INTERVIEW
2020.09.02
2020年の夏クールは、鈴木このみにとって例年以上に熱いシーズンとなった。なんと3作品ものTVアニメで主題歌を担当、それらを3か月連続でシングルとしてリリースするという快挙を実現したのだ。意表を突いた展開で話題のオリジナルアニメ『デカダンス』のOPテーマ「Theater of Life」、彼女とは縁が深い作品『Re:ゼロから始める異世界生活』2nd seasonのOPテーマ「Realize」、そして超能力×恋愛を題材にした『恋とプロデューサー~EVOL×LOVE~』のEDテーマ「舞い降りてきた雪」。カップリングを含め様々なタイプの楽曲で新境地を切り拓いた彼女に、それぞれの作品に込めた想いを聞いた。
――鈴木さんは今年1月より、Digital Doubleという事務所の所属になりましたが、新環境はいかがですか?
鈴木このみ 年始に「ご報告」というタイトルでブログを書いてしまったので「えっ、結婚!?」と驚かれてしまったんですけど(笑)、私はアーティスト活動10周年目に日本武道館でライブをやるという目標もあって、新しい環境で自分に向き合ってチャレンジしたいということで、事務所移籍を決めました。とはいえ、今までお世話になってきたスタッフの方とも引き続き関わりがあるので、チームの人が新しく増えたような感覚で。最初は不安も多少ありましたけど、歌やライブのことに集中できる環境を作っていただいているので、今は安心してお任せしきっています。
――そんななか、この夏はシングルを3か月連続でリリース。同じクールに3本のTVアニメの主題歌を担当するのは、数々のアニメタイアップ曲を歌ってきた鈴木さんにとっても初の経験になりますね。
鈴木 アニメソングシンガーは、やっぱりタイアップありきで活動するものなので、お話が決まったときはすごく嬉しくて、リアルに飛び跳ねました(笑)。3作品とも別々のタイミングで知らされたんですけど、特に『リゼロ』は去年の誕生日にスタッフさんから急に「リゼロ2期決まりました!」っていうLINEがきたので、もう誕生日そっちのけになっちゃって(笑)。カップリングを含めた全6曲のどれも被りがないようにしたかったし、タイアップ曲も、それぞれに注ぐ力が分散してしまうのではなく、どの作品にもしっかり向き合って作りたかったので、プレッシャーはありましたけど充実した制作期間になりました。
――では、シングル3作品についてリリース順にお話を聞いていきます。まず7月にリリースされた「Theater of Life」は、TVアニメ『デカダンス』のOPテーマ。鈴木さんらしい熱さと疾走感が溢れるロックチューンです。
鈴木 この楽曲は主人公のナツメの想いを背負って歌っていて。彼女は、人間がサイボーグに支配されている世界のなかで「自分の生き方は自分で決めたい!」と考えて動く子なので、その部分を表現した曲になっています。私自身も、もう一人の主人公であるカブラギの達観していたり若者を見守ったりする生き方よりも、ナツメの若いがゆえの不安定さとか飛び込む感じに近い人間なので、自分自身とのリンクが自然にできた曲だと思っていて。私も最近は新しい環境に飛び込むことが多かったですし。これは今回のタイアップ全曲に当てはまるんですけど、アニメの曲でもあり、ちゃんと自分の曲でもあるものが作れたと思います。
――この曲の作詞・作曲・編曲を手がけたANCHORさんは、「東のシンドバッド」(2017年)以来の楽曲提供になりますね。
鈴木 ディレクションもANCHORさんにしていただいたんですけど、3年分の成長を見てほしい想いがあったので、レコーディングは緊張しました。「東のシンドバッド」も爽快感と疾走感があってライブ映えのする曲で、お客さんからの人気がすごく高いんですけど、今回はそこに泥臭さとか、転びながらも汗をかいて必死で走っているような感じがプラスされていて、前よりもさらにパワーアップし「東のシンドバッド」進化系のような楽曲になったと思います。
――たしかに人間臭い熱さのようなものが加わっているように感じます。
鈴木 「東のシンドバッド」よりもさらに現実味があるというか。歌詞も「生きてるってどういうこと?」っていうのを突き詰めていて、決してズシッと重くのしかかってくる感じではないけど、親身に訴えかけてくれるような曲だなと思っていて。ナツメが「誰かに支配されながら生きていていいのか?」と思っているように、現代社会でも特に若い子はそういう風に考えている人が多いと思うんです。「自分らしく生きるってどういうことなの?」っていう。そういうことを聴きやすく訴えかけてくれる曲だと思います。
――サビの“生きている ただその実感が欲しかった”というフレーズが象徴的ですね。
鈴木 パワーワードが多いですよね。歌詞の分量もすごく多くて、その分、言いたいことがたくさん詰まっているし、ひと言ひと言が聴き逃せないものになっていて。私はBメロの“何も望めないのは生きてないと一緒だ”のところが好きで、このフレーズが曲のキーになっているポイントをズバッと言ってくれている気がします。そこに「流されてたまるか!こんちくしょう!」っていう魂を感じますし、常に何かを望むことって大変だけど生きている実感を得られるじゃないですか。個人的には、大雑把に「生きてるって素晴らしい!」というよりかは、いろんなことがあるなかで「本当にそれでいいのかい?」って言われているような、背中を押されている感覚になる曲です。
――レコーディングではどんなところにこだわりましたか?
