INTERVIEW
2020.03.17
――その他の楽曲も非常にバリエーションも豊かなものになっていますが、まず「あまい夢」でORESAMAさんが参加された点、最初特に意外に感じました。
上田 私の中で“夜のネオン”な印象の強いORESAMAさんでしたが、「あまい夢」は“お昼の公園”のようなイメージで作り上げてくださいました。曲の内容や歌の雰囲気に合わせて、やわらかくふわふわとしたアレンジでまとめ上げていただいて……感動しました。トラックダウンもすごく短時間で終わって。制作チームがやりたいことを全て受け止めて、かちっとハメてくださいました。
――それでいて、ORESAMAさん感もあるし。
上田 そうなんですよね。味も出しつつ、寄り添っていただきました。
――歌うときも、イメージのすり合わせはしやすかった？
上田 そこに関しては、「アイオライト」同様かなり時間をかけた印象があります。ORESAMAさんが作ってくださったこの曲に、歌の表現をよりマッチさせたくて、たくさん悩んでレコーディングに挑んだ曲でした。
――そこから1曲インスト曲「Falling」を挟んで、さらに世界に没入させられるというか。
上田田 はい。インストで『不思議の国のアリス』みたいにぐるぐると落ちていって、「ティーカップ」で殻に閉じこもって悩み続けて、「いつか、また。」で進むことを決心して一歩を踏み出したら、「あれ？ 大切な人がいっぱいいるな。この人たちがいると安心するな。頑張れるかも」と「きみどり」でやっとおひさまを見る……みたいな流れになっています。
――そのインスト明けを飾る「ティーカップ」は広川恵一さんの作編曲です。同じくMONACAからは『RefRain』に続いて田中秀和さんも参加されていますね。
上田 “冬”の『RefRain』から『Empathy』の“春”に向かっていくというところで、より色鮮やかで花が咲いていくみたいな、明るくて暖かなイメージが欲しかったんです。そのキラッとした感じやポップなイメージにハマるのがおふたりだと思ったので、お願いしました。
――広川さんは、キャラソン以外では初めての提供となりますが。
上田 この曲は、とにかくぐるぐる回って気持ち悪い、「出口がない！」みたいな曲にしたくて。でも、明るさはほしい。その2つを兼ね備えている方が、広川さんしか思いつかなかったんです。そんな変な曲を、広川さんは嫌がらずに……というかむしろ「こんな変な曲作っていいんですか!?」ってノリノリで（笑）、一緒に作ってくれました。
――そこから、悩みながらも進み始める「いつか、また。」へと続きます。
上田 歌を歌うというよりもセリフを喋っているように、というのを、ほかの曲以上に挑戦した曲です。自分の中にある、ずっと子供のままなところを全部表していただきました。前のめりで走りがちになっているリズムの乗り方は、若さが出ているようにも聴こえて面白い仕上がりになっていると思います。
――曲が進むにつれて、思いがどんどん溢れてきている点が、特に印象深いポイントでした。
上田 そうですね。曲の後半になる程、突然大きな声で怒鳴ったり、悲しんだり、急にちっちゃい声になったり（笑）。出来る限り好き勝手にやらせていただきました。
――声の震えもそのままにされていますね。
上田 はい。録ったままのものを出せるように、トラックダウンのときも気を配りました。
――そして、“おひさまを見る”「きみどり」に続きます。
上田 凄くホッとする曲ですね……。でも「いつか、また。」からの流れというのもあって、無意識的になんですけど歌が途中まですごく硬いんですよ（笑）。途中からやっと言葉の重みが増してきて、歌い慣れてきて。「いつか、また。」までずっと悩み続けてきたけれど、「きみどり」で光に目が慣れてきて「これなら頑張れる……！」となって最後終わる、という流れになりました。
――「aquarium」へと。
上田 はい。サウンド的にはちょっと神秘的なところもあるんですけど、いちばん熱い曲になったと思います。
――熱い曲ですか？
上田 この曲は劣等感が元になっています。相手と比較して落ち込むこともあるけど、「そっちも素敵だしこっちも素敵」と思えたらすごく格好良い。そういうふうに自分も相手も大事にしながら自分の個性を活かせるようにもがいてみたい、という想いがこもっているので、レコーディングの時も、水底から水面までもがき泳いでいくことをイメージしながら歌わせていただきました。だからこのアルバムの中でいちばんエネルギーを使った、熱い曲になったと思います。
――ただ、続く「旋律の糸」はまたガラリと雰囲気が変わって。ぞくりとするぐらいでした。
上田 この曲は、いちばん『RefRain』に近い曲かなと思っています。本当にピアノだけの曲で、ピアノ以外のものに聴こえる音も、ピアノ線を弾いていたり叩いている音や逆再生なんですよ。
――そのなかで、どういった世界観を意図されましたか？
上田 限界まで諦めに近づいたような曲になったらいいなと思っていたので、すごく寂しい感じの世界観を目指しました。実は、最後はコーラスがちょっとずつ近づいてきて、エコーも何もかかってない素の状態になっていくんですけど、そういった部分で、現実が迫ってきて我にかえるような表現に挑戦しています。「あ、……月曜日だぁ」みたいな。
