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INTERVIEW

2020.09.02

ニューアルバム『Paint it, BLUE』が世界を青く染め上げる!雨宮 天リリースインタビュー

雨宮 天による2年ぶり3枚目となるニューアルバムは、挑戦的な楽曲を多数擁しつつも、全体に通底するテーマ性も感じさせる野心的な快作となった。収録曲選定から本人の意志がふんだんに反映されたというこの新作の魅力を紐解くため、雨宮 天自身の言葉による楽曲解説を交えたロングインタビューをお届けする。

楽曲とじっくり向き合った新境地のアルバム

――今作を聴かせていただいて、まず内容もサウンドも非常に攻めたアルバムであることに驚きました。事前にこういったアルバムを作ろうというテーマを持たれていたのですか?

雨宮 天 候補でいただいた曲の中から自分好みの曲を選んでいったという点ではいつも通りスタートしています。今年の1月から新しいサウンドプロデューサーの角田崇徳さんをお迎えしたのですが、出会ってから私の音の好みをお伝えしていくなかで、角田さん的には私の好きなピアノが主軸の楽曲を多めにしようというテーマはあったと思います。

――今回の制作は最初の選曲から完成までコロナ過の中で行われたのですか?

雨宮 そうですね。今回は情勢的な影響もあって、私の仕事のペースが落ち着いていたことで時間に少し余裕ができまして、これまでやれなかったしっかりしたプリプロの予定が取れたんです。そこでほぼ全曲のおさらいができましたし、アルバム全体のディスカッションも時間をかけて行うことができました。

――選曲の段階からご自身の意見を反映されていったとのことですが、昨今の世の中の影響というか、単純な好み以外に選曲の基準になった要素などはありましたか?

雨宮 それほど大きく変わっていないと思います。私の好みで選ぶと必然的に力強い曲が多くなりますし、アルバム制作時にいつも念頭にあることとして、全体を私の意志で選ばせてはもらうけど、必ず1曲はファンの皆さんに寄り添った楽曲を入れようとは思っているんですよ。だからコロナ禍だからこうしようということは特に考えていませんでしたが、結果的にこのアルバムの「強さ」のコンセプトに繋がったのだと思います。

――ちなみに「ファンの皆さんに寄り添った曲」というのは今回だとどの曲にあたるのですか?

雨宮 「Next Dimension」ですね。ほかの曲もすべて強い個性を持っていますが、この曲は特に「近所の幼馴染ヒロイン」的な王道キャラクター像のイメージを持って選んだ曲です。

――以前TrySailとしてインタビューさせていただいた際に、「自分個人として歌うのか、役者として演じて歌うのか」という質問に対して、雨宮さんは「自分自身のクセが強いので、個人で歌に感情移入はあまりしない」とおっしゃっていました。「自分の思考が独特なので、普遍的なラブソングなどに共感はあまりしない」と。今回のアルバムでは、ご自身の気持ちに寄り添う楽曲はあったのでしょうか?

雨宮 今回も私の気持ちに寄り添うというよりかは、頭の中にキャラクターを作って、そのキャラがどう思っているかという感覚で歌うことが多かったですね。もちろん私自身が共感も理解もできなければ歌うのは難しいので、そこは歌詞などを調整していただくこともありますが、楽曲の全部を自分が共感できる前提で作っていくと幅がものすごく狭まってしまうので。声優として演技の仕事と同じ感覚で、このキャラクターの価値観ならどう捉えるかなと考えました。アルバムの1曲ごとに私の演じるキャラクター像をメモしてあって、身長は170cmぐらいだとか、部族のシャーマンをやって15年目だとか(笑)。そのメモをもとにスタッフの方と曲のイメージを共有していきました。

楽曲イメージの土台となった「雨宮メモ」

――俄然全曲についてお話を聞きたくなりました(笑)。ではアルバムの新録曲について伺っていきましょう。まずはリード曲となる「Queen no’ cry」について、こちらは最初からリード曲のつもりで選ばれたのですか?

雨宮 最初はまったくそんなつもりがなくて、制作の中盤ぐらいでリードとして浮上してきました。

――この曲がリード曲として主軸にあると、まさに「強いアルバム」という印象を受けます。初めて聴いたときの印象はいかがでしたか?