鈴木 先ほどもお話したように、この曲は人間的な泥臭さを大切にしていて、でも曲調はスタイリッシュでもあるので、そのスタイリッシュなかっこよさと人間らしいかっこ悪さ、ある意味矛盾するポイントをバランスよく仕上げるのに苦戦しました。あまり余裕がある感じだと違うし、かっこ悪いままで終わってもいけないという。あとは、歌詞に力のある言葉がたくさん散りばめられているので、早口なんだけどちゃんと言葉が届くように、というのはすごく意識しました。
――個人的にはサビの“本当の音が”の箇所の歌が、バックの演奏に合わせた音ハメになっていて、聴いていてすごく気持ちよかったです。
鈴木 あの部分も、一寸違わずピタッと合わせることにこだわりました! 豪華なミュージシャンの皆さまに演奏していただいたので、いつもなら私がボーカリストということで、歌を前面にガンと出す処理をしてもらうことが多いんですけど、今回はバンドのようなイメージでミックスしてもらっています。
――ギターにイシダレイジさん、ベースに堀江晶太さん、ドラムスにゆーまお(ヒトリエ)さんが参加していて、間奏にもそれぞれの楽器の見せ場が用意されてますものね。
鈴木 特に2番以降はライブ映えに特化して作っていただきたかったので、各パートソロを入れてもらったり、コールもたくさん入れていただいていて。メロもいい具合に変わっていたり、おいしいところがたくさんあるので、フルサイズで聴くとさらに広がりがあって、印象も変わると思います。
――カップリング曲の「明けない夜に」は、今までの鈴木さんの曲にはあまりなかったタイプの、内省的な雰囲気の曲です。歌詞は鈴木さんが書いていますが、どんなコンセプトで作ったのですか?
鈴木 この曲では自分の本質的でノンフィクションな部分を書きたくて。内容的には薄暗い感じなので、私のパブリックイメージとはあまりにもかけ離れている気がして、最初はちょっと悩んだんですけど、そこに自分で歌詞を書くことの意味があると思うので、嘘偽りなく素直に、コアなことを書いてみました。この曲も意図せずして、表題曲と同じように「生きてるって何だろう?」ということが肝になっているんですけど、そのテーマについて朝や昼に考えたのが表題曲だとすれば、「明けない夜に」は夜の深い時間に考えた答えなのかなって感じていて。
――なるほど。
鈴木 生きていると、どうしても自分と人を比べてしまうことがありますし、最近は特にネットが発達しているので、昔より人と比べやすかったり、自分から比べに行けてしまうけど、そのなかで自分はどう生きていこうかな?ということを書いていて。特に(新型コロナウイルスの影響による)自粛期間があったので、よりネット中心の生活になったときにいろいろと目についたものがあったので、そこから感じたものから出てきた歌詞だと思うんですけど。
――その「いろいろ目についたもの」というのは?
