オリジナリティ溢れる世界観を持つシンガーソングライターのやなぎなぎが通算20枚目となるシングル『宝石の生まれるとき』をリリース。。これはTVアニメ『宝石商リチャード氏の謎鑑定』のOP主題歌で、鉱石好きとして知られる彼女自身にとってもクリエイティビティを大きく刺激するものに。カップリングの『透明の国』ともに創作のロマンを語っていただいた。
――新作『宝石の生まれるとき』は、やなぎさんにとって20枚目シングルになりますが、この数についてはどのような思いですか?
やなぎなぎ もうそんなに作ったかーっていうのが率直なところですね。1年前に『ベストアルバム -MUSEUM-』を出した際にもお話したのですが、作っているときはその作品に集中しているので気づかなくて、振り返ってみればこんなに積み重ねてきたのだなということが分かり、とても感慨深い思いですね。
――今作の制作体制について、従来と違う部分はありますか?
やなぎ 今回はエイベックス・ ピクチャーズさんの作品の『宝石商リチャード氏の謎鑑定』とご縁があり、主題歌を担当させていただくことになりました。、体制についてはいつもどおりの環境で楽曲を制作させていただきました。
――『宝石商リチャード氏の謎鑑定』の主題歌のオファーされたときにどんな印象を抱かれましたか?
やなぎ 私は鉱石を趣味にしていて、共通の趣味を持つ友達に以前から薦められ気になっていた作品だったので、お話を頂いたときはとても嬉しく思いました。石について、深く知識を集めたりはしていなかったのですが、実際に読んでみると宝石にまつわるストーリーをとても楽しく読むことができ、たしかに鉱石好きの人間には特に心に届く作品だなと感じました。石のお話を通して、それが持っているストーリーと、そこに関わってくる人間模様が一点に集まっていく物語がミステリー作品的でもあり、とても惹かれる内容だなと感じました。
――やなぎさんは鉱石のどんなところに魅力を感じていらっしゃいますか?
やなぎ 自分が生まれるずっとずっと前から地球上で長い間かけてできあがったものが、掘り出されることによって外の世界に出てくるということへのロマンがひとつあります。自分も知らなかった世界のものが今ここにあるというのが魅力ですね。加えて、ジオード(石の内側が空洞になって水晶が晶出したもの)を割ったときに見える、内側に世界ができあがっているという箱庭感が好きなんです。そして鉱石そのままでも綺麗なんですけど、それに価値を見出して磨いていく人がいるということも素敵だなと思います。
――やなぎさんご自身ではどんな石が好きですか?
やなぎ いろいろありますが、基本的には緑系が好きですね。ダイオプテーズという石はエメラルドみたいに綺麗な、クリアな緑色で、ちょっと四角いつぶつぶした結晶の石なんです。エメラルドも好きですし、あとはカバンサイトという小さいウニみたいな石も。基本的に結晶していて綺麗に面が出ている石が好きですね。
――やなぎさんにとって鉱石は創作へのエネルギーになっていると言えますか?
やなぎ 確実に、なっていますね。やっぱり長い間かけてでき上がったものですから、その過程を想像するだけでも非常に意欲を刺激されますし、ジオードを割ることにもワクワク感があります。そうしたロマンを感じるものは私の創作の糧になりますね。壮大さや長い年月という意味では、宇宙や星も好きなのですが、これは手元に置けないので(笑)。でも、石だったら作業場に置いて曲を作ったりできます。好きなものに囲まれながら曲が作れるというだけでも創作に役立っていると思います。鉱石って、初めはやっぱり見た目が綺麗だからというところから入っていくだけでも良いと思うんです。そこから大切にされたり誰かを想った時のようなキラキラしたポジティブな感情が自分の中に生まれる。そういうところから鉱石・宝石と自分の感情と繋げて、もし興味があったら掘り下げて行くと良いんじゃないかなと。
――歌詞を書いたりこの曲全体を作るにあたってはどんなことをテーマに作ろうと思いましたか?
やなぎ 宝石を扱った作品ということもあり、宝石を大きなテーマに書こうと思いました。これは作品もそうなのですが、宝石自体を歌詞にしていくというよりも、宝石をテーマにした人間関係を描きたいなと考えました。誰かを想ったり想われた時に生まれる感情だったり、大切なものが宝石のようにキラキラしているというイメージで書いていきました。
――作編曲はやなぎさんの作品でお馴染みの北川勝利さんが担当されていますが、彼にお願いをした理由は?