雨宮 この曲の第一印象は……私は普段洋楽を全く聴かないのですが、そんな私がイメージする「洋楽っぽい曲」だと感じました。特に冒頭のコーラスはとても頭に残るメロディだし、私がこれまで好きになってきたピアノやストリングスの多い曲や、ハードなロックの曲とは毛色が違うんですが、すごく惹かれた曲でした。

――いわゆるスタジアムロックなどと呼ばれる、ミドルテンポの重たい曲ですね。聴いているとまさしく大会場で大勢の観客を鼓舞する雨宮さんが思い浮かびました。リード曲にこの楽曲が置かれたことで、アルバム全体が強い印象になっているのは確かだと思います。レコーディングにあたり、この曲ではどんなキャラクターを思い描いていましたか?

雨宮 手元のメモには「荒いかっこよさ、筋肉質で身長170㎝くらい、化粧しない武闘派」とあります(笑)。

――思ったより具体的ですね(笑)。

雨宮 私がこのメモを書いたのはレコーディングよりも前の段階だったので、多少変化しているとは思いますが、存在からしてデカめの強い女性をイメージしてましたね。「私は私の道を行く」的な、絶対に己の道を譲らない人物像ですね。

――実際に歌ってみて、どんな楽曲に仕上がったと感じましたか?

雨宮 今までにない力強さを感じました。これまでの力強さって「確固たる意志で真摯に進む」みたいなイメージだったんですが、この曲は少し違って、手元のメモには「粗く荒い力強さ」と書いてあるんですよ。今までは例えば目の前の敵を日本刀でズバッときっちり倒していくような感覚だったんですけど、今回はバズーカで敵の基地ごと吹き飛ばすというか。「全員まとめてやっちまえ!」みたいな、そういう荒さが自分の表現として加わったなという感触があります。

――世の中的にしばらくは難しいのかもしれませんが、ライブで聴いてみたい曲ですね。いわゆるアニソン的な盛り上がりとは違った、猛々しい盛り上がりが見られそうな予感がします。

雨宮 そうですね。たぶんコールとかは入れる場所がないし、ペンライトが振られてる光景もイメージしにくいんですが、大きめのステージで観客全員に叩きつけるようなライブが似合いそうな曲だなと思います。

――続けてアルバム新録曲のキャラクター像を伺っていきましょう。曲順を少しさかのぼって、「Fluegel」についてはいかがですか?

雨宮 「Fluegel」は……メモには「集落の未来を背負うシャーマン、断崖絶壁で神と会話」と書いてあります(笑)。壮大で荒涼とした世界観の中で、明日の命が当然じゃない状況を生き抜かなくちゃいけないので、もう祈るしかないんですよ。このキャラは自分が武器を持って戦うわけではないのですが、説得力のある強い祈りをもって歌う巫女みたいなイメージですね。

――一つの楽曲に対する想像力がものすごいですね(笑)。

雨宮 これも日々の声優業の賜物だと思います(笑)。

――次は曲順的には「Catharsis」ですね。

雨宮 この曲はアルバムでの役割は「小悪魔セクシー」ですね。キャラクター像は「ショッキングピンクと黒、短いパンツにニーハイブーツ、自信家で気分屋、アイメイクしっかりめ」とメモしてあります(笑)。

――異性を惑わす気満々ですね。

雨宮 そうですね。「勝手気ままに生きてるだけなのに、なんか男子が釣れちゃうな~」みたいな。でも最初に「ヤケドするよ」って言ってあるんだから、思い通りにならなくても逆恨みはしないでね、という猫のような女性をイメージしました。声色はセクシーなだけじゃなく可愛さも混ぜて、特にこの曲はセリフっぽい歌詞も多かったので、本業を活かして頑張りました。

悪戯心が生んだ楽曲「火花」

――続いては初音源化となる「火花」について。こちらの曲は過去にライブなどで歌われていましたがレコーディングは今回初とのことで、収録に至った経緯などからお聞かせください。

雨宮 そもそもの発端として私のカバー曲ライブ“雨宮天 音楽で彩るリサイタル”というイベントがありまして、その東京公演が終わったぐらいの時期に気分が乗って作曲のモードになったんです。実は昔から趣味で半年に1回ぐらい、気分が乗ると作曲をしていたんです。

――どこかで発表するとかではなく、単なる趣味で作曲をされていたと。いつ頃からなんですか?

