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INTERVIEW

2020.04.04

7年ぶりのオリジナルミニアルバム『Leading role』をリリース!結城アイラインタビュー

7年ぶりのオリジナルミニアルバム『Leading role』をリリース!結城アイラインタビュー

ベスト盤『decade wind』から数えて約3年、オリジナルアルバムとしては『For My Dear…』から数えて7年半ぶり。結城アイラのミニアルバム『Leading role』が発売中。本作のテーマは、「ジャズ」。元々ジャズシンガーとしても活動をしていた素地もあり、彼女の得意とする音楽スタイルを投影した作品として完成。中には、アニメ『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』の劇中歌として流れた「Violet Snow」のピアノ弾き語りバージョンも収録。前作から7年半経った中での、シンガー結城アイラとしての歩みも見えてくる本作。その魅力を、本人の全曲解説も含めて紐解いた。

――ミニアルバム『Leading role』。なんと7年半ぶりのオリジナルアルバムになるんですね。

結城アイラ そうなんですよ。その間も、デビュー10周年を記念したベスト盤を3年前に発売したり、作家としてずっと楽曲制作やライブ活動も行なっていて、動き続けてはいたんですけど。自分自身の作品を出す機会が少なかったのでファンの方々をお待たせしてしまいましたが、ようやく新作を出すことができました。

――本作のコンセプトが「ジャズ」。そこは、今の自分に似合う表情として選んだのでしょうか?

結城 元々ジャズは好きな音楽でしたし、本名の「かとうあすか」名義でジャズシンガーとして活動をしていた時期もあったので、自分には身近にあったスタイルなんです。以前からジャズテイストな作品を歌いたい想いがあったので、ちょうど良いタイミングだったなって思います。わたしが結城アイラとしてデビューをした2007年当時だと、アニソンとジャズはまだかけ離れた印象を持たれていました。それもあって、わたし自身はジャズも表現したいなと思いつつ、アニソンを通して結城アイラに興味を持ってくださった方へいきなりジャズを聴かせるのはまだタイミングではないと思っていて。その時期が来るまでと、あの頃から様子を見ていたんですけど、3年前にベスト盤『decade wind』を出した時期に、TVアニメ『ACCA13区監察課』との出会いがありまして、この作品を彩る音楽がジャズ寄りで、わたしが歌ったED主題歌「ペールムーンがゆれてる」もジャズナンバーだったことから、「アニソンの中で本格的にジャズを表現しても支持してくださる土壌がある」という実感を得ました。その経験が後押ししたこともあって、そこからライブ活動も含め、少しずつジャズ色を小出しにした活動も進めてきたんですけど、そんな中、とあるきっかけから、今回のアルバム制作のお話をいただきました。

――そこ、気になります。

結城 昨年、わたしは“ランティス祭り”や“アニサマ”などを通して、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の挿入歌「Violet Snow」を弾き語りで歌わせていただきました。とくに“アニサマ”での経験が大きかったんですけど、そのときに、ランティスの方から「「Violet Snow」の弾き語りバージョンを作品にしましょう。出すならミニアルバムにしたいなと思うんですけど、ほかにはどんな楽曲を歌いたいですか」と聞かれました。そのときに「ジャズを歌いたいです」と言ったところ、皆さん賛同してくださったことがきっかけでした。わたしもデビューから13年経ち、だいぶ大人のシンガーになりましたし(笑)、「ペールムーンがゆれてる」を歌ったときにも、みんな「この世界観が似合うね」と言ってくださっていたことも大きかったんでしょうね。

――まさに今、理想となる環境が整ったわけですね。

結城 それがありがたかったですね。デビュー当時に歌っていた「colorless wind」のような世界観も、あの当時の自分には正解なスタイルだったし、デビュー10年目で「ペールムーンがゆれてる」に出会えたのも正解だったと思います。それに、いくらジャズも歌ってたとはいえ、デビュー当時に今のような歌唱スタイルができていたかと聞かれたら、たぶんできていなかったと思います。それも、いろんな経験を積み重ねてきたからの成果と考えれば、このタイミングでジャズテイストの楽曲を歌えたことが正解なんだろうなって。

――ここからは、収録した曲たちについて語っていただきます。冒頭を飾ったのが、ブラスの音色も華やかな、ジャジーでソウルフルな「Leading role」になります。