――つらい現実が（笑）。
上田 諦めようと思っても、諦められないこともある。そうこうしているうちに、諦める以外の選択肢が生まれることもある。他の選択肢を取ることで、ふと隣を見たら「ごめんね」じゃなくて「ありがとう」と言いたい人がいるとわかったり。そうして「Campanula」に続いていきました。さらに「そういう人を大事にしたい」と思うことで「Walk on your side」に繋がって……。
――その「Campanula」も、ご自身で歌詞を書かれた曲ですが。
上田 この曲も随分悩みました……。というのも、元々はピアノメインの曲としてイメージしていたんですけど、ストリングスが結構分厚い曲になりまして。歌が入っていない状態で最初に聴いたときには素敵だなと思ったんですけど、冷静に考えたときにふと気づいたんです。「あれ？ これはマズいのでは？」って。
――そう思った原因は？
上田 元々の歌唱イメージは、「素朴で地味なお花畑」でした。歌詞もすごく素朴なものなり、誰かにではなくて“あなた”に伝えたいというイメージで制作が進んでいたので、「歌うときのプランを、もっと華やかなものに変えた方がまとまりが良いのでは……」「このままの素朴なイメージのプランだと曲の邪魔をしてしまうのでは…」と思ったんです。悩んだ末に、歌唱に関しては素朴なままで臨んで、後のトラックダウンでバランスを取るということに決まりまして。ストリングスや自分の声、ピアノなど、どんなバランスにすれば成立するのか、試行錯誤して完成した……という曲でした。。
――それに続く「Walk on your side」が、田中秀和さんが手がけられたアルバムラストの曲です。
上田 素敵な曲すぎて、最初は「私では歌い切れない……！」と思っていたんですけど、プロデューサーさんたちは「きっと上田さんにとってとても歌いやすい曲ですよ」と仰っていて。実際に歌ってみたら、本当に歌いやすくて。
――その要因は、何だと思っていますか？
上田 もしかしたら、自分の合うキーや、その中でも歌いやすいメロディとかも全部わかったうえで曲を作ってくださったのでは……と。あと、ポップで明るくて温かい曲なんですけど、少し精神年齢と偏差値を上げて、オトナっぽい感じにしてくださっていて。だからレコーディングでも、スッと曲に入って、無理せずに落ち着いて歌えたのではと思っています。
――曲に入りやすかったのは、歌詞も含めて？
上田 そうですね。すごく素敵な歌詞です。この曲も、“誰か”じゃなくて“身近にいるあなた”へ、という部分を大切にできたらと思っていたんですけど、そのイメージを完璧に汲み取ってくださっていて。歌詞を読み返す度に、「こういう人になりたいなぁ」と感じます。
――さて、7月には初のライブがございます。既存曲も含めると持ち歌が20曲近くになるので、どういう世界が表現されるのかを楽しみにされている方も多いと思うのですが。
上田 やっぱり『RefRain』から『Empathy』で冬から春に変わったというのもあるので、気持ち的にもちょっと色づき始めて前向きになり始めたところをベースにしたライブにできたら、となんとなく思っています。ただ、「Sleepland」もライブをやってみようと思ったきっかけの曲だし、すごく好きな曲なので、どんな位置づけで融合させられるかをこれからもっと考えて……よりよい方向にできたらと思うんですけど。全部が一つの流れになって切り離せないライブにすることで今の自分の心境の変化も少し乗せられたらと思っているんですが、そのうえで“共感”をどう形にできるのかも、チームでアイデアを出し合いながら形にできたらと思います。
Interview & Text By 須永兼次
●リリース情報
上田麗奈 New Album
『Empathy』
3月18日発売
品番：LACA-15809
価格：￥3,000＋税
＜CD＞
01 アイオライト
作詞:上田麗奈 作曲編曲:Kai Takahashi (LUCKY TAPES)
02 あまい夢
作詞作曲:ORESAMA 編曲:小島英也
03 Falling
作曲編曲:石川智久
04 ティーカップ
作詞:安藤紗々 作曲編曲:広川恵一 (MONACA)
05 いつか、また。
作詞:RIRIKO 作曲:山田かすみ 編曲:笹川真生
06 きみどり
作詞作曲:Chima 編曲:下川佳代
07 Another
作曲編曲:石川智久
08 aquarium
作詞:唐沢美帆 作曲編曲:高橋 諒
09 旋律の糸
作詞:RIRIKO 作曲編曲:石川智久
10 Campanula
作詞:上田麗奈 作曲編曲:加藤達也
11 Walk on your side
作詞:松井洋平 作曲編曲:田中秀和 (MONACA)
●ライブ情報
上田麗奈ワンマンライブ
7月23日（木・祝）
会場：なかのZERO 大ホール
アルバムにチケット最速先行応募券（シリアルナンバー入り）を封入
※詳細は後日発表いたします。
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