鈴木 例えばSNSを見ているときとか。インスタグラムとかも、綺麗なところを切り取ってるわけじゃないですか。でも、自分は自分のダメなところをいっぱい知っているので、「羨ましいな」っていう気持ちが、いつしか「自分って嫌だな」っていう気持ちに変わってきちゃったりとか。きっと本当は自分しか持っていないものがたくさんあるはずなのに、人と比べてしまって、落ち込んでしまったり。きっと同じように思っている人はいると思うんです。それこそ友達と電話することが多くなって、結構深い話をしたときに「なんだ、結構似たようなことを考えてるんじゃん!」と思うことがあって。もしかしたらファンの方にも、そういう漠然とした不安感を抱えている人がいるかもと思って、そういう人たちに向けて淡々と語るように歌う、優しい曲にしたくて作りました。
――最後は“夜が明けていく”と希望の見える終わり方をしていますが、やはり自粛期間は気持ち的に沈んで考え込んでしまう部分もあったのでしょうか。
鈴木 制作期間でもあったので、マインド的には音楽漬けですごく充実していたんですけど、夜に寝る前とか、ふとしたときに考えていることがこういうことだったんだと思います。だからタイトルも「明けない夜に」になったのかなと思っていて。
――前作のアルバム『Shake Up!』(2019年)に収録されている「あなたが笑えば」も鈴木さんの作詞曲ですが、同じく夜の歌でした。
鈴木 たしかに! 私、基本的に夜型なので、朝の曲が書けないんだと思います(笑)。自分でも歌詞を書いてるときに「夜、多くない?」って思ったんですけど、まあ昼の曲は表題曲でたくさん書いてくださってるのでいいかなと。考え事をしたり、自分と向き合う時間は圧倒的に夜が多いので。
――それとこの曲、ストリングスやピアノなどの楽器と電子音が絡み合ったアレンジもそうですが、A・Bメロがポエトリーリーディングとも言えない独特の語り調になっていたり、不思議な雰囲気ですよね。
鈴木 曲のテーマ的に幻想的な楽曲にしたかったので、ナスカさんに作編曲してもらいました。A・Bメロは元々語るように歌いたいとお願いしていたので、しんとした雰囲気で始まるものにしていただいて。キー自体もいつもよりも低いですし、作詞用に一応シンセメロをいただいたんですけど、ほとんどメロがない感じだったので、ああいう感じにしてみました。私の中では歌詞のない「アァ~♪」って歌っているパートがサビだと思ってるんですよ。それまで溜めていたフラストレーションがどんどん高まってきて、あそこの「アァ~♪」で殻を破るというか、朝日がちょっと見えるようなイメージがあるんです。そこをサビとしてキー設定したので、Aメロとかは自分でもあまり聴かないぐらい低い声になりました。
――そして8月には、『Re:ゼロから始める異世界生活』2nd seasonのOPテーマ「Realize」をリリース。「Redo」以来、4年ぶりのTVアニメ版『リゼロ』とのタイアップ曲ということで、「Redo」を意識したところもあったのでは?
鈴木 プレッシャーは感じていましたし、もちろん繋がりはあるんですけど、引っ張られることはまったくなくて、歌うときに意識する部分はなかったですね。というのも、「Realize」という曲名は「実現する」という意味なんですけど、楽曲の内容自体がアニメにも自分にも沿っていて、歌う前から手応えを感じたんです。スバル(『リゼロ』の主人公)はこの2期のアニメで、1期以上に大きな絶望に遭遇して、腹を括っていく場面があると思うんですけど、それと同じように「Redo」のときは、何も持っていない人が「ここから始めてやる!」という純粋な気持ちでぶつかっていたものが、今回はいろんな人の気持ちや過去から託されてきた自分自身の想いを背負って、ただただ掴みに行く、全然じたばたしていない感じがして。その感覚が自分とすごくリンクするんです。
――というのは?
鈴木 私も今年に環境が変わって、いよいよ本格的に腹を括ってやってやろう!って気合いが入ったところでしたし、パッと見は冷静だけど心の内側がメラメラと燃えている感覚が、この曲とすごくリンクして。レコーディングのときも、自然に入っていくことができて、何も考えなくても歌えるぐらいの状態でした。なのでこのタイミングで『リゼロ』のお話をいただけたのは、自分にとっては運命的だと思えましたね。
――2期のスバルは、すごく覚悟を決めたようなところがありますものね。
鈴木 1期は苦しみながら、もがきながら進んでいく、ギリギリの状態というイメージでしたけど、2期はもうあとには引き下がれない状態で「今度こそは必ず救ってやるんだ!」という一心で動いていて、アニメを観ていてもじたばたあがいているようには見えないというか、心の中が燃えているなと感じるんですよね。
――そのスバルの原動力はエミリアやレムにあるわけですが、例えば今の鈴木さんにとっては何が活動の原動力になっているのですか?
