には歌詞が思い出になってくれるに違いないって信じていますし、大人は大人で歌詞が刺さるので。
――この状況下にある大人達に向けての応援歌でもあるんですね。
中川 私も4、5月の仕事が全部なくなって、ものすごく落ち込んじゃってて。そんなとき、YouTubeでゲーム実況をしてたら、私は好きなことにぶつかっているだけなのに、最終日には2万人以上来てくれて。ロックダウン中の海外から観てくれた人もいたんですよね。あらためて、離れていても繋がる感じを味わえたというか、すごく素敵な時代に生きているんだなっていうのを感じました。誹謗中傷といった問題も言われるけど、インターネットのおかげで私は息が吸えていると思えましたね。ブログを始めた頃を思い出しました、原点回帰だなって。あと、エンディングで踊りたかったんですよね、私。
――最近の女児向けアニメの定番でもありますし。
中川 踊るアニメのエンディングは大好きです。(アニメのエンディングで)アクビちゃんも踊ってくれているんですよね。深海を旅してくれたりとか、可愛いエンディングになっています。あと、出てくる深海生物が、メンダコとかグソクムシとかスカシカシパンとか、好きなものばっかりなので興奮しました。子どもたちもきっと大好きなはず。
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