「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」の公式イベント「ミリシタ感謝祭 2019~2020」が2020年1月19日、千葉・舞浜アンフィシアターにて開催された。
今回のイベントは「ミリシタ」ファンへの感謝を込めた無料イベントで、真壁瑞希役の阿部里果、七尾百合子役の伊藤美来、エミリー役の郁原ゆう、天空橋朋花役の小岩井ことり、桜守歌織役の香里有佐、永吉 昴役の斉藤佑圭、最上静香役の田所あずさ、ロコ役の中村温姫、我那覇 響役の沼倉愛美、星井美希役の長谷川明子、伊吹 翼役のMachico、白石 紬役の南 早紀、春日未来役の山崎はるか、サプライズゲストとして詩花役の高橋李依、玲音役の茅原実里らが出演した。
詩花役の高橋李依と玲音役の茅原実里は、ステージ後半のライブパートに登場。961プロの新ユニット・ZWEIGLANZとして完全新曲「アライアンス・スターダスト」を初披露した。同曲は「ミリシタ」の新イベント「プラチナスターツインステージ~深淵の蒼、熱焔の緋~」に登場することも発表されており、このイベントでは伊吹 翼と我那覇 響が歌う「深層マーメイド」と「アライアンス・スターダスト」の両方がテーマとなるようだ。
また、2020年5月に野外の富士急コニファーフォレストで開催される7thライブの正式タイトルが「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 7thLIVE Q@MP FLYER!!!」であることが明かされた。
イベントは765プロ高木社長の「(やや遅めと前置きしての)あけましておめでとう」の声と共にスタート。アナウンスで“いつもと違う演出”を予告するシアター事務員・青羽美咲の声と言葉には、まるで舞台裏で生で演技しているかのような臨場感がある。
イベント本編開幕と共にスクリーンには「ミリシタ」の画面風の映像が映し出され、“ミリシタ感謝祭をダウンロードしますか?”のシステムメッセージが表示される。続くおなじみのログイン場面は、今日の出演アイドルたちが劇場ロビーに勢揃いしてプロデューサーを出迎えるスペシャルバージョンだ。
オープニングナンバーの「Flyers!!!」と共に、アンフィシアターステージ中央のポップアップから山崎はるか、Machico、沼倉愛美、田所あずさ、長谷川明子が登場。最初は5人で歌い出して、両サイドから残りのメンバーが登場する演出は「ミリシタ」での同曲ライブを再現している。これは 「6th LIVE TOUR UNI-ON@IR!!!! SPECIAL」でも行なわれた演出で、そのフロントに沼倉、長谷川の765PRO組が参加しているのが新鮮で感慨深い。
感謝祭は幾つかの企画コーナーとライブパートで構成されており、最初のコーナーは「楽曲制作をプロデュースしよう」。会場の反応と配信アンケートを元に765プロライブシアターの宣伝ソングのコンセプトを決定し、5月23日~24日に富士急コニファーフォレストで開催される7thライブでライブ披露するというリアルプロデュース企画だ。ステージには作曲を担当する佐藤貴文氏(「Thank You!」「Dreaming!」等作曲)も登場。「Q1.曲のテーマは??」「どんな雰囲気??」「どんな曲調??」「何になりきって??」という4つの設問に投票が行なわれた結果、新曲は「新しい時代への挑戦をテーマにした、断崖絶壁を登るような、ハードコアテクノを、チュパカブラになりきって歌う」楽曲に決定した。作曲を担当する佐藤氏は「作曲家人生で一番のピンチを迎えています」と苦笑いしながらも、やる気を燃やしていた。設問に合わせてスクリーン上でめまぐるしくリアクションやジェスチャーを見せる青羽美咲の姿に、出演者たちからも「かわいい!」の声が飛んでいた。
「春日未来のライブをプロデュースしよう」のコーナーは、配信で見ているプロデューサーたちが投票で選択したソロ楽曲を、春日未来役の山崎はるかがこの場で本当に歌うという企画。山崎はこのステージのために候補3曲を全て練習をしてきたというから驚きだ。選択肢はこれまでにリリースされている春日未来ソロ曲から「素敵なキセキ」「未来飛行」「未来系ドリーマー」の3つ。会場の反応が「未来飛行」に傾く中、山崎がトークの合間に手元を振付っぽく動かして動きの確認をしているような様子がなんだかリアルだ。