雨宮 たぶん最初は中学か高校ぐらいだったと思います。当初はごくたまにという周期だったのが、この仕事を始めてからもその延長でなんとなく続いてた感じです。

――作る曲は歌ものですか? それともインスト?

雨宮 どっちもありました。音楽理論に詳しいわけではないので、ふわっとした感じで作っていて、ワンフレーズだけで飽きちゃったりもしていたので、仕事として活かそうとは思ってなかったんです。それが“リサイタル”の東京公演が終わった頃に作りたい気持ちが湧いてきて、しかもきっかけが“リサイタル”だったので、昭和歌謡な雰囲気の曲を作りたいと思って。最初は鼻歌を録音したりしていたのが、次の大阪公演までに1番が出来上がりそうだぞとなって、だったらちょっとした悪戯心で、大阪のステージで急に私が自作曲を1番だけでも披露したらみんなびっくりするんじゃないかなと。“リサイタル”は私が好きなことをやる自分のためのイベントだと公言していたので、そういうサプライズがあってもいいだろうと思って歌ってみたところ、こちらの想定を超えてみんなが喜んでくれて。会場での反応も大きかったし、ファンレターやラジオへのメールでも音源化してほしいというお便りをたくさんいただいたので、今年1月の幕張ライブ用にフルバージョンを作ろうとなり、そこから今回のアルバムに収録させていただくという流れになりました。

――最初は悪戯心で作られた曲が、周りのいろいろな人の手によって作品になっていく過程をご覧になったということですが、感想はいかがでしたか?

雨宮 作詞作曲というとなにやらすごいことのように聞こえますが、私としては当初こんなつもりじゃなかったんです(笑)。でも恐縮する気持ちもありつつ、曲を形にしてくださるスタッフの方々が私の「もうちょっとピアノを目立たせたい」とか「ここのコードをアンニュイな雰囲気にしたい」といった希望を逐一聞いてくださったので、とても満足のいく出来になりました。

――ということは作詞作曲の時点でかなり具体的なアレンジまで頭の中で鳴っていたのですか?

雨宮 そうですね。自分の頭の中にはイメージがあったのですが、とはいえピアノ以外の楽器のことについてはよくわかっていなかったので、とにかく自分の頭で鳴っているピアノの音をもとに伝えていくような感覚でした。

――アルバムを通して聴いてみても、ハイクオリティな楽曲の中でも遜色がないというか、悪戯のクオリティではないと感じます。歌詞はどのように書かれていったのですか?

雨宮 歌詞は……あの、作曲は昔から趣味でやってきたものの、作詞はほとんどしてこなくて。というのも、私は曲にのせて伝えたいことが浮かばないんです(笑)。でも曲が仕上がってきて、ライブでやるとなったらピアニストの方にピアノを弾いてもらってインストでおしまいというわけにはいかないので、伝えたいことがない私がどうしたら作詞ができるのかと考えた結果、日常のなんでもないことや楽しかった出来事をちょっとずつ言い換えて構築していったら歌詞になるんじゃないかと思って、それをヒントに作詞していきました。

――ということはこの歌詞はご自身の体験がもとなっていると。

雨宮 実はこの曲の歌詞は明確に「とある夏の思い出」を元に作っているのですが、謎解きというか、答え合わせのタイミングをいつにしようか考えている最中なんです。時期が来たらどこかで皆さんに種明かしをしたいと思っています。

――そういった仕掛けを抜きにしても、ダブルミーニングや言葉遊びがきいていて単純に面白い歌詞ですよね。

雨宮 元々言葉遊びとか、日本語や漢字が好きなので、歌詞を書くときも字面を目で見たときに綺麗なものにしたいと思っていました。1番で“一粒”となっているところを2番では“二度(ふたたび)”と数字合わせにしている箇所とか、韻を踏んでいるところとか、日本語の綺麗な文面を目指した意識はあります。

――今後も作詞作曲をご自身の活動のなかで続けていく気持ちはありますか?