鈴木 難しいですね、これは一つのものとしては言えない気がします。昔なら、幼い頃からの夢を叶えたい一心だとか、歌が好きだからのひと言で片づけられたと思うんですけど、それこそ今は、ファンの方の期待を形にして返していきたい想いもありますし、作家さんやスタッフさんも含めてこれまで関わってくださったいろんな人のサポートなしにここまで来ることは出来なかったと思うので、そういう人たちの想いを背負っているところが、すごく原動力になっているなと思います。最近は自分の「○○をこうしたい!」という気持ちというよりかは、無意識で後押しされている感じがするというか、自然とそういう運びになっている感覚があります。
――今のお話、めちゃくちゃエモいですね。鈴木さんはいろんなものを背負っていることが、はっきりと伝わってきました。
鈴木 多分いろんなポイントを経てきたと思うんですよね。最初は純粋に歌が好きだからだったり、それこそ少し前までは「ここまでやってきたものを無駄にはできない」とか、自分本位なところが強かったと思うんです。それは純粋な気持ちなので別に悪いことではないんですけど、でもそこを経て、今はこういう気持ちに落ち着いていて。スバルにとっての過去の自分から託されてきた想いが、私にとっては過去の自分もそうだし、周りの人からも託されてきた想いであって、それが「Realize」に託されている気がします。今、自分でも言葉にしてみて「あっ、そう思ってたんだ」って感じました。
――だからこそ「Realize」という曲名なんですね。「絶対に実現する!」という強い気持ちが込められていると。
鈴木 はい。みんなで叶えに行くぞ!という気持ちです。
――この曲は、篠崎あやとさんと橘亮祐さんのコンビが手がけていますが、篠崎さんはデスメタルとかエクストリームな音楽が好きということもあってか、相当アグレッシブなサウンドに仕上がっていますね。
鈴木 ゴリゴリですよね。マスタリング作業のとき、実はもっとポップに聴けるバージョンもあったんですけど、今のゴリゴリバージョンのほうに投票してしまったっていう(笑)。こちらのほうがインストだけで聴いても「うわ、気合い入ってるな!」っていう感じがするし、すごく説得力があったので。本当に「炎」っていう感じがしますよね。レコーディングでも、もはや息切れさえ許してくれない感じで、とにかく一心不乱に歌うっていう。もう「無」でした(笑)。ただ、録り終えたときは「今日のレコーディングめちゃくちゃ楽しかった!」という感覚があって、自分の納得度で言うとフルで出し切れました。
――そのシングルのカップリング曲「A Beautiful Mistake」では、鈴木さんが作曲を手がけていますね。
鈴木 「明けない夜に」で作詞をしたので、こちらの曲では作曲をやりたいということで、時期的にライブもなくて制作に集中できる状況だったので挑戦しました。でも大変でしたね、それこそボツがたくさん生まれ、提出期限をちょっと延期してもらい……(苦笑)。「Realize」は音数が多くて豪華な仕上がりなので、こちらの曲はシンプルなバンドサウンドにしたくて、メロディもキャッチーにしたいなと思って書きました。サウンドはゴリゴリ寄りではあるんですけど、ポップな感じになったと思います。
――先ほど話題にあがった「あなたが笑えば」でご一緒された草野華余子さんとの共作で、そのときは華余子さんが作曲、鈴木さんが作詞でしたが、今回は逆に華余子さんが作詞を担当しています。
鈴木 華余子さんにはライブも見に来ていただいて、実は「華余子さんと仲良くなろうの会」ということで、共通のお知り合いの作家さんに繋いでいただいて、プライベートでご飯を食べたこともあるんです(笑)。そのときにお話したときの印象が、すごくエネルギッシュでメラメラしたものを持っている方だったので、この曲のポップさにメラッとしたものを加えてほしいなということで、お願いしました。
――失敗を恐れずトライする勇気の大切さを歌った歌詞ですが、最初にいただいたときにどう感じましたか?