やなぎ 北川さんって、私の曲だと『春擬き』など、ポップなイメージを持たれているかと思うのですが、私は北川さんのミドルテンポのバラード寄りの曲もすごく好きなんです。この作品のテーマはちょっとミドルテンポ目がいいのかなと思いまして、北川さんだったら宝石のキラキラした感じを出しながらも、ミドルテンポで宝石の感じを上手くサウンドで出してくれるだろうというイメージが結びついて、今回お願いをしました。これまで何曲も作っていただいているので、「今回はこういう作品のオープニングテーマなんです」と言ったら、私が石好きなこともお話ししていたので、さっそく書いていただけました。北川さんはいつもお願いすると数曲デモを上げてきてくれるのですが、そのなかでもこの曲はイチオシだったもので、それは私とも意見が一致しました。
――北川さんがデモとして上げてこられるのはどのくらいの完成度のものなのでしょうか?
やなぎ ご本人がギターを弾いて、ピアノのフレーズも入っていて、ベースもドラムパターンも軽く入っていて、本当にバンドで演奏したぐらいのクオリティのものをいつも上げてくれます。なので、聴いたときのイメージはとても湧きやすかったです。ピアノのフレーズも最初から入っていて、キラキラした感じがとてもよく伝わってきました。
――ピアノのフレーズと言えばAメロBメロのアルペジオが印象的でした。やなぎさんは聴いた時にどのように感じられましたか?
やなぎ ゆったり流れながらも、ところどころキラッとする感じ。私がキラキラを出そうとしたら、たとえばベルの音に頼ってしまったりするので、そこを北川さんはピアノのフレーズで表現していて、これは思いつかないなとハッと気付かされました。
――コラボレーションで作っていくって中でのメリットですね。
やなぎ SEの類いは私が宝石の話をしていたので、そこからイメージしてくださったんだと思います。レコーディングの現場でも石を持っていって、ジオードを割って鉱石ファンの楽しみ方を体感してアレンジを詰めてもらったので、そこももしかしたらイメージに入れてくれたのかなと思います。
――2番のあとの Dメロ以降の展開がまたドラマティックでした。
やなぎ 私もこう、一気に最後に向かって駆け上がっていく感じだなと思いました。そこに合わせて歌詞も「君の胸にもいつか宝石が咲くかな」という、私の中で考える一番ポジティブなフレーズを書いていきました。私もすごく好きなところで、リスナーにはぜひその盛り上がりを聴いていただけたら嬉しく思います。
――レコーディングの際にはどんなところを特に意識されましたか?
やなぎ サウンドのキラキラ感を失いたくないなとは思いました。あとは空気感ですね。ミドルテンポということもあり、空気感をいつもよりちょっと優しい感じというか、多めに混ぜてふわっとした感じと、伸びやかな感じをいつもよりは意識して、サウンドと同じくらいのキラキラという塩梅を探りながら歌っていました。
――ミドルテンポの場合、レコーディングのテイクは多くなりますか?
やなぎ レコーディングではテイクを重ねていくのですが、今回は割と最初の方に良い流れがあって。この曲は考えすぎちゃうとキメキメになってふさわしくないので、最初の方のテイクを使いました。あまり考えすぎていないフワっとした感じがほしかったので。
―――つづいて、カップリングの『透明の国』について教えて下さい。これはどのようなテーマで書かれた曲でしょうか?
やなぎ これは珍しく歌詞を先に書いた曲です。ちょうどベスト盤を出してツアーを行なった反動から、「ふぅっ」と落ち着きたかった気分のときでした。ベストはシングル表題曲が中心だったので、それをライブで歌っていると自分もそれに引っ張られていって気分がすごく上がっていたんですね。その後、上がった分ジェットコースターみたいに下がっていき、幼少期の自分を思い出したら、「私ってこんなにイケイケの人間だったっけ?」って(笑)。
――(笑)。
やなぎ その時の落ちていた気分を歌詞に書いたんです。ステージでポップな曲を歌って、それも一つの自分とは思うのですが、自分が本来いる場所っていうか、ずっといた場所はその反対側にもあって、それが「透明の国」。一人で曲を作っていたときの元に自分に帰ってきたというイメージです。
――それはアーティストの原点という捉え方でよろしいでしょうか? それとも、それ以前の?
やなぎ アーティストというよりは、人間として自分はこういう場所にいるという感じですね。
――その意味で想像の余地が広いこの歌詞ですね。「透明の国」と「真っ黒の国」という言葉が出てきますが、この世界観はどういうものでしょうか?