結城 「Leading role」という言葉には「主役」という意味があります。きっと7年前のわたしだったら、「自分が主役」とは言えてなかったと思います。だけど、それ以降の様々な活動を通し、「自分の人生は自分が主役であるべき」「人それぞれ自分が主役なんだ」と思うようになりました。歌詞に“光を作るのはあなただ”と書いたように、「自信を持って自分の人生をまっとうしよう」というメッセージを込め「Leading role」を作りました。ちなみに“あなた”は、私以外の人であるのと同時に、過去の自分自身へ向けてもいます。

――サウンドの持つゴージャスさが魅力的ですよね。

結城 編曲を手がけた陶山隼さんはジャズ畑の方。この楽曲は、ジャズを得意としている方にアレンジをお願いしたいと思い、陶山さんに依頼をしました。陶山さんには「ギラギラとした派手な感じの、ナイトクラブで流れてるような楽曲が理想です」とお話をしたところ、とても華やかな、今までの結城アイラの世界にはなかった表情を作りあげてくださいました。

――この作品、曲順にも意味がありますよね。

結城 そうなんです。ここには、結城アイラの音楽人生の歩みを記しました。中でも「Leading role」は、この作品の総まとめ的な表情になっています。

――曲目が、「Flower Gears」になります。

結城 この楽曲では、作詞と作曲の両方を自分以外の方にお願いをしました。今でこそ作詞や作曲も自分でやっていますけど、結城アイラとしてデビューした当初からある時期までは、ずっとシンガーのみで表現を続けてきました。だからこそ、ここでは「シンガー結城アイラとしての姿」を示そうと思いました。作曲と編曲を手がけた高橋 諒さんは、「ペールムーンがゆれてる」のときに出会った方。今回の作品がジャズということから、高橋さんが適任と思い、お願いをしています。作詞を手がけた坂井竜二さんには、「歯車」をテーマに「現代に生きる強くて凛とした女性像を、男性目線で書いてほしい」とお願いをしました。

――「Flower Gears」のテーマは、「歯車」なんですね。そこの背景、もう少し聴かせてください。

結城 「もしかしたら、自分は社会の中の歯車の一つじゃないか」と思いながら生きている人ってたくさんいらっしゃると思うんです。わたしだって、そう。だけど、その中でどう生きていくのか。「たとえ歯車だとしても、そのうえでどう自分らしい生き方を示すのか」を伝えたくて、坂井さんに書いていただきました。

――「Paradeが生まれる」は、「ドリフェス!R」のセルフカバー曲になります。

結城 今回、新たに編曲を矢野達也さんに依頼したのですが、矢野さんは、コーラスの積み方がとても上手な方で、その世界観がとても素敵なんですね。なので、今回アレンジを頼みました。ミニアルバムへ収録した楽曲はわりとマイナー調が多かったぶん、「Paradeが生まれる」には爽やかで明るい世界観を描けたなと思います。

――続く「どんな星空よりも、どんな思い出よりも」は、TVアニメ『妹さえいればいい。』のED主題歌になります。

結城 「どんな星空よりも、どんな思い出よりも」は、わたしが初めて「作詞/作曲」も手がける形でアニメに携わらせていただいた楽曲。だから、今回の作品へどうしても入れたくて収録しました。それ以前の結城アイラは歌一本で活動を続けてきましたし、以前にはやっていた作詞作曲活動からも少し遠のいていたことから、ソングライターとしての部分でちょっと自信喪失している面も正直ありました。だけど、この楽曲を手がけたことをきっかけに、「ソングライターとしても積極的にやっていこう」と思わせていただけたように、わたし自身とても大切な楽曲として受け止めています。

――「LOVE&GAME」は、アプリゲーム「アイドリッシュセブン」特別ユニット曲のセルフカバーになります。

結城 原曲のアレンジを手がけてくださっていたのが陶山さんなのですが、この曲のアレンジをここではEFFYさんにお願いをして、中の演奏では、わたしがジャズナンバーを歌っていたときにサウンドプロデュースをしていただいていた増崎孝司さんにギターを弾いていただきました。以前お世話になっていた方と、ふたたび作品を通して繋がりあえたことはとてもうれしかったです。

――「夕焼け」では、本名のかとうあすか名義で作曲を手がけています。

結城 そうなんです。というのも、この楽曲は、わたしが結城アイラとしてデビューする前に、本名のかとうあすかとして路上ライブをやっていたときによく歌っていた曲なんですね。だから、もう18年前頃になるのかな?それをセルフカバーしました。ただし、歌詞は当時のままではなく書き直し、新たな命を吹き込んだ形にしています。

――何故、歌詞の書き直しを?