鈴木 リモートで打ち合わせをしたんですけど、そのときに私が「自粛期間のあいだ、こんなに自分が何もできないとは思わなかった。それがすごく悔しい」というようなお話をしたんです。それに対して「それでいいじゃん」っていう答えをいただけたような感覚がりましたね。どんなにミスしても、それ自体がベストアンサーなんだっていう。すごく前向きになれる、スカっとする歌詞でした。
――歌もストレートにガンと届く感じで、「Realize」と「A Beautiful Mistake」は2曲とも心に火をつけてくれる曲になりましたね。
鈴木 2曲とも思いっきり背中を叩かれてるような感覚になれる曲で、このシングルは気合いの一枚になりました(笑)。歌も、最近はあまり細かいことを考えなくなったところがあります。それがいいのか悪いのかは、自分でもまだ判断しかねるんですけど、無駄なものが削がれていく感覚というか、逆に一周回ってすごくシンプルな考え方になってきたなと思っていて。それは歌に関しても、単純にプライベートの生き方に関してもそうなんですけど。裏でいろんな人が支えてくれているからこそ、余計なことは考えない感じになってきましたね。
――そして9月発売のシングル「舞い降りてきた雪」は、TVアニメ『恋とプロデューサー~EVOL×LOVE~』のEDテーマで、“恋とプロデューサー featuring Konomi Suzuki”名義でのリリースとなります。
鈴木 これはカップリングを含めシングル全体が『恋とプロデューサー~EVOL×LOVE~』の世界観にどっぷりつかった作品ということで、フィーチャリングという形になりました。カップリング曲の「Live it up!」も、アニメの劇伴を担当されている加藤裕介さんに書いていただいていて。アニメ自体、主人公は自分の会社を立て直そうと頑張っている女の子で、そこからイケメンキャラクターたちと出会っていく作品なんですけど、その「社会で頑張る女性」という部分が、シングルを通してのコンセプトになっています。
――それは今の鈴木さんの立場ともシンクロするテーマですね。
鈴木 はい、自分でもちょっと戸惑いがあるぐらい、等身大な曲になっています。サビの“どうすればもっと自分に素直になれるの?”というフレーズも、自分だけど自分じゃないような感覚があって。普段なら“なれるの?”なんて歌わないけど、「私、歌っちゃった!」みたいな(笑)。でも「舞い降りてきた雪」は、今回の表題曲3曲のなかでは一番ストレートでシンプルな作りになっていて。(作詞・作曲を担当した)中島卓偉さんにはそういう狙いのもと曲を書いていただいたんですけど、その分、自分の歌で善し悪しが決まってしまう、歌力が試されてる曲になりました。
――ピアノやアコギなどの生楽器をメインにした、冬が似合うロマンチックな曲調ですが、レコーディングではどんなところにこだわって歌いましたか?
鈴木 女性らしい繊細さや強さにこだわりましたね。「Realize」や「Theater of Life」はどちらかと言うと少年っぽくて、私自身も多分そういうところを持ち合わせているからこそ親和性が高くて、意識しなくても寄り添えるところがあるんですけど、こういう女性らしさを出すことのほうが苦手なので、勢いで歌うのではなく、吐息のひとつひとつまで丁寧に歌うことを意識しました。この曲を聴いたとき、もどかしさみたいなものを感じたんですよね。ストレートに胸に響く曲ではあるけど、最初から飛び込める主人公ではないというか。頭では変わりたいと思っているけど、行動がまだできないもどかしさ。それがこの曲の良さだと思いますし、今回のキーポイントでしたね。
――それは歌唱表現の幅を広げるチャレンジにもなったでしょうね。
鈴木 そうですね。曲がストレートな分、歌の表現の余白みたいなものがたくさんあったので。しかも今回は中島さんにディレクションをしていただいたんですけど、今までボーカリストの方にディレクションをしていただく機会はあまりなかったので、すごく勉強になりました。新しい扉を開けた楽曲だと思います。
――この曲の歌の表現は本当に素晴らしくて、特に1番と2番で歌の表情がまるで変わるところがすごくいいなと思いました。
鈴木 そこはまさに歌を録る前から目指していたところで、1番のAメロを聴いた印象と最後のサビを聴いた印象をまったく違うものにしたかったんです。一曲のなかで(曲の主人公が)どんどん成長していく姿を見せたかったので。特に最後のサビの凛々しい歌い方は私の得意分野でもあるんですけど、その分、Aメロのまだ飛び出せない感じにはめちゃくちゃこだわりましたね。この曲は初めての感覚がある曲だったので、本番前に練習としてデモレコーディングもさせてもらったんですけど、それが終わった後、率直に言って「仕上がらない、どうしよう……」ってなってしまって(笑)。だから本番までにすごく練習して臨みました。繊細なところに魅力が光る曲なので、パッと一回聴いて「この歌い方が好き!」という感じではなくて、何回も繰り返し聴いていくうちに「えっ、ここもいい!」ってなるような仕上がりにしたくて。
