KOTOKOのメジャーデビュー15周年イヤーを追ったこの特集では、彼女という稀代のシンガーの歩みを多角的に取材してきた。その締めくくりであるこのロングインタビューの後編。ついに発売された待望の10枚組・134曲のヒストリカルなコンプリートCD BOX『The Bible』の注目ポイントや「新曲」の存在、そしてこれまで積み重ねた膨大な作詞スタイル、そして「生涯現役」をうたう彼女の今後への思いをじっくりと語ってもらった。
本当に天職を得たという思いです
――このBOXを改めて見ると、作詞家としても多作だなと感じます。KOTOKOさんの作詞における方法論やタイトなスケジュールの中で作る工夫を教えて下さい。
KOTOKO 多くの場合、楽曲が先にあるのでそこに歌詞を付けるという流れになります。そこでゲームのシナリオや絵を見ながら曲をずっとループして聴いていくと、あるときパッとリンクする瞬間が来るんです。それが来るときまで繰り返します。その間は寝食を忘れて、1日か2日間作詞作業に没頭します。それで書き始めたら数時間で仕上がるのですが、そこまでのタイミングがいつになるかは作品によってまちまち。たくさん資料をいただいたときには長くかかるし、少ない資料でもそれも繰り返し見て繰り返しイメージしていきます。
――キャッチしやすい作品の傾向とか楽曲のジャンルはありますか?
KOTOKO それは特にありませんね。本当にどれも好きです。私は昔から小説家になりたかったぐらいなので、物語を読んだり妄想したりする大好きなんです。たっぷり資料があるような作品だと没頭できるし、ないものはないなりに私がストーリーを作るみたいな感じでできちゃうので、どんなジャンルでも楽しめてましたね。ダークな世界観の作品の場合、シナリオではなく世界観の冒頭部分だけを資料としていただく事が多いので、そこから妄想して歌詞に落とし込んで、こういうシーンがあるんじゃないかなって想像で膨らませて書いていくのも楽しいです。いわゆる泣きゲーと呼ばれる作品の場合はシナリオをじっくり読ませていただいて、半泣きになるくらい没頭していき、それをいかに短い歌詞の中で実現できるかを考えていく作業で、これも楽しいんですよね。
――歌詞を書いていて難しいと思ったことは?
KOTOKO それもないんですよね。歌詞に落とし込む作業のすべてが楽しいです。最初は歌手になりたくてI’veさんの扉を叩いたのですが、主題歌のお仕事で「歌詞も書いてみない?」と言われたことが私にとっては本当に天職を得たという思いです。これは小説家とも違う、元々ある題材を短い歌詞にまとめるという作業で、それでいてクリエイティブな仕事という、ほかにはない仕事なんですよ。ユーザーさんも作品に対する愛情がとても深いですし、生半可な仕事だと叱られてしまうので、私も本気で作品と向き合ってユーザーさんが絶対に納得してくれるものでないとダメだと思っていますし、ゲームをプレイし終わったあとも、行きていくなかで何かに役立ててもらえるような楽曲になればという意識で、曲と歌詞と両方を大事にしなければと思っていつも書いています。
――そうして歴史を積み重ねたこの10枚組BOX「The Bible」の注目ポイントについて教えて下さい。
KOTOKO I’veにいたときの楽曲も本当にたくさん含まれているのですが、独立して以降の活動が作家さんやメーカーさんが多岐に渡りすぎて、応援してくれている人でも追いきれていない方が多いと思うんです。そんななかで齋藤真也さんや音楽制作集団・solfaさんとの出会いが私の中で大きくて、この『The Bible』の中でもたくさん書いていただいています。2011年からの第2期KOTOKOの音楽を支えてくれた音楽家さんたちなので、それからの音楽の変化も今回は一つのパッケージに詰まっているので楽しんでほしいなと思います。
――こうして10枚組になるとKOTOKOさんの変遷も追えるわけですね。
KOTOKO はい。ディスクは年代ごとにまとめていて、各ディスクのカラーを表してるような楽曲を1曲目に持ってきているのでディスクごとの雰囲気も楽しんでほしいですね。ディスク番号も年代ごとに時代を追っているので、この年代はこういう曲が多かったんだよなぁとか、この年代はこういうことにチャレンジしていたなと歴史を辿っていただけると嬉しいです。この時期、電波ソングがやたら多いなとか(笑)。
――ちなみに、ディスク10の最後の曲の「言弾-KOTODAMA-」は新曲ですか?
KOTOKO これは完全新曲です。実は今後発売される、とある私に大変縁が深いシリーズの最新作の主題歌で、発売日が未定にもかかわらず、メーカーさんのご好意により今回先行して収録させていただけることになりました。
――ホントにコンプリート感がありますね!