結城 元々のタイトルも「夕焼け」だったし、サビに出てくる「茜色」も当時のまま活かしている形なんですけど。この歌詞を書いた当初のわたしは、まだ20歳。内容も、「綺麗な夕焼けも、好きな人と一緒に見るともっと綺麗に見えるよね」という、今のわたしからすれば幼い内容の歌詞でした。なので、活かせる部分は残しつつも、今の結城アイラとして記そうと「昔を懐かしむ時もあるけれど、でも前向きに生きよう」という歌詞の内容に書き変えました。「夕焼け」というタイトルだけを捉えると、ちょっと寂しい感じもありますけど。内容は、明るく前向きになれる楽曲へと仕上げています。

――最後は、「Violet Snow」のピアノ弾き語りバージョンになります。

結城 このミニアルバムを作るきっかけになった楽曲です。最初は、30秒の短いCMソングだったのが、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のアニメ化が決まり、その中で挿入歌として使っていただけることからフルサイズになって。本当に思い出の深い楽曲です。オリジナルバージョンもピアノを軸に据えていたことから、ピアノの弾き語りでライブ披露することへも繋がりました。「Violet Snow」はピアノの弾き語りを一発録りしています。今回MVも制作しましたが、クリックをもとに録っているわけではないように、あの楽曲に合わせてMVで弾き語りするのはけっこう大変でした(笑)。

――昨年の“アニサマ”でも「Violet Snow」を弾き語りで披露。あのときは、この楽曲へ触れた人たちの心にいろんな想いを投げかけてくださいました。

結城 “アニサマ”のステージで「Violet Snow」を弾き語りで歌うお話をいただいたときは、自分にできることがあるのならぜひやらせていただきたいという想いを持ってステージに立ちました。あのときのライブは結城アイラ自身というよりも、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』という作品を背負う一人として歌いました。結果、いろんなパワーをもらえたなと実感しています。

――アイラさんの場合、最近はソングライターとして。とくに作詞家としての印象を先に抱く方が多いだけに、シンガー結城アイラとしての姿をミニアルバムの中へしっかり示せたのもうれしかったです。

結城 若い方にとって、結城アイラは作詞家としての認識のほうが高いのはわたしも実感しています。今回の作品を出すにあたっても、「あっ、歌もうたっている方なんですね」という声も届けば、現場でお会いする方々からも、以前は「アニメ『sola』の曲を歌っている方ですよね」「アニメ『true tears』のテーマ曲を聴いてます」などの印象で語りかけてくださることが多かったのですが、今は、『アイドリッシュセブン』や『アイドルマスター!』の作詞家さんですよね」と言われることが増えました。でも、それが7年間という時代の流れなんだと思います。わたし自身、作家・シンガーどちらの印象で受け止めていただいても構いませんが、作家してのわたしから入った方が、この作品に触れていただける機会が生まれたらうれしいなという気持ちではいます。

――完成したミニアルバム『Leading role』、今のアイラさんにとってどんな作品になりましたか?

結城 この7年間のわたしの音楽家としての歩みが見えてくる作品になりました。この7年間の中、音楽家として、プライベートでは結婚をして、人生が変わる出来事をいろいろ体験してきました。そういうエッセンスもミニアルバム『Leading role』にはたくさん詰め込ませていただいて、結城アイラ自身をとても堪能していただける作品になったと思います。ぜひ、触れてみてください。

Inteview & Text By 長澤智典


●リリース情報
結城アイラ
『Leading role』
発売中

品番:LACA-15817
価格:¥2,700+税
発売元・販売元:株式会社バンダイナムコアーツ

<CD>
01. Leading role
作詞:結城アイラ 作曲:結城アイラ 編曲:陶山 隼
02. Flower Gears
作詞:坂井竜二 作曲:高橋 諒 編曲:高橋 諒
03. Paradeが生まれる
(5次元アイドル応援プロジェクト『ドリフェス!R』より)※セルフカバー
作詞:結城アイラ 作曲:笹原 慎 編曲:矢野達也
04. どんな星空よりも、どんな思い出よりも
(TVアニメ『妹さえいればいい。』エンディング主題歌)
作詞:結城アイラ 作曲:結城アイラ 編曲:渡部チェル
05. LOVE&GAME(アプリゲーム『アイドリッシュセブン』より)※セルフカバー
作詞:結城アイラ 作曲:木下智哉 編曲:EFFY
06. 夕焼け
作詞:結城アイラ 作曲:かとうあすか 編曲:加藤達也
07. Violet Snow(アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』より)※セルフカバー
作詞:西田恵美 作曲:川崎里実 編曲:川崎里実

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