声優・上田麗奈が久々のニューアルバム『Empathy』をリリース。アルバムとしては『RefRain』以来約4年ぶりとなる本作は、前作を“冬”とするならば“春”の匂いも感じられる、タイトル通り“共感”を軸にした作品となっている。そんな本作に反映された彼女の内面や、“声優”としてこだわった部分など、アルバムの裏側をたっぷりと語ってもらった。
――シングル「sleepland」から、約2年ぶりのリリースとなりますね。
上田麗奈 はい。「sleepland」から2年、そしてデビューミニアルバム『RefRain』からだと3年ぶりということになります。『RefRain』で自分の気持ちを出し切ってしまったぶん、どうすれば次が作れるのかがわからなくなってしまって、「次を作れるくらいまで、心のストックを溜めてみましょう」という話になりました。タイアップのお話をいただいて「sleepland」の制作を進めながらも3年が経ち……「そろそろどうです?」というお話があって(笑)、最初の会議をさせてもらったのが去年の8月頃になります。
――ということは、ストックが溜まった実感はあった?
上田 あまりありませんでした……(笑)。だから今回は『RefRain』とは違うアプローチで作品を作ってみよう、と試行錯誤しはじめたのが『Empathy』のはじまりです。『RefRain』のときは、名刺になるような作品を作ることをテーマにしていたので、自分自身の意見を多く取り入れたものになりました。逆に今回は、自分以外の意見も多く取り入れて作っていくことはできないか、誰かと繋がるような音楽にすることはできないか、そう考えていって……。浮かんだのが、“共感”というテーマです。
――その“共感”を実現させるために、どんな手法を取られたのでしょう?
上田 いろいろと考えた結果、自分が今まで担当してきた作品のキャラクター達に力を貸してもらおうとなりました。でもそれは、「キャラソンを作りたい」ということではなくて。「この子に私が共感した部分」をざっくり取り上げて、それを自分なりの言葉で膨らませて伝えていってみよう……というふうに。キャラクターと私の間に生まれた共感が、音楽を通してさらに多くの人との共感になったら、とても素敵だなと。
――制作開始前、昨年6月にはランティス祭りにも出演されました。
上田 リハからステージに立つ直前まで、まわりの方々が本当にたくさんのエールを送ってくださって。それが本当にうれしくて。だからこそ、思い返すたびに「もっと音楽活動を頑張りたい」と思えるライブになったと思います。『Empathy』の制作現場では、そんなライブと共通する部分が感じられました。
――どんな部分が?
上田 『RefRain』のときは100%自分の気持ちとか好きなものを詰め込んだんです。だけどライブも、今回のアルバムも、自分だけではなくいろんな方の好きなものが詰め込まれている。「みんなで作る」のが本当に楽しいなと。もっと言えば、「みんなで作っている」と思えることがとてもうれしいなと。
――楽曲制作のなかで、提案されたことで採用していったことも、結構ある?
上田 あります。歌のニュアンスに関してはおまかせいただいたんですけど、「どういうテーマで歌いたいか」や、「このテーマに寄り添うにはどういった歌い方があるか」といった所など、その都度アイデアを出し合って、組み合わせていきました。
――そういう作業はリード曲の「アイオライト」でもあったと思いますが、こちらはサウンド的には少し懐かしいJ-POPっぽさもあり、御自身で手がけられた歌詞の中には先を見据えた想いみたいなものも感じていて。
上田 Bメロの“ああもうなにやってるんだろ”というフレーズにも表れていると思うんですけど、自分の不甲斐なさややるせなさを感じているなかで、「もう何もかもやめてしまいたい」と思う瞬間もあったりする。「でもやめられないのは、なんでなんだろう?」と考えたときに、生まれたのがこの曲で。
――どんな想いが、形になったのでしょう?
上田 タイトルにした「アイオライト」は、別の角度からはまた違う色に見えるという石です。自分自身にも、きっと別の角度から見たら見える良いところや、可能性があるはず。そう思わせてくれる現場がたくさんありました。どうしようもない私の、自分だけでは引き出せない自分の力を、まわりの方が引き出してくださる瞬間がある。そうやって作られた一つひとつの作品が、本当に素敵で魅力的で……。経験していくたびにこのお仕事がやめられなくなる。どんなに泣いても、そのぶんどんどん心がクリアになっていく。そんな想いが形になりました。
――その“ああもうなにやってんだろ”というフレーズのあるBメロは、今までの楽曲以上にわかりやすく感情を乗せている印象があって。アルバム全体を通しても、そういう部分が多いですよね。
上田 元々『RefRain』のときから、「歌じゃない歌にしたい」とずっと思っていました。歌うことが苦手なぶん、声優としてできることをやっていきたいと。今回もそれを目指していきました。
――歌でありながら、“声の表現”という点も非常に大事にされた1枚になった。
上田 レコーディングのときも、トラックダウンのときも、その点は気をつけながら制作していきました。生々しさみたいなものが、少しでも残るように頑張りました。
――ちなみに「アイオライト」では歌詞を御自身で手がけられていますが、そのぶんレコーディングはスムーズにいった部分はありましたか?
上田 いえ、全然スムーズにはいきませんでした。「この曲だと、どう歌うのがいいんだろう?」という合間合間のディスカッションにすごく時間をかけた記憶があります。
――お芝居を作るのと、同じプロセスを踏んでいるように感じます。
上田 たしかにそうですね。同じような感じで、一つひとつ詰めていきました。
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