雨宮 そうですね、この「火花」を作ったことへの皆さんからの反応が嬉しかったので、こんなに喜んでもらえるなら頑張りたいです。単純に褒められたら嬉しいですし、しかも悪戯もできるなんて一石二鳥だなと(笑)。

――でも一度やったら次から疑われますよ(笑)。また何かの出来事をもとにしてるんだろうって。

雨宮 でももうそれでいいかなって(笑)。悪戯方式で曲を作っていこうと。でもこの曲は“リサイタル”のために作ったからこういった形になったので、次に曲を作るとなったらその時期の自分の目標とか、イベントなどに寄せていくことになると思います。

――根がエンターテイナーなんですね。人を驚かすことが好きというか。

雨宮 すごく良い言葉に言い換えていただいてますが、本当にただの悪戯好きなんです(笑)。

ファンへ向けたメッセージとしての「Next Dimension」

――収録曲のお話に戻りますが、雨宮さん自身としてはこのアルバムの軸になっている曲はありますか?

雨宮 そうですね、さっきもお話しした「Next Dimension」はアルバムの中でも大切な位置を担ってくれていると思います。ほかの曲が私の好みで選んだのに対して、この曲は皆さんに届くようなものをという思いで選んでいるので。それから、ほかの曲はイメージが二次元キャラクターの世界観なのに対して、「Next Dimension」は三次元的な、近い距離感というのもあります。「Queen no’ cry」とは曲の雰囲気は違うんですが、こういうご時世の中でみんなを支えたいという部分は通じています。「Queen no’ cry」はみんなを引っ張るイメージで、「Next Dimension」はみんなの背中を押すといった対比で、アルバム全体のコンセプト的に大事な役割を担う曲になったと思います。

――引っ張るのか背中を押すのかという違いはあれど、結果的にリスナーがアルバムから受け取る雨宮さん像に共通して繋がるというか、象徴的な楽曲になっていますね。

雨宮 そうですね。ほかの曲は「私、勝手に進んでるから勝手についてきて」みたいな感じなんですけど、「Next Dimension」だけは「一緒に進んでいこうね」みたいな雰囲気があって。他の曲は低音を響かせて強めに歌って説得力を持たせているんですが、この曲は高音のキラキラした成分を強調するような意識で歌っています。この曲があることでアルバムに込めた意味的にも、サウンド的な立ち位置の面でもバランスを良くしてくれている大切なピースだと思います。

――全体バランスやリスナーのことを考えたこの曲がアルバムの軸になるというのは面白いですね。

雨宮 実はこの曲の歌詞を初めて読んだとき、今まで私が歌ってきたものとあまりに違いすぎたので戸惑ったんです。これまでは世界観も大きかったし、どこか抽象的でしたが、突然三次元でリアルな距離感になったので、散りばめられている言葉にも悩んでしまって。レコーディングが終わるまで自分がこの曲の距離感を掴めているかわからなかったんですが、サウンドプロデューサーの角田さんが「これで大丈夫」とはっきり言ってくれたのは大きかったです。信頼とジャッジを委ねて臨むことで、自分の中にない感覚を取り入れて新しいものができていったので、この曲はアルバムの中でも大切ですし、私の中でも成長と新しい出会いをもたらしてくれた曲でもあります。

――完成した1曲を俯瞰的に聴いてみて、感想はいかがでしたか?

雨宮 完成版を聴いて、すごく腑に落ちましたね。正直な話をすると、レコーディングの段階まで歌詞が自分の中で解釈しきれていない感覚が残っていたんです。でもこの歌詞が等身大で寄り添うような距離感であってくれたからこそ、私もこういう歌い方を発見できたのかもとできあがった曲から感じられて。この歌詞に救われたというか、自分の幅を広げてもらったような感覚があるんです。だからレコーディングが終わって好きになったという珍しい曲ですね。

――ちなみにこちらは「歌キャラクター」としてはどんなイメージでしたか?