――歌でドラマがしっかりと描かれていますし、1番と2番で描かれている情景が同じ街並みでも、その見え方が変わるような印象があるんですよね。だんだん明るくなっていくというか。
鈴木 最初は独りぼっちでぽつーんとしてたのが、だんだん街灯に照らされいく感じがありますよね。最初は迷いながら、呆然と「これからどうしよう……」っておろおろしてるような女の子が、最後にはちゃんと足を踏みしめて、雪の中を歩いているような風景が見えて。
――その意味では、ある種、ミュージカル的なところも感じられる曲だと思いました。
鈴木 それはあるかもしれないですね。物語がどんどん発展していくというか。私は元々ミュージカルをやっていたこともあるので、たしかに通じるものはあるのかもしれないです。
――そのカップリングとなる「Live it up!」は、テーマ通りOLを主人公にしたような楽曲ですが、しっとりした雰囲気の表題曲から一転、ディスコっぽい曲調になりました。
鈴木 作品自体がちょっとトレンディドラマっぽい雰囲気があるので、カップリングはディスコ風にしていただきました。表題曲は、会社のなかで大変なことがあったり、強くなれない自分がいたりしながらも「変わりたい!」とまっすぐ乗り越えていく感じですけど、この曲は平日の仕事で溜まったうっぷんを土日に自分の部屋のワンルームで踊り狂うみたいなOLをイメージしていて(笑)。「みんなが知らない私の顔」みたいな解放感をイメージして歌いました。歌詞もTRUEさん(唐沢美帆)にお願いして、ちょっと茶目っ気のある感じになっていて。歌いやすくてレコーディングもサクサク進みました。
――実に多彩な表情の楽曲を楽しめる3作品になりました。この後の予定としては、10月9日にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で有観客ライブ“鈴木このみ Live 2020 ~Single Collection~”を開催予定ですね。
鈴木 今回、3枚連続リリースでアニメタイアップを3曲やらせていただくことになって、自分にとっても「アニメソングを歌うこととは?」ということを改めて考える機会にもなりましたし、これまでの19枚のシングル表題曲はすべてアニメのタイアップをやらせてもらっているので、ここで改めてその気持ちをお届けしたいなと思って。観覧の仕方はガイドラインに沿ったものになりますけど、ライブの熱量はそのままにお届けしたいので、私のアルバム曲までは知らない人にも足を運んでいただけると嬉しいです。
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
●リリース情報
TVアニメ『恋とプロデューサー』EDテーマ
「舞い降りてきた雪」
歌:恋とプロデューサー featuring Konomi Suzuki
9月2日発売
品番:DDCD-0001
価格:¥1,500+税
<CD>
1. 舞い降りてきた雪(TVアニメ『恋とプロデューサー~EVOL×LOVE~』エンディングテーマ)
作詞・作曲:中島卓偉 / 編曲:荒幡亮平
2. Live it up!
作詞:唐沢美帆 / 作曲・編曲:加藤裕介
3. 舞い降りてきた雪(Instrumental) INST
4. Live it up!(Instrumental) INST
TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』2nd Sseason OPテーマ
「Realize」鈴木このみ
発売中(8月26日発売)
品番:ZMCZ-14011
価格:¥1,200+税
<CD>
1.「Realize」(TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』2ndシーズン前半クールseazon OPテーマ)
作詞・作編曲:篠崎あやと、橘亮祐
2.「A Beautiful Mistake」
作詞:草野華余子 作曲:鈴木このみ 編曲:城戸紘志
3.「Realize」(Instrumental)
4.「A Beautiful Mistake」(Instrumental)
TVアニメ『デカダンス』OPテーマ
「Theater of Life」鈴木このみ
発売中(7月29日発売)
品番:ZMCZ-14171
価格:¥1,200+税
<CD>
1.「Theater of Life」(TVアニメ『デカダンス』OPテーマ)
作詞・作編曲:ANCHOR
2.「明けない夜に」
作詞:鈴木このみ 作曲:ナスカ 編曲:the Third
3.「Theater of Life」(Instrumental)
4.「明けない夜に」(Instrumental)
●ライブ情報
鈴木このみ Live 2020 ~Single Collection~
2020年10月9日(金) 開場:18:00/開演:19:00
東京 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
チケット代:全席指定 6,500円(税込)
詳細はこちら
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