投票で過半数の支持を受けたのは、久しぶりの披露となる「未来飛行」だった。すぅっと深く息を吸い込んだ山崎が「いくよー!!」と大きく宣言すると、「未来飛行」からライブパートに突入した。間奏でステージを走りながらウェーブを巻き起こした山崎が、楽しくてしかたがないという感じで笑う姿が未来と重なる。“夢ぎゅっとつなげば”のフレーズで軽く握った手元を見つめる夢見るような瞳が印象的だった。
スクリーンにユニット・Chrono-Lexicaのライブ前演出が表示され、阿部里香、伊藤美来、斉藤佑圭、中村温姫がステージに登場。「dans l’obscurite」で独自の世界観を披露した。間奏で4人が前に歩み出し、円周ステージの張り出しで歌い踊る。観客との距離の近さはアンフィシアターならではだ。MCでは中村が、真剣な表情で歌うロコのレアさを語っていた。
舞台袖でプロデューサーへのメッセージを送る桜守歌織の映像からシームレスに香里有佐が現れると、ライブ初披露の「MUSIC JOURNEY」へ。リズミカルな歌声と満開の笑顔、そして間奏の英語の発音の美しさと、彼女と歌織の魅力がぎっしり詰まったステージだ。同時にはつらつとして、動きがキビキビと気持ちいいダンスなど新しい魅力も見せてくれた。香里は「ドドーンと楽しくみなさんと盛り上がれる曲で、ライブで完成していく曲だと思いました」と語っていた。
アイドルになった自分を振り返り、感謝と共にステージに向かう白石紬の映像から登場するのはもちろん南早紀だ。優雅に舞うように踊りながら「さかしまの言葉」を歌う彼女の、まっすぐに正面を見つめるまなざしの柔らかさが記憶に残る。会場に広がり染みわたるような歌声の表現力と、そこから急激に跳ねあがるテクニカルなパートの安定感。落ちサビは込められた感情と感謝の深さが伝わってきた。
田所あずさ、伊藤美来、斉藤佑圭はおとめ座の星座ユニット・ウィルゴとして「プリムラ」を披露。三者三様のキュートさで歌い継いだかわいさが、サビの美しい三重奏でひとつになって爆発するイメージだ。伊藤と田所の完成度の高いボーカルを、斉藤が表現する昴の女の子らしい一面を込めた歌声が追いかけてくる感じがウィルゴならでは。星座ユニットは2017年に日本武道館で開催された「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 4thLIVE TH@NK YOU for SMILE!!」に向けて組まれたユニットであり、このタイミングでさらっとこの曲を入れてくることが作品のぶ厚さを感じさせる。久しぶりに一緒に歌えたことを喜びあった3人は、実は難しい楽曲であることや、3人の歌声の相性の良さを語っていた。
ライブパート後半は、作中ヒーロー作品「アイドルヒーローズ」の映像からスタート。映像のメインは七尾百合子だ。ステージにMachicoと伊藤美来が登場して歌うのは「インヴィンシブル・ジャスティス」。原曲ではマイティーセーラーズとしてMachicoと上田麗奈が歌う楽曲の海美パートを、伊藤が担当した。熱さだけでなく一陣の風のようなさわやかさが加わった感じで、歌唱メンバーが変わることで属性が変わったようだった。伊藤は「ずっと歌いたかったので、百合子としてこの曲を歌えてすっごく嬉しかったです!」と喜びをあふれさせていた。百合子・翼verの「インヴィンシブル・ジャスティス」は「ミリシタ」にも実装される。
「百花は月下に散りぬるを」は郁原ゆう、小岩井ことり、南早紀のユニット・花咲夜による完全新曲だ。センターはエミリー役の郁原ゆうで、扇子を持った3人が優雅に舞う。和の世界と疾走感のある楽曲のコントラストが印象的で、キビキビしたダンスに合わせた扇子捌きも鮮やかだ。郁原が真ん中で表現するかっこよく凛としたエミリーが新鮮で魅力的だった。
沼倉愛美、Machicoの「深層マーメイド」は2015年にリリースされたCD「THE IDOLM@STER LIVE THE@TER DREAMERS」シリーズ収録のデュオ楽曲群の中でも、屈指の人気を誇る最強ナンバーだ。間奏の赤い照明の中、トリップしたように踊る2人の姿はクールで妖艶。キメフレーズの「視線で抱いて」の沼倉の眼差しの深さに吸い込まれそうになる。ラスト、それぞれの叫ぶような絶唱の二重奏は無敵のユニゾンだった。