雨宮 私のメモによると、「白、正統派ヒロイン、近所の幼馴染」ですね。「みんな大好き王道曲、希望的で優しめな歌詞のイメージ、切ないけど前向きな旅立ち」とも書いてあります。

アルバム全体を見渡す雨宮 天の視点

――キャラクター像もですが、アルバムにおける曲の役割も設定するんですね。

雨宮 そうですね。アルバム全体において、それぞれの曲にちゃんと役割を持たせたほうが結果的にバランスが良くなるんじゃないかと思っています。私の好みだけで突っ走ると非常に偏った内容のアルバムになりうるので、そういうことも考えてメモを作ってます。

――とても論理的な物事の進め方ですね。スタッフとアルバムについてのディスカッションをする中で、意見がぶつかったりしたことはありましたか?

雨宮 今回はそれほどなかったと思います。私が「こういう考えでこうしたいです」と話したら納得していただけたり、そもそも最初から同じ意見なことが多かったので、とても順調に進みました。異なる意見が出てもお互いに説明を聞くとすぐに納得するので、サウンドプロデューサーにも私も理論的な作り方をするからこそ、話せばわかるというか、ぶつからずにやっていけたのかもしれないです。

――その考え方で作っていくと制作がスムーズに進みそうですし、このアルバム自体、1曲ずつがパンチの利いた楽曲揃いなのにも関わらず、トータルで聴くと非常にまとまりを感じます。これは雨宮さんやサウンドプロデューサーが完成像が見えていたからこその結果なのではないでしょうか。

雨宮 私は小心者で、自分に自信があるタイプではないので、感覚的でありつつも論理に頼っているというか。自分の好きなことだけをして独りよがりで終わるのは最も避けたくて、常に受け取った人がしっかり満足してくれるものを届けないと、ただの趣味の自主制作CDみたいになってしまうので。プロとして周りの方を巻き込んでやらせてもらう以上は、理論的というか気持ちが神経質になるところがあるのかもしれないです。

――自分の直感に自信がないからこそ、理論で説明ができるように癖がついていると。

雨宮 その通りです。でもそのかわり、意見がぶつかる話し合いでも相手から論理的な説明がなされて、自分が納得すればそこは委ねようと決めています。

――アルバムは2年ぶり3枚目となりますが、過去の作品と作り方が変わった部分はありますか? 理論的な進め方というのは以前からされていたのでしょうか?

雨宮 理論をしっかり構築して説明できるようにしておくというのは、音楽活動をする前から、自分の人生の根っことしてやってきたと思います。でも今回は本当に偶然、新しいサウンドディレクターとの出会いと、コロナ禍で自分の時間が持てるようになったという時期が重なったことで、過去のアルバムよりも丁寧に一歩ずつ進められたというのはあると思います。これまでは他の仕事と並行して、ライブもあってイベントもあってという中での作業だったのが、今回は1個1個の要素をしっかり確認しながら意見をすり合わせて作れた感触があるので、これまでで最も丁寧に作れたアルバムだと思っています。

――その結果完成したのがこの荒くれたアルバムというのは面白いですね。

雨宮 たしかに(笑)。小心者とか丁寧にとか言ってるのに。

自分の弱さを知る者へ贈る、渾身の新作

――そして曲順的には新録曲は「蒼天のシンフォニア」まで進みます。

雨宮 この曲の役割は「アニソン王道系、雨宮天王道系」ですね。キャラについては、「白と金の洒落た甲冑、寿命などない、翼生えてる、魔法が当たり前の異世界でも最高クラスの強さ、ヴァルキリー」とありますね。

――説明だけ聞くと子供の書いた夢ノートみたいですね。

雨宮 いやほんとですね(笑)。この曲では品格のある雰囲気と、ザ・アニソン的な力強さという最初に抱いた印象をそのまま大切にしました。

――そして最後の収録曲が「雨の糸」。

雨宮 「雨の糸」は人ならざるものというか、ヴァルキリーよりもさらに高位の、女神とか宇宙みたいな形のない概念的存在というか、すべてを超越して許しましょうみたいな包容力と母性のある人物像ですね。だからこの人というか曲に関しては具体的な見た目のイメージメモはなくて、曲の役割としては「癒し」ですね。

――今回インタビューするにあたって、この「雨の糸」という超越した雰囲気の楽曲にいったいどうやって感情移入して歌ったのかお聞きしたいと思っていたのですが、楽曲ごとのキャラ設定や役割のお話を踏まえると、非常に納得できました。