やなぎ 街中の誰も知らない大勢の人に紛れたとき、そこで目を閉じて誰も見えなくなったとしても結局あまり変わらないのかな、みたいな気持ちになった時がありまして。「透明の国」にはたくさん人がいて、その中に自分もいるのですが、街中に行っても周りは知らない人だらけで、「ここに自分がいるのといないのとでは何が違うんだろう」と。そこで目を閉じれば自分一人の国に行けるので、この場所と目を瞑った場所は同じなんだという、そんな気持ちが「透明の国」と「真っ暗の国」という言葉になっています。
――詞先で作られてその後、ご自身で作曲と編曲を行われたわけですが、序盤のミニマルなサウンドが印象的でした。
やなぎ 私が歌詞を書く時って、自分の内面を抽象的に抜き出すんですけど、サウンドの方は必ずしもそれに忠実ではなく、真逆にすることすらあるんですね。そういう歌詞を書いた時って、その時点で吐き出し完了みたいな感じで、ネガティブな歌詞の時は逆にめちゃくちゃ音を明るくしちゃったり。今回もちょっとそれに寄っていますね。展開はミニマルなんですけど、サウンド的には結構しっかりとストップ・アンド・ゴーをしています。
――やなぎさんの作り方を知る上で興味深いです。今まででそのような作り方をされた楽曲は?
やなぎ 「ビードロ模様」のカップリング曲になっている「concent
」という曲がそうですね。結構ネガティブなことを書いてるんですけど、自分で書いた曲は結構ビートをガツガツ入れたりしています。それを飛内(将大)さんが編曲をしてくださいました。
――またこの曲では声の加工をされていますが、どういった思いからこの手法を採られたのでしょうか?
やなぎ これもかつての自分の経験からなんですけど、歌うときは色んなキャラクターにしたいと思うからです。自分もいるし、どこかで冷静に俯瞰してるような人もいるし、ただただ通り抜けていくだけの人もいる。そういう、いろんなキャラクターで声を入れたいなと思っていて、なので今回は結構強めにエフェクトをかけています。
――そういう表現ツールの一つとしているということは、ご自身の声を変えることに抵抗はない?
やなぎ 全くありませんね。声も楽器みたいに使いたいと思っているので。
――レコーディングはどのように?
やなぎ エンジニアさんと一対一で行いました。自分で編曲する曲はだいたいだいそうなんですけど、歌ってみて「違うな」と思ったら、「消してください」と言って、録りながら進めていきます。普段の曲は最初から最後までつるっと歌って、ブースの外に出て、こことここを録り直しましょうとテイクを重ねていくのですが、この曲の場合はブースに入りっぱなしで、1行歌って良いのが録れたら次の1行という感じで確定させて順番に進めていきます。ブースを出るのは歌をすべて録り終えたときです。
――ブースの中で聴くことに音響的・心理的に大きな違いはありますか?
やなぎ ブースの中で歌っている時は、音よりも歌っている自分に意識が行っています。ブースの外で大きいスピーカーで鳴らしてもらった時は、本当に聞くだけなので、もっと大きい部分で全体の流れみたいなのを中心に聴いていますね。どちらにも良さはあるのですが。
――特にこういうテーマの曲の場合は主観的にしたいから、今回の方法を採ったと。
やなぎ そうですね。それに1行1行を繋げなくてもよかったので今自分が出したい声、これがベストというものを1行1行聴いていく流れでした。『宝石の生まれるとき』は、先程も話した最後の駆け上がりとか全体の流れが必要だったので。
――4月には恒例のコンセプチュアルライブ「color palette ~2020 Pink~」が開催されます。
やなぎ 「color palette」はこれまで夏や秋の開催だったのですが、今年は春に開催するのでそれに合わせて、思い切ってピンクをテーマにしました。春らしいライブにしようと思っています。今回は東京(日テレ らんらんホール)と大阪(堂島リバーフォーラム)での開催で、会場もそれぞれ結構違う雰囲気なので、セットリストや演出もそれぞれで異なる面白いことができたらなと思っています。
INTERVIEW & TEXT BY 日詰明嘉
●リリース情報
TVアニメ『宝石商リチャード氏の謎鑑定』OPテーマ
「宝石の生まれるとき」
2月19日発売
品番:EYCA-12799
価格:¥1,500+税
<収録曲>
1.宝石の生まれるとき
作詞:やなぎなぎ 作曲・編曲:北川勝利(ROUND TABLE)
2.透明の国
作詞・作曲・編曲 やなぎなぎ
3.宝石の生まれるとき inst.
4.透明の国 inst.
●イベント情報
toku from GARNiDELiA Presents Special Live <Tasty Time at Music Crossing Vol.1>
GARNiDELiAのコンポーザーとして、作編曲・プロデューサーとして多くアーティストの楽曲で活躍しているtokuと、ゲストアーティストを迎え、人や音楽、時代が”Crossing”する渋谷から発信する、アコースティックありエレクトリックありのスペシャルアクト。
記念すべき第1回目のゲストボーカルとしてやなぎなぎが出演いたします!!