KOTOKO ディスクごとにサブタイトルで年号が書いてあるのですが、最後のディスクだけ【2017.03~2020年…】と未来までとなっているんです。現時点で未発表の曲は「言弾-KOTODAMA-」と、「All right!!」という、これは2020年7月発売予定の『まいてつ Last Run!!』というゲームソフトのオープニング曲のなかの1曲です。
――10枚組ですから、歌詞のブックレットも膨大ですね。
KOTOKO ブックレットそのものが詩集みたいになっていますね。校正だけでも大変でした(笑)。これだけの量があると本当に数日間にわたり、スタッフからも数々の質問をいただきました。「こう聴こえるんですけど、表記はどうなってますか?」とか。私も一生懸命思い出しながら、一つひとつ答えていきました。ライブでもたくさんやってるし、先程言ったように自分でもよく聴いていてたんですけど、ここまでまとめて集中して聴く機会もありませんでした。頑張って完成させたブックレットなので、改めて音源を聴きながら歌詞も読み込んでいただきたいですね。裏話として、誤字を直しています(笑)。長いファンの方からよく指摘されていたのですが、「Change my Style」の歌詞で、“馬子にも衣装”という部分が「孫」になっていたんです(笑)。これまで直す機会がなかったのですが、メジャー流通で出すにあたってこれはさすがに間違いを認めざるを得ないなと思って、今回直しました(笑)。
――先程、詩集という言葉がありましたが、今ではそのゲームを手に入れるのが難しかったりする作品も、KOTOKOさんが受け取った思いを歌詞にしてこうして残してくれたことで、新規リスナーもゲームの要素を感じてもらえると思います。
KOTOKO そうですね。ゲームが長編なら、主題歌は短編のような感じのようにリンクさせているので、当時ゲームをやってた人にとっては懐かしく、プレイできなかった年代の方も改めて聴いていただくことで、思いを馳せていただくのもいいのかなと思いますね。
――また、美少女ゲームシーンから離れていた方にとってはその間の歴史を埋める意味で一気に新作が出たかのように楽しむこともできそうです。
KOTOKO 本当にありがたいことに、エゴサーチすると、「ディスク5までは曲名分かるけど、それ以降が分からなかったから、この期間ゲーム離れしていたんだな」といったことを書いてくださる方もいて、そうした方でもこのBOXの情報に触れてくれたんだなと思うと嬉しいです。これを機にまた改めて聴いてみようかなと思っていただけると本当にありがたいですね。
――昨年のライブで「生涯現役」を宣言されて、今年は体を鍛えることをモットーとされているそうですが、今後アーティストとして年齢を重ねていくことについてどのように考えていますか?
KOTOKO 最初にお話したように、デビュー前は焦っていたり、できるだけ歳をとりたくないという思いのなか、時間が過ぎていくことに貪欲で、それゆえの焦りもありました。メジャーデビュー10周年を迎えたときはまだそれが残っていた気がします。10年って、ベテランのように言われることがある一方で、自分の中ではあっという間という気分があったから、それに抵抗感があったんです。先輩先輩って言われることに対しても、「同じステージに立ってるんだから別に、先輩かもしれないけど同じライバルじゃん」って。それは後輩たちに対してもリスペクトしてるからこそ持ち上げられると気持ち悪いっていうのがあったから、「私はまだまだベテランじゃない!若手の一員です」みたいな無駄なあがきをしていたんですよ(笑)。私は「挑戦者」なんだっていう言葉を声を大にして言ってたんですよね。今現在、15周年が過ぎようとしてますが、私の精神的には常に何か目標を掲げてそこに対して突き進んでいきたいという意味で、「挑戦者」であることに対しては変わりはないと思います。ただ、15年にもなると“リスアニ!LIVE”さんや他のフェスで一緒にステージに立つ皆さんとはやっぱり年月が違うなと感じることもあって、そこに対して変に抗う必要ないんだなって思うようになりました。もうもうそろそろ、そうやって嫌がることを止めなきゃという覚悟もできてきたというか。そこはもっと余裕をもって堂々とした気持ちで「先輩ですが何か?」ぐらいの気持ちで、もっと後輩に対しておおらかに接してあげることで、自分も成長できるだろうと。その意味で10周年と15周年時では気持ちの面でも少し変わってきたんですよ。2020年は周年記念ではない1年が待ってますが、この1年間を乗り越えたことによって少し大人になれたと思います。「大人になる」っていうことを目標としていること自体が子供っぽい。大人なのは当たり前。大人なりにこの経験値をもっと増やして、もっと後輩に色々伝授して行けるようになりたいし、そのなかで自分も成長していきたいし、両方できなきゃ大人としてダメだなと、そんな風に思えるようになりました。
Interview & Text By 日詰明嘉
CD-BOXの発売を記念して4月21日より5日間、初回限定盤の特典映像より「Face of Fact」「Leaf ticket」「Imaginary affair」「jihad」「さくらんぼキッス ~爆発だも~ん~」の5曲のライブ動画がKOTOKO Official YouTube Channelにて期間限定公開中!