ここでスクリーンに唐突に現れたのは、超大手芸能事務所961プロ(自称)の黒井社長のシルエット。感謝祭のステージをジャックした黒井社長の背後の禍々しいオーラと、子安武人の怪演が会場に独特の空気と期待感を醸し出す。そして黒井社長に呼びこまれてステージに登場したのは、961プロの初公開新ユニット・ZWEIGLANZだった。茅原実里、高橋李依がサプライズ登場すると、新曲「アライアンス・スターダスト」を初公開初披露した。
茅原はゲーム「アイドルマスター ワンフォーオール」に登場した961プロ所属の最強アイドル・玲音役。茅原のアイマスステージ登場は2014年の「THE IDOLM@STER 9th ANNIVERSARY WE ARE M@STERPIECE!!」東京公演、2017年の「THE IDOLM@STER PRODUCER MEETING 2017 765PRO ALLSTARS -Fun to the new vision!!-」DAY2に続いてのもので、いずれもサプライズ出演だ。クールでセクシーな玲音衣装をまとった茅原が、玲音に寄せて前髪を作っているのがすごく新鮮だ。
高橋はゲーム「アイドルマスター ステラステージ」に登場した961プロ所属アイドル・詩花役。茅原のアーティストとしての圧倒的な存在感に、高橋がささやくようなウィスパーで、あるいは癖のある蠱惑的な歌声で、様々な引き出しを見せながら渡り合っていく。961プロの2世代のエースが並び立つ夢の競演だった。
新しい何かの始まりに高まる心拍数に追い打ちをかけるように、会場に流れたのは「オーバーマスター」の特徴的なイントロだった。「オーバーマスター」は2008年に発売された「アイドルマスターSP」で961プロ所属の最強ユニット「プロジェクト・フェアリー」が歌った楽曲だ。メンバーは我那覇響、四条貴音、星井美希──響と貴音、そして961プロの物語は、ここから始まった。後に我那覇響と四条貴音は765プロに移籍し、今はかけがえのない仲間となっていることは言うまでもない。それは無数にあるアイマスのパラレルのひとつではあるが、確かにそこにあった記憶のピースのひとつだ。
「オーバーマスター」のステージで待ちうける茅原と高橋の背後から、“誰か”のシルエットがふたつ、現れる。会場から上がる悲鳴のような歓声。誰かは見えてはいなくても、そこにいるのが誰かはっきりとわかる。その驚愕と歓喜は、長く続く作品を愛してきた者たちの特権だろう。
ステージに登場したはじまりのメンバー・沼倉愛美と長谷川明子の歌声に、茅原と高橋の歌声が寄り添い、時代を超えて溶け合っていく。茅原の鋭い眼差し、高橋の妖しく美しく笑み。そして2020年最新の、プロジェクト・フェアリー。それは誰も見たことがない、懐かしくも新しい鮮烈な光景だった。歴史の奥に大切にしまいこまれていた記憶が、ステージでほんの一瞬、これからのアイマスの世界と交わった瞬間だった。
感謝を込めたイベントは、山崎はるかが音頭を取り、高橋と茅原も一緒になって歌う「Thank You!」で幕となった。「ミリオンライブ!」を含む「アイドルマスター」の15周年イヤーは特別なものになると予感させる一日だった。
Text by 中里キリ
アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ ミリシタ感謝祭 2019~2020
2020.1.19 千葉・舞浜アンフィシアター
<セットリスト>
M01:Flyers!!!(THE IDOLM@STER MILLIONSTARS)
M02:未来飛行(山崎)
M03:dans l’obscurité(阿部、伊藤、斉藤、中村/Chrono-Lexica)
M04:MUSIC JOURNEY(香里)
M05:さかしまの言葉(南)
M06:プリムラ(田所、伊藤、斉藤/ウィルゴ)
M07:インヴィンシブル・ジャスティス(Machico、伊藤)
M08:百花は月下に散りぬるを(郁原、小岩井、南/花咲夜)
M09:深層マーメイド(Machico、伊藤)
M10:アライアンス・スターダスト(高橋、茅原/ZWEIGLANZ)
M11:オーバーマスター(長谷川、沼倉、高橋、茅原)
M12:Thank You!(全員)
©窪岡俊之©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
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