2020年2月24日(月・祝)
1部 開場:16:00/開演:17:00
2部 開場:18:30/開演:19:30
eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
●ライブ情報
コンセプチュアルライブ やなぎなぎ「color palette ~2020 Pink~
2020年4月4日(土) 開場:16:30/ 開演:17:00 東京・日テレ らんらんホール
2020年4月25日(土) 開場:16:30/ 開演:17:00 大阪・堂島リバーフォーラム
●作品情報
TVアニメ『宝石商リチャード氏の謎鑑定』
【CAST】
リチャード・ラナシンハ・ドヴルピアン:櫻井孝宏
谷本晶子:花澤香菜
中田正義:内田雄馬
下村晴良:井口祐一 ほか
【STAFF】
原作:辻村七子「宝石商リチャード氏の謎鑑定」(集英社オレンジ文庫)
監督:岩崎太郎
構成/脚本:國澤真理子
キャラクター原案:雪広うたこ
キャラクターデザイン/総作画監督:近藤奈都子
リチャード監修:川添政和
美術:一色美緒
色彩設計:歌川律子
CGプロデューサー:神林憲和
宝石監修:工藤 直一(日本宝石特許鑑定協会)
撮影:塩川智幸
編集:今井大介
音響監督:本山哲
音楽:戸田信子
アニメーション制作:朱夏 ほか
©辻村七子/集英社・宝石商リチャード氏の謎鑑定製作委員会
関連リンク
●作品情報
TVアニメ『宝石商リチャード氏の謎鑑定』
【CAST】
リチャード・ラナシンハ・ドヴルピアン:櫻井孝宏
谷本晶子:花澤香菜
中田正義:内田雄馬
下村晴良:井口祐一 ほか
【STAFF】
原作:辻村七子「宝石商リチャード氏の謎鑑定」(集英社オレンジ文庫)
監督:岩崎太郎
構成/脚本:國澤真理子
キャラクター原案:雪広うたこ
キャラクターデザイン/総作画監督:近藤奈都子
リチャード監修:川添政和
美術:一色美緒
色彩設計:歌川律子
CGプロデューサー:神林憲和
宝石監修:工藤 直一(日本宝石特許鑑定協会)
撮影:塩川智幸
編集:今井大介
音響監督:本山哲
音楽:戸田信子
アニメーション制作:朱夏 ほか
©辻村七子/集英社・宝石商リチャード氏の謎鑑定製作委員会
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●リリース情報
TVアニメ『宝石商リチャード氏の謎鑑定』OPテーマ
「宝石の生まれるとき」
2月19日発売
品番:EYCA-12799
価格:¥1,500+税
<収録曲>
1.宝石の生まれるとき
作詞:やなぎなぎ 作曲・編曲:北川勝利(ROUND TABLE)
2.透明の国
作詞・作曲・編曲 やなぎなぎ
3.宝石の生まれるとき inst.
4.透明の国 inst.
●イベント情報
toku from GARNiDELiA Presents Special Live <Tasty Time at Music Crossing Vol.1>
GARNiDELiAのコンポーザーとして、作編曲・プロデューサーとして多くアーティストの楽曲で活躍しているtokuと、ゲストアーティストを迎え、人や音楽、時代が”Crossing”する渋谷から発信する、アコースティックありエレクトリックありのスペシャルアクト。
記念すべき第1回目のゲストボーカルとしてやなぎなぎが出演いたします!!
2020年2月24日(月・祝)
1部 開場:16:00/開演:17:00
2部 開場:18:30/開演:19:30
eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
https://eplus.jp/crossing0224/
●ライブ情報
コンセプチュアルライブ やなぎなぎ「color palette ~2020 Pink~
2020年4月4日(土) 開場:16:30/ 開演:17:00 東京・日テレ らんらんホール
2020年4月25日(土) 開場:16:30/ 開演:17:00 大阪・堂島リバーフォーラム
●作品情報
TVアニメ『宝石商リチャード氏の謎鑑定』
【CAST】
リチャード・ラナシンハ・ドヴルピアン:櫻井孝宏
谷本晶子:花澤香菜
中田正義:内田雄馬
下村晴良:井口祐一 ほか
【STAFF】
原作:辻村七子「宝石商リチャード氏の謎鑑定」(集英社オレンジ文庫)
監督:岩崎太郎
構成/脚本:國澤真理子
キャラクター原案:雪広うたこ
キャラクターデザイン/総作画監督:近藤奈都子
リチャード監修:川添政和
美術:一色美緒
色彩設計:歌川律子
CGプロデューサー:神林憲和
宝石監修:工藤 直一(日本宝石特許鑑定協会)
撮影:塩川智幸
編集:今井大介
音響監督:本山哲
音楽:戸田信子
アニメーション制作:朱夏 ほか
©辻村七子/集英社・宝石商リチャード氏の謎鑑定製作委員会
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