KOTOKO Official YouTube Channelはこちら
●リリース情報
KOTOKO’s GAME SONG COMPLETE BOX
「The Bible」
4月21日発売
【初回限定盤(10CD+Blu-ray)】
品番:GNCA-1568
価格:¥17,000+税
<Blu-ray>
・KOTOKO Major Debut 15th Anniversary Tour ”FifteenTales” IN TAIPEI 2020.1.4(sat) 花漾Hana展演空間[GAME SONG PART]
・KOTOKO SPECIAL INTERVIW
【通常盤(10CD)】
品番:GNCA-1569
価格:¥15,000+税
※BOX&ブックレットには、うみこ先生、菊池政治先生、恋泉天音先生がKOTOKOをイメージして描いた描き下ろし版権を使用
<DISC 01>
M01 Close to me…
M02 涙の誓い
M03 sensitive
M04 想い出は風の中で・・・
M05 Time heals all sorrows
M06 flow ~水の生まれた場所~
M07 YA・KU・SO・KU
M08 Magical Sweetie
M09 Mirabilis
M10 I pray to stop my cry
M11 君よ、優しい風になれ
M12 Feel in tears
M13 Heart of Hearts
<DISC 02>
M01 resolution of soul
M02 遮光~かげり~
M03 同じ空の下で
M04 CAVE
M05 Now and heaven -KOTOKO ver.-
M06 Change my Style~あなた好みの私に~
M07 あちちな夏の物語り
M08 went away
M09 Bright wings -solo ver.-
M10 Wing my Way
M11 Crossed Destiny
M12 Time rolls on…
<DISC 03>
M01 Face of Fact
M02 I-DOLL~Song for eternity~
M03 amethyst
M04 Just as time is running out
M05 unsymmetry
M06 Undying Love
M07 ずっとそばに…
M08 さくらんぼキッス ~爆発だも~ん~
M09 Cream+Mint
M10 HALLUCINO
M11 rime
M12 Do you feel Loved?
M13 Lupe
<DISC 04>
M01 はじめまして、恋。
M02 きゅるるんKissでジャンボ♪♪
M03 Jumping Note
M04 Absurd
M05 Boundary Line
M06 Abyss
M07 We Survive
M08 oblivion
M09 Princess Bride!
M10 ねぇ、…しようよ!
M11 らずべりー
M12 cross up
M13 Sledgehammer Romance
M14 Imaginary affair
<DISC 05>
M01 allegretto~そらときみ~
M02 お*ま*ま*ご*と
M03 Fusion Star
M04 Mighty Heart~ある日のケンカ、いつもの恋心~
M05 wind of memory~記憶の風~
M06 Fatally
M07 Leaf ticket
M08 loose
M09 原罪のレクイエム
M10 a piacere
M11 Lilies line
M12 Princess Brave!
M13 ↑青春ロケット↑
<DISC 06>
M01 常識!バトラー行進曲
M02 I need magic~解けないマジ☆キュン♪~
M03 Swift Love~健全男子にモノ申す~
M04 決断のentrance
M05 Ideal Forest
M06 蒼-iconoclast
M07 茜空~それが僕らの世界だった~
M08 U make 愛 dream
M09 ユメミボシ★boom!boom!
M10 Stars Biscuit
M11 Restoration~沈黙の空~
M12 room
M13 fickle
M14 bumpy-Jumpy!
<DISC 07>
M01 thyme
M02 未来自画像
M03 幻想の宝石
M04 みらくる☆みるきーうぇい
M05 Mimosa
M06 碧羅の天へ誘えど
M07 blossomdays
M08 jihad
M09 Pray’s Color -Link-
M10 Pray’s Color -Lost-
M11 *bloom*
M12 Crystal moment
M13 Presto
<DISC 08>
M01 Unite+reactioN
M02 Flower!!
M03 桜舞う坂を、君と歩く
M04 Love mission!!~なんだ。ただの恋かw~
M05 Floating up
M06 あさがお
M07 U
M08 Teller of World
M09 soupir d’ange
M10 monochrome
M11 Largo
M12 リスタート
M13 WING OF ZERO
<DISC 09>
M01 Blooming!!
M02 Art as ♡
M03 恋ひ恋ふ縁
M04 Fancy Game!?
M05 ゆらふわ Sunny day
M06 ruin
M07 恋する森のfairy tale
M08 きらめく乙女
M09 そのハート、危険物につき取り扱いChu♡意!!
M10 Reboot oN/↓0
M11 affection
M12 Sign of Suspicion
M13 TRUE-BLUE
M14 Adolescence Locator
M15 Bum-out!!
<DISC 10>
M01 die or dice?
M02 XXX-revolt
M03 桜ひとひら恋もよう
M04 One Small Step
M05 エリカ
M06 月下流進
M07 Instincts Answer
M08 REFOCUS
M09 新緑のユートピア
M10 UNDERWORLD HOLOGRAPHY
M11 All right!!
M12 real-Reality
M13 アオナツライン
M14 言弾-KOTODAMA-
※一部の楽曲において、タイトルの表記が既に公表されているものと異なるものがございますが作家の意思によるものです。
SHARE