雨宮 ただ正直なところ、私は母性的というか包容力というものが自分には備わってない部分だと思っていて、過去にそういうキャラクターを演じるときに苦労したりもしてきたので、この曲は自分からとても遠いところに位置する人が主人公ということで、何回も聴き直しながら納得のいく歌を探って進めていきまして、精神的にいちばんエネルギーを使った楽曲でした。

――曲調とも相まって癒されるというよりも、この曲が締めくくりになることで、とても良い意味で「どんな気持ちで聴き終えたらいいのかわからないアルバム」になっていると感じました。その感情を探るためにもう一度最初から聴こうと心が動くので、非常にループし甲斐のあるアルバムだと思います。同時にアルバム全体からは強いメッセージ性も感じますが、このアルバムをどんな人に聴いてもらいたいですか? 想定されるリスナー像のようなものはあるのでしょうか?

雨宮 結果的には「あらゆる人に」と言いたいんですが……自分の何らかの弱さを自覚している人に聴いてもらって、何かを感じてもらえたら、同じ弱き者としてとても嬉しく思います。私の音楽というか、私の活動は全体的にそんな感じなのですが、実はすごくビビりで弱い私が、ファンの皆さんからの応援をもらったり、ときには見栄を張ったりして、強さを生み出せる要素をすべて詰め込んでどうにか作ってるので……とはいえ弱さを隠すつもりもないので、私と同じように、弱さを知っている人に届いてくれたら同類として嬉しいです。

――最後に読者へメッセージをいただければと思います。

雨宮 今年はこれまでにないご時世になってしまって私も戸惑いは大きいですが、そんななかでも公式YouTubeチャンネルを開設したり、こんな状況だからこそできるやり方を模索しつつ活動しています。自分の時間自体は少し持てるようになったので、音楽と向き合うチャンスだと思い、アーティストとしての自分を高めていきたいと思っています。アルバムも含めた今後の音楽活動を楽しみにしていただければ嬉しいです!

INTERVIEW BY 青木佑磨(学園祭学園) TEXT BY 市川太一(学園祭学園)


●リリース情報
『Paint it, BLUE』
9月2日発売

【完全生産限定盤(CD+DVD)】

品番:SMCL-670~672
価格;¥8,000(+税)
スぺシャルジャケット仕様

【初回生産限定盤(CD+Blu-ray)】

品番:SMCL-673~674
価格;¥4,000(+税)

【通常盤(CD)】

品番:SMCL-675
価格;¥2,818(+税)

<CD>
01. Paint it, BLUE -overture-
作曲:荒幡亮平
02. Fluegel
作詞・作曲・編曲:塩野 海
03. Defiance
作詞:TOM 作曲・編曲:中野ゆう
04. Catharsis
作詞:上坂梨紗 作曲:NA.ZU.NA 編曲:ArmySlick
05. Queen no’ cry
作詞:森村メラ 作曲・編曲:アッシュ井上
06. VIPER
作詞・作曲・編曲:塩野 海
07. 火花
作詞・作曲:雨宮 天 編曲:荒幡亮平
08. Next Dimension
作詞:大森祥子 作曲・編曲:Saku
09. PARADOX
作詞:藤原優樹 作曲:編曲:トミタカズキ
10. Song for
作詞・作曲・編曲:塩野 海
11. 蒼天のシンフォニア
作詞:アッシュ井上・しらゆき美優 作曲・編曲:アッシュ井上
12. Regeneration
作詞:KOUTAPAI 作曲・編曲:saku
13. 雨の糸
作詞:上坂梨紗 作曲:Franz Liszt・川崎里実 編曲:家原正樹

<DVD>
「5年間を振り返って」
2014年のCDデビューから5年間の結晶である幕張ライブに至るまでの活動の過程のドキュメントを約68分におよぶ長時間収録。貴重な未公開映像も数多く収録!

<Blu-ray>
リード曲「Queen no’ cry」のMusic Videoと、このアルバムのジャケット撮影・MV撮影のドキュメントとなる「Visual Making of Paint it, BLUE」をブルーレイで高画質収録。収録合計